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3章 レースチームを立ち上げる中年
第27話 ズレる感覚
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コースの予習をしていたから知っている。
スタート直後の第一コーナーはヘアピンコーナーだ。
ヘアピンコーナーに差し掛かったが、集団があまり減速しない。
何故だ?
疑問に思ったが、周囲の集団と足並みを揃えて走行する。
時速40kmを越えたままヘアピンコーナーを突き進む。
これは盲点だった。
モータースポーツではヘアピンコーナーでも、ロードバイクにとっては高速コーナーに近いレイアウトになった。ここまで走行感が変わるのか……
ヘアピンコーナーを抜けると長い下りのストレートが現れた。
ここもモータースポーツのレースでは普通の直線にしか見えなかったのだがな。
下っている事など、動画では分からなかったのにな。足を止めていても速度がグングン上がっていく。
時速40km……50km……60km!!!
私のロードバイクのフレームとホイールはエアロタイプで空気抵抗が低いから、ノーマルタイプのロードバイクより下りの加速が速い。
流石にカーボン製のハイエンドモデルと比較したら負けるのだろうが十分戦えるようだな。
下った先で減速して、第2コーナーである左曲がりの直角コーナー通過する。
この先は大きく湾曲した第3コーナーだ。曲率が低いスピードが乗るコーナーだが……ロードバイクにとっては緩く曲がってはいるが、平地の巡行と変わらないコースになっている。
もはやコーナーですらない。
更に先の第4コーナーの直角コーナーを通過した先の直線を見て絶望した。
目の前に広がるのは緩い下りの短い直線だったからだ。
何故下りが得意な私が下り坂を見て絶望するのか? 理由は簡単だ。
今まで下りと平地しかなかったという事は、最終コーナーが今まで下った分を挽回する様な上り坂になっている事が容易に想像出来るからだ。
そして迎えた最終コーナー。想像通りの激坂だった。
レースカーなら一気に駆け上がり、ホームストレートに向かう一番盛り上がる場所だ。
だが、ロードバイクにとっては時間をかけて上らなければならない。
ここまで纏まっていた選手の集団がばらけ始める。
ここで先頭集団から離されては優勝は遠のく。
ドラフティング効果を得る為にローテーションを繰り返す先頭集団から遅れたら、仲間に負担をかけてしまうからだ。
普通に走ったら置いて行かれるから、スプリントパワーをかけてでも遅れないようにしなければ。
腰を上げてダンシングを始めたが、予想通り徐々に遅れ始めた。
コーナーの終わり際でダメ押しのスプリントを行い、なんとか先頭集団に追いついた。
これはキツイ……2周連続は体力が持たない。
急いでピットインして計測タグを南原さんに引き継ぐ。
「先頭集団には残った!」
「自分に任せて下さい」
息が切れ、先頭集団に残った事しか言えなかった私に、南原さんが頼もしい返事を返してくれた。
そういえば、木野さんはどうなったのだ?
自分の事で精いっぱいで、隣を並走していたハズの木野さんの事をすっかり忘れていた。
「木野さんとはぐれてしまったな」
「木野さんなら先頭集団にいたわよ」
ドリンクをもってきてくれた西野が木野さんの状況を教えてくれた。
私は西野に手渡されたドリンクを飲んだ。
「西野が木野さんを気にかけてくれていて良かったよ。今回は木野さんだけソロエントリーだからね」
「当然でしょ。これから同じチームに所属するのだから。走行写真も撮ったわよ」
西野がスマホで撮影した写真を見せてくれる。
小さいな……普段のレースならスマホで十分綺麗に撮れるけど、サーキットだと見学スペースとコースが離れ過ぎていて映らないな。
今後チームメイトのレース写真を撮るなら専用のカメラも欲しいな。
30分が経ち、南原さんがピットインした。
「まだ走ります。ボトル交換お願いします」
南原さんが短く用件を伝えた。
西野がサイクルボトルを受け取り、私が新しいサイクルボトルをロードバイクにセットする。
南原さんはボトル交換が終わったのを確認して直ぐに走り出した。
走り出した南原さんの背中に声をかける。
「前がスポドリで後ろが水!」
私は前側のダウンチューブにスポーツドリンクが入ったボトル、後ろ側のシートチューブに水が入ったボトルをセットした事を伝えた。
「今日はあちぃな。ボトルの消費が激しいけど南原は大丈夫かね。随分頑張るじゃねぇか」
「今日は暑いのですか?」
北見さんの言った事に疑問を感じた。
確かに暑いけど、普段と変わらない日差しだと思うのだが。
最初の1周を走った時はそれほど暑いと感じなかったのもある。
「よく路面を見てみなよ。湯気みたいなモヤが見えるだろ? あれだけの広大なアスファルトの塊が太陽の熱で温まるんだ。一般道よりは暑くなるんだよ。まだ朝一の1周だけしか走っていないから実感がないかもしれないけど、これから更にキツクなるぞ」
そういう事なのか。
まだ太陽が上がり切っていない午前中だから耐えられるが、正午を迎えたらかなりの暑さになるのだろう。仲間に不安はないが、自分自身はどうだろう?
少し不安があるが、今は仲間の健闘を祈るとしよう。
レースは始まったばかりなのだからーー
スタート直後の第一コーナーはヘアピンコーナーだ。
ヘアピンコーナーに差し掛かったが、集団があまり減速しない。
何故だ?
疑問に思ったが、周囲の集団と足並みを揃えて走行する。
時速40kmを越えたままヘアピンコーナーを突き進む。
これは盲点だった。
モータースポーツではヘアピンコーナーでも、ロードバイクにとっては高速コーナーに近いレイアウトになった。ここまで走行感が変わるのか……
ヘアピンコーナーを抜けると長い下りのストレートが現れた。
ここもモータースポーツのレースでは普通の直線にしか見えなかったのだがな。
下っている事など、動画では分からなかったのにな。足を止めていても速度がグングン上がっていく。
時速40km……50km……60km!!!
私のロードバイクのフレームとホイールはエアロタイプで空気抵抗が低いから、ノーマルタイプのロードバイクより下りの加速が速い。
流石にカーボン製のハイエンドモデルと比較したら負けるのだろうが十分戦えるようだな。
下った先で減速して、第2コーナーである左曲がりの直角コーナー通過する。
この先は大きく湾曲した第3コーナーだ。曲率が低いスピードが乗るコーナーだが……ロードバイクにとっては緩く曲がってはいるが、平地の巡行と変わらないコースになっている。
もはやコーナーですらない。
更に先の第4コーナーの直角コーナーを通過した先の直線を見て絶望した。
目の前に広がるのは緩い下りの短い直線だったからだ。
何故下りが得意な私が下り坂を見て絶望するのか? 理由は簡単だ。
今まで下りと平地しかなかったという事は、最終コーナーが今まで下った分を挽回する様な上り坂になっている事が容易に想像出来るからだ。
そして迎えた最終コーナー。想像通りの激坂だった。
レースカーなら一気に駆け上がり、ホームストレートに向かう一番盛り上がる場所だ。
だが、ロードバイクにとっては時間をかけて上らなければならない。
ここまで纏まっていた選手の集団がばらけ始める。
ここで先頭集団から離されては優勝は遠のく。
ドラフティング効果を得る為にローテーションを繰り返す先頭集団から遅れたら、仲間に負担をかけてしまうからだ。
普通に走ったら置いて行かれるから、スプリントパワーをかけてでも遅れないようにしなければ。
腰を上げてダンシングを始めたが、予想通り徐々に遅れ始めた。
コーナーの終わり際でダメ押しのスプリントを行い、なんとか先頭集団に追いついた。
これはキツイ……2周連続は体力が持たない。
急いでピットインして計測タグを南原さんに引き継ぐ。
「先頭集団には残った!」
「自分に任せて下さい」
息が切れ、先頭集団に残った事しか言えなかった私に、南原さんが頼もしい返事を返してくれた。
そういえば、木野さんはどうなったのだ?
自分の事で精いっぱいで、隣を並走していたハズの木野さんの事をすっかり忘れていた。
「木野さんとはぐれてしまったな」
「木野さんなら先頭集団にいたわよ」
ドリンクをもってきてくれた西野が木野さんの状況を教えてくれた。
私は西野に手渡されたドリンクを飲んだ。
「西野が木野さんを気にかけてくれていて良かったよ。今回は木野さんだけソロエントリーだからね」
「当然でしょ。これから同じチームに所属するのだから。走行写真も撮ったわよ」
西野がスマホで撮影した写真を見せてくれる。
小さいな……普段のレースならスマホで十分綺麗に撮れるけど、サーキットだと見学スペースとコースが離れ過ぎていて映らないな。
今後チームメイトのレース写真を撮るなら専用のカメラも欲しいな。
30分が経ち、南原さんがピットインした。
「まだ走ります。ボトル交換お願いします」
南原さんが短く用件を伝えた。
西野がサイクルボトルを受け取り、私が新しいサイクルボトルをロードバイクにセットする。
南原さんはボトル交換が終わったのを確認して直ぐに走り出した。
走り出した南原さんの背中に声をかける。
「前がスポドリで後ろが水!」
私は前側のダウンチューブにスポーツドリンクが入ったボトル、後ろ側のシートチューブに水が入ったボトルをセットした事を伝えた。
「今日はあちぃな。ボトルの消費が激しいけど南原は大丈夫かね。随分頑張るじゃねぇか」
「今日は暑いのですか?」
北見さんの言った事に疑問を感じた。
確かに暑いけど、普段と変わらない日差しだと思うのだが。
最初の1周を走った時はそれほど暑いと感じなかったのもある。
「よく路面を見てみなよ。湯気みたいなモヤが見えるだろ? あれだけの広大なアスファルトの塊が太陽の熱で温まるんだ。一般道よりは暑くなるんだよ。まだ朝一の1周だけしか走っていないから実感がないかもしれないけど、これから更にキツクなるぞ」
そういう事なのか。
まだ太陽が上がり切っていない午前中だから耐えられるが、正午を迎えたらかなりの暑さになるのだろう。仲間に不安はないが、自分自身はどうだろう?
少し不安があるが、今は仲間の健闘を祈るとしよう。
レースは始まったばかりなのだからーー
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