願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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学園編

48. 犬ガム

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「追加でキノコの依頼があった場合、受けてもらえますか?」
「私とルジェは無理だ。予定がある」
「俺とリンちゃんは受けたいが、春になったらアチェーリに戻る」

 ギルドを後にしようとしたところで、受付の人から声がかかった。たくさん採れたので、他の商会から追加の依頼がある可能性が高いそうだ。こういう珍しい食材の大量入荷は、話題になるらしい。
 ウィオは長期休暇中とはいえ学園のお仕事もあるし、他にも予定があるから、冒険者ばかりをやっているわけにはいかない。
 食パンくんは春になったらアチェーリで毛刈りのお仕事が待っている。でもオルデキアにいる間は、高値で買い取ってもらえたキノコ探しに乗り気だ。食パンくんの特技を活かした稼げる依頼だから、頑張って。

 冒険者も含めてみんなでお屋敷に戻るけど、大福くんとはここでお別れだ。

『薬草探し、頑張ってね』
『きゅう』

 オレのせいで住み慣れた森から連れ出されちゃった大福くんには、幸せになってほしい。
 お仕事をしなくてもギルドでめいいっぱい可愛がってもらえると思うけど、食いしん坊はほどほどにね。次に会うときは、そのもふもふの冬毛が抜けるころかな。


 お屋敷に着くと、いつものように執事さんが出迎えてくれる。

「お帰りなさいませ」
『ただいま。キノコたくさん採ってきたので、美味しい料理にしてください!』
「夕食の際に、料理長を呼びましょう」
『ありがとう。それから、ご飯の前に、お風呂に入れてください!』

 やっぱりご飯はきれいになってから食べたい。食パンくんはお屋敷に着いたから、すぐにご飯だと思ってるようだけど、もうちょっとだけ待ってね。お風呂で森の汚れを落としてさっぱりしてから、美味しいご飯を食べよう。

 食パンくんと一緒にお風呂に入れてもらって、その後にウィオや冒険者たちもさっと入ってからの、待ちに待った夕食。
 離れのダイニングにお行儀よく座った冒険者たちの目の前には大皿の上に山盛りになったお肉が置かれている。冒険者たちが身がまえないように、一人ずつ盛り付けられたお皿が配られるのではなく、大皿から取る形式になっている。

「これ、全部食べていいのか?」
「はい。足りなければ、また焼きますよ」
「よーし、食べ尽くすぞ!」

 お肉大好きなオレでも胸焼けしそうな量だけど、冒険者たちは全部食べる気でいる。お庭のバーベキューでは、少しずつ焼いていたから分からなかったけど、こうして一度にお皿に盛られると、あらためて量に驚く。
 だけど、健康のためにお野菜も食べようね。お肉ばっかり食べていると、体臭がくさくなるよ。
 え、おまえが言うのかって? 旅の間はいつも干し肉ばっかり食べているだろうって? 狐は肉食よりの雑食だからいいの。それにちゃんとお野菜も食べているよ。

 食パンくんとオレのご飯は、いつものように一皿ずつお世話係さんがサーブしてくれる。食パンくんは出された分は全部食べちゃうから、飼い主さんの決めた量だけ用意しているのだ。
 そういえば食パンくんは前よりシュッとした気がする。冬毛がもふもふで本体の大きさが分かりづらいけど、森の中での動きは前よりも軽やかだった。毛もツヤツヤだし、飼い主さんの健康管理が行き届いているんだろうな。
 その食パンくんが美味しそうにもぐもぐしているのは、根菜のスープだ。ごろごろのお野菜に染みた干し肉から出たうま味がたまらない。ボーノボーノ。美味しいってことの意思表示のためにほっぺたを指でぐりぐりしたいけど、狐の前足では上手くできないし、歯が痛いと思われちゃいそうだから、まだ披露したことはない。

「ジーク様、干し肉が古くなった際は、こうしてスープにしても美味しいですよ。味付けは不要です」
「はあ。あ、いや、美味しくないっていう意味ではなくて、古くなるほど干し肉が残らないというか……」

 キノコのことで来てくれた料理長が、オレたちのご飯の説明をしてくれている。食パンくんのために、干し肉を使ったアレンジ料理のお披露目だったらしいけど、そもそもアレンジが必要になるほど残らないらしい。今回オルデキアに来たのも干し肉目当てだったのだから、日頃から食べられるならもっと食べたいって感じなんだろう。
 ちなみに、食パンくんはしっかり乾燥させてうま味を凝縮させた干し肉を、反対に大福くんは生ハムみたいな柔らかいものを好む。オレは、その日の気分で好みが変わる。どれも美味しいから、そのときのお腹と相談だ。

「干し魚はお口に合いましたか?」
「おやつがわりに、大きいのをかじっていました」

 森の中でめざしみたいな干し魚をばりばりかじっていたけど、食パンくんは歯ごたえがあるもののほうが好きなんだろう。もしかして、犬ガムとか鹿の角をかじりたいタイプの犬かな?

『ねえ、ウィオ。前に倒した角の生えた魔物いたでしょう。あの角、食パンくんのおもちゃにどうかな?』
「ケルヴェスの角か。あれをどうするんだ」
『かじるの。食パンくん、硬いものが好きみたいだから』

 ケルヴェスは鹿のような魔物で、角から雷の魔法を飛ばしてくる。食い倒れツアー中に倒したときに、素材として角を持って帰ってきた。その後どうしたのか知らないけど、ギルドの買い取りに出していなければ、お屋敷のかどこかにあるはずだ。

「ジーク、ケルヴェスの角をリンに与えてはどうかと、ルジェが言っている」
「ケルヴェスって魔物だよな。たしか角は高く買い取ってもらえるんじゃなかったか?」
「切り出してボタンに加工するのが一般的です。ウィオラス様がお持ち帰りになられたものが、倉庫にございますよ」
「リンがかじるか、試しに持ってきてくれ」
「かしこまりました」

 さすがお世話係さん。オレたちの持って帰ってきた素材の在庫まで把握しているらしい。執事さんの教育が行き届いている。
 そういえば、あの素材もあったね。使い道がなくて不良在庫になっているから、すっかり忘れていた。

『ウィオ、ドラゴンの』
「ルジェ、食事を取り上げられたくなければ、それ以上言うな」
『キューン』

 ドラゴンのうろこも硬いから、かみかみするにはいいんじゃないかと思ったけど、止めるウィオの低い声がいつになく本気だ。きっとこれ以上言ったら、本当にご飯を取り上げられちゃうから、お口チャック。
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