53 / 89
5章 浄化の旅編
1. 出発
しおりを挟む
浄化の旅の準備が整い、出発の日、お城の広場には王様を含めて多くの人が見送りに出てくれている。
最初の浄化の旅はトルゴード国内の北東側を予定している。最初なので国内だけにして、次からは国外へも行く予定だ。
「聖女様、トルゴード王国内の浄化をお願いいたします」
「はい。任されました。行ってきます」
「ご無事のお戻りをお待ちしております」
出発のセレモニーを見ようと集まった人から聖女様と歓声があがる中、デイジーちゃんに手を取られた理沙は馬車へと乗り込んだ。
あのダンス以来、デイジーちゃんがノリノリで理沙をエスコートしていて、芝居がかって応じている理沙も楽しそうだ。
浄化の旅にはターシャちゃんも同行してくれる。ターシャちゃんは正式に、瘴気が国内にもたらす影響の調査係に任命されて、その任務での同行だ。
ターシャちゃんが行くので、ジェン君も第二騎士団の責任者として同行する。
理沙の護衛は今まで通りリリーちゃんたちに、カエル退治の時にお試しで参加した3人も加わって、6人体制だ。隣国も含めたら長丁場になるので、順番に交代して十分に休めるようになっている。護衛など、体力だけじゃなくて神経も遣うし、根性論ではどうにもならないものね。
歓声の中、私たちの乗る馬車が進む。
警備の都合もあるので窓は開けないようにと言われているけど、この歓声の中窓を開ける勇気はないわ。馬車の窓が透明じゃなくてよかった。
「この歓声に笑顔で手を振るとか無理。途中で手がつるでしょ」
「ほんとにねえ。見られる立場の方々は大変よねえ」
王族の結婚式の後はパレードがあるらしいんだけど、今回は多分それ以上に人が集まっていると聞いた。あまりの盛り上がりに、馬車の窓は閉じたままなので聖女を見ることはできないと通達しても、もしかしたらという期待で沿道に集まっているらしい。
お忍び、バレなくてよかったわ。こんな群衆が押し寄せてきたらパニックが起きるでしょう。
「ターシャちゃん、聖女を見るといいことがあると思われているの?」
「聖女という存在自体に馴染みがありませんので、一目見てみたいのだと思います」
「ツチノコみたいなものかしら」
今生きている人で、理沙以外の聖女を見たことがある人はいない。そのため、聖女とはそもそも自分たちと同じ人間なのかどうか、一目見てみたいとなるらしい。
「ツチノコってなに?」
「太いヘビ?ネッシーみたいな未確認動物で、テレビで一時期流行ったのよ」
「私、宇宙人と同じ扱いってこと?」
そんな感じよね。まあ別の世界から来てるから、宇宙人でも間違っていないような気がするわ。
馬車が王都を出て、周りから歓声も聞こえなくなったところで、ターシャちゃんがさっそく瘴気の調査について進展があったことを教えてくれた。
「瘴気を感じると言っていた政子さんの護衛についていた騎士を覚えていますか?」
「シーダ君?」
「ええ。彼とは別に、瘴気が濃いところでは視界がかすむという騎士がいました」
へえ。これには理沙も興味を持って聞いている。
私たちがお披露目パーティーに出たり、薬草採取をしている間に、その2人に魔物が出る森の瘴気の濃さを記録させたそうだ。
「これが、その調査結果です。同時期に別々に調査して記録したものですが、傾向が一致しています」
森を区画分けして、その区画ごとの瘴気の濃さを、森の外と一緒の0からすごく濃いの5の間で評価して書き込んだものだ。数字が大きいところを濃く塗ると、瘴気の濃さが色の濃淡で見える。これは分かりやすいわ。
そうして色付けされた2枚の地図を見比べると、多少の違いはあっても、一番濃い場所、そこから濃い色が伸びている方向が同じだ。
「ここまで偶然で一致すると思えませんので、彼らが瘴気を感じるのは事実でしょう。今回の旅にも同行してもらいます」
浄化前の瘴気の分布、瘴気が浄化前後でどう変わるのかの調査をしてもらうつもりだそうだ。今は既に最初に浄化する予定の土地で調査をしていて、そこで合流する。
これから浄化に行く先々で、理沙にも同じように浄化前後の瘴気の濃さを聞いて、国内の瘴気の偏りの地図を作りたいとお願いしている。
「こうやって色で表すと分かりやすいですね」
「人の感覚に頼らず測定できればいいのですが、その開発を待ってはいられませんので」
「ターシャちゃんならできそうだけど」
「正直何から手を付けていいのか全く分かりませんよ」
日本の知識を持ったターシャちゃんにも難しいってことは、他の人にはもっと難しいでしょう。
瘴気の偏りの地図を作って、それを今後どう生かしていくかはまだ未定だけど、そこから何か魔物の対策に繋げていけないかを探っていきたいと、意気込み十分だ。
ターシャちゃんの表情を見ると、未定と言いながらもすでにいろいろ案は浮かんでいそうだ。
何かを発見するために、まずは対象を観察する必要があるのだと力説しているターシャちゃんは、目の前の壁が高ければ高いほど燃えるタイプなんだろう。とても心強いわ。
最初の浄化の旅はトルゴード国内の北東側を予定している。最初なので国内だけにして、次からは国外へも行く予定だ。
「聖女様、トルゴード王国内の浄化をお願いいたします」
「はい。任されました。行ってきます」
「ご無事のお戻りをお待ちしております」
出発のセレモニーを見ようと集まった人から聖女様と歓声があがる中、デイジーちゃんに手を取られた理沙は馬車へと乗り込んだ。
あのダンス以来、デイジーちゃんがノリノリで理沙をエスコートしていて、芝居がかって応じている理沙も楽しそうだ。
浄化の旅にはターシャちゃんも同行してくれる。ターシャちゃんは正式に、瘴気が国内にもたらす影響の調査係に任命されて、その任務での同行だ。
ターシャちゃんが行くので、ジェン君も第二騎士団の責任者として同行する。
理沙の護衛は今まで通りリリーちゃんたちに、カエル退治の時にお試しで参加した3人も加わって、6人体制だ。隣国も含めたら長丁場になるので、順番に交代して十分に休めるようになっている。護衛など、体力だけじゃなくて神経も遣うし、根性論ではどうにもならないものね。
歓声の中、私たちの乗る馬車が進む。
警備の都合もあるので窓は開けないようにと言われているけど、この歓声の中窓を開ける勇気はないわ。馬車の窓が透明じゃなくてよかった。
「この歓声に笑顔で手を振るとか無理。途中で手がつるでしょ」
「ほんとにねえ。見られる立場の方々は大変よねえ」
王族の結婚式の後はパレードがあるらしいんだけど、今回は多分それ以上に人が集まっていると聞いた。あまりの盛り上がりに、馬車の窓は閉じたままなので聖女を見ることはできないと通達しても、もしかしたらという期待で沿道に集まっているらしい。
お忍び、バレなくてよかったわ。こんな群衆が押し寄せてきたらパニックが起きるでしょう。
「ターシャちゃん、聖女を見るといいことがあると思われているの?」
「聖女という存在自体に馴染みがありませんので、一目見てみたいのだと思います」
「ツチノコみたいなものかしら」
今生きている人で、理沙以外の聖女を見たことがある人はいない。そのため、聖女とはそもそも自分たちと同じ人間なのかどうか、一目見てみたいとなるらしい。
「ツチノコってなに?」
「太いヘビ?ネッシーみたいな未確認動物で、テレビで一時期流行ったのよ」
「私、宇宙人と同じ扱いってこと?」
そんな感じよね。まあ別の世界から来てるから、宇宙人でも間違っていないような気がするわ。
馬車が王都を出て、周りから歓声も聞こえなくなったところで、ターシャちゃんがさっそく瘴気の調査について進展があったことを教えてくれた。
「瘴気を感じると言っていた政子さんの護衛についていた騎士を覚えていますか?」
「シーダ君?」
「ええ。彼とは別に、瘴気が濃いところでは視界がかすむという騎士がいました」
へえ。これには理沙も興味を持って聞いている。
私たちがお披露目パーティーに出たり、薬草採取をしている間に、その2人に魔物が出る森の瘴気の濃さを記録させたそうだ。
「これが、その調査結果です。同時期に別々に調査して記録したものですが、傾向が一致しています」
森を区画分けして、その区画ごとの瘴気の濃さを、森の外と一緒の0からすごく濃いの5の間で評価して書き込んだものだ。数字が大きいところを濃く塗ると、瘴気の濃さが色の濃淡で見える。これは分かりやすいわ。
そうして色付けされた2枚の地図を見比べると、多少の違いはあっても、一番濃い場所、そこから濃い色が伸びている方向が同じだ。
「ここまで偶然で一致すると思えませんので、彼らが瘴気を感じるのは事実でしょう。今回の旅にも同行してもらいます」
浄化前の瘴気の分布、瘴気が浄化前後でどう変わるのかの調査をしてもらうつもりだそうだ。今は既に最初に浄化する予定の土地で調査をしていて、そこで合流する。
これから浄化に行く先々で、理沙にも同じように浄化前後の瘴気の濃さを聞いて、国内の瘴気の偏りの地図を作りたいとお願いしている。
「こうやって色で表すと分かりやすいですね」
「人の感覚に頼らず測定できればいいのですが、その開発を待ってはいられませんので」
「ターシャちゃんならできそうだけど」
「正直何から手を付けていいのか全く分かりませんよ」
日本の知識を持ったターシャちゃんにも難しいってことは、他の人にはもっと難しいでしょう。
瘴気の偏りの地図を作って、それを今後どう生かしていくかはまだ未定だけど、そこから何か魔物の対策に繋げていけないかを探っていきたいと、意気込み十分だ。
ターシャちゃんの表情を見ると、未定と言いながらもすでにいろいろ案は浮かんでいそうだ。
何かを発見するために、まずは対象を観察する必要があるのだと力説しているターシャちゃんは、目の前の壁が高ければ高いほど燃えるタイプなんだろう。とても心強いわ。
91
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる