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5章 浄化の旅編
4. 当面の目標
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野営を経て、騎士団の人たちと距離が近くなった。
彼らはプロフェッショナルだから、あちらから話しかけてくるなんてことはないけど、目が合って挨拶すると、儀礼ではなく気軽な挨拶を返してくれるようになった。野営の時に休憩中の彼らと話をしたのが大きかったのだろう。
テント内でマッシュポテトが添えられた食事を済ませた後、リサはカーラちゃんに任せて、テントを出て食後に休憩している騎士たちに話しかけた。
「お口に合ったかしら?」
「美味しかったです。これは聖女様の世界でよく食べるものですか?」
「たまにかな。私たちの国の伝統料理ではないけど」
和食がどんなものなのかと、調味料がないから作れないということを説明する。
ターシャちゃんなら、お醤油とかお味噌とか頑張って作ってくれそうな気もするけど、この世界で生まれているとそこまで和食へのこだわりはないのかも。
考えちゃうと食べたくなるから、止めておこう。
この時以来、私の雑談にも付き合ってくれる。もちろん護衛の邪魔になるようなことはしていないはず。
「どうして騎士になったの?」
「私は騎士の家系ですので」
今日の私の護衛はシーダ君ではなく、シーダ君がいないときに付いてくれる騎士さん、フィル君だ。
聞いてみると、護衛騎士はほとんどが貴族で、そもそも親も護衛騎士という人が多いらしい。騎士の中でもエリートだと聞いていたけど、実力だけではなく家柄も必要らしい。シーダ君も言葉遣いを特訓していると言っていたし、お仕事を考えたら納得だ。
「マサコ様はお仕事されていたんですか?」
「していたわよ。商会で働いていたの」
営業の仕事をどう説明していいのか分からないけど、大きく言えば商人でいいんじゃないかしらね。そんな細かい内容を知りたい訳でもないでしょう。
そんな雑談をしているのは、理沙がシーダ君と一緒に森の周辺の瘴気の濃さの地図を作っているからだ。
余裕をもって組み立てられている浄化の旅、お天気にも恵まれて、今のところ予定よりも早く進んでいる。それで、この時間を使って理沙も瘴気の濃さの地図を作ってみることになった。
と言ってもシーダ君のように森の中に入るのは危険なので、森の周辺だけだ。
私も理沙と一緒に森の近くまで行こうと思ったけれど、理沙に止められてしまった。警護の上でも理沙だけのほうが守りやすいと言われて、理沙がかろうじて見える距離から見守っている。走って逃げろ、と言われた時に、どう考えても私は足手まといになるので、大人しく従った。
ターシャちゃんは理沙の近くにいるけど、こちらは任務上必要なのだとターシャちゃんが押し切って、ジェン君が自分と第二騎士団が守るからと護衛騎士を説得した。
ジェン君、ターシャちゃんに振り回されているところしか見ていないのだけど、魔物と戦っているところは私たちの目には入らないからよね?
今もだけど、理沙が浄化をするときに魔物が一切現れないのは、第二騎士団が事前に討伐しているからだと聞いている。ジェン君はそこで活躍しているはずだ、きっと。
フィル君と世間話をしていると、地図を作り終え、浄化も終わらせた理沙が戻ってきた。デイジーちゃんの乗る馬に乗せてもらっている。
「理沙、そうやっていると、白馬に乗った王子様に乗せてもらってるみたいよ」
「バイクみたいなものかなと思ったけど、揺れるし、高さがちょっと怖い。でも楽しい」
颯爽と馬から飛び降りたりはもちろんできず、支えてもらってゆっくり降りてきた。馬の背中が私の目線でバイクよりはだいぶ高いから、落ちたら怪我しそう。
理沙は乗馬に興味を持ったようで、今度お城で時間が出来たら乗馬を習いたいとお願いしている。
前向きになっている理沙を見るのは嬉しい。
理沙が作った瘴気の濃さの地図と、シーダ君が作った地図は、同じようなものが出来ていた。
今回理沙がいつもより森に近いところで浄化をしたので、森の奥のほうの瘴気の変化がいつもと違うか、シーダ君が確認に行ったそうだ。
もしこれで瘴気の浄化具合に差が出るようなら、警護との兼ね合いもあるが、今後の浄化もなるべく森に近いところで行うことも考えているそうだ。
浄化の効果がどれくらいの範囲に及ぶのかは目に見えないので分からない。今現在はクインスで行っていた時の情報を頼りに場所を決めているが、それがこの国でも丁度良いのかどうかも分からない。だから、地道に調べていくしかない。
「浄化の手順書が欲しいわね」
「あれば楽ですよね。理沙さんに協力してもらってそういうものを作ろうと思っています」
聖女召喚が不要になるようにする方法はまだ分からない。だからまずは、次に呼ばれるかもしれない聖女のための手引きを作ろうと思っている。
それが当面の目標だと、ターシャちゃんが教えてくれた。
「私、なんでも協力します!」
「よろしくお願いします」
やる気を出した理沙を、護衛のみんなが温かく見守ってくれている。
この国に来てよかった。
彼らはプロフェッショナルだから、あちらから話しかけてくるなんてことはないけど、目が合って挨拶すると、儀礼ではなく気軽な挨拶を返してくれるようになった。野営の時に休憩中の彼らと話をしたのが大きかったのだろう。
テント内でマッシュポテトが添えられた食事を済ませた後、リサはカーラちゃんに任せて、テントを出て食後に休憩している騎士たちに話しかけた。
「お口に合ったかしら?」
「美味しかったです。これは聖女様の世界でよく食べるものですか?」
「たまにかな。私たちの国の伝統料理ではないけど」
和食がどんなものなのかと、調味料がないから作れないということを説明する。
ターシャちゃんなら、お醤油とかお味噌とか頑張って作ってくれそうな気もするけど、この世界で生まれているとそこまで和食へのこだわりはないのかも。
考えちゃうと食べたくなるから、止めておこう。
この時以来、私の雑談にも付き合ってくれる。もちろん護衛の邪魔になるようなことはしていないはず。
「どうして騎士になったの?」
「私は騎士の家系ですので」
今日の私の護衛はシーダ君ではなく、シーダ君がいないときに付いてくれる騎士さん、フィル君だ。
聞いてみると、護衛騎士はほとんどが貴族で、そもそも親も護衛騎士という人が多いらしい。騎士の中でもエリートだと聞いていたけど、実力だけではなく家柄も必要らしい。シーダ君も言葉遣いを特訓していると言っていたし、お仕事を考えたら納得だ。
「マサコ様はお仕事されていたんですか?」
「していたわよ。商会で働いていたの」
営業の仕事をどう説明していいのか分からないけど、大きく言えば商人でいいんじゃないかしらね。そんな細かい内容を知りたい訳でもないでしょう。
そんな雑談をしているのは、理沙がシーダ君と一緒に森の周辺の瘴気の濃さの地図を作っているからだ。
余裕をもって組み立てられている浄化の旅、お天気にも恵まれて、今のところ予定よりも早く進んでいる。それで、この時間を使って理沙も瘴気の濃さの地図を作ってみることになった。
と言ってもシーダ君のように森の中に入るのは危険なので、森の周辺だけだ。
私も理沙と一緒に森の近くまで行こうと思ったけれど、理沙に止められてしまった。警護の上でも理沙だけのほうが守りやすいと言われて、理沙がかろうじて見える距離から見守っている。走って逃げろ、と言われた時に、どう考えても私は足手まといになるので、大人しく従った。
ターシャちゃんは理沙の近くにいるけど、こちらは任務上必要なのだとターシャちゃんが押し切って、ジェン君が自分と第二騎士団が守るからと護衛騎士を説得した。
ジェン君、ターシャちゃんに振り回されているところしか見ていないのだけど、魔物と戦っているところは私たちの目には入らないからよね?
今もだけど、理沙が浄化をするときに魔物が一切現れないのは、第二騎士団が事前に討伐しているからだと聞いている。ジェン君はそこで活躍しているはずだ、きっと。
フィル君と世間話をしていると、地図を作り終え、浄化も終わらせた理沙が戻ってきた。デイジーちゃんの乗る馬に乗せてもらっている。
「理沙、そうやっていると、白馬に乗った王子様に乗せてもらってるみたいよ」
「バイクみたいなものかなと思ったけど、揺れるし、高さがちょっと怖い。でも楽しい」
颯爽と馬から飛び降りたりはもちろんできず、支えてもらってゆっくり降りてきた。馬の背中が私の目線でバイクよりはだいぶ高いから、落ちたら怪我しそう。
理沙は乗馬に興味を持ったようで、今度お城で時間が出来たら乗馬を習いたいとお願いしている。
前向きになっている理沙を見るのは嬉しい。
理沙が作った瘴気の濃さの地図と、シーダ君が作った地図は、同じようなものが出来ていた。
今回理沙がいつもより森に近いところで浄化をしたので、森の奥のほうの瘴気の変化がいつもと違うか、シーダ君が確認に行ったそうだ。
もしこれで瘴気の浄化具合に差が出るようなら、警護との兼ね合いもあるが、今後の浄化もなるべく森に近いところで行うことも考えているそうだ。
浄化の効果がどれくらいの範囲に及ぶのかは目に見えないので分からない。今現在はクインスで行っていた時の情報を頼りに場所を決めているが、それがこの国でも丁度良いのかどうかも分からない。だから、地道に調べていくしかない。
「浄化の手順書が欲しいわね」
「あれば楽ですよね。理沙さんに協力してもらってそういうものを作ろうと思っています」
聖女召喚が不要になるようにする方法はまだ分からない。だからまずは、次に呼ばれるかもしれない聖女のための手引きを作ろうと思っている。
それが当面の目標だと、ターシャちゃんが教えてくれた。
「私、なんでも協力します!」
「よろしくお願いします」
やる気を出した理沙を、護衛のみんなが温かく見守ってくれている。
この国に来てよかった。
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