巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる

戌葉

文字の大きさ
58 / 89
5章 浄化の旅編

6. 宝石

しおりを挟む
 国内だけをめぐる浄化の旅は順調に進み、お城に戻ってきた。
 移動ばかりで疲れないようにとゆったり取られた日程で、街中へ遊びに行くことは叶わないけれど、まるまるオフの日はこの国の文字を書く練習をしたり、理沙が描く絵を見たり楽しく過ごせていた。

 次の旅は国内を浄化して、そのまま国境を越えて南のベイロールへ行く。
 お城では私たちが旅にでている間に、ベイロールに持っていく荷物や人員の調整がなされていた。今回の旅は国内だったのでパーティーや食事会は全て断ったけど、次はそうもいかない。最低限ベイロールの王様主催の歓迎会には出ないといけない。

 ということで、帰ってきて早々にドレス合わせだ。王妃様とターシャちゃんのお義母さんが理沙に合うこの国の流行のドレスを仕立ててくれているので、その中からどれを持って行くか選んで、サイズの調整だ。
 この国でのお披露目会では着物をアレンジしたドレスだったけど、今度はこの国から派遣されるので、この国のドレスを着用することで仲の良さのアピールをする。

「聖女様にはこちらの色のほうが合いますね」
「でしたら宝石はこちらにしましょう」

 周りにたくさん置かれた高価な宝石に理沙の顔が引きつっている。この国の所有の宝石のうち、選りすぐりの物が並べられているので、キラキラと眩しい。
 博物館で開催された宝石に関する特別展で、どこだかの王族の持ち物だったというコレクションが展示されていたのを見たけど、あれよりすごいんじゃないかしら。あの特別展、宝石に対して会場に配置された警備員の武装が足りないって思ったのだけど、今回はこの建物そのものが警備されているからその点では安心だわ。

「この宝石ってやっぱりつけないとダメですか?」
「お気に召しませんか?」
「あんまり高価なのはちょっと……」

 理沙が出来れば高価な宝石は避けてほしいと言っているけど、傷をつけても弁償できないし、私も積極的につけたいとは思えない。私はキラキラしているガラスと見分けがつかないからガラスで十分なのだけど、王族や貴族は子どものころから見慣れていて多分分かるんでしょうね。

「マサコ様のその指輪はダイヤモンドですよね。思い出のお品ですか?」
「これは結婚指輪なんです」

 その言葉の意味が分からず優雅に首を傾げた王妃様に、ターシャちゃんが結婚指輪が何かを説明してくれた。この世界には婚約指輪や結婚指輪の習慣はないようだ。
 ずっとつけているのは、夫の形見の品というのもあるけど、外すと失くしそうだからという理由だったりする。そういうお年頃だから仕方ない。

「ではマサコ様の首元はダイヤモンドで揃えましょうか」
「でしたらドレスをもう少し華やかな色にしましょう」

 あ、やってしまったかも。私を着飾っても誰の得にもならないから、宝石はいらないと思うのよ。指輪のダイヤだって、並べられている宝石とは比べ物にならないほど申し訳程度の大きさなのに。
 思わずターシャちゃんに視線で助けを求めたのに、にっこり笑って躱されてしまった。ただの炭素ですよって、いやまあそうだけど。

 結局、私の首飾りをダイヤモンドから選ぶと豪華なものになり、聖女様はそれよりも大きなものでなければということで、それはまあゴージャスな物になってしまった。理沙、ごめんね。


 ベイロールも含めた浄化の旅へと出る前に、今日は第二王子とそのお妃様とお茶会だ。
 この国からの派遣という形なので、ベイロールに入国する前に合流して、ベイロールの王様に会うときはこの国の王子様たちも一緒に行くことになっている。

「聖女様、ベイロールには私たちもご一緒いたします。よろしくお願いいたします」
「こちらこそお願いします」

 お披露目会の時に一言交わしただけの王子様とお妃さまは、祐也と同年代に見えるけど子どもがいるそうだ。

 ベイロールでは、誰かに何かをお願いされても即答せずに、王子様を通して返事をすると言ってほしいと注意があった。
 ベイロールが何かをしてくることはおそらくないけれど、理沙の派遣を希望して断られた他の国が理沙から訪問の約束を取り付けようと画策してくる可能性がないとは言えないそうだ。
 王子様たちが一緒にいられない時もターシャちゃんはそばにいてくれるらしいので、ターシャちゃんに全部お任せしよう。

「絵がお得意だと伺いましたが、習っていらっしゃったのですか?」
「学校の授業はありましたが、ただの趣味です」

 浄化のことだけでなく、最近いろいろと挑戦させてもらったことについても聞かれているので、事前にターシャちゃんから情報は仕入れているのだろう。

 クインスで王太子との間にあったトラブルのことを心配していたけれど、王子様と話している理沙には緊張している様子もないので、机を挟んで向かい合って座るくらいの距離はもう平気なんだろう。
 ベイロールではこの国ほどいろんなことに配慮してもらえるか分からないのでちょっと心配だったけど、問題なく過ごせそうだ。

 そんなことを考えて油断していたら、私に話が飛んできた。

「マサコ殿は騎士団に料理をふるまって下さったそうですね」
「大した料理ではありませんが」
「騎士からは好評だったと聞いています。ぜひ私も食べてみたいですね」

 爽やかに笑った王子様はやっぱりイケメンだ。この世界、イケメンが多すぎじゃない?
 それともお城にいるとみんなイケメンになるのかしら。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...