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6章 ベイロール編
2. 歓迎パーティー
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ベイロール王国での歓迎パーティーだ。
理沙はベイロール側のエスコートは断ったので、トルゴードの王子様と一緒に、私は王子妃のお嬢さんとターシャちゃんと一緒に入場することになっている。
パーティー会場である大広間の扉の前にスタンバイして、王様の紹介後に扉が開けられるのを待っている。
「緊張する」
「大丈夫よ、理沙。今日も可愛いわ」
「お母さんは両手に花でいいよね。代わってよ」
「私が入っていったらブーイングが出るわよ」
今日の理沙のドレスは、トルゴードで現在流行しているシンプルだけどアンシンメトリーで凝ったデザインだ。色は理沙に似合う色を探すために布を当てて確認して、光沢のあるピンクっぽいゴールドだ。
トルゴードの威信がかかっているだけあって、髪飾りから靴まで超高級品らしい。今日も顔の上半分はベールで隠されているが、そのベールにも花だけでなく小さな宝石がついている。
気合い入れすぎじゃないかしら。
私もポッコリお腹を隠すようなデザインの豪華なドレスだけど、今日は何より宝石が重たい。メインの宝石だけじゃなくて周りにもたくさんの宝石がちりばめられているので首飾りがとにかく重い。当たり前のことなんだけど、宝石って石だから大きいものは重い。そんなこと今まで知らなかったし、一生知る機会がなくてもよかったのに。
ダイヤモンドに傷はつかないのかもしれないけど、台座の金具に傷がついたらどうしようと思うと、なんとなく動きがゆっくりになってしまう。そろりそろりと動いている私を見て、ターシャちゃんにぎっくり腰になったのかと心配されたくらいだ。
「ターシャちゃん、これ時価いくらだと思う?」
「オークションでダイヤの最高落札額は50億円を超えていたように記憶しています。そこまではいかないでしょうから安心してください」
「全く安心できない情報ね」
私よりもさらに豪華な宝石を付けた理沙の顔が引きつっている。億なんて、普通に生活していたらお目にかからない。
ただでさえ初めての国でのパーティーに緊張しているのに、宝石が追い打ちをかけてくるなんて。
でも、私が不安な顔しちゃダメね。
「理沙、両手を腰にあてて、高笑いしなさい。あははっ」
「お母さん?どうしたの?」
「いいからやりなさい。ははっ、人がゴミのようだ、あはははっ」
戸惑いながらも理沙は私の真似をして、いかにも悪役がやりそうな高笑いの真似をしている。
「感情が姿勢に現れるのとは逆に、姿勢が感情に影響すると言われているものですね」
「そうそう。緊張した時は、わざとそうじゃないふりをすると良いってテレビで見たの」
さすがターシャちゃん、知っているのね。
仕事でお客さんとの会議の前とかによくやっていた。効果があるのかはいまだに分からないけど、気は心って言うし。
そんな話で気を紛らわしていたら、扉を開ける係の人から開けますと声をかけられた。
不審者を見るような目で見られている気がするのは被害妄想だと思おう。気にしたら負けだ。
気持ちを切り替えて顔を上げる。
背筋を伸ばして、自信をもって、不安な顔をしてはいけない。大丈夫。堂々としていれば、他人はある程度信用してくれる。
「聖女様、私たちに全てお任せください。さあ、行きましょう」
王子様がフォローしてくれて、震える理沙の手を取って、会場へと足を踏み出した。
パーティー会場を埋め尽くすほど人がいる。密だわ。
ベールがなんとなく外の世界と私の世界を分け隔ててくれるようで、この薄い布1枚でもあってよかった。
足が震えそうになるけど、あれはじゃがいもと人参と玉ねぎだと自分に言い聞かせる。私でも緊張するんだから、理沙はきっと逃げ出したいくらいに緊張しているに違いない。
何もしてあげられないけど、後ろから頑張れと念を送る。
「ベイロールにお越しいただきまして誠にありがとうございます。国を挙げて歓迎いたします」
「……ありがとうございます」
理沙の今日のノルマは王様の挨拶に答えるこの一言なので、無事に終わった。後は全部王子様がやってくれるから、お任せしていればいい。
さりげなくお妃様が理沙の横へと移動して、王子様とお妃様が理沙を挟んで盾になってくれている。理沙への挨拶も全てふたりが代わりに答えてくれて、理沙がしゃべる必要はない。
子どものころから鍛えられている人はさすがね。場馴れしていて、堂々としている。
結局理沙は一言もしゃべらないまま一通りの挨拶が終わった。
そこに、今朝挨拶に来た第八王子が近寄ってきた。
「聖女様、今日のドレスもとてもお似合いですね。聖女様の輝きでドレスも宝石もより一層華やぎますね」
「ありがとうございます」
理沙がはにかみながら第八王子を見た。その目がちょっとハートになっているような気がするのは気のせいだろうか。
理沙のその様子に、トルゴードの王子様とお妃様も口を出さずに見守っている。
「聖女様、よろしければ一曲踊っていただけませんか?」
「えっと、踊りは、その……」
「聖女様は移動でお疲れですので」
お妃様がやんわりと断ってくれたけど、理沙がはっきり断らなかったということは踊りたかったのかな。
これはひょっとしてひょっとしそう。
理沙はベイロール側のエスコートは断ったので、トルゴードの王子様と一緒に、私は王子妃のお嬢さんとターシャちゃんと一緒に入場することになっている。
パーティー会場である大広間の扉の前にスタンバイして、王様の紹介後に扉が開けられるのを待っている。
「緊張する」
「大丈夫よ、理沙。今日も可愛いわ」
「お母さんは両手に花でいいよね。代わってよ」
「私が入っていったらブーイングが出るわよ」
今日の理沙のドレスは、トルゴードで現在流行しているシンプルだけどアンシンメトリーで凝ったデザインだ。色は理沙に似合う色を探すために布を当てて確認して、光沢のあるピンクっぽいゴールドだ。
トルゴードの威信がかかっているだけあって、髪飾りから靴まで超高級品らしい。今日も顔の上半分はベールで隠されているが、そのベールにも花だけでなく小さな宝石がついている。
気合い入れすぎじゃないかしら。
私もポッコリお腹を隠すようなデザインの豪華なドレスだけど、今日は何より宝石が重たい。メインの宝石だけじゃなくて周りにもたくさんの宝石がちりばめられているので首飾りがとにかく重い。当たり前のことなんだけど、宝石って石だから大きいものは重い。そんなこと今まで知らなかったし、一生知る機会がなくてもよかったのに。
ダイヤモンドに傷はつかないのかもしれないけど、台座の金具に傷がついたらどうしようと思うと、なんとなく動きがゆっくりになってしまう。そろりそろりと動いている私を見て、ターシャちゃんにぎっくり腰になったのかと心配されたくらいだ。
「ターシャちゃん、これ時価いくらだと思う?」
「オークションでダイヤの最高落札額は50億円を超えていたように記憶しています。そこまではいかないでしょうから安心してください」
「全く安心できない情報ね」
私よりもさらに豪華な宝石を付けた理沙の顔が引きつっている。億なんて、普通に生活していたらお目にかからない。
ただでさえ初めての国でのパーティーに緊張しているのに、宝石が追い打ちをかけてくるなんて。
でも、私が不安な顔しちゃダメね。
「理沙、両手を腰にあてて、高笑いしなさい。あははっ」
「お母さん?どうしたの?」
「いいからやりなさい。ははっ、人がゴミのようだ、あはははっ」
戸惑いながらも理沙は私の真似をして、いかにも悪役がやりそうな高笑いの真似をしている。
「感情が姿勢に現れるのとは逆に、姿勢が感情に影響すると言われているものですね」
「そうそう。緊張した時は、わざとそうじゃないふりをすると良いってテレビで見たの」
さすがターシャちゃん、知っているのね。
仕事でお客さんとの会議の前とかによくやっていた。効果があるのかはいまだに分からないけど、気は心って言うし。
そんな話で気を紛らわしていたら、扉を開ける係の人から開けますと声をかけられた。
不審者を見るような目で見られている気がするのは被害妄想だと思おう。気にしたら負けだ。
気持ちを切り替えて顔を上げる。
背筋を伸ばして、自信をもって、不安な顔をしてはいけない。大丈夫。堂々としていれば、他人はある程度信用してくれる。
「聖女様、私たちに全てお任せください。さあ、行きましょう」
王子様がフォローしてくれて、震える理沙の手を取って、会場へと足を踏み出した。
パーティー会場を埋め尽くすほど人がいる。密だわ。
ベールがなんとなく外の世界と私の世界を分け隔ててくれるようで、この薄い布1枚でもあってよかった。
足が震えそうになるけど、あれはじゃがいもと人参と玉ねぎだと自分に言い聞かせる。私でも緊張するんだから、理沙はきっと逃げ出したいくらいに緊張しているに違いない。
何もしてあげられないけど、後ろから頑張れと念を送る。
「ベイロールにお越しいただきまして誠にありがとうございます。国を挙げて歓迎いたします」
「……ありがとうございます」
理沙の今日のノルマは王様の挨拶に答えるこの一言なので、無事に終わった。後は全部王子様がやってくれるから、お任せしていればいい。
さりげなくお妃様が理沙の横へと移動して、王子様とお妃様が理沙を挟んで盾になってくれている。理沙への挨拶も全てふたりが代わりに答えてくれて、理沙がしゃべる必要はない。
子どものころから鍛えられている人はさすがね。場馴れしていて、堂々としている。
結局理沙は一言もしゃべらないまま一通りの挨拶が終わった。
そこに、今朝挨拶に来た第八王子が近寄ってきた。
「聖女様、今日のドレスもとてもお似合いですね。聖女様の輝きでドレスも宝石もより一層華やぎますね」
「ありがとうございます」
理沙がはにかみながら第八王子を見た。その目がちょっとハートになっているような気がするのは気のせいだろうか。
理沙のその様子に、トルゴードの王子様とお妃様も口を出さずに見守っている。
「聖女様、よろしければ一曲踊っていただけませんか?」
「えっと、踊りは、その……」
「聖女様は移動でお疲れですので」
お妃様がやんわりと断ってくれたけど、理沙がはっきり断らなかったということは踊りたかったのかな。
これはひょっとしてひょっとしそう。
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