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7章 クインス再訪編
9. 塞翁が馬
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今日はレイ君とフィル君とデートだ。
こういう場合も両手に花でいいのかしら。
理沙は浄化がお休みなので、部屋でローズとのんびりしている。昨日の長時間の馬での移動で筋肉痛なのだ。
筋肉痛が翌日に出るなんて若いわ。そして一日眠れば治るなんてもっと若いわ。うらやましい。
「レイ君、そういう格好のほうが馴染みがあっていいわ」
「マサコさんも懐かしいですね」
トルゴードで会ったときは王子様な貴族のレイ君だったし、クインスに戻って来てからは騎士服のレイ君だったので、お忍びのレイ君は久しぶりだ。
どんな格好をしていてもイケメンは隠せないけど、お忍びだとほんのちょっとキラキラ感が薄まる。
でもフィル君と二人並ぶと、2倍どころか掛け算されて、キラッキラのピッカピカだ。どう考えても目立ってる。この2人をお供にするって人選ミスでしょう。
どんなに私が街の普通のおばちゃんになっても、むしろ普通のおばちゃんだからこそ、どうして2人を連れているのかが謎で、余計に目立ってしまっている気がする。
「よおマーちゃん、久しぶりだな」
「えーっと、誰だっけ」
「おいおい、こんなカッコいい俺のこと忘れたのかよ」
冒険者ギルド内には冒険者がたくさんいる。この時間にここにいるってことは、今日は依頼を受けずにここで仲間たちと飲んでいるのだろう。
ギルドに入るなり話しかけてくれた冒険者にはなんとなく見覚えがあるけど、冒険者って同じような格好をしているから見分けがつかない。みどり君みたいに、特徴があると覚えられるのだけど。
彼が「マーちゃんがいるぞ」と冒険者たちに呼びかけると、覚えのある冒険者が何人か寄ってきてくれた。
「マーちゃん、どこ行ってたんだ?」
「護衛が増えてるな」
「宿を始めたんじゃなかったのか?」
口々に話しかけられた。
冒険者たちには宿を始めるから冒険者をやめると知らせたけど、その宿がどこかまでは言っていない。
「なあ、そういえば、マーちゃんが聖女様の乳母だって噂があるけど、ホントか?」
「ああ、あの噂な。んな訳ないだろう。そんな高貴な人が冒険者なんかやるかよ」
「それにマーちゃんと聖女様って全く結びつかないだろ」
だよなーって貴方たち、ちょっと失礼じゃない?
私が何も話さないうちに噂の話が出て、そして否定された。それ事実なんだけど。
レイ君はポーカーフェースだけど、フィル君はちょっとだけ笑ってる。
「で、どうしたんだ?」
「クインスでみどり君に会ったの。だから誰かに会えるかなと思って来てみたんだけど、みんな移動するのね」
「ああ、俺たちは魔物を求めてこっちに来たんだ。キールみたいにトルゴードにいった奴もいるぞ」
「聖女様が浄化して、魔物が少なくなったから、冒険者は魔物が多いところに移動してんだよ」
ああ、そういえば前にそんな話をしていた。
「じゃあお仕事少なくなっちゃった?」
「その分商人の移動が増えたから、護衛の仕事も多くなってる。俺たちは魔物とやり合う方が性に合ってるけどな」
仕事がなくなったんじゃなくてよかったわ。
冒険者って転職が難しそうだし、どちらかというと冒険者が受け皿になっているような気もするから、ちょっと心配だったのよ。
「マーちゃんは元気だったのか?今何してるんだ?」
「今は旅の途中よ。もう冒険者はやってないの」
私の今の職業って何になるのかしら。やっぱり無職になるのかしら。でもトルゴードの聞き取り調査に協力しているから、なんとかアドバイザーとか?
考えても思いつかなかったので、とりあえず現状を説明してみたけど、納得してくれたようだ。
「他の人たちにもよろしく伝えて。みんなのお陰で無事に薬草採取が出来たわ。ありがとう」
「伝えとく。護衛も増えてんだし、大人しくしておけよ」
「みんなも気を付けてね。魔物が少なくなったっていっても、危険には変わりないんだから」
「あんたは俺のかーちゃんかよ。最初に会ったときも言ってたよな。まあ気を付けるよ」
休日を邪魔してもいけないので、言いたいことは伝えてギルドから引き上げた。
「ところでレイ君、パーム君は今どうしてるの?」
「北の森の部隊に所属しています」
「理沙と会うことはないよね?」
「ありません。聖女様がこちらにいらっしゃる間は王都にいます」
そこは気を遣ってくれたようだ。よかった。
逆恨みされていて、理沙に何かをされたらと思ったけど、王都にいるなら安心だ。
「レイ君には謝らないといけないと思ってたの」
「何にでしょう」
「冒険者につき合わせたこと。危険だって言ってくれたのに、あの頃はちょっと意固地になっていたのよ」
あの状況ですから、とレイ君が言葉を濁したけど、クインスの王様たちと対立していたのもあったから、レイ君も複雑だったでしょうね。
レイ君自身も政争に巻き込まれて私の護衛を押し付けられていたみたいだし。
「それにパーム君には、まあ感謝してないこともないわ」
「パームにですか……?」
「おかげで宿が開けたわけだし」
それはもちろん危険な目に合わないほうがよかったし、それを理沙に知られたのはかなり不味かったけど、あれがなければ宿は開けなかったから、ターシャちゃんが訪ねてきてくれることもなかった。
人生、何がどう転ぶか分からないものよね。
こういう場合も両手に花でいいのかしら。
理沙は浄化がお休みなので、部屋でローズとのんびりしている。昨日の長時間の馬での移動で筋肉痛なのだ。
筋肉痛が翌日に出るなんて若いわ。そして一日眠れば治るなんてもっと若いわ。うらやましい。
「レイ君、そういう格好のほうが馴染みがあっていいわ」
「マサコさんも懐かしいですね」
トルゴードで会ったときは王子様な貴族のレイ君だったし、クインスに戻って来てからは騎士服のレイ君だったので、お忍びのレイ君は久しぶりだ。
どんな格好をしていてもイケメンは隠せないけど、お忍びだとほんのちょっとキラキラ感が薄まる。
でもフィル君と二人並ぶと、2倍どころか掛け算されて、キラッキラのピッカピカだ。どう考えても目立ってる。この2人をお供にするって人選ミスでしょう。
どんなに私が街の普通のおばちゃんになっても、むしろ普通のおばちゃんだからこそ、どうして2人を連れているのかが謎で、余計に目立ってしまっている気がする。
「よおマーちゃん、久しぶりだな」
「えーっと、誰だっけ」
「おいおい、こんなカッコいい俺のこと忘れたのかよ」
冒険者ギルド内には冒険者がたくさんいる。この時間にここにいるってことは、今日は依頼を受けずにここで仲間たちと飲んでいるのだろう。
ギルドに入るなり話しかけてくれた冒険者にはなんとなく見覚えがあるけど、冒険者って同じような格好をしているから見分けがつかない。みどり君みたいに、特徴があると覚えられるのだけど。
彼が「マーちゃんがいるぞ」と冒険者たちに呼びかけると、覚えのある冒険者が何人か寄ってきてくれた。
「マーちゃん、どこ行ってたんだ?」
「護衛が増えてるな」
「宿を始めたんじゃなかったのか?」
口々に話しかけられた。
冒険者たちには宿を始めるから冒険者をやめると知らせたけど、その宿がどこかまでは言っていない。
「なあ、そういえば、マーちゃんが聖女様の乳母だって噂があるけど、ホントか?」
「ああ、あの噂な。んな訳ないだろう。そんな高貴な人が冒険者なんかやるかよ」
「それにマーちゃんと聖女様って全く結びつかないだろ」
だよなーって貴方たち、ちょっと失礼じゃない?
私が何も話さないうちに噂の話が出て、そして否定された。それ事実なんだけど。
レイ君はポーカーフェースだけど、フィル君はちょっとだけ笑ってる。
「で、どうしたんだ?」
「クインスでみどり君に会ったの。だから誰かに会えるかなと思って来てみたんだけど、みんな移動するのね」
「ああ、俺たちは魔物を求めてこっちに来たんだ。キールみたいにトルゴードにいった奴もいるぞ」
「聖女様が浄化して、魔物が少なくなったから、冒険者は魔物が多いところに移動してんだよ」
ああ、そういえば前にそんな話をしていた。
「じゃあお仕事少なくなっちゃった?」
「その分商人の移動が増えたから、護衛の仕事も多くなってる。俺たちは魔物とやり合う方が性に合ってるけどな」
仕事がなくなったんじゃなくてよかったわ。
冒険者って転職が難しそうだし、どちらかというと冒険者が受け皿になっているような気もするから、ちょっと心配だったのよ。
「マーちゃんは元気だったのか?今何してるんだ?」
「今は旅の途中よ。もう冒険者はやってないの」
私の今の職業って何になるのかしら。やっぱり無職になるのかしら。でもトルゴードの聞き取り調査に協力しているから、なんとかアドバイザーとか?
考えても思いつかなかったので、とりあえず現状を説明してみたけど、納得してくれたようだ。
「他の人たちにもよろしく伝えて。みんなのお陰で無事に薬草採取が出来たわ。ありがとう」
「伝えとく。護衛も増えてんだし、大人しくしておけよ」
「みんなも気を付けてね。魔物が少なくなったっていっても、危険には変わりないんだから」
「あんたは俺のかーちゃんかよ。最初に会ったときも言ってたよな。まあ気を付けるよ」
休日を邪魔してもいけないので、言いたいことは伝えてギルドから引き上げた。
「ところでレイ君、パーム君は今どうしてるの?」
「北の森の部隊に所属しています」
「理沙と会うことはないよね?」
「ありません。聖女様がこちらにいらっしゃる間は王都にいます」
そこは気を遣ってくれたようだ。よかった。
逆恨みされていて、理沙に何かをされたらと思ったけど、王都にいるなら安心だ。
「レイ君には謝らないといけないと思ってたの」
「何にでしょう」
「冒険者につき合わせたこと。危険だって言ってくれたのに、あの頃はちょっと意固地になっていたのよ」
あの状況ですから、とレイ君が言葉を濁したけど、クインスの王様たちと対立していたのもあったから、レイ君も複雑だったでしょうね。
レイ君自身も政争に巻き込まれて私の護衛を押し付けられていたみたいだし。
「それにパーム君には、まあ感謝してないこともないわ」
「パームにですか……?」
「おかげで宿が開けたわけだし」
それはもちろん危険な目に合わないほうがよかったし、それを理沙に知られたのはかなり不味かったけど、あれがなければ宿は開けなかったから、ターシャちゃんが訪ねてきてくれることもなかった。
人生、何がどう転ぶか分からないものよね。
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