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4章 冒険者編
6. ダンス
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「理沙さん、今日はダンスをしてみませんか?」
「えー、私踊れませんよ」
「練習あるのみですよ」
今日はダンスの日らしい。
このお城での生活にも慣れてきたので、退屈しないようにいろいろとイベントを開催してくれているみたいだ。浄化が終わった後の生活で困らないように、この世界に溶け込めるように、という心遣いが感じられる。
練習場として使う小さめのホールへ入ると、スラっと背の高いイケメンが待っていた。
「レディ、私と踊っていただけますか?」
「あれ?デイジーさん?」
ずっと理沙の護衛をしてくれている女性騎士3人の中で一番背の高いデイジーちゃんだ。いつもは麗しきお姉様という雰囲気だけど、男装している今日は素晴らしくイケメン。
「そういう格好も似合うわねえ」
「男性パートも踊れますので、お相手はお任せください」
女性の護衛騎士は、王女様たちのダンスの練習のお相手を務めることもあるそうだ。なんてハイスペック。騎士になれるくらい運動神経がいいと、ダンスは簡単なのかしら。
「政子さんはどなたでもお好きな騎士を指名してください」
「そんなの選べないわよ。既婚者で一番年上の人で」
騎士様と踊ったなどと知れたらご令嬢たちから嫉妬されちゃいそうよ。
男の人と手をつないで踊ったのなんて、中学校のフォークダンスが最後じゃないかしら。林間学校でやったわよね。好きな男の子と手をつなげるかもって盛り上がったのが懐かしいわ。
プレーヤーがないので、音楽は楽師さんによる生演奏だ。ホールの隅にすでに楽師さんが待機している。
「まずは男性が手を出しますので、そこに右手を乗せてください」
ダンスの先生の解説を聞きながら、まずはステップの練習だ。
三拍子でステップを踏むのは一応できる。でも姿勢を保って下を見ないで、と言われるととたんにできなくなってしまう。しかも長くて布の多いドレスが邪魔なので、ひざ下丈のワンピースに着替えたい。
理沙もやはりドレスが邪魔なようで、二人で悪戦苦闘してたら、お仕事の合間の王様と王妃様が見学に来た。
「聖女様はダンスもお上手ですね。調薬も演奏も絵画も、全て経験がおありなのですか?」
「経験って言うほどでもないんですが」
言われてみると、学校でどれも近いことを少しは経験している。それだけ日本の教育が幅広くいろんなことをさせるように出来ているんだろう。調理実習もあるしね。
聖女様の世界のダンスを是非見せてほしいと言われたけど、日本のダンスって何?一番最後に踊ったのは、だいぶ前に会社の忘年会でやった将軍様のサンバよ。あれを日本のダンスに入れていいのか謎だけど。
「お母さん、何か踊れる?」
「盆踊り?」
それってダンスじゃないでしょうって言われたけど、あれだって踊りだからダンスでしょう。音楽に合わせて踊るんだから。
それを聞いて、音楽に合わせて体を動かすのであれば有名なのがありますよね、といってターシャちゃんが楽師さんからバイオリンを借りた。そして弾き始めた曲に、ズッコケそうになってしまった。ターシャちゃん、ときどき天然さんよね。
「理沙、やるわよ。背伸びの運動~、はい! いち、に、さん、し」
「ええー、ホントにやるの?」
かの有名な、夏休みの朝小学生が集まってやる体操である。
感染症が流行して在宅勤務になったとき、運動不足解消に毎日やってたのだけれど、真面目にやると汗が出るのよ。
突然始まった体操に、王様たちが戸惑っている。
そもそもダンスじゃないし、バイオリンの演奏で体操してるのって見ているとシュールだろう。理沙も恥ずかしそうにしているので、腕を回し終えたところで止めた。
「今のは……」
「運動の前などに簡単に身体を動かすためのものです。ダンスではありませんが」
「音楽に合わせてですか」
驚いているので、この世界には音楽に合わせて体操をするという習慣はないようだ。生演奏になってしまうから、気軽にはできないか。
微妙な空気のまま、王様たちは次の予定があるからと見学を終えて部屋を出て行った。日本は変な国だと思われたような気もするけど、仕方がない。
気を取り直してワルツの練習をして、最後はパートナーの騎士さんと音楽に合わせて踊った。と言ってもこちらはただ三拍子に合わせてステップを踏んで、騎士さんが移動させてくれるのに身を任せるだけだ。
不思議なことにそれでくるくると円を描いて進んでいける。これは騎士さんのリードが上手なのに自分が踊れるようになったと勘違いしそうだ。
しかも、とてもお上手ですよ、その調子です、と褒めてくれるのでとてもいい気分で踊ることができる。
理沙はどうかしら、と思ってみたら、とても上手に踊っていた。若いだけあって私と違い飲み込みが早いわ。
デイジーちゃんと身長のバランスも良く、王子様とお姫様のようだ。
「理沙様、下を向いていないでそのお美しいお顔をもっと見せて」
すっかり王子様になりきり甘くささやくデイジーちゃんを見て、理沙がぽおっとなっている。そこだけ見たら初々しいカップルのようね。
「えー、私踊れませんよ」
「練習あるのみですよ」
今日はダンスの日らしい。
このお城での生活にも慣れてきたので、退屈しないようにいろいろとイベントを開催してくれているみたいだ。浄化が終わった後の生活で困らないように、この世界に溶け込めるように、という心遣いが感じられる。
練習場として使う小さめのホールへ入ると、スラっと背の高いイケメンが待っていた。
「レディ、私と踊っていただけますか?」
「あれ?デイジーさん?」
ずっと理沙の護衛をしてくれている女性騎士3人の中で一番背の高いデイジーちゃんだ。いつもは麗しきお姉様という雰囲気だけど、男装している今日は素晴らしくイケメン。
「そういう格好も似合うわねえ」
「男性パートも踊れますので、お相手はお任せください」
女性の護衛騎士は、王女様たちのダンスの練習のお相手を務めることもあるそうだ。なんてハイスペック。騎士になれるくらい運動神経がいいと、ダンスは簡単なのかしら。
「政子さんはどなたでもお好きな騎士を指名してください」
「そんなの選べないわよ。既婚者で一番年上の人で」
騎士様と踊ったなどと知れたらご令嬢たちから嫉妬されちゃいそうよ。
男の人と手をつないで踊ったのなんて、中学校のフォークダンスが最後じゃないかしら。林間学校でやったわよね。好きな男の子と手をつなげるかもって盛り上がったのが懐かしいわ。
プレーヤーがないので、音楽は楽師さんによる生演奏だ。ホールの隅にすでに楽師さんが待機している。
「まずは男性が手を出しますので、そこに右手を乗せてください」
ダンスの先生の解説を聞きながら、まずはステップの練習だ。
三拍子でステップを踏むのは一応できる。でも姿勢を保って下を見ないで、と言われるととたんにできなくなってしまう。しかも長くて布の多いドレスが邪魔なので、ひざ下丈のワンピースに着替えたい。
理沙もやはりドレスが邪魔なようで、二人で悪戦苦闘してたら、お仕事の合間の王様と王妃様が見学に来た。
「聖女様はダンスもお上手ですね。調薬も演奏も絵画も、全て経験がおありなのですか?」
「経験って言うほどでもないんですが」
言われてみると、学校でどれも近いことを少しは経験している。それだけ日本の教育が幅広くいろんなことをさせるように出来ているんだろう。調理実習もあるしね。
聖女様の世界のダンスを是非見せてほしいと言われたけど、日本のダンスって何?一番最後に踊ったのは、だいぶ前に会社の忘年会でやった将軍様のサンバよ。あれを日本のダンスに入れていいのか謎だけど。
「お母さん、何か踊れる?」
「盆踊り?」
それってダンスじゃないでしょうって言われたけど、あれだって踊りだからダンスでしょう。音楽に合わせて踊るんだから。
それを聞いて、音楽に合わせて体を動かすのであれば有名なのがありますよね、といってターシャちゃんが楽師さんからバイオリンを借りた。そして弾き始めた曲に、ズッコケそうになってしまった。ターシャちゃん、ときどき天然さんよね。
「理沙、やるわよ。背伸びの運動~、はい! いち、に、さん、し」
「ええー、ホントにやるの?」
かの有名な、夏休みの朝小学生が集まってやる体操である。
感染症が流行して在宅勤務になったとき、運動不足解消に毎日やってたのだけれど、真面目にやると汗が出るのよ。
突然始まった体操に、王様たちが戸惑っている。
そもそもダンスじゃないし、バイオリンの演奏で体操してるのって見ているとシュールだろう。理沙も恥ずかしそうにしているので、腕を回し終えたところで止めた。
「今のは……」
「運動の前などに簡単に身体を動かすためのものです。ダンスではありませんが」
「音楽に合わせてですか」
驚いているので、この世界には音楽に合わせて体操をするという習慣はないようだ。生演奏になってしまうから、気軽にはできないか。
微妙な空気のまま、王様たちは次の予定があるからと見学を終えて部屋を出て行った。日本は変な国だと思われたような気もするけど、仕方がない。
気を取り直してワルツの練習をして、最後はパートナーの騎士さんと音楽に合わせて踊った。と言ってもこちらはただ三拍子に合わせてステップを踏んで、騎士さんが移動させてくれるのに身を任せるだけだ。
不思議なことにそれでくるくると円を描いて進んでいける。これは騎士さんのリードが上手なのに自分が踊れるようになったと勘違いしそうだ。
しかも、とてもお上手ですよ、その調子です、と褒めてくれるのでとてもいい気分で踊ることができる。
理沙はどうかしら、と思ってみたら、とても上手に踊っていた。若いだけあって私と違い飲み込みが早いわ。
デイジーちゃんと身長のバランスも良く、王子様とお姫様のようだ。
「理沙様、下を向いていないでそのお美しいお顔をもっと見せて」
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