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5章 浄化の旅編
8. 旅の醍醐味
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ベイロールに向けて国内を南下している。今までは国の北側にいたので、馬車の窓から見える植物も見慣れぬものが増えた。
変化するのは植物だけでなく、魔物もらしい。
「魔物はもともとそこにいる動物が瘴気で変性したものだと思われています。地域によって出現する魔物も変わります」
「ベイロールの魔物はトルゴードと異なりますね」
「ロニアはベイロールに行ったことがあるの?」
「大人になってから仕事では行きましたが、魔物に会ったことはありません」
冒険者や街と街を移動する商人にならなければ街から出ることはなく、魔物に出会うこともまずない。けれど、出会ったら逃げることと、特徴を親から言い聞かされる魔物が、国によって違うらしい。
ロニアがベイロール出身の母親から聞かされていた魔物がこの国ではあまり知られていないということには、学校に行くようになってから気づいたそうだ。家独自のルールって意外と気づかないものよね。
その話にターシャちゃんが興味を持った。
「言い伝えや寓話は風土を反映します。魔物の分布も反映されているのですね」
ターシャちゃんがなんだかワクワクしている。これはいろんな国の魔物に関する逸話を調べようと決意したのだろう。やる気に満ちている。
ターシャちゃんは瘴気調査係に任命されてからとてもイキイキとしている気がする。きっと研究者魂が疼くのでしょうね。
でもベイロールには理沙の侍女として同行するので、国境を越えれば調査もお休みらしい。むしろベイロールの現地の事情を調査したそうにしているけど、よその国で勝手はできないので世話係として一緒に行けるだけで十分らしい。
他の国に向かっているということで少し浮かれているように見える理沙とターシャちゃんと違って、私は移動の連続で腰が痛い。
「ロニア、腰は痛くない?」
「お気遣いありがとうございます。問題ありません。とても良い馬車に乗せていただいていますので、以前移動したときに比べれば天と地の差です」
「私は痛いわ」
前回の浄化の旅から、馬車から降りて時間があるときは体操をするようにしている。それを見て理沙が笑っているし、あのダンスを習った時にいなかった護衛の騎士さんたちから何をやっているんだって目で見られるけど、そんなこと気にしてはいられない。この先も長いのだから、しっかり動いて身体をほぐしておかなければ泣きを見ることになる。寝れば治る若者とは違うのだ。
ずっと座ってると足が浮腫んでしまって靴がきつくなってしまうし、エコノミー症候群の予防になるし、運動は重要よね。
「夜はマッサージをいたしましょう」
「まだ平気よ。でもそのうちお願いするわ。ロニアも無理しないで」
同年代なのに、この世界の人とは身体が違うのかしら。それとも私が運動不足なのかしらね。
そのロニアは、これから初めて理沙の浄化を見るとあって少し興奮している。
私の世話係なので、今までは浄化には付き合わずに宿泊先で準備をしてくれていたのだけど、浄化はどんな感じなのかと質問されたので、どうせなら一度見学すればいいと一緒に来たのだ。
ターシャちゃんも護衛騎士も最初は浄化の光に興奮していたけれど、最近では慣れてしまい気にせず自分の仕事を全うしているので、ロニアのその反応が新鮮だ。
そういえば最初見たときは自分もそんな感じだったわ、とクインスでの日々を思い出す。この先ベイロールでも同じような反応をされるのだろう。
「聖女様もマサコ様もベールで顔を隠されているのは何か意味があるのですか?」
「顔を覚えられて出歩けなくなるとイヤだから隠しているだけよ」
「歓迎会用のドレスのベールはそういう意味だったのですね」
高貴な人は顔を隠すこともあるのでそういう理由だと思っていたのに、会ってみると気さくで身分を気にしていない私たちに戸惑ったらしい。
最近は森の近くまで行って浄化をするので、人がいなければベールもかぶっていない。けれど今回は街道から近いところで浄化を行うので理沙も私もベールで顔を隠している。どれくらい効果があるのかは分からないけど、写真がないのだからある程度は身バレが防げるはずだ。
ロニアと話しているうちに、理沙の準備が整った。
瘴気の見える騎士のシーダ君が浄化する場所を事前に決めて布を敷き、馬車から歩くか、場合によっては馬に乗せてもらってそこまで理沙が行き、跪いて祈り、終わったら撤収。もはや流れ作業だ。
周りに護衛がいて安全とは言え、森の近くに長居することは魔物に襲われる危険度が上がるので、無駄を省いて手際よく進められる。浄化に関係ない私たちは、馬車のそばで待機だ。
理沙が祈りを捧げ、身体から光が周りへと広がっていく。
その光景に感動しているロニアの感情を置き去りに、そそくさと撤収だ。
「ロニア、帰るわよ」
「聖女様……」
横を見るとロニアが近寄ってきた理沙を拝んでいた。理沙が恥ずかしそうにしているけど、感動しているロニアは涙を流しながら理沙に向かって手を合わせて動かない。
仕方がないので行くわよ、とロニアの手を取って馬車に歩乗り込んだ。
「お疲れ様。今日のお夕食は何かしら」
「昨日のピリ辛料理美味しかったよね」
ベイロールの国境に近くなって、王都での料理とは少し違うスパイスの効いている料理が出されるようになった。
その土地の料理が楽しめるのは、旅の醍醐味よね。
変化するのは植物だけでなく、魔物もらしい。
「魔物はもともとそこにいる動物が瘴気で変性したものだと思われています。地域によって出現する魔物も変わります」
「ベイロールの魔物はトルゴードと異なりますね」
「ロニアはベイロールに行ったことがあるの?」
「大人になってから仕事では行きましたが、魔物に会ったことはありません」
冒険者や街と街を移動する商人にならなければ街から出ることはなく、魔物に出会うこともまずない。けれど、出会ったら逃げることと、特徴を親から言い聞かされる魔物が、国によって違うらしい。
ロニアがベイロール出身の母親から聞かされていた魔物がこの国ではあまり知られていないということには、学校に行くようになってから気づいたそうだ。家独自のルールって意外と気づかないものよね。
その話にターシャちゃんが興味を持った。
「言い伝えや寓話は風土を反映します。魔物の分布も反映されているのですね」
ターシャちゃんがなんだかワクワクしている。これはいろんな国の魔物に関する逸話を調べようと決意したのだろう。やる気に満ちている。
ターシャちゃんは瘴気調査係に任命されてからとてもイキイキとしている気がする。きっと研究者魂が疼くのでしょうね。
でもベイロールには理沙の侍女として同行するので、国境を越えれば調査もお休みらしい。むしろベイロールの現地の事情を調査したそうにしているけど、よその国で勝手はできないので世話係として一緒に行けるだけで十分らしい。
他の国に向かっているということで少し浮かれているように見える理沙とターシャちゃんと違って、私は移動の連続で腰が痛い。
「ロニア、腰は痛くない?」
「お気遣いありがとうございます。問題ありません。とても良い馬車に乗せていただいていますので、以前移動したときに比べれば天と地の差です」
「私は痛いわ」
前回の浄化の旅から、馬車から降りて時間があるときは体操をするようにしている。それを見て理沙が笑っているし、あのダンスを習った時にいなかった護衛の騎士さんたちから何をやっているんだって目で見られるけど、そんなこと気にしてはいられない。この先も長いのだから、しっかり動いて身体をほぐしておかなければ泣きを見ることになる。寝れば治る若者とは違うのだ。
ずっと座ってると足が浮腫んでしまって靴がきつくなってしまうし、エコノミー症候群の予防になるし、運動は重要よね。
「夜はマッサージをいたしましょう」
「まだ平気よ。でもそのうちお願いするわ。ロニアも無理しないで」
同年代なのに、この世界の人とは身体が違うのかしら。それとも私が運動不足なのかしらね。
そのロニアは、これから初めて理沙の浄化を見るとあって少し興奮している。
私の世話係なので、今までは浄化には付き合わずに宿泊先で準備をしてくれていたのだけど、浄化はどんな感じなのかと質問されたので、どうせなら一度見学すればいいと一緒に来たのだ。
ターシャちゃんも護衛騎士も最初は浄化の光に興奮していたけれど、最近では慣れてしまい気にせず自分の仕事を全うしているので、ロニアのその反応が新鮮だ。
そういえば最初見たときは自分もそんな感じだったわ、とクインスでの日々を思い出す。この先ベイロールでも同じような反応をされるのだろう。
「聖女様もマサコ様もベールで顔を隠されているのは何か意味があるのですか?」
「顔を覚えられて出歩けなくなるとイヤだから隠しているだけよ」
「歓迎会用のドレスのベールはそういう意味だったのですね」
高貴な人は顔を隠すこともあるのでそういう理由だと思っていたのに、会ってみると気さくで身分を気にしていない私たちに戸惑ったらしい。
最近は森の近くまで行って浄化をするので、人がいなければベールもかぶっていない。けれど今回は街道から近いところで浄化を行うので理沙も私もベールで顔を隠している。どれくらい効果があるのかは分からないけど、写真がないのだからある程度は身バレが防げるはずだ。
ロニアと話しているうちに、理沙の準備が整った。
瘴気の見える騎士のシーダ君が浄化する場所を事前に決めて布を敷き、馬車から歩くか、場合によっては馬に乗せてもらってそこまで理沙が行き、跪いて祈り、終わったら撤収。もはや流れ作業だ。
周りに護衛がいて安全とは言え、森の近くに長居することは魔物に襲われる危険度が上がるので、無駄を省いて手際よく進められる。浄化に関係ない私たちは、馬車のそばで待機だ。
理沙が祈りを捧げ、身体から光が周りへと広がっていく。
その光景に感動しているロニアの感情を置き去りに、そそくさと撤収だ。
「ロニア、帰るわよ」
「聖女様……」
横を見るとロニアが近寄ってきた理沙を拝んでいた。理沙が恥ずかしそうにしているけど、感動しているロニアは涙を流しながら理沙に向かって手を合わせて動かない。
仕方がないので行くわよ、とロニアの手を取って馬車に歩乗り込んだ。
「お疲れ様。今日のお夕食は何かしら」
「昨日のピリ辛料理美味しかったよね」
ベイロールの国境に近くなって、王都での料理とは少し違うスパイスの効いている料理が出されるようになった。
その土地の料理が楽しめるのは、旅の醍醐味よね。
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