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第4章「逃した悪霊」
逃した悪霊 その⑤
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トリガーに人差し指を添える男と、目を閉じる葵。
離れた所にいる白華や目の前に居る如月警部の顔が引き攣っている中、男はゆっくりとトリガーを引いた。
だが不思議なことに、男が何度トリガーを引くも銃口から銃弾が発射されず、静まった空気だけがそこにはあった。
男
『何だって?』『弾が入っていないだと?』
男が顔を引き攣らせながら葵の顔に目をやると、男の体を先程と同じ黒い霧が包み込んでいることに気がついた。
そしてその瞬間、男の左足に激痛が走ったのであった。
男は朱珠を腕から離し、苦痛で顔を歪めながら地べたに尻餅をつくように座り込んだ。
それもそのはずである。男の左足は、黄泉の放った銃弾に撃ち抜かれていたからだ。
男は今まで沢山の人を葬ってはきたものの戦いに関してはど素人であった。
その為、葵が態と葵の方へ注意を引いている間に、朱珠が白と黒に彩られた球体を握り崩し、その霧を合図に黄泉が男の足元を狙い撃つという戦略に、全く気が付くことができなかったのである。
そして男が先程まで自分の腕の中で泣きじゃくっていた朱珠の方へ目をやると、白と黒で彩られた崩れた物体を右手に固く握り締め、先程とは比べ物にならないくらい強い表情をしていることにも気が付いた。
そして朱珠は地べたに座り込んだ男を見下ろしながら、先程とは違う低めな声で『兄ちゃん・・・あんま調子に乗ったらあかんで!』と言い放ったのである。
先程までの朱珠とは違う口調に驚く男。
それもそのはずである。
朱珠は男に人質に取られた直後、既に気絶しており、今朱珠の体をコントロールしているのは朱珠に憑依している元女性警察官の霊体だったからだ。
そんな朱珠の方を、不思議そうな顔で眺める如月警部。
如月警部
『もしかして、あの子の中に居るは・・・。』
綾女 葵
『えゝ、如月 花音。あなたの叔母にあたる人よ。』
葵の言葉を聞き、キラキラした目で再び朱珠を眺める如月警部。
そうこうしていると、白華達が葵の方へと近寄ってきた。
綾女 葵
『有難う。助かったわ。』
黄泉に感謝を伝える葵。
そんな感謝の言葉に対し、黄泉は少し気怠そうな表情で『礼を言われる程のことは、していないわ。』と返答した。
綾女 葵
『それにしても、うちのメンバーは皆、演技派だったみたいね。』
その言葉を聞き笑う白華と紫月。
朝顔 紫月
『リーダーも撃たれそうな演技、上手だったよ。』
綾女 葵
『流石にリンドウちゃんの驚いた顔には勝てなかったわ。』
林藤 白華
『止めてよリーダー!』
葵の言葉に恥ずかしそうに笑う白華、クスクスと笑う紫月、ムスッとした表情の黄泉と、満遍の笑みを浮かべる橙羽。
その異様な光景を眺め、男が口を開いた。
男
『確かにあの女(朱珠)は弾を込めた後、2発しか発砲していなかった!』
『この拳銃の中には、残りの4発弾が入っているはずなんだ!』
『それなのにお前らはどうして、この拳銃に銃弾が無いと判断することができたんだ?』
その問いに対して再びクスクスと笑い始める白華と紫月。
葵と黄泉は呆れた表情で男を見下ろし、朱珠と橙羽は不敵な笑みを浮かべていた。
彼女達の奥では、如月警部も笑みを浮かべていた。
林藤 白華
『あの子は人一倍"怖がり"なんですよ。』
綾女 葵
『「拳銃に込めた銃弾が爆発するのが怖いなら、拳銃に銃弾が残らないよゔに、銃弾を1つずつ拳銃に込めれば良い」というヨツバちゃんの言葉が、パニックになりながらも頭の中には常にあったみたいね。でも、その事が相手にバレないように演技をする余裕まで兼ね備えていたことには、少し私も驚いたわ。』
朝顔 紫月
『そういうところ、私達も見習わないといけないね。』
日廻 橙羽
『そうだね。私達は逃したことにパニックになって、最終的にはエントランスの硝子を粉々にしちゃったもんね。』
如月警部
『えっ!』『粉々にしたの⁈』
爽やかに話す紫月と橙羽の言葉を耳にし、目を見開いて驚く如月警部。
百合 黄泉
『許可を出してくれたのは警部さん、あなたなんだからね!』
神原 朱珠(如月 花音)
『まあ、ええやないの!』『硝子の1枚や2枚!』
如月警部
『いやいや、その硝子が高いんですよ!』
眉間に皺を寄せる黄泉とフォローに入る朱珠。
だが如月警部の表情は、一向に曇っていた。
そんな話しをしていると、男が怒りの形相で怒り始めた。
男
『お前ら巫山戯てんのか?』
男の声を聞き、葵達は男の方へ顔をやった。
綾女 葵
『巫山戯てなんていないわ。でも安堵の気持ちを表に出すのは、少し早かったかもしれないわね。』
そう言うと葵は刀の鞘に設置されているセンサーに右手の人差し指を翳し、カチッと言う音を聞くと、右手で柄を握り締め刀を鞘から引き抜いた。
引き抜かれた刀の刃先は赤紫に輝いており、とても綺麗な色をしていた。
百合 黄泉
『何なのよ・・・あれ?』
じとっとした目で刀の刃先を眺める黄泉。
林藤 白華
『リーダーくらいになれば、放つオーラも違ってくるんだよ。』
笑顔で話す白華とは裏腹に、男は焦りを見せ始めていた。
男
『おい、止めろ!』『落ち着け、落ち着けって!』
『悪かった、悪かったよ!』
綾女 葵
『私が刀を振わなくても、本来向かうべき場所へ行ける?』
男
『天国だろ?』『行くよ、行く!』
『ただ少しだけ待ってくれ、ほんの少しだけ・・・。』
そう言うと男は不敵な笑みを浮かべながら、右手の中に隠し持っていた大きめな石を、葵の顔に目掛けて投げてきた。
林藤 白華
『リーダー危ない!』
白華達が驚く中、葵は冷静に石を避け、男の目の前に立った。
男
『おい、落ち着けって!』『御免、謝るから!』
『俺だって、まだまだ、やりたいことがあるんだよ!』
綾女 葵
『やりたいこと?』
『それが"誰かの幸せを奪うこと"なの?』
葵の言葉を聞き、キレ始める男。
男
『だっておかしな話しだろ?』
『俺は、どこの誰だか分からない奴の不注意で死んじまってよ、そいつには昨日も今日も明日もあるのに、俺には無くなっちまったんだぜ!』
綾女 葵
『だとしても、あなたのやって来たことは、そのあなたが憎んでいる人と同じ、誰かの未来を奪う行為だったのよ。』
男
『煩い・・・煩いんだよ!』
怒り震える男の体から放たれるオーラは、先程、紫月達が目ていた時以上に真っ黒な、漆黒のオーラへと変わっていった。
綾女 葵
『仕方無いわね・・・。』
そう言うと、葵は白と黒に彩られた球体を握り潰し刀で男の体を切り裂いた。
男
『うぐっ・・・。』
男に憑依していた霊体の魂が、葵の刀によって空へと放たれると同時に、男の体からは力が抜け、男は地面へと倒れ込んだ。
黄泉や橙羽が安堵の表情を浮かべる中、葵は悲しそうな表情で倒れ込んだ男のことを眺めていたので合った。
離れた所にいる白華や目の前に居る如月警部の顔が引き攣っている中、男はゆっくりとトリガーを引いた。
だが不思議なことに、男が何度トリガーを引くも銃口から銃弾が発射されず、静まった空気だけがそこにはあった。
男
『何だって?』『弾が入っていないだと?』
男が顔を引き攣らせながら葵の顔に目をやると、男の体を先程と同じ黒い霧が包み込んでいることに気がついた。
そしてその瞬間、男の左足に激痛が走ったのであった。
男は朱珠を腕から離し、苦痛で顔を歪めながら地べたに尻餅をつくように座り込んだ。
それもそのはずである。男の左足は、黄泉の放った銃弾に撃ち抜かれていたからだ。
男は今まで沢山の人を葬ってはきたものの戦いに関してはど素人であった。
その為、葵が態と葵の方へ注意を引いている間に、朱珠が白と黒に彩られた球体を握り崩し、その霧を合図に黄泉が男の足元を狙い撃つという戦略に、全く気が付くことができなかったのである。
そして男が先程まで自分の腕の中で泣きじゃくっていた朱珠の方へ目をやると、白と黒で彩られた崩れた物体を右手に固く握り締め、先程とは比べ物にならないくらい強い表情をしていることにも気が付いた。
そして朱珠は地べたに座り込んだ男を見下ろしながら、先程とは違う低めな声で『兄ちゃん・・・あんま調子に乗ったらあかんで!』と言い放ったのである。
先程までの朱珠とは違う口調に驚く男。
それもそのはずである。
朱珠は男に人質に取られた直後、既に気絶しており、今朱珠の体をコントロールしているのは朱珠に憑依している元女性警察官の霊体だったからだ。
そんな朱珠の方を、不思議そうな顔で眺める如月警部。
如月警部
『もしかして、あの子の中に居るは・・・。』
綾女 葵
『えゝ、如月 花音。あなたの叔母にあたる人よ。』
葵の言葉を聞き、キラキラした目で再び朱珠を眺める如月警部。
そうこうしていると、白華達が葵の方へと近寄ってきた。
綾女 葵
『有難う。助かったわ。』
黄泉に感謝を伝える葵。
そんな感謝の言葉に対し、黄泉は少し気怠そうな表情で『礼を言われる程のことは、していないわ。』と返答した。
綾女 葵
『それにしても、うちのメンバーは皆、演技派だったみたいね。』
その言葉を聞き笑う白華と紫月。
朝顔 紫月
『リーダーも撃たれそうな演技、上手だったよ。』
綾女 葵
『流石にリンドウちゃんの驚いた顔には勝てなかったわ。』
林藤 白華
『止めてよリーダー!』
葵の言葉に恥ずかしそうに笑う白華、クスクスと笑う紫月、ムスッとした表情の黄泉と、満遍の笑みを浮かべる橙羽。
その異様な光景を眺め、男が口を開いた。
男
『確かにあの女(朱珠)は弾を込めた後、2発しか発砲していなかった!』
『この拳銃の中には、残りの4発弾が入っているはずなんだ!』
『それなのにお前らはどうして、この拳銃に銃弾が無いと判断することができたんだ?』
その問いに対して再びクスクスと笑い始める白華と紫月。
葵と黄泉は呆れた表情で男を見下ろし、朱珠と橙羽は不敵な笑みを浮かべていた。
彼女達の奥では、如月警部も笑みを浮かべていた。
林藤 白華
『あの子は人一倍"怖がり"なんですよ。』
綾女 葵
『「拳銃に込めた銃弾が爆発するのが怖いなら、拳銃に銃弾が残らないよゔに、銃弾を1つずつ拳銃に込めれば良い」というヨツバちゃんの言葉が、パニックになりながらも頭の中には常にあったみたいね。でも、その事が相手にバレないように演技をする余裕まで兼ね備えていたことには、少し私も驚いたわ。』
朝顔 紫月
『そういうところ、私達も見習わないといけないね。』
日廻 橙羽
『そうだね。私達は逃したことにパニックになって、最終的にはエントランスの硝子を粉々にしちゃったもんね。』
如月警部
『えっ!』『粉々にしたの⁈』
爽やかに話す紫月と橙羽の言葉を耳にし、目を見開いて驚く如月警部。
百合 黄泉
『許可を出してくれたのは警部さん、あなたなんだからね!』
神原 朱珠(如月 花音)
『まあ、ええやないの!』『硝子の1枚や2枚!』
如月警部
『いやいや、その硝子が高いんですよ!』
眉間に皺を寄せる黄泉とフォローに入る朱珠。
だが如月警部の表情は、一向に曇っていた。
そんな話しをしていると、男が怒りの形相で怒り始めた。
男
『お前ら巫山戯てんのか?』
男の声を聞き、葵達は男の方へ顔をやった。
綾女 葵
『巫山戯てなんていないわ。でも安堵の気持ちを表に出すのは、少し早かったかもしれないわね。』
そう言うと葵は刀の鞘に設置されているセンサーに右手の人差し指を翳し、カチッと言う音を聞くと、右手で柄を握り締め刀を鞘から引き抜いた。
引き抜かれた刀の刃先は赤紫に輝いており、とても綺麗な色をしていた。
百合 黄泉
『何なのよ・・・あれ?』
じとっとした目で刀の刃先を眺める黄泉。
林藤 白華
『リーダーくらいになれば、放つオーラも違ってくるんだよ。』
笑顔で話す白華とは裏腹に、男は焦りを見せ始めていた。
男
『おい、止めろ!』『落ち着け、落ち着けって!』
『悪かった、悪かったよ!』
綾女 葵
『私が刀を振わなくても、本来向かうべき場所へ行ける?』
男
『天国だろ?』『行くよ、行く!』
『ただ少しだけ待ってくれ、ほんの少しだけ・・・。』
そう言うと男は不敵な笑みを浮かべながら、右手の中に隠し持っていた大きめな石を、葵の顔に目掛けて投げてきた。
林藤 白華
『リーダー危ない!』
白華達が驚く中、葵は冷静に石を避け、男の目の前に立った。
男
『おい、落ち着けって!』『御免、謝るから!』
『俺だって、まだまだ、やりたいことがあるんだよ!』
綾女 葵
『やりたいこと?』
『それが"誰かの幸せを奪うこと"なの?』
葵の言葉を聞き、キレ始める男。
男
『だっておかしな話しだろ?』
『俺は、どこの誰だか分からない奴の不注意で死んじまってよ、そいつには昨日も今日も明日もあるのに、俺には無くなっちまったんだぜ!』
綾女 葵
『だとしても、あなたのやって来たことは、そのあなたが憎んでいる人と同じ、誰かの未来を奪う行為だったのよ。』
男
『煩い・・・煩いんだよ!』
怒り震える男の体から放たれるオーラは、先程、紫月達が目ていた時以上に真っ黒な、漆黒のオーラへと変わっていった。
綾女 葵
『仕方無いわね・・・。』
そう言うと、葵は白と黒に彩られた球体を握り潰し刀で男の体を切り裂いた。
男
『うぐっ・・・。』
男に憑依していた霊体の魂が、葵の刀によって空へと放たれると同時に、男の体からは力が抜け、男は地面へと倒れ込んだ。
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