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キスの先には(6)
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言葉もでない。地上の人間を自分たちより下に見て、モノ扱いするこを当然としているだなんて。
なにも知らない自分たちが神だと崇めていた存在がこんな最低だったなんて。
けれど、そんな気持ちを子供に向けてもしょうがない。どうしようもなく、やり場のない気持ちをドレスの上で握りしめるソフィーの耳に聞き覚えのある足音と声が触れた。
(どうして私……っ)
今一番会いたくないはずの相手のはずなのに、なぜか縋るような気持ちで思わず立ち上がる。
「ソフィー! こんなところにいたんだね。ランチにしよう!」
バーンっと開かれた扉の向こうで息を切らす満面の笑みの皇帝は、ソフィーを抱き上げようとした手を止め、椅子の上できちんと座る少年に冷たい視線を送った。
「あれ? ポール、なんでお前がソフィーとお茶してるの?」
「ち、違うんですエルバート様っ、ポールは私が誘って……っ」
自分が誘ったせいでポールが仕事をサボっていると思われてしまうと慌てて庇うソフィーにエルバートはさらに怒りの籠もった笑みで少年を見やった。子供なら泣いてしまってもおかしくないと不安になるソフィーを他所にポールはなぜか愉快そうに喉で笑う。
「おやおや。童貞……おっと失礼。エルバート様がちゃんと次期皇后様とお役目を果たせているのか心配で心配で……」
「性癖ねじ曲がりジジイに心配されなくても僕の方は問題ないよ。ソフィーともそれはもうラブラブだしね。片思いこじらせておかしくなっちゃった? 僕こそ心配だなぁ。ボケ防止に運動したら?」
エルバートはそういうとポールの乗った椅子をこつん、と蹴り上げた。すると、それは物凄い勢いで空への飛んでいってしまった。
「きゃあああ!! なっ、なにしてるんですか! ポール!!」
子供になんてことを! と慌てふためくソフィーにエルバートは不思議そうな顔をした。
「ポールは百二十歳だよ? それに今頃上空でこっち見てにたにたしてるだろうし」
「えっ」
「父上の代からの長い付き合いだし、ああ見えて仕事はできるから地上のこととか色々任せてるんだけど……そんな心配そうな顔しないで。ソフィーは優しいなぁ」
「えっ……いや……あの……」
ああ、そういえば先日読んだ本にこの帝国の人々はそれぞれ気分で自分の見た目年齢を変えているのだと書いてあったのを今更思い出す。子供だと思って接していたのは百二十歳のおじいちゃんだったのだ。
そうなると、平気でエルバートとの添い寝のことを聞いてきたりなど、すごく失礼な人だった気がしてくる。
「あの変態ジジイになんか変なこと言われなかった? あ、もしかしてシンデレラの話しとかしてた? うざかったら無視していいからね」
「え? シンデレラの話しですか?」
「うん。なんでもアイツの推しだとかなんとかで……」
「まあ……!」
まさか。ポールがシンデレラを知っていただなんて。それも推し、だなんて。
同志の存在にソフィーは彼のすべての言動を瞬時にして水に流した。
「ソフィー楽しそうだね。なんの話ししてたの?」
拗ねる彼の顔もなんだか可愛らしく見えるほど、今のソフィーは興奮していた。
今度ポールに会ったら推し・シンデレラの話しがたくさんできるのかと思うとすごく嬉しい。
「エルバート様」
「ん?」
「クリ責めメスイキだいしゅきホールドってなんですか?」
「んん?」
エルバートの顔が今までにないくらい混乱している。もしかして言ってはいけないくらい失礼な言葉だったのかもしれないと、ソフィーは抱き上げられて寝室へ瞬間移動したときの彼の目が肉食獣のような光を放ってるのを見てようやく察した。
なにも知らない自分たちが神だと崇めていた存在がこんな最低だったなんて。
けれど、そんな気持ちを子供に向けてもしょうがない。どうしようもなく、やり場のない気持ちをドレスの上で握りしめるソフィーの耳に聞き覚えのある足音と声が触れた。
(どうして私……っ)
今一番会いたくないはずの相手のはずなのに、なぜか縋るような気持ちで思わず立ち上がる。
「ソフィー! こんなところにいたんだね。ランチにしよう!」
バーンっと開かれた扉の向こうで息を切らす満面の笑みの皇帝は、ソフィーを抱き上げようとした手を止め、椅子の上できちんと座る少年に冷たい視線を送った。
「あれ? ポール、なんでお前がソフィーとお茶してるの?」
「ち、違うんですエルバート様っ、ポールは私が誘って……っ」
自分が誘ったせいでポールが仕事をサボっていると思われてしまうと慌てて庇うソフィーにエルバートはさらに怒りの籠もった笑みで少年を見やった。子供なら泣いてしまってもおかしくないと不安になるソフィーを他所にポールはなぜか愉快そうに喉で笑う。
「おやおや。童貞……おっと失礼。エルバート様がちゃんと次期皇后様とお役目を果たせているのか心配で心配で……」
「性癖ねじ曲がりジジイに心配されなくても僕の方は問題ないよ。ソフィーともそれはもうラブラブだしね。片思いこじらせておかしくなっちゃった? 僕こそ心配だなぁ。ボケ防止に運動したら?」
エルバートはそういうとポールの乗った椅子をこつん、と蹴り上げた。すると、それは物凄い勢いで空への飛んでいってしまった。
「きゃあああ!! なっ、なにしてるんですか! ポール!!」
子供になんてことを! と慌てふためくソフィーにエルバートは不思議そうな顔をした。
「ポールは百二十歳だよ? それに今頃上空でこっち見てにたにたしてるだろうし」
「えっ」
「父上の代からの長い付き合いだし、ああ見えて仕事はできるから地上のこととか色々任せてるんだけど……そんな心配そうな顔しないで。ソフィーは優しいなぁ」
「えっ……いや……あの……」
ああ、そういえば先日読んだ本にこの帝国の人々はそれぞれ気分で自分の見た目年齢を変えているのだと書いてあったのを今更思い出す。子供だと思って接していたのは百二十歳のおじいちゃんだったのだ。
そうなると、平気でエルバートとの添い寝のことを聞いてきたりなど、すごく失礼な人だった気がしてくる。
「あの変態ジジイになんか変なこと言われなかった? あ、もしかしてシンデレラの話しとかしてた? うざかったら無視していいからね」
「え? シンデレラの話しですか?」
「うん。なんでもアイツの推しだとかなんとかで……」
「まあ……!」
まさか。ポールがシンデレラを知っていただなんて。それも推し、だなんて。
同志の存在にソフィーは彼のすべての言動を瞬時にして水に流した。
「ソフィー楽しそうだね。なんの話ししてたの?」
拗ねる彼の顔もなんだか可愛らしく見えるほど、今のソフィーは興奮していた。
今度ポールに会ったら推し・シンデレラの話しがたくさんできるのかと思うとすごく嬉しい。
「エルバート様」
「ん?」
「クリ責めメスイキだいしゅきホールドってなんですか?」
「んん?」
エルバートの顔が今までにないくらい混乱している。もしかして言ってはいけないくらい失礼な言葉だったのかもしれないと、ソフィーは抱き上げられて寝室へ瞬間移動したときの彼の目が肉食獣のような光を放ってるのを見てようやく察した。
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