巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる

戌葉

文字の大きさ
61 / 89
6章 ベイロール編

1. 入国

しおりを挟む
 ベイロール王国との国境の手前の街で、王子様たちと合流した。これから一緒にベイロール王国へ行く。
 ベイロールでは、まず王都のお城に行って王様と会って歓迎会に出て、それからベイロール国内の浄化を行う。王子様たちは歓迎会の後は別行動で、先にトルゴードへ戻るそうだ。

 王子様と合流したので、馬車の周りを取り囲む騎士が大軍団になっている。
 王子様の護衛騎士、理沙の護衛騎士、理沙が浄化する場所の安全を確保するために魔物を討伐する第二騎士団。
 そのうちベイロールに行くのは王子様と理沙の護衛騎士だ。
 国境で、第二騎士団の役割は、ベイロールの騎士団へと引き継がれた。

「トルゴード王国第二王子のソトゥースクです。聖女様をお連れしました」
「ベイロール王国王太子のゼルバです。聖女様のお越しに心より感謝申し上げます」

 この王太子、お披露目パーティーで見た気がするわ。
 アラフォーくらいのどっしりとした感じの人だ。線の細い王族が多い中、軍人っぽい感じの人だったので、印象が強くて記憶に残っている。

 二色の騎士に囲まれて、ベイロールの街道を進んで行く。
 ベイロールの護衛騎士たちの制服は真っ赤で視界が賑やかだ。トルゴードの護衛騎士の制服が紺色なので、どちらの騎士なのかがはっきり分かる。
 聖女が来ると知れ渡っているようで、移動中の馬車は全て街道脇に止めて私たちの馬車を優先で通してくれるので、移動は順調に進んだ。


 ベイロールの王城は、トルゴードと比べて装飾が多く華やかだ。トルゴードはどちらかというと無駄のない直線的なイメージだが、ベイロールは彫刻や像が多用されている。
 今日は到着したばかりなので、まずはゆっくりしてくださいと貴賓室に案内された。内装もなかなか賑やかだ。

「ベイロールは、なんというか派手な感じ?」
「そうですね。気質も陽気です」

 ターシャちゃんによると、ベイロールはラテンのイメージらしい。騎士服が派手なのもその影響かしらね。

 翌日、この国の王様が挨拶に訪ねてきた。
 会話はトルゴードの王子様がしてくれるので、最初の挨拶以外、理沙も私も話をしなくていいことになっている。

「はじめまして。リサです。母のマサコです」
「ようこそお越しくださいました。浄化を行っていただけるとのこと、誠に有難く存じます」

 今日の夜には歓迎パーティーが開かれて、私たちも出席することになっている。
 ベイロールが国を挙げて歓迎しているというのをアピールするためだそうで、国内の貴族がほとんど出席する大掛かりなものらしい。
 理沙は気が向かなければ、誰にも話しかける必要はないそうなので、気楽に出席すればいいと言われている。
 そのパーティーでエスコートをするからと、この国の王子様を紹介された。昨日の王子様とは違う王子様だ。

「紹介します。第八王子のマートルです。聖女様と年齢も近いので、王城に滞在中はマートルがご案内いたします」
「お美しい聖女様、御目にかかれて光栄です。滞在中はおもてなしさせていただきますので、なんでもご希望をおっしゃってください」

 第八王子は20代前半くらいのアイドルにいそうな中性的でつるっとした感じの男の子だ。
 ああ、これで理沙が彼に靡いてくれればベイロールとしては願ったり叶ったりの展開になるから、そのための接待係ね。これもハニートラップというのかしら。でも理沙はそんな手には引っかからないだろう。
 そう思って理沙を見ると、王子様を見て頬を染めている。その反応は初めて見るけど、もしかして理沙のタイプなのだろうか。

 王様たちが部屋を出てから理沙に聞いてみた。

「理沙、あの王子様、もしかしてタイプ?」
「え?そんなことないよ」

 そういいながらも、どこかウキウキしている感じがする。
 これはもしかしてもしかするのかしら。

「ターシャちゃん、あの王子様を調べておいてもらうことってできるかしら」
「もちろんです。性格と恋愛遍歴の調査でいいでしょうか」
「そうね。王子様だから借金はなさそうだし。この世界はギャンブルはあるのかしら」
「公営ギャンプルはありませんが、金銭面も調べておきます」

 理沙の目に入らないところで、ターシャちゃんにこっそりお願いした。
 無駄になればいいのだけど、後から実は結婚していましたみたいなことになると、理沙はショックを受けるだろう。
 この世界の常識と私たちの常識にずれがあるから、隠す意図もなく知らされないこともあるかもしれない。
 もともと近隣諸国の王族のことは大体把握しているものだけど、王位継承順位が低いので詳しいことまでは把握していない相手らしい。
 トルゴードも理沙がベイロールにとどまることを諸手を挙げて賛成はしないだろうから、ちゃんと調べてくれるだろう。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

オマケなのに溺愛されてます

浅葱
恋愛
聖女召喚に巻き込まれ、異世界トリップしてしまった平凡OLが 異世界にて一目惚れされたり、溺愛されるお話

異世界召喚のおばあちゃん

あまつ冴
ファンタジー
異世界から召喚された中におばあちゃんがいた

処理中です...