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学園編
19. お楽しみの後はお仕事
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キュラゾの街では、冒険者の訓練以上に、おじちゃんシェフと料理長さんの魚料理談議が盛り上がった。
二日目の夕食は、他の宿泊者も巻き込んでの魚料理尽くしだった。オレが気に入ったおじちゃんシェフの魚料理を全部作って見せてほしいという料理長の要望で、大量の魚料理が出来上がった。それを、宿泊客に振る舞ったのだ。突然の魚祭りに、宿泊客は大喜びで、平らげていたよ。オレもたくさんの魚料理を食べることができて大満足。これで、お屋敷でもおじちゃんシェフ直伝の美味しいお魚料理が食べられるね。
「氷の騎士様、狐くん、いつでも泊まりに来てくださいね」
『キャン』
「また来る」
学園が落ち着いたら、長期休暇は旅行って決めて、美味しいものを食べに行きたい。お魚も食べたいし、美食の街ガストーに行かなきゃいけないし、スフラルの屋台で冒険者たちとチョモ祭りもしたい。毎年一か所ずつ選んで、行くことにしようかな。
キュラゾを出た後は、オレの要望で、湖のそばのお刺身を出してくれる宿で三泊した。
料理長さんたちはおそるおそる食べていたけど、ウィオは食べなかった。前回でもう十分ということらしい。それでもオレに付き合って、三泊もしてくれるんだから、優しい飼い主だ。だから、料理長さんにカルパッチョの作り方を伝えて、ウィオのために作ってもらったけど、あまり好みではなかったらしい。生で食べるということへの抵抗が強いんだろう。冷蔵技術の発達していないこの世界では、仕方がない。
「面白い食べ方をするねえ。うちでも真似してみていいかな?」
『キャン!』
「いいそうだ」
どうせ新鮮なお魚が手に入るところでしかできない料理だ。それに、美味しいものはみんなで食べたい。そこから、もっと美味しいものが新たに作られたら、オレにも食べさせてほしい。次に来るときに新しい料理が誕生しているんじゃないかと、楽しみができたぞ。
魚を食べまくったオレは、まだまだ食べたいと未練を残しながらも、ウィオと不思議な植物がたくさん生えている山へと向かう。たくさん美味しいものを食べたら、お仕事しないとね。料理長さんとは別れて、帰りに合流する予定だ。
前回来たときは、山の南側のアチェーリとタイロンから山に入ったけど、今回は北側オルデキアからのアプローチだ。オルデキア側は崖のように切り立っているため、山へ入る道がない。この不思議な山の全容が解明されておらず、道なき道を進んでいく冒険者はいない。
この山は推定神様の実験場で、謎進化をとげた植物が生えていたり、魔物と動物の交配種もいたりと、他のところでは見ない動植物がたくさんある。危険度は高くないけれど、見慣れないものが多いため、みな恐れて山に入らないのだ。冒険者だって、お宝が見つかるとある程度分かっていなければ、わざわざ危険を冒さない。
情報収集のために、まずは地元の薬師ギルドに立ち寄る。
「氷の騎士様、王都の薬師ギルドより連絡を受けています。ご協力ありがとうございます」
「あの山の情報を、知る限り教えてほしいのですが」
「何種類か薬草が採れることは知られていますが、あまり詳しい情報はありません。こちらが今回の季節熱に必要な薬草です。どのあたりに生えているかは、分かっていません」
オレが鼻で探すからと、わざわざ実物を用意してくれていた。山での情報がないということは、これは別のところで採れた薬草だろう。あの山で同じような植物を見つけても、本当に同じなのかは分からないから、まずは少し採って持ってくるほうがいい気がする。同じ果物なのにすごく大きかったり、色が全く違ったりするから、同じ香りの薬草でも全く違うものになっている可能性だってある。
「見つけた薬草を一度持ってきた場合、薬に使えるか確認してもらえますか?」
「もちろんです。いつでもいらしてください」
持ってきたらすぐに試しに作ってくれることになった。張り切って探そう。
薬師ギルドに聞いたけもの道から、山へと入る。奥までは続いていないらしいけど、オレたちには関係ない。オレがいれば道に迷うことはないし、崖はウィオが氷の階段を作って登っていく。
道がなくなって、しばらく進んだところから、探索開始だ。
「この草を探してくれ」
『ラジャ』
ふんふん、ふんふん。どこかなー。
多くの草が枯れ始めているから、見つけやすいかと思ったけど、実がなっている木が多く、その香りが強くてよく分からない。これは歩き回って探すしかなさそうだ。ふんふん。おや?
『ねえ、幻の果物の香りがする』
「レリアの実が採れるのは春だろう?」
『でもするよ。こっち』
「ルジェ、今回は遊びじゃないんだ」
そうなんだけど、分かっているけど、幻の果物は見逃せないでしょう? 季節は違うけど、記憶と同じ香りがするのだ。
幻の果物というのは、マトゥオーソのガストーの街近くの森で春に採れる、とっても甘くて美味しい果物だ。皮が薄く、果肉が柔らかいので、触っただけで傷んでしまうから、持ち運びにも気を使う。なかなか見つからないから幻なんだけど、オレの鼻にかかれば、パパッと見つかる。
くんくん、見つけた! こっちこっち。これだよ。見た目がとんでもないけど、でも幻の果物だよ。採って。
「これは、食べられるのか……?」
『試してみようよ!』
ウィオがいやいやながらも一つもぎって、目の前で見せてくれた。
外側が黒くてごつごつしていて堅そうで、あまり美味しそうには見えない。皮が厚いのかな。そして何より大きい。
半分に割ってもらうと、とたんに甘い香りが広がる。中にはトロリとした果肉と、大きな種。幻の果物を大きくして、外側にごつい皮がついているような見た目だ。香りも同じでとっても甘そう。
『食べていい?』
「……お腹を壊すなよ?」
『壊さないって!』
オレは神獣だよ? たとえ毒が入ってたって、平気だから。
二日目の夕食は、他の宿泊者も巻き込んでの魚料理尽くしだった。オレが気に入ったおじちゃんシェフの魚料理を全部作って見せてほしいという料理長の要望で、大量の魚料理が出来上がった。それを、宿泊客に振る舞ったのだ。突然の魚祭りに、宿泊客は大喜びで、平らげていたよ。オレもたくさんの魚料理を食べることができて大満足。これで、お屋敷でもおじちゃんシェフ直伝の美味しいお魚料理が食べられるね。
「氷の騎士様、狐くん、いつでも泊まりに来てくださいね」
『キャン』
「また来る」
学園が落ち着いたら、長期休暇は旅行って決めて、美味しいものを食べに行きたい。お魚も食べたいし、美食の街ガストーに行かなきゃいけないし、スフラルの屋台で冒険者たちとチョモ祭りもしたい。毎年一か所ずつ選んで、行くことにしようかな。
キュラゾを出た後は、オレの要望で、湖のそばのお刺身を出してくれる宿で三泊した。
料理長さんたちはおそるおそる食べていたけど、ウィオは食べなかった。前回でもう十分ということらしい。それでもオレに付き合って、三泊もしてくれるんだから、優しい飼い主だ。だから、料理長さんにカルパッチョの作り方を伝えて、ウィオのために作ってもらったけど、あまり好みではなかったらしい。生で食べるということへの抵抗が強いんだろう。冷蔵技術の発達していないこの世界では、仕方がない。
「面白い食べ方をするねえ。うちでも真似してみていいかな?」
『キャン!』
「いいそうだ」
どうせ新鮮なお魚が手に入るところでしかできない料理だ。それに、美味しいものはみんなで食べたい。そこから、もっと美味しいものが新たに作られたら、オレにも食べさせてほしい。次に来るときに新しい料理が誕生しているんじゃないかと、楽しみができたぞ。
魚を食べまくったオレは、まだまだ食べたいと未練を残しながらも、ウィオと不思議な植物がたくさん生えている山へと向かう。たくさん美味しいものを食べたら、お仕事しないとね。料理長さんとは別れて、帰りに合流する予定だ。
前回来たときは、山の南側のアチェーリとタイロンから山に入ったけど、今回は北側オルデキアからのアプローチだ。オルデキア側は崖のように切り立っているため、山へ入る道がない。この不思議な山の全容が解明されておらず、道なき道を進んでいく冒険者はいない。
この山は推定神様の実験場で、謎進化をとげた植物が生えていたり、魔物と動物の交配種もいたりと、他のところでは見ない動植物がたくさんある。危険度は高くないけれど、見慣れないものが多いため、みな恐れて山に入らないのだ。冒険者だって、お宝が見つかるとある程度分かっていなければ、わざわざ危険を冒さない。
情報収集のために、まずは地元の薬師ギルドに立ち寄る。
「氷の騎士様、王都の薬師ギルドより連絡を受けています。ご協力ありがとうございます」
「あの山の情報を、知る限り教えてほしいのですが」
「何種類か薬草が採れることは知られていますが、あまり詳しい情報はありません。こちらが今回の季節熱に必要な薬草です。どのあたりに生えているかは、分かっていません」
オレが鼻で探すからと、わざわざ実物を用意してくれていた。山での情報がないということは、これは別のところで採れた薬草だろう。あの山で同じような植物を見つけても、本当に同じなのかは分からないから、まずは少し採って持ってくるほうがいい気がする。同じ果物なのにすごく大きかったり、色が全く違ったりするから、同じ香りの薬草でも全く違うものになっている可能性だってある。
「見つけた薬草を一度持ってきた場合、薬に使えるか確認してもらえますか?」
「もちろんです。いつでもいらしてください」
持ってきたらすぐに試しに作ってくれることになった。張り切って探そう。
薬師ギルドに聞いたけもの道から、山へと入る。奥までは続いていないらしいけど、オレたちには関係ない。オレがいれば道に迷うことはないし、崖はウィオが氷の階段を作って登っていく。
道がなくなって、しばらく進んだところから、探索開始だ。
「この草を探してくれ」
『ラジャ』
ふんふん、ふんふん。どこかなー。
多くの草が枯れ始めているから、見つけやすいかと思ったけど、実がなっている木が多く、その香りが強くてよく分からない。これは歩き回って探すしかなさそうだ。ふんふん。おや?
『ねえ、幻の果物の香りがする』
「レリアの実が採れるのは春だろう?」
『でもするよ。こっち』
「ルジェ、今回は遊びじゃないんだ」
そうなんだけど、分かっているけど、幻の果物は見逃せないでしょう? 季節は違うけど、記憶と同じ香りがするのだ。
幻の果物というのは、マトゥオーソのガストーの街近くの森で春に採れる、とっても甘くて美味しい果物だ。皮が薄く、果肉が柔らかいので、触っただけで傷んでしまうから、持ち運びにも気を使う。なかなか見つからないから幻なんだけど、オレの鼻にかかれば、パパッと見つかる。
くんくん、見つけた! こっちこっち。これだよ。見た目がとんでもないけど、でも幻の果物だよ。採って。
「これは、食べられるのか……?」
『試してみようよ!』
ウィオがいやいやながらも一つもぎって、目の前で見せてくれた。
外側が黒くてごつごつしていて堅そうで、あまり美味しそうには見えない。皮が厚いのかな。そして何より大きい。
半分に割ってもらうと、とたんに甘い香りが広がる。中にはトロリとした果肉と、大きな種。幻の果物を大きくして、外側にごつい皮がついているような見た目だ。香りも同じでとっても甘そう。
『食べていい?』
「……お腹を壊すなよ?」
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オレは神獣だよ? たとえ毒が入ってたって、平気だから。
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