spiritGUARDIAN ~あの空の向こうへ~ ①

七瀬 ギル

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第1章「吹き返す呼吸」

吹き返す呼吸 その③

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14時55分、6限目の終わりを知らせるチャイムが校内を鳴り響いていた。

クラスでは、生徒が帰宅や部活の準備をしている中、朱珠は謎の少女との約束通り、いつでも帰れる様に鞄を机の上に置き、椅子に座たまま廊下の方を眺め、謎の少女のことを待っていた。

不意に視線を感じ、朱珠が視線の先に目をやると、教室の扉の前に美優達の姿があった。

黎空と凛心は、まだ教室に他の生徒が居るにも関わらず、教室に入るなり朱珠の腕を掴み椅子から引き摺り落とした。

神原 朱珠
『嫌や!』

床に座り込む朱珠。
そんな朱珠の腕を強く引っ張る黎空と凛心。

黒田 黎空
『来なさいよ!』

桃井 凛心
『立てないの?』『赤ちゃんみたい(笑)』

黒田 黎空
『早く来ないと、あの青色の髪の子も痛い目を見るわよ!』

朱珠は、黎空の発した言葉が怖くなり、「謎の少女を虐めに巻き込みたくない」という思いから立ち上がり、机の上の鞄を持ち廊下の方へと歩いていった。

廊下へ向かう最中、教室と廊下の間にある窓硝子に映る
教室内の生徒の姿が目に映った。

生徒達は、朱珠と黎空達の会話がまるで聞こえなかったかのように、楽しそうに部活の話しや、無表情で帰宅の準備をしていた。

朱珠は、そんな光景を目に、絶望感や孤独を感じながら
廊下へ足を踏み出した。

廊下に出ると、美優が虚な目で朱珠を眺めながら『こっちに連れて来て。』と言い、階段を上がって行った。

------------------------

3階にある掲示板の前に立つ朱珠。
その朱珠の周りには、美優達が取り囲むように立っていた。

朱珠の鞄を取り上げ、鞄のチャックの持ち手部分に付けてあったフライ返しのキーホルダーを手にする黎空。
 
黒田 黎空
『何これ?』『超ウケる!』『センス無過ぎ!』

桃井 凛心
『本当だ!』『ダッサ!(笑)』

鞄の中から財布を見つけると、鞄を床に投げ落とした後、
財布の中身を物色し、僅かに残っていたお小遣いの482円を掴み取る黎空。

黒田 黎空
『こんだけ?』

神原 朱珠
『やから言うたやろ。もう残ってへんねん。』

月花 美優
『それで?』
『この間、言っていた話しは、どうなった?』

神原 朱珠
『無理 言うたやろ。親のお金なんて取って来れるはず無いねん。』

俯いたまま、絞り出すように声を出す朱珠。
そんな中、黎空の顔を見る美優。

月花 美優
『だとよ。もう、コイツに集っていても使えないから、こんな奴を相手にするのは、止めしようぜ。』
 
黒田 黎空
『美優、何言ってんの?』
『この子を逃すのは、まだ早いって!』
 
『この子そこそこ可愛いんだからさぁ、お金持ちそうな
おじさんと引っ付けちゃおうよ。』

桃井 凛心
『それグッドアイデアじゃん!』
『超ウケる!(笑)』

涙を浮かべる朱珠を前に、不適な笑みを浮かべる黎空と
爆笑している凛心。
そんな二人とは裏腹に、曇った表情を浮かべる美優。

すると階段の方から足音が聞こえて来た。
その足音の方へ振り向くと、そこには謎の少女が立っていた。
 
謎の少女
『お待たせ。 私の大切なお友達。』

謎の少女は、朱珠の顔を真っ直ぐな瞳で見つめていた。
 
月花 美優
『あんた誰?』『この子の友達?』

神原 朱珠
『ちゃう!』『その子は・・・。』

月花 美優
『あんたは、黙ってて!』

美優は、朱珠を睨み付けた後、謎の少女の方へ目をやった。

月花 美優
『友達って事は、この子の名前、ちゃんと言えるんだよな?』

その問いに対し、謎の少女は、大きくため息をついた。

謎の少女
『聞いてもいないのに、答えられるはずが無いわ。』

謎の少女の言葉を聞いた黎空と咲茉は、お腹を抱えて笑いだした。

黒田 黎空
『あんたさぁ、こんな奴でも仲間に付けておきたいわけ?』

小馬鹿にした表情で朱珠の方を見る黎空。
朱珠は謎の少女と一昨日出逢ったばかりではあるものの、
謎の少女の事を慕っていた為、黎空の言葉に怒りを覚え、
気がつけば強く下唇を噛み締めていた。

謎の少女
『取り敢えず、邪魔だからそこを退いて。』

美優達が立ち塞がっているにも関わらず、朱珠の方へと近寄る謎の少女。

月花 美優
『ちょっと待ちなよ。あんたには、まだ聞きたい事がある。』

右手を壁に付け、腕で謎の少女と朱珠の間を塞ぐ美優。
小さく溜息をつく、謎の少女。
 
謎の少女
『私は、あなたと話したいことなんて、何一つ無いわ。』

月花 美優
『はっ?』

謎の少女
『今日は、苦手な「かくれんぼ」を沢山やらされて、少し苛々しているの。』

謎の少女は、左手に持っていた鞄の中から、一昨日と同じ球体をそっと手に取り地面へと落下させた。

神原 朱珠
『(あっ!)』『(この間と同じ球体や! )』
『(いったい、何をするつもりなんやろ?)』

美優達は、冷静を保ってはいるものの、周囲が霧に包まれ困惑している様子だった。
 
そんな中、謎の少女は表情一つ変えずに、掲示板に突き刺さった画鋲を抜き取ると、美優の腕に突き刺した。

月花 美優
『ギャー! 』

美優は廊下を駆け巡る程の大きな声で叫び、余りの痛さに、謎の少女と朱珠の間を遮っていた手を振り下ろし、その場に蹲った。

その光景を見て青ざめる朱珠。
黎空と凛心も真っ青な顔をして、美優の方へと駆け寄ってきていた?

神原 朱珠
『(この子・・・何やってんねん!)』

朱珠は慌てて足元の鞄を手に取り、謎の少女の腕を掴み、急足で階段を駆け降りていった。

そんな中、美優は右腕に刺さった画鋲を抜き取り、凛心が鞄から出してくれた絆創膏を貼る為に、ブレザーを脱ぎ、シャツの袖を捲り上げた。

月花 美優
『どういう事だ?』『傷が無い!』

黒田 黎空
『何、馬鹿言ってんのよ!』
『巫山戯てる場合じゃないでしょ!』

黎空と凛心も美優の腕を確かめるが、そこには画鋲で突いた後も、血が溢れ出した痕跡すら見当たらなかった。

そして美優達は、霧の掛かった廊下を眺めながら、この現象に霧が関係していることを悟るのであった。
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