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5章 浄化の旅編
3. 料理
野営という名のグランピング2日目、今日は料理を作る。キャンプと言えば、料理でしょう。
まあ、キャンプしたことないんだけど。祐也はキャンプ行くくらいなら、家でマンガ読んでいたい子どもだった。
昨日、食事をしている騎士さんたちと話している時に、私たちの世界の食事の話になった。
この世界、食事は普通に美味しい。お米やお醤油はないけど、洋食だと思うと味付けに大きな違いはない。庶民はシンプルな塩の味付けが多いけど、お城だといろんな調味料を使った料理が出てくる。
聖女様の世界ではどんなものを食べているのか食べてみたい、と言われたので、だったら作ってみようとなったのだ。
といっても私はこの世界の調味料をよく知らない。クインスではこの世界にないものを作って目立たないように、味付けはミュラに任せていた。
そこにあるもので出来そうなものを作るしかない。
「今日は何を作る予定だったの?」
「パンと、干し肉と野菜のスープです」
野営の時は生のお肉は持ってこないので、タンパク質はスープに入れて柔らかくした干し肉だけ。野菜は移動中に当たっても傷まない根菜だけで、こちらもスープに入れる。食器は各自で用意するけど、スープ用のお椀しか持ち歩かない。それに大人数の物を効率的に作るとなると、スープが楽なんだろう。
醤油があれば肉じゃがっぽいものが作れるけど、ここにあるもので日本らしさなんて出せないわ。こういうときにネットで調べられたらいいのに。
「うーん、同じようなものしか作れないわ」
「あまり変わらないんですか?」
「私たちの国では醤油っていう調味料をよく使うんだけど、それがないから」
それなりの期間一緒に行動していれば、少しずつ打ち解けてくる。騎士さんたちも気軽に話しかけてくれるようになった。
理沙も騎士さんたちを怖がらず、今は並べられた材料をのぞき込んでいる。
「マッシュポテトは?」
「バターがないし、潰すのに手間がかかるでしょう?」
「ここにあるもので作れるなら作りましょう!」
なんだか興味を持たれてしまったので、マッシュポテトを作ることになってしまった。
バターがないので、チーズと牛乳を混ぜよう。チーズはチェダーチーズのようなハードタイプがあった。牛乳は村の人からの差し入れだ。
「ジャガイモの皮をむいて切って、茹でたら水を捨てて潰すの」
「皮をむくのは我々がやりますので」
理沙が皮をむこうとジャガイモを手に取ったところで止められている。万が一にも聖女様に怪我をされては困るのだろう。
この世界の包丁はペティナイフのような形で、三徳包丁に慣れた身には最初は大変だった。調理は彼らに任せて、監督に専念だ。
大量のジャガイモが手際よく切って茹でられていく。
「剣が使えると、包丁の扱いも簡単?」
「全く違いますよ。剣は得意でも、料理は全然の奴もいます」
同じ刃物で扱えるのかと思ったけど、やっぱり大きさも形も違うものね。
そんな話をしている間に、ジャガイモは茹であがっていたので、お湯を捨てて潰してもらう。
騎士さんの腕力であっという間に潰れたので、牛乳と刻んだチーズを混ぜて、後は塩で味付けだ。
「理沙、味見して」
「なんで私?」
「聖女様が味見したほうが、有難味がありそうじゃない?」
ないわよ、と呆れながらも味見をして、お塩がもうちょっとかな、と調整してくれる。
肉体労働の騎士さんだから、多少は塩気を強めにしたほうがいい気もするけど、足りなければ自分で足してもらえばいいでしょう。
私たちがマッシュポテトを作っている隣でスープも作られていたので、今日の夕食は完成だ。
「今日の夕食は聖女様が作ってくださった。皆、感謝して食べるように」
護衛騎士の隊長さんの呼びかけに、おおーっと野太い歓声が上がっている。そんな大したものじゃないから、食べる前からハードルを上げないでほしい。
スープ用のボールしか器がないので、みんなパンの上に乗せて運んでいる。
私たちはちゃんと食器に盛られて、テントの中でいただく。
外から聞こえる会話では、マッシュポテトは好評のようだ。お世辞でもうれしい。本来野営の料理ではかけない手間をかけて作ってもらったのだし、これで不評だと料理担当の人に申し訳ない。
「マッシュポテト好きだったから、嬉しい」
「今度お城のシェフにちゃんと作ってもらいましょう」
「お母さんは食べたいものないの?」
「そうねえ。お好み焼き」
「私も食べたい!」
小麦粉はあるみたいだし、こんどお城でキッチンを借りて作ってみようかしら。ソースの代わりになるものがあるといいけど。
実は理沙と日本の食べ物の話をするのはこれが初めてだ。理沙が意識的に避けていたのかどうかは分からないけど、私は避けていた。
食べ物ってすごく過去につながりがあるものだと思う。匂いは過去の記憶に強く結びついているし、食べ物の話から日本を思い出して、帰ることができないことに落ち込んでしまうのが怖かった。
こうして話せるようになったということは、理沙の中でも少しずつ望郷の念と折り合いが付けられているのかもしれない。
まあ、キャンプしたことないんだけど。祐也はキャンプ行くくらいなら、家でマンガ読んでいたい子どもだった。
昨日、食事をしている騎士さんたちと話している時に、私たちの世界の食事の話になった。
この世界、食事は普通に美味しい。お米やお醤油はないけど、洋食だと思うと味付けに大きな違いはない。庶民はシンプルな塩の味付けが多いけど、お城だといろんな調味料を使った料理が出てくる。
聖女様の世界ではどんなものを食べているのか食べてみたい、と言われたので、だったら作ってみようとなったのだ。
といっても私はこの世界の調味料をよく知らない。クインスではこの世界にないものを作って目立たないように、味付けはミュラに任せていた。
そこにあるもので出来そうなものを作るしかない。
「今日は何を作る予定だったの?」
「パンと、干し肉と野菜のスープです」
野営の時は生のお肉は持ってこないので、タンパク質はスープに入れて柔らかくした干し肉だけ。野菜は移動中に当たっても傷まない根菜だけで、こちらもスープに入れる。食器は各自で用意するけど、スープ用のお椀しか持ち歩かない。それに大人数の物を効率的に作るとなると、スープが楽なんだろう。
醤油があれば肉じゃがっぽいものが作れるけど、ここにあるもので日本らしさなんて出せないわ。こういうときにネットで調べられたらいいのに。
「うーん、同じようなものしか作れないわ」
「あまり変わらないんですか?」
「私たちの国では醤油っていう調味料をよく使うんだけど、それがないから」
それなりの期間一緒に行動していれば、少しずつ打ち解けてくる。騎士さんたちも気軽に話しかけてくれるようになった。
理沙も騎士さんたちを怖がらず、今は並べられた材料をのぞき込んでいる。
「マッシュポテトは?」
「バターがないし、潰すのに手間がかかるでしょう?」
「ここにあるもので作れるなら作りましょう!」
なんだか興味を持たれてしまったので、マッシュポテトを作ることになってしまった。
バターがないので、チーズと牛乳を混ぜよう。チーズはチェダーチーズのようなハードタイプがあった。牛乳は村の人からの差し入れだ。
「ジャガイモの皮をむいて切って、茹でたら水を捨てて潰すの」
「皮をむくのは我々がやりますので」
理沙が皮をむこうとジャガイモを手に取ったところで止められている。万が一にも聖女様に怪我をされては困るのだろう。
この世界の包丁はペティナイフのような形で、三徳包丁に慣れた身には最初は大変だった。調理は彼らに任せて、監督に専念だ。
大量のジャガイモが手際よく切って茹でられていく。
「剣が使えると、包丁の扱いも簡単?」
「全く違いますよ。剣は得意でも、料理は全然の奴もいます」
同じ刃物で扱えるのかと思ったけど、やっぱり大きさも形も違うものね。
そんな話をしている間に、ジャガイモは茹であがっていたので、お湯を捨てて潰してもらう。
騎士さんの腕力であっという間に潰れたので、牛乳と刻んだチーズを混ぜて、後は塩で味付けだ。
「理沙、味見して」
「なんで私?」
「聖女様が味見したほうが、有難味がありそうじゃない?」
ないわよ、と呆れながらも味見をして、お塩がもうちょっとかな、と調整してくれる。
肉体労働の騎士さんだから、多少は塩気を強めにしたほうがいい気もするけど、足りなければ自分で足してもらえばいいでしょう。
私たちがマッシュポテトを作っている隣でスープも作られていたので、今日の夕食は完成だ。
「今日の夕食は聖女様が作ってくださった。皆、感謝して食べるように」
護衛騎士の隊長さんの呼びかけに、おおーっと野太い歓声が上がっている。そんな大したものじゃないから、食べる前からハードルを上げないでほしい。
スープ用のボールしか器がないので、みんなパンの上に乗せて運んでいる。
私たちはちゃんと食器に盛られて、テントの中でいただく。
外から聞こえる会話では、マッシュポテトは好評のようだ。お世辞でもうれしい。本来野営の料理ではかけない手間をかけて作ってもらったのだし、これで不評だと料理担当の人に申し訳ない。
「マッシュポテト好きだったから、嬉しい」
「今度お城のシェフにちゃんと作ってもらいましょう」
「お母さんは食べたいものないの?」
「そうねえ。お好み焼き」
「私も食べたい!」
小麦粉はあるみたいだし、こんどお城でキッチンを借りて作ってみようかしら。ソースの代わりになるものがあるといいけど。
実は理沙と日本の食べ物の話をするのはこれが初めてだ。理沙が意識的に避けていたのかどうかは分からないけど、私は避けていた。
食べ物ってすごく過去につながりがあるものだと思う。匂いは過去の記憶に強く結びついているし、食べ物の話から日本を思い出して、帰ることができないことに落ち込んでしまうのが怖かった。
こうして話せるようになったということは、理沙の中でも少しずつ望郷の念と折り合いが付けられているのかもしれない。
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