願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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学園編

98. 実家の安心感

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『執事さん、ただいまー』
「ルジェ様、ウィオラス様、リュカ様、おかえりなさいませ。旅のあいだ、ご不便はございませんでしたか?」
『なかったよ。お義姉さんは?』
「若奥様はお茶会に出かけていらっしゃいますが、お急ぎのご用事でございますか?」
『違うよ。火の子に会いたいだろうなと思って』
「無事にお戻りになられたことを、伝えましょう」

 火の子のさみしいって告白を聞いたから、できれば早く会わせてあげたいよね。火の子は、お義姉さんが不在だと知って少し落胆しているけれど、夕方までには帰ると知ってうれしそうだ。その前に、お姉ちゃんと弟くんが学校から帰ってくるから、さみしさなんて吹き飛ぶだろう。

「リュカ様、ひなをお預かりいたします」
「はい。あの、この子はいつ隊長のところに?」
「明日以降だ」

 ネウラから運んできた荷物の運び込みの指示が終わったお世話係さんが、火の子からひなのかごを受け取った。名残惜しそうにひなを見ながらも、火の子は使用人に連れられて、自分の部屋へと向かう。移動で疲れただろうから、お姉ちゃんたちが帰ってくる前に、少し休んでおくといいよ。

「ルジェ様、お風呂の準備ができておりますが、お入りになりますか?」
『キャン!』

 もちろんですとも。昨日もおとといも入っただろう、という抗議は受け付けない。こんなときは、ウィオのあきれたまなざしも気にならない。
 お屋敷での執事さんのお風呂は別格だから、チャンスは逃さないよ。洗ってください、お願いします。今日は何か新しい石けんがあるかなあ。


 お風呂から出ると、日当たりのいいお部屋に、美味しいおやつがたんまりと用意されていた。わーい。いただきます!
 ちょっと前のめりのオレのスカーフが汚れないように、執事さんが押さえてくれている。いたれりつくせり。これぞ、実家に帰ってきた安心感だ。火の子がネウラからこのお屋敷に帰ってきたかった気持ちも分かるねえ。
 それはさておき、次のおやつをいただこう。ナッツが入ったクッキーだね。カリカリ、もぐもぐ。カリッとしたナッツと、サクッとした生地の食感の違いが楽しい。幸せだなあ。

「ルジェ、父上が帰っていらっしゃるそうだ。シェリス、後は私がするから行ってくれ」
「お気遣いありがとうございます」
『執事さん、ありがとう!』

 オレが帰ってきたという連絡をもらったお父さんが、お城から帰ってくるそうだ。これはきっと、ドラゴンのこととか、タイロンのあの王子のこととか、王様からの伝言を持って帰ってくるのだろう。
 オレがお風呂に入っているあいだ別行動していたウィオが、ちょっとおしゃれな部屋着に着替えているから、いつものように近衛団長さんも一緒なのかもしれない。

「それくらいにしておけ」
『この一枚で最後。このクッキー、保存食として旅にも持っていけないかなあ』
「用意されていないということは、何かしら問題があるのだろう」

 湿気ちゃう以外の問題はなさそうだけど、それで風味が落ちたものをオレに食べさせるのは、料理長さんとしては許せないことなのかもしれない。それくらい気にしないのに。
 最後と決めた一枚をもぐもぐしていると、お父さんと近衛団長さんが部屋に案内されてきた。

「ルジェくん、おかえり」
『キャン!』
「神獣様、お食事のじゃまをしてしまいましたか?」
『ちょうど食べ終わるところ。ちょっと待ってね』

 ちょっとだけ間に合わなかったけど、最後の一枚を小さなかけらまで口に入れて、もぐもぐしたら、おしまい。美味しかった!
 食べ終わると、執事さんがスカーフを外して、口の周りや首の下を念入りにブラッシングしてくれる。もしかして、クッキーのくずがついていたのかな。お行儀よく食べたつもりだったのに、失敗しちゃった。
 ここは尻尾を振って、可愛くごまかそう。

『かえりました!』
「ご無事のお戻りで何よりです」

 近衛団長さんが笑いをこらえているから、ごまかしきれていなかったらしい。忘れてくれるとうれしい。

『王様からオレに用だよね? なあに?』
「本日は、タイロン国王より届いた謝罪を伝えに参りました」
『そっちで好きにして』

 二番目のお兄さんが、王様と連絡を取って対処するって言ってくれたから、たぶん連絡があったはずだ。面倒だから、全部お兄さんたちに任せるよ。

「ネウラ自治領領主より、タイロン王国に対する神獣様のお怒りはすでに解けていると聞いておりますが、相違ございませんか?」
『ないよ』

 王様としても、これだけは念入りに確認しておきたいことなんだろう。
 上があんぽんたんだと、そこに住む人たちが大変な思いをするから、タイロンの偉い人たちには襟を正してほしい。これからはドラゴンを甘く見ることはないだろうけど、そもそも、けんかを売って勝てる相手かどうかくらいは、ちゃんと見極めてよね。あのドラゴンの巨体なら、たとえ攻撃する気はなくても、寝ぼけてたまたま着陸したところがお城だっただけでも、目も当てられない被害が出るんだから。

『その話はもう終わりでいい?』
「はい。ありがとうございました」
『じゃあねえ、ここからは、王様には内緒ね。お世話係さん、あれ持ってきて』

 難しいお話は終わったので、サプライズの時間だ。お願いすると、使用人さんが二人がかりで、ごつい箱を部屋の中に運び入れてくれた。
 いざ、お披露目。

『見て見て、ドラゴンの爪をもらったよ!』
「なんとまあ。これは素晴らしいですね」

 あれ? 近衛団長さんも部隊長さんたちと同じように驚いてくれると思ったのに、冷静だ。あれれ?

『近衛団長さん、知ってたよね?』
「いいえ。大変驚いております」
『うそだ。絶対うそだ。驚かそうと思ったのに、なんで知ってるの?』

 近衛団長さんは、人の悪そうな笑みを浮かべて黙っている。誰がばらしたんだろう。部隊長さんが報告したのかな?

「カエルラの名誉のために申しますが、彼ではありませんよ」
『じゃあ、誰?』
「ルジェ、やめておけ」
『え、ウィオは誰が言ったか分かってるの?』

 王様あてのタイロンからの手紙にも書かれていなかったそうだから、ネウラの誰かのはずなんだけど。
 秘密をばらしたことはどうでもいいのだけれど、犯人が気になる。
 ここは名探偵ルジェの出番だね。
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