44 / 51
幸せにしたい人(4)
しおりを挟む
「んっ……は……っ」
息が絡み、唇を追いかけ合うような口づけが続く。
ただ様子を見に来ただけなのだから、自分の部屋に戻らなければいけないのに力なく押し返した手を絡め取られあっさり抵抗をやめた。
「ソフィー……」
熱の籠もったアメジストの瞳に見つめられて、あからさまに体温が上昇する。
一度離れれば、茹でられたような頬を大きな手で撫でられ、甘やかな声で名前を囁かれた。
啄むような口付けを繰り返し、ソフィーの腰にまわした手で器用に夜着を脱がせていく。
「……っ、エルバート様、待ってくださ……っ」
「僕が怖い?」
鼻先を擦り合わされ、縋るような視線につい首を横に振った。
「なら、待たない」
その瞳が安心したように見えたからソフィーはもうこれ以上なにも言えなかった。
優しく腰を抱かれ、もたつく脚はエルバートに流されるままバスルームへと雪崩れ込んだ。
バスタブの縁に下ろされたとき、ソフィーは一糸まとわぬ姿になっていた。
灯りは幻想的に揺らめくキャンドルだけだとしても恥ずかしいことに変わりはない。
「ソフィー……綺麗だ。もっと見せて」
両腕で胸を隠すソフィーはふいっと顔を逸らした。
「……私、もうお風呂入ったんです」
服を脱がされることを受け入れておいて今更、と自分でも思う。
「約束忘れちゃった? 今日はお風呂で癒してほしいなぁ」
バスタブにはすでにお湯がはられていて、ほのかに甘い香りが漂っている。
初めてふたりでカモミール畑に行ったときに吸い込んだ爽やかさによく似ていて胸をかき乱した。
本当に嫌なら今すぐ逃げればいい。
怖い、とたった一言告げれば彼はソフィーに服を着せ、そっとベッドで眠るだけにしてくれるだろう。
この一月半、さんざん彼に翻弄されつつも今までの人生では想像もできなかったほど甘やかされた思考は簡単にその逃避にたどり着いた。
(けれど……私はそれをしない……それどころか……)
自身も手早く服を脱ぎ捨てたエルバートの仕草やその身体に見とれてしまっている。
今まで恥ずかしいからとほとんど直視したことがなかったエルバートの身体は、想像よりも筋肉がついていてしなやかに割れた腹筋やより生々しく感じる逞しい腕から目が離せない。
昼間、あれだけの力強さを見せただけあって、大男というわけではないのに自分が小動物にでもなったかのような雄々しさを感じさせられた。
触れてみたいと思う自分がいる。隠さなければいけないのに、あふれる気持ちに瞳が潤む。
自分がこんなに淫らな女だとは思わなかった。悪役らしいといえば、そうなのだけれど。
「風邪引いちゃうから入ろうか」
ソフィーの視線に、ふっと笑みを零したエルバートは抱きしめるようにしてバスタブの中へ沈んだ。
息が絡み、唇を追いかけ合うような口づけが続く。
ただ様子を見に来ただけなのだから、自分の部屋に戻らなければいけないのに力なく押し返した手を絡め取られあっさり抵抗をやめた。
「ソフィー……」
熱の籠もったアメジストの瞳に見つめられて、あからさまに体温が上昇する。
一度離れれば、茹でられたような頬を大きな手で撫でられ、甘やかな声で名前を囁かれた。
啄むような口付けを繰り返し、ソフィーの腰にまわした手で器用に夜着を脱がせていく。
「……っ、エルバート様、待ってくださ……っ」
「僕が怖い?」
鼻先を擦り合わされ、縋るような視線につい首を横に振った。
「なら、待たない」
その瞳が安心したように見えたからソフィーはもうこれ以上なにも言えなかった。
優しく腰を抱かれ、もたつく脚はエルバートに流されるままバスルームへと雪崩れ込んだ。
バスタブの縁に下ろされたとき、ソフィーは一糸まとわぬ姿になっていた。
灯りは幻想的に揺らめくキャンドルだけだとしても恥ずかしいことに変わりはない。
「ソフィー……綺麗だ。もっと見せて」
両腕で胸を隠すソフィーはふいっと顔を逸らした。
「……私、もうお風呂入ったんです」
服を脱がされることを受け入れておいて今更、と自分でも思う。
「約束忘れちゃった? 今日はお風呂で癒してほしいなぁ」
バスタブにはすでにお湯がはられていて、ほのかに甘い香りが漂っている。
初めてふたりでカモミール畑に行ったときに吸い込んだ爽やかさによく似ていて胸をかき乱した。
本当に嫌なら今すぐ逃げればいい。
怖い、とたった一言告げれば彼はソフィーに服を着せ、そっとベッドで眠るだけにしてくれるだろう。
この一月半、さんざん彼に翻弄されつつも今までの人生では想像もできなかったほど甘やかされた思考は簡単にその逃避にたどり着いた。
(けれど……私はそれをしない……それどころか……)
自身も手早く服を脱ぎ捨てたエルバートの仕草やその身体に見とれてしまっている。
今まで恥ずかしいからとほとんど直視したことがなかったエルバートの身体は、想像よりも筋肉がついていてしなやかに割れた腹筋やより生々しく感じる逞しい腕から目が離せない。
昼間、あれだけの力強さを見せただけあって、大男というわけではないのに自分が小動物にでもなったかのような雄々しさを感じさせられた。
触れてみたいと思う自分がいる。隠さなければいけないのに、あふれる気持ちに瞳が潤む。
自分がこんなに淫らな女だとは思わなかった。悪役らしいといえば、そうなのだけれど。
「風邪引いちゃうから入ろうか」
ソフィーの視線に、ふっと笑みを零したエルバートは抱きしめるようにしてバスタブの中へ沈んだ。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
ドルイデスは忌み子将軍に溺愛される
毒島醜女
恋愛
母の死後引き取られた叔父一家から召使として搾取され、手込めにされそうになった少女、羽村愛梨。
馴染みの場所であった神社に逃げると、異世界にいた。「神樹により導かれたのね」とドルイデスと呼ばれる魔女が愛梨を拾った。異世界に救われ、ドルイデスから魔法を教わりながら田舎で過ごしていく。現世では味わえなかった温かな人の温もりに、もう何も望むまいと思っていた。
先代のドルイデス=先生が亡くなり、村の外れで静かに暮らすアイリ。
そんな彼女の元に、魔獣討伐で負傷した将軍、ウルリクが訪ねてくる。
離れで彼を看病していくうちに、不器用で、それでいて真っすぐな彼に惹かれていくアイリ。
こんな想いを抱く事はないと、思っていたのに。
自分の想いに嘘がつけず、アイリはウルリクに縋りつく。
だがそれは、ウルリクにとって願ってもない頼みであり、もう決して逃れる事の出来ない溺愛の始まりであった…
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる