巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる

戌葉

文字の大きさ
9 / 89
1章 召喚編

9. 成人祝い

しおりを挟む
 何度か浄化の旅に行き、王城に戻ってくると、お願いしていた理沙ちゃんのドレスが出来上がっていた。

「政子さん、これ……」
「成人のお祝いよ。振袖は無理だけど、ドレスを着て絵を描いてもらいましょう」

 浄化の旅の途中に18歳のお誕生日を迎えた理沙ちゃんのために作ってもらった、帯に見立てた切り替えのあるクリーム色をベースに赤やゴールドの花が散ったドレスだ。
 家族写真を描いてもらった時に、私の留袖をドレス風に描いてくれたあの絵を参考にして、着物テイストを取り入れたドレスを仕立ててもらったのだ。和っぽくなるように、生地選びも立ち会った。袖のフリルがちょっと長くなっているのは、私が簡単に振袖の絵を描いて見せたから、それをデザインに取り込んでくれたのだろう。
 一年の日数が違うので正確には分からないけど、多分今頃が誕生日なのだと馬車の中で聞いた時から、ローズと相談して準備していたので、喜んでいる理沙ちゃんを見て、ローズも私も笑顔になる。

 さっそくローズに着付けてもらうと、理沙ちゃんにぴったりでとっても似合っていた。あの時の画家を呼んで、絵を描いてもらおう。

「政子さんのドレスはないんですか?」
「ないわよ」
「ええー、せっかくだからあの着物風のドレスを作ってもらって、一緒に描いてもらいましょうよ。政子さんはこの世界でのお母さんだから」

 理沙ちゃんがローズにお願いしているので、私のドレスができてから一緒に描いてもらうことになりそうだ。
 女子高生と並ぶなんて、お肌のはりが残酷なほどに差が出るんだけど、むしろ写真じゃないからそこは上手くごまかしてくれることを期待しよう。きっと美肌モードなんて目じゃないくらいに綺麗にしてくれると信じている。

 絵を描いてもらうのは後日なので、今日は振袖代わりのドレスを着て、理沙ちゃんの好きなお菓子を並べて、小さなガーデンパーティーだ。
 浄化の旅で仲良くなった騎士の女の子たちを呼んである。

 今回同行した子たちは見習いなので、何かあった時の対応は男性の騎士頼みで、いざという時に、外の騎士が入ってくるまで時間を稼ぐ係らしい。お城ではないので、さすがに部屋の中に警護がだれもいないというのは安全が保障できないからダメだと言われ、彼女たちが部屋の中で警護に当たっていた。
 理沙ちゃんは、この世界で初めて会った年齢の近い子が身近にいることが嬉しくて、友達のように話しかけていた。
 最初は戸惑っていたその子たちも、聖女様の意向に沿うようにと上から言われたようで、慣れてきてからは友達のように接してくれていた。

 年頃の女の子とお菓子が揃えば、始まるのは恋愛の話だ。どの騎士がかっこいいか、どこそこの伯爵令息がイケメンだと盛り上がっている。

「若いっていいわねえ」
「まぶしいですねえ」
「貴女もあっちに交ざっていいのよ?」

 ローズはおそらく20代後半くらいなんじゃないかと思うので、あちらで一緒にきゃーきゃー言ってもいいと思う。
 けれど、私は顔よりも財力ですね、とかなり現実的なことを言っているので、交ざるのは性格的に無理かもしれない。

 そのとき、王太子が近づいてきた。騎士たちが立ち上がり、ローズは私の横で頭を下げている。

「聖女様!とてもきれいです!」
「成人のお祝いに政子さんが作ってくれました」
「なんと。成人されたのですね。でしたら、成人祝いのパーティーを大々的に開きましょう!」
「大々的とかはちょっと……」

 理沙ちゃんが嫌がっているのに気付かず、ぜひ大勢にこのお姿を見てもらいましょう、とかぬかしている。間違えた、言っている。苛立ちでちょっと口が悪くなってしまった。
 理沙ちゃんは乗り気ではないのに引こうとしない王太子に、イライラが募る。
 さらに椅子を勧めてもいないのに勝手に席に着こうとしているので、追い返そう。

「本日はご遠慮ください」
「では後日パーティーを開きましょう」
「お祝いは身内だけで行います。大体的なパーティーなど、お嬢様は参加されません」
「何故です。聖女様を一目でも見たいという人はたくさんいるのですよ」
「とにかく今日はお引き取り下さい」

 どこまでお花畑なんだ。王太子がこれでこの国の将来は大丈夫なのか心配になる。
 王太子が理沙ちゃんたちの視界から外れたところで、王様への取次ぎをお願いするものの、私が対応すると言って取り次いでくれない。貴方が全く頼りにならないから言っているんです。ごちゃごちゃ言わずに取り次いでよ。
 どういうことだ、とあれこれ言っている王太子ではらちが明かないので、王太子は無視して後ろのお付きに今すぐ王様に取り次ぐようにとしつこく言っていたら、王様に会えることになった。
 私が切れかけていることに、お付きは気づいたらしい。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...