2 / 25
第1章「吹き返す呼吸」
吹き返す呼吸 その②
しおりを挟む
不思議な少女と出逢ってから、初めて迎えた月曜日の朝。
高校の正面玄関で上履きに履き替える朱珠の姿があった。
朱珠が顔を上げると、一昨日出逢った、謎の少女が廊下に立っていた。
謎の少女
『随分ゆっくりとした登校ね。授業開始まで後5分よ。』
神原 朱珠
『ほんまに来てくれたんや!』
謎の少女
『出来ない約束はしないわ。』
謎の少女の顔を眺め、安堵の表情を浮かべる朱珠。
しかし階段の方から足音が聞こえて来た瞬間、朱珠は顔を強張らせながら慌てて階段の方へと走って行った。
階段の踊り場には、白髪の長い髪を靡かせた少女を筆頭に、両目が隠れる程の長い髪を垂らした少女と、朱珠のことを見下ろし含み笑いを浮かべている、髪の毛がぼさぼさな少女の姿があった。
白髪の少女達は、階段を降りると朱珠に近寄ってきた。
月下 美優(げっか みゆう)=白髪の少女
『おはよ。』
黒田 黎空(くろだ りあ)=ぼさぼさ髪の少女
『いつもの持って来てくれた?』
神原 朱珠
『もうお金無いから、無理言うたやろ。』
俯いたまま小さな声で返答する朱珠。
黒田 黎空
『はっ?』『じゃあ、私達に昼抜けって事?』
黎空が物凄い形相で朱珠に迫り寄り、朱珠は目に涙を浮かべている。
その光景を見兼ねた謎の少女が、朱珠の元へ近寄ろうとすると、美優が口を開いた。
月花 美優
『もう良いよ。また、この間と同じ話しを繰り返すつもり?』
『昼食ならコンビニで弁当でも買おうよ。少しくらいは金、持ってんだろ?』
黎空は美優を睨みつけ舌打ちをした後、朱珠に向かい『放課後は覚悟しといてよ』と言い、朱珠を突き飛ばして階段を上がっていった。
桃井 凛心(ももい りんご)=両目が隠れた少女
『あ~怖い怖い。』
凛心も黎空が階段を上がり切った少し後で、独り言を言いながら階段を上がっていった。
2人の階段を上がる足音が、聞こえなくなったことを確認した後、美優も階段を2段上がり、朱珠に背を向けたまま『いつまでも同じこと、やらせないでよ。』と言い、立ち去って行った。
謎の少女
『虐めに加担しているのは、あの3人だけ?』
『それとも他にも居るの?』
謎の少女は階段の踊り場を眺めながら、朱珠に近寄って来た。
神原 朱珠
『あの3人以外は、居らへん。』
謎の少女
『あなた昼食代まで払わされているの?』
神原 朱珠
『せやねん。お小遣いのある内はな。』
謎の少女
『休憩時間も集られるようなら、私の所に来ると良いわ。 私なら休憩時間内も、ずっと2年1組の教室に居るから。』
そう話すと、謎の少女は階段の踊り場を眺めながら、『放課後、蹴りをつけるわよ。』と言葉を発した。
神原 朱珠
『は⁈』『蹴り⁈』『無理やって‼︎』
『私もあんたもボコボコにされんで!』
謎の少女
『大丈夫よ。私に任せて。』
『それじゃあ、授業の後でね。待ってるわ。』
謎の少女は朱珠の方へ振り向き、手を振った後、階段を上がっていった。
------------------------
1限目の終わりを告げるチャイムが校内に鳴り響く中、謎の少女は、椅子に座ったまま廊下の方を眺めるも、2限目を終えても、朱珠の姿が教室に現れることは無かった。
3限目の終わりを迎えるチャイムが鳴り始め、教員が教室を出て行ったのを追うように、謎の少女は席を立ち早足で1年の教室へと向かったが、教室には、ぽつぽつと1年の生徒が残ってはいるものの、そこに朱珠の姿は無かった。
謎の少女は、朱珠を探しに屋上や校庭にも足を運んだものの、休憩時間内に朱珠の姿を見つける事ができないまま、昼休みを迎えることになったのであった。
------------------------
昼休みを終えるチャイムが鳴り響く中、教室に足を運ぶ朱珠。
教室の引き戸の斜め前に、少し曇った表情をした謎の少女が立っていた。
目が合った瞬間、俯く朱珠。
その姿を眺めながら近寄る謎の少女。
謎の少女
『何故、私から逃げるの?』
神原 朱珠
『迷惑を掛けたく無いねん!』
『私と居ったら、あんたまで・・・。』
謎の少女
『それなら、あなたが私から隠れ回るものだから、3限目が終わった後も、お昼休みもあなたを探し回って、もう既に迷惑を感じているわ。』
神原 朱珠
『さらっと綺麗な顔してキツい事言うなぁ。』
そう言いながらも、朱珠の心の中は少しだけ暖かい気持ちになっていた。
謎の少女
『あの白い髪の子がリーダーなのかしら?』
神原 朱珠
『うん。多分そうやと思う。せやけどな、最近はぼさぼさ髪の子の方が突っかかってくるようになってん。』
謎の少女
『それならそうと、上手く事を運ばないと、少し厄介な事になりそうね。』
神原 朱珠
『えっ!』
『まだこれ以上、厄介事に巻き込まれるん?』
謎の少女
『大丈夫。私を信じて。』
『ただ、あの白い髪の子は、あなたを必要としている感じがしたわ。』
神原 朱珠
『私を必要?』『どうゆうこと?』
2人が話していると4限目のチャイムが鳴り、引き戸を開き教員が顔を覗かせ、無表情で『授業が始まるぞ』と声を掛けて来た。
神原 朱珠
『はい!』『御免なさい!』
教員が顔を引っ込めて扉を閉じた後、謎の少女の顔を不安気な表情で眺める朱珠。
謎の少女
『お手洗い以外で教室を出ないこと。6限目が終わったら
私が教室に迎えに行くまで教室の中で待っていること。この2つは、ちゃんと守ってね。分かった?』
神原 朱珠
『分かった。約束する。』
2人は約束を交わした後、それぞれの教室へ戻っていった。
4限目の授業が終わり、5限目の授業が始まるまでの時間も、5限目の授業が終わってから、6限目の授業の開始を知らせるチャイムがなるまでの時間も、謎の少女は朱珠の友達を装い教室へと来てくれた。
しかしその行動を遠くから眺め、怪訝な表情を浮かべる黎空の存在もそこにはあったのであった。
高校の正面玄関で上履きに履き替える朱珠の姿があった。
朱珠が顔を上げると、一昨日出逢った、謎の少女が廊下に立っていた。
謎の少女
『随分ゆっくりとした登校ね。授業開始まで後5分よ。』
神原 朱珠
『ほんまに来てくれたんや!』
謎の少女
『出来ない約束はしないわ。』
謎の少女の顔を眺め、安堵の表情を浮かべる朱珠。
しかし階段の方から足音が聞こえて来た瞬間、朱珠は顔を強張らせながら慌てて階段の方へと走って行った。
階段の踊り場には、白髪の長い髪を靡かせた少女を筆頭に、両目が隠れる程の長い髪を垂らした少女と、朱珠のことを見下ろし含み笑いを浮かべている、髪の毛がぼさぼさな少女の姿があった。
白髪の少女達は、階段を降りると朱珠に近寄ってきた。
月下 美優(げっか みゆう)=白髪の少女
『おはよ。』
黒田 黎空(くろだ りあ)=ぼさぼさ髪の少女
『いつもの持って来てくれた?』
神原 朱珠
『もうお金無いから、無理言うたやろ。』
俯いたまま小さな声で返答する朱珠。
黒田 黎空
『はっ?』『じゃあ、私達に昼抜けって事?』
黎空が物凄い形相で朱珠に迫り寄り、朱珠は目に涙を浮かべている。
その光景を見兼ねた謎の少女が、朱珠の元へ近寄ろうとすると、美優が口を開いた。
月花 美優
『もう良いよ。また、この間と同じ話しを繰り返すつもり?』
『昼食ならコンビニで弁当でも買おうよ。少しくらいは金、持ってんだろ?』
黎空は美優を睨みつけ舌打ちをした後、朱珠に向かい『放課後は覚悟しといてよ』と言い、朱珠を突き飛ばして階段を上がっていった。
桃井 凛心(ももい りんご)=両目が隠れた少女
『あ~怖い怖い。』
凛心も黎空が階段を上がり切った少し後で、独り言を言いながら階段を上がっていった。
2人の階段を上がる足音が、聞こえなくなったことを確認した後、美優も階段を2段上がり、朱珠に背を向けたまま『いつまでも同じこと、やらせないでよ。』と言い、立ち去って行った。
謎の少女
『虐めに加担しているのは、あの3人だけ?』
『それとも他にも居るの?』
謎の少女は階段の踊り場を眺めながら、朱珠に近寄って来た。
神原 朱珠
『あの3人以外は、居らへん。』
謎の少女
『あなた昼食代まで払わされているの?』
神原 朱珠
『せやねん。お小遣いのある内はな。』
謎の少女
『休憩時間も集られるようなら、私の所に来ると良いわ。 私なら休憩時間内も、ずっと2年1組の教室に居るから。』
そう話すと、謎の少女は階段の踊り場を眺めながら、『放課後、蹴りをつけるわよ。』と言葉を発した。
神原 朱珠
『は⁈』『蹴り⁈』『無理やって‼︎』
『私もあんたもボコボコにされんで!』
謎の少女
『大丈夫よ。私に任せて。』
『それじゃあ、授業の後でね。待ってるわ。』
謎の少女は朱珠の方へ振り向き、手を振った後、階段を上がっていった。
------------------------
1限目の終わりを告げるチャイムが校内に鳴り響く中、謎の少女は、椅子に座ったまま廊下の方を眺めるも、2限目を終えても、朱珠の姿が教室に現れることは無かった。
3限目の終わりを迎えるチャイムが鳴り始め、教員が教室を出て行ったのを追うように、謎の少女は席を立ち早足で1年の教室へと向かったが、教室には、ぽつぽつと1年の生徒が残ってはいるものの、そこに朱珠の姿は無かった。
謎の少女は、朱珠を探しに屋上や校庭にも足を運んだものの、休憩時間内に朱珠の姿を見つける事ができないまま、昼休みを迎えることになったのであった。
------------------------
昼休みを終えるチャイムが鳴り響く中、教室に足を運ぶ朱珠。
教室の引き戸の斜め前に、少し曇った表情をした謎の少女が立っていた。
目が合った瞬間、俯く朱珠。
その姿を眺めながら近寄る謎の少女。
謎の少女
『何故、私から逃げるの?』
神原 朱珠
『迷惑を掛けたく無いねん!』
『私と居ったら、あんたまで・・・。』
謎の少女
『それなら、あなたが私から隠れ回るものだから、3限目が終わった後も、お昼休みもあなたを探し回って、もう既に迷惑を感じているわ。』
神原 朱珠
『さらっと綺麗な顔してキツい事言うなぁ。』
そう言いながらも、朱珠の心の中は少しだけ暖かい気持ちになっていた。
謎の少女
『あの白い髪の子がリーダーなのかしら?』
神原 朱珠
『うん。多分そうやと思う。せやけどな、最近はぼさぼさ髪の子の方が突っかかってくるようになってん。』
謎の少女
『それならそうと、上手く事を運ばないと、少し厄介な事になりそうね。』
神原 朱珠
『えっ!』
『まだこれ以上、厄介事に巻き込まれるん?』
謎の少女
『大丈夫。私を信じて。』
『ただ、あの白い髪の子は、あなたを必要としている感じがしたわ。』
神原 朱珠
『私を必要?』『どうゆうこと?』
2人が話していると4限目のチャイムが鳴り、引き戸を開き教員が顔を覗かせ、無表情で『授業が始まるぞ』と声を掛けて来た。
神原 朱珠
『はい!』『御免なさい!』
教員が顔を引っ込めて扉を閉じた後、謎の少女の顔を不安気な表情で眺める朱珠。
謎の少女
『お手洗い以外で教室を出ないこと。6限目が終わったら
私が教室に迎えに行くまで教室の中で待っていること。この2つは、ちゃんと守ってね。分かった?』
神原 朱珠
『分かった。約束する。』
2人は約束を交わした後、それぞれの教室へ戻っていった。
4限目の授業が終わり、5限目の授業が始まるまでの時間も、5限目の授業が終わってから、6限目の授業の開始を知らせるチャイムがなるまでの時間も、謎の少女は朱珠の友達を装い教室へと来てくれた。
しかしその行動を遠くから眺め、怪訝な表情を浮かべる黎空の存在もそこにはあったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる