62 / 101
5章 2年目の終わり。それは夢の終わり。
第62話 先頭集団から脱落する
しおりを挟む
パァーン!
レース開始の合図が会場に鳴り響く。
先頭に並んだ選手は直ぐに走り出しただろうが、後方の選手は走り出すのにタイムラグがある。
渋滞時の走り出しと同じような感じだろうか。
20秒程待ったところで私の前の選手が走り出したので続いて走り始める。
走り始めて一気に時速40kmを超える。
このまま時速50km近くまで上がったらどうしようと心配したが、巡行速度は時速43km前後で落ち着いたので安心する。
単独で巡行するにはキツイ速度だが、集団の後ろで空気抵抗を減らせてる状況では問題なくついていける速度である。
逆に言えば、立ち上がりで遅れたら追いつけないって事だけどな。
「ブレーキ」
前方から減速を伝える声が聞こえ始めると同時に選手集団の速度が落ちる。
私も追突防止で「ブレーキ」と声に出す。
そのまま時速30km近くまで減速して90度コーナーを抜けて、一気に離れる前走者を追いかける。
周囲の選手の立ち上がり加速が鋭い!
私はパワーはあるが、体重がある分加速は鈍い。
少し開いた前走者との隙間に他の選手が入り込んでいく。
順位を落としたが仕方がない。
ここで前の集団から距離が開いたら、私もついていけなくなるのだから。
私と同じで後方に並んだ選手だが、勝負を諦めている訳ではない様だ。
それぞれの目標に向かって全力を出している。
立ち上がり後の直線部分では再び時速40kmに落ち着く。
人数が多いし、まだ一周目だから直線では勝負をかけないのだろう。
今みたいに立ち上がりで脚力を削って、人数を絞ってから勝負をかけるのだろう。
時速43km前後で2km巡行した後、再び90度コーナーに差し掛かる。
再び「ブレーキ」の掛け声を上げながら減速して、コーナーを抜けた後に再び加速を行う。
数人に抜かれたが、全力で加速したので、何とか集団についていけた。
複数の選手が立ち上がりで遅れたのが見える。
遅れたのは数秒、距離にして6m。
だが、それだけでドラフティング効果は激減する。
後方から他の選手の走行音が聞こえなくなる。
選手集団後方の位置取りで得られる空力抵抗削減の利点を失った選手達が、たったの6mの僅かな距離を詰められず後方に引き離されたのだ。
遅れた選手の中には私より体力がある選手もいただろう。
それでも、先頭集団から遅れたらレース終了になる。
これがレース経験の差だ!
再び走る直線部で、立ち上がりの加速で消耗した足を休める。
自転車で時速40km以上で走行しながら足を休めるなんて、自転車競技をしてない人には想像も出来ないだろうな。
だから速度が高い直線部で頑張ろうと加速をためらって、結局遅れてしまう選手が出てくる。
1周目の3度目の90度コーナー。
前回のコーナー同様に「ブレーキ」の掛け声で減速して、コーナーの立ち上がりで全力加速する。
前の選手に追いついたが、更に数人前の選手が選手集団から大幅に遅れていたようだ。
気付いた時には先頭集団から10mも離されていた。
1周目にしてレース終了か……
「おい!」
「遅れんなよ!」
苛立った一部の選手が怒号を上げる。
さて、この集団でラップアウトされずにレースを終えられるだろうか。
「お兄さん、体格いいけどパワーある?」
突然隣に現れた青いジャージの選手に声をかけられた。
周りに同じデザインの青いジャージを着た選手が2人いるから、恐らくチームジャージなのだろう。
面識がない3人だが、状況から察するに協力依頼か?
「FTPが低いから巡行では追えないですよ。短時間のパワーなら自信がありますけど」
「500W、30秒でどうかな?」
「大丈夫です。お願いします」
青いジャージの選手が言った「500W、30秒」……500Wで走行して30秒で交代って事だ。
何故か私をローテーションに加えて先頭集団を追おうとの提案だ。
さっき迄の巡行はドラフティング効果のお陰で200W前後で走っていたから、500Wは2倍以上のパワーを出さなければならない。
30秒という短時間だが結構キツイ。
私を入れて4名だから1分30秒毎に先頭を引かなければいけないのだ。
それでもレースで生き残るには、先頭集団に復帰する以外に手段はない。
だから私はお願いしますと即答した。
話しかけてきたリーダーと思われる選手が合図すると同時に一気に加速を始めた。
驚く事に私の並びは、先頭交代の回数が少なくて済む最後尾だった。
実力が不透明な私の様子見なのか、誘った立場だから配慮したのかは分からない。
だが、有り難い事だと思う。
私を先頭集団を追う為の捨て駒として利用するのでは無く、本当に協調する為に誘ってくれたのだろう。
時速47kmまで一気に速度が上がり、先頭集団の選手の背中が徐々に近づいてくる。
どうやら私のレースは終わらないで済んだようだ。
レース開始の合図が会場に鳴り響く。
先頭に並んだ選手は直ぐに走り出しただろうが、後方の選手は走り出すのにタイムラグがある。
渋滞時の走り出しと同じような感じだろうか。
20秒程待ったところで私の前の選手が走り出したので続いて走り始める。
走り始めて一気に時速40kmを超える。
このまま時速50km近くまで上がったらどうしようと心配したが、巡行速度は時速43km前後で落ち着いたので安心する。
単独で巡行するにはキツイ速度だが、集団の後ろで空気抵抗を減らせてる状況では問題なくついていける速度である。
逆に言えば、立ち上がりで遅れたら追いつけないって事だけどな。
「ブレーキ」
前方から減速を伝える声が聞こえ始めると同時に選手集団の速度が落ちる。
私も追突防止で「ブレーキ」と声に出す。
そのまま時速30km近くまで減速して90度コーナーを抜けて、一気に離れる前走者を追いかける。
周囲の選手の立ち上がり加速が鋭い!
私はパワーはあるが、体重がある分加速は鈍い。
少し開いた前走者との隙間に他の選手が入り込んでいく。
順位を落としたが仕方がない。
ここで前の集団から距離が開いたら、私もついていけなくなるのだから。
私と同じで後方に並んだ選手だが、勝負を諦めている訳ではない様だ。
それぞれの目標に向かって全力を出している。
立ち上がり後の直線部分では再び時速40kmに落ち着く。
人数が多いし、まだ一周目だから直線では勝負をかけないのだろう。
今みたいに立ち上がりで脚力を削って、人数を絞ってから勝負をかけるのだろう。
時速43km前後で2km巡行した後、再び90度コーナーに差し掛かる。
再び「ブレーキ」の掛け声を上げながら減速して、コーナーを抜けた後に再び加速を行う。
数人に抜かれたが、全力で加速したので、何とか集団についていけた。
複数の選手が立ち上がりで遅れたのが見える。
遅れたのは数秒、距離にして6m。
だが、それだけでドラフティング効果は激減する。
後方から他の選手の走行音が聞こえなくなる。
選手集団後方の位置取りで得られる空力抵抗削減の利点を失った選手達が、たったの6mの僅かな距離を詰められず後方に引き離されたのだ。
遅れた選手の中には私より体力がある選手もいただろう。
それでも、先頭集団から遅れたらレース終了になる。
これがレース経験の差だ!
再び走る直線部で、立ち上がりの加速で消耗した足を休める。
自転車で時速40km以上で走行しながら足を休めるなんて、自転車競技をしてない人には想像も出来ないだろうな。
だから速度が高い直線部で頑張ろうと加速をためらって、結局遅れてしまう選手が出てくる。
1周目の3度目の90度コーナー。
前回のコーナー同様に「ブレーキ」の掛け声で減速して、コーナーの立ち上がりで全力加速する。
前の選手に追いついたが、更に数人前の選手が選手集団から大幅に遅れていたようだ。
気付いた時には先頭集団から10mも離されていた。
1周目にしてレース終了か……
「おい!」
「遅れんなよ!」
苛立った一部の選手が怒号を上げる。
さて、この集団でラップアウトされずにレースを終えられるだろうか。
「お兄さん、体格いいけどパワーある?」
突然隣に現れた青いジャージの選手に声をかけられた。
周りに同じデザインの青いジャージを着た選手が2人いるから、恐らくチームジャージなのだろう。
面識がない3人だが、状況から察するに協力依頼か?
「FTPが低いから巡行では追えないですよ。短時間のパワーなら自信がありますけど」
「500W、30秒でどうかな?」
「大丈夫です。お願いします」
青いジャージの選手が言った「500W、30秒」……500Wで走行して30秒で交代って事だ。
何故か私をローテーションに加えて先頭集団を追おうとの提案だ。
さっき迄の巡行はドラフティング効果のお陰で200W前後で走っていたから、500Wは2倍以上のパワーを出さなければならない。
30秒という短時間だが結構キツイ。
私を入れて4名だから1分30秒毎に先頭を引かなければいけないのだ。
それでもレースで生き残るには、先頭集団に復帰する以外に手段はない。
だから私はお願いしますと即答した。
話しかけてきたリーダーと思われる選手が合図すると同時に一気に加速を始めた。
驚く事に私の並びは、先頭交代の回数が少なくて済む最後尾だった。
実力が不透明な私の様子見なのか、誘った立場だから配慮したのかは分からない。
だが、有り難い事だと思う。
私を先頭集団を追う為の捨て駒として利用するのでは無く、本当に協調する為に誘ってくれたのだろう。
時速47kmまで一気に速度が上がり、先頭集団の選手の背中が徐々に近づいてくる。
どうやら私のレースは終わらないで済んだようだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる