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2章 城下編
2. 薬草採取
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昨日手に入れた紙とペンを持って、朝からギルドを訪れている。
けれどあまりにも場違いな私は依頼を出す側だと思われているようで、すでに4人にどんな依頼を出すのか聞かれた。今の青年で5人目だ。
「おばさん、薬草が必要なら取ってくるぜ。依頼料を奮発してくれるならな」
「私が採取の依頼を受けるの」
「はあ?やめとけ。怪我すんぞ」
「ご心配ありがとう」
時間が勿体無いので、薬草の形を書き写しながら適当に相手をしているのに、なぜか引き下がってくれない。
そのうちレイ君が追っ払ってくれた。
無事に書き写せたので、地図を買って大体どのあたりに薬草があるか受付の人に聞いてから、ギルドを出た。
「なんであんなにしつこく言われたの?」
「お金を持っていると思われたからでしょう」
レイ君によると、まず私の服がその辺の庶民にしては上等なもので、紙をたくさん持っていて本を読んでいるので、裕福だと判断されたようだ。さらに護衛にレイ君がついているので、金持ちの道楽だと思われたらしい。
そういえばこの世界の識字率は低いと講義で聞いた。そうか、庶民はあまり本を読まないのか。
自分の行動の何がこの世界では非常識になるのかが全く分からないのが、前途多難だ。
服については、王城で用意された服という時点でそれなりのものだと気付くべきだった。
今日はまず服の調達に行ったほうがいいだろう。靴は、足元はしっかりしたものがいいから、そのまま使うことにしよう。
「この果物ください」
「はい、10バークですよ。毎度」
「ねえ、この辺りで服を安く買えるところってどこかしら?」
「私はこの道をまっすぐ行って、花屋の前の店で買ってるけど」
「ありがとう」
そこに行ってみよう。付き合わされるレイ君には申し訳ないけど、それも役目だと割り切ってほしい。きっと潜入捜査とかあるよね。
服のお店に入ると、店番の女性に上から下までチェックされた後に、場違いだと追い出されそうになった。
「ここにはあんた用の服はないよ」
「あー、この服は借り物で、普通の服が欲しいから、見てもいい?」
敬語と言うか丁寧語も庶民は使わないらしい。ここでも金持ちの道楽と判断されていそうだが、追い出されはしなかった。
このお店で売っているのはほとんど古着のようで、ちょっとほつれているところがかがられていたりするが、同じ色の糸を使って目立たないようにしているところもあれば、気にせず縫ってあるところもある。
そして何より、値札がない。困った。
「ねえ、ここにあるのいくら?」
「ピンキリだよ。いいやつは、500バークくらい」
なんとなく、日本円の10分の1くらいかと思っているけどあっているかどうかも分からない。
まあぼったくられても仕方がないと諦めよう。チュニックとロングスカートを上下で合わせて3セット買った。まずはそれくらいあればなんとかなるだろう。
冒険者の依頼中の服は、昨日買ってある。草原に入るので、肌が露出しないようにしっかりしたズボンと長袖だ。女性の冒険者もそこそこいるそうなので、ギルドにお店を聞いて調達した。
ここまでかかった費用だけで、多分1週間3食外食できる。それでも武器を買っていないのだから、安いほうだ。
武器は結局買わなかった。買ったほうがいいと言われたが、武器を持っていたところで攻撃できる気が全くしない。そんなところには行かないのが一番だ。
薬草の生えている場所も、子どもが危険なく行って帰れるところを紹介してもらったのだ。
翌朝、冒険者の服を着て、部屋を出ると、出口にいる従業員にぎょっとした顔で見られてしまった。高級宿で冒険者の格好をしていればそういう反応になるか。
しかも後ろからレイ君がついてくる。レイ君も今日は冒険者風だ。
薬草がある辺りは、街から結構離れていて、その近くまでは冒険者用の乗合馬車が出ているとギルドに聞いたので、その出発地点に行くと、いかにも冒険者という風体の若者がゴロゴロいた。
「おばさん、あんた冒険者か?」
「そうよ。どう?決まってる?」
「ぜんぜん」
「もう!そういう時は嘘でもおだてなさいよ」
そのやり取りに周りの冒険者も乗ってきた。どこに何しに行くんだ、武器はどうした、と聞いてくる。
「武器なんか持ったって、自分にしか当たらないわよ。薬草採取だけど、この辺は魔物が出ないって聞いたのよ」
「ああ、その辺の魔物は森に行く冒険者が狩っちまうからな」
地図を見せながら言うと、多くの冒険者の通り道なので安全なのだと教えてくれた。それは逆に言えば、薬草もあまりないということだ。
それでも、命はお金で買えないのだから、安全が優先だ。
薬草は、簡単に見つけられた。というよりも、乗合馬車の冒険者たちがここにあるぞ、と教えてくれたのだ。
メモと見比べて、どの部分が使われるのかを確認して、採取していく。しゃがみこんでの作業は、お庭の花の手入れで慣れているとはいえ腰にはくる。
お昼は草原に座って、冒険者が食べるという携帯食を食べたが、まあ正直美味しくはなかった。日本の昔の防災食も美味しくなかったけど、ここまでじゃない。
服のお店を聞くために買った果物を、ナイフで皮を剝いてから、半分レイ君にあげた。
「付き合わせてごめんね」
「これが仕事ですので」
まあそうだけど、申し訳ない。きっと理沙の護衛のほうがやりたかっただろう。
レイ君は私が採取している間、ずっと私のそばに立って警戒してくれていた。今は一緒に食事をしているが、いつでも反撃できるように、すぐ近くに剣を置いている。
レイ君がいなかったら、魔物が出るんじゃないかとびくびくしながら、帰りの馬車が来るまで過ごさなければいけなかったから、本当に感謝している。
けれどあまりにも場違いな私は依頼を出す側だと思われているようで、すでに4人にどんな依頼を出すのか聞かれた。今の青年で5人目だ。
「おばさん、薬草が必要なら取ってくるぜ。依頼料を奮発してくれるならな」
「私が採取の依頼を受けるの」
「はあ?やめとけ。怪我すんぞ」
「ご心配ありがとう」
時間が勿体無いので、薬草の形を書き写しながら適当に相手をしているのに、なぜか引き下がってくれない。
そのうちレイ君が追っ払ってくれた。
無事に書き写せたので、地図を買って大体どのあたりに薬草があるか受付の人に聞いてから、ギルドを出た。
「なんであんなにしつこく言われたの?」
「お金を持っていると思われたからでしょう」
レイ君によると、まず私の服がその辺の庶民にしては上等なもので、紙をたくさん持っていて本を読んでいるので、裕福だと判断されたようだ。さらに護衛にレイ君がついているので、金持ちの道楽だと思われたらしい。
そういえばこの世界の識字率は低いと講義で聞いた。そうか、庶民はあまり本を読まないのか。
自分の行動の何がこの世界では非常識になるのかが全く分からないのが、前途多難だ。
服については、王城で用意された服という時点でそれなりのものだと気付くべきだった。
今日はまず服の調達に行ったほうがいいだろう。靴は、足元はしっかりしたものがいいから、そのまま使うことにしよう。
「この果物ください」
「はい、10バークですよ。毎度」
「ねえ、この辺りで服を安く買えるところってどこかしら?」
「私はこの道をまっすぐ行って、花屋の前の店で買ってるけど」
「ありがとう」
そこに行ってみよう。付き合わされるレイ君には申し訳ないけど、それも役目だと割り切ってほしい。きっと潜入捜査とかあるよね。
服のお店に入ると、店番の女性に上から下までチェックされた後に、場違いだと追い出されそうになった。
「ここにはあんた用の服はないよ」
「あー、この服は借り物で、普通の服が欲しいから、見てもいい?」
敬語と言うか丁寧語も庶民は使わないらしい。ここでも金持ちの道楽と判断されていそうだが、追い出されはしなかった。
このお店で売っているのはほとんど古着のようで、ちょっとほつれているところがかがられていたりするが、同じ色の糸を使って目立たないようにしているところもあれば、気にせず縫ってあるところもある。
そして何より、値札がない。困った。
「ねえ、ここにあるのいくら?」
「ピンキリだよ。いいやつは、500バークくらい」
なんとなく、日本円の10分の1くらいかと思っているけどあっているかどうかも分からない。
まあぼったくられても仕方がないと諦めよう。チュニックとロングスカートを上下で合わせて3セット買った。まずはそれくらいあればなんとかなるだろう。
冒険者の依頼中の服は、昨日買ってある。草原に入るので、肌が露出しないようにしっかりしたズボンと長袖だ。女性の冒険者もそこそこいるそうなので、ギルドにお店を聞いて調達した。
ここまでかかった費用だけで、多分1週間3食外食できる。それでも武器を買っていないのだから、安いほうだ。
武器は結局買わなかった。買ったほうがいいと言われたが、武器を持っていたところで攻撃できる気が全くしない。そんなところには行かないのが一番だ。
薬草の生えている場所も、子どもが危険なく行って帰れるところを紹介してもらったのだ。
翌朝、冒険者の服を着て、部屋を出ると、出口にいる従業員にぎょっとした顔で見られてしまった。高級宿で冒険者の格好をしていればそういう反応になるか。
しかも後ろからレイ君がついてくる。レイ君も今日は冒険者風だ。
薬草がある辺りは、街から結構離れていて、その近くまでは冒険者用の乗合馬車が出ているとギルドに聞いたので、その出発地点に行くと、いかにも冒険者という風体の若者がゴロゴロいた。
「おばさん、あんた冒険者か?」
「そうよ。どう?決まってる?」
「ぜんぜん」
「もう!そういう時は嘘でもおだてなさいよ」
そのやり取りに周りの冒険者も乗ってきた。どこに何しに行くんだ、武器はどうした、と聞いてくる。
「武器なんか持ったって、自分にしか当たらないわよ。薬草採取だけど、この辺は魔物が出ないって聞いたのよ」
「ああ、その辺の魔物は森に行く冒険者が狩っちまうからな」
地図を見せながら言うと、多くの冒険者の通り道なので安全なのだと教えてくれた。それは逆に言えば、薬草もあまりないということだ。
それでも、命はお金で買えないのだから、安全が優先だ。
薬草は、簡単に見つけられた。というよりも、乗合馬車の冒険者たちがここにあるぞ、と教えてくれたのだ。
メモと見比べて、どの部分が使われるのかを確認して、採取していく。しゃがみこんでの作業は、お庭の花の手入れで慣れているとはいえ腰にはくる。
お昼は草原に座って、冒険者が食べるという携帯食を食べたが、まあ正直美味しくはなかった。日本の昔の防災食も美味しくなかったけど、ここまでじゃない。
服のお店を聞くために買った果物を、ナイフで皮を剝いてから、半分レイ君にあげた。
「付き合わせてごめんね」
「これが仕事ですので」
まあそうだけど、申し訳ない。きっと理沙の護衛のほうがやりたかっただろう。
レイ君は私が採取している間、ずっと私のそばに立って警戒してくれていた。今は一緒に食事をしているが、いつでも反撃できるように、すぐ近くに剣を置いている。
レイ君がいなかったら、魔物が出るんじゃないかとびくびくしながら、帰りの馬車が来るまで過ごさなければいけなかったから、本当に感謝している。
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