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最終章 最強部長はロードレースでも最強を目指す
第94話 見えなくなった先頭集団
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利男が待ち合わせ時間に遅れたので、スタート地点に整列するのが時間ギリギリとなってしまった。
問題なのは海斗君を見失った事だけだ。
走行中に彼を見つけるしかない。
「遅れて来たけど大丈夫なんだろうな? 寝不足で走れませんでしたってのは、無しだぜ」
北見さんが利男の心配をする。
「心配ないさ。最終チェックしてたら出発時間を過ぎてただけさ」
「凄い気合が入ってますねぇ。僕は緊張であまり眠れなかったですよぉ」
「ベテランなのにチェックに時間がかかるのか……利男でも緊張するのだな」
「別にレースは関係ないぞ」
レースは関係ない? なら彼は何故遅れてきたのだ?
「おいおい佐々木君、レース関係ない理由で遅れて来たんかい?」
「あぁ、レースは関係ないけど重要な仕事が間に合ったからな。レース後のお楽しみって所だ」
「なんだよ、もったいぶるなよぉ佐々木く~ん」
「レース後が楽しみですねぇ。もちろんレースも楽しみですけどねぇ」
重要な仕事か。
それぞれ生活があるし、レースが全てではないからな。
ん? 利男が私に向かって一瞬ウインクしたような……気のせいか?
「そろそろ始まるよ」
「レース開始です」
東尾師匠と南原さんがレース開始時間になった事を告げると同時に、スタートの合図が鳴り響き、周囲の選手が走り始める。
最初は約16kmの平地区間。
序盤の平地区間なので、集団から抜け出そうとする選手はいない。
選手集団は淡々と時速40kmを維持して走り続ける。
他の選手はやることがないが、私にはここでやっておく事がある。
今日のレースで勝負する予定の田中海斗君を探す事だ。
仲間と一緒に徐々に集団内での順位を上げていくと、赤いロードバイクに緑のジャージの選手が目に入った。
海斗君だ!
先頭から50人くらいの位置で海斗君を見つけた。
「見つかって良かったよ海斗君」
「こちらこそ、見つかって良かったですよ猛士さん」
「そうだな。お互い居場所が分からなかったら勝負にならないからな」
「シッカリ走れる様になりましたか? 遅れても待ちませんよ」
「大丈夫だ。出来るだけの準備はしてきた。今日は私が勝つよ」
「それなら全力で置き去りにしても構いませんね。レースのライバルは猛士さんの他にもいるので。目標は上位入賞ですから」
「上位入賞を狙うのは良い事だね。でも、その順位の一つ前に必ず私がいるさ!」
「それは楽しみですね。早速終わらないで下さいよ。猛士さんが苦手な最初のヒルクライム区間の始まりですよ」
海斗君と話しているうちに、最初の上り区間に突入した。
最初の上り区間は約5km。
この短い上りで遅れはしない……と思っていたのだが。
急に加速を始めた集団先頭に追い付けない!
慌てて腰を上げてスプリントで先頭集団を追いかけようとするが……師匠!?
東尾師匠に手で制止される。
「追うな! あれは無理だ!」
「同感だ。今回のレースの先頭集団はプロ並みに速いからな。無理して追ったら序盤でリタイアする事になるぞ」
師匠だけでなく、北見さんも私を止めようとする。
「師匠。それなら、どうすればよいのだ?」
「今いる第2集団で走ろう。この面子なら、いつものレースの先頭集団と同じくらいの実力者だ」
「あっ、海斗殿が先頭を追ったですよぉ」
木野さんが海斗君が先頭集団を追った事を教えてくれた。
「心配ない。直ぐに諦めるさ。俺が後ろについて確認してくる」
師匠が海斗君を追って加速する。
既に視界から消えている先頭集団を追いかける二人を見送った。
海斗君との距離が開くと、追いつけるか心配になるが、今は師匠を信じよう。
北見さん、木野さん、利男、南原さん、私の順番で淡々と上り続ける。
今までは8%以上の斜度でスプリントの力を使わないと遅れていたが、今日は普通にみんなと走れている。
綾乃のダイエット食とトレーニングのお陰だな。
3年前の始めた頃は78kgあった体重を、61kgまで減らす事が出来たからな。
4km程上り続けた所で、先行した海斗君と師匠が見えて来た。
どうやら先頭集団には追いつけなかったようだ。
普通に上って追いつけているという事は、彼は先頭集団を追って消耗した足を休めているのだろう。
「どうやら先頭集団には追いつけなかったようだね」
「一緒に走った彼が協力してくれたら行けたけどね。一人じゃ厳しいですね」
確かに、師匠が協力したら先頭集団を追えていたかもしれないな。
先頭集団は30人位いたから、次の平地で追いつく事もないだろう。
私達がレースで勝つ見込みは無くなった。
でも関係ない。
今日は海斗君より前でゴールするのが目的なのだから。
「これでお互い上位入賞は無くなったね。私との勝負に専念出来るのではないかな?」
「残念ながら、猛士さんとの勝負に専念するしかないですね。本当は先頭集団についていって、一気に勝負を終わらせる予定だったのですけど」
「そんなに簡単に終わらせないでくれよ。これでも1年近く頑張って準備してきたのだからさ」
「猛士さんのレースのリザルトは確認してますからね。直近の結果では私には敵いませんよ」
「わざわざ敵情視察してくれていたのは光栄だな。だが、最後に参加したレースの後が、私の成長のピークなんでね。今の私は更に速いよ」
「確かに成長は感じますね。短い上り区間でしたが、余裕で上り切りましたからね」
私は海斗君と話ながら最初の上り区間を乗り切っていた。
今までより明らかに余裕がある。
これなら、今までとは違うレース戦略で戦える!
優勝争いの必要が無くなったここからが、二人の勝負の始まりだ!
問題なのは海斗君を見失った事だけだ。
走行中に彼を見つけるしかない。
「遅れて来たけど大丈夫なんだろうな? 寝不足で走れませんでしたってのは、無しだぜ」
北見さんが利男の心配をする。
「心配ないさ。最終チェックしてたら出発時間を過ぎてただけさ」
「凄い気合が入ってますねぇ。僕は緊張であまり眠れなかったですよぉ」
「ベテランなのにチェックに時間がかかるのか……利男でも緊張するのだな」
「別にレースは関係ないぞ」
レースは関係ない? なら彼は何故遅れてきたのだ?
「おいおい佐々木君、レース関係ない理由で遅れて来たんかい?」
「あぁ、レースは関係ないけど重要な仕事が間に合ったからな。レース後のお楽しみって所だ」
「なんだよ、もったいぶるなよぉ佐々木く~ん」
「レース後が楽しみですねぇ。もちろんレースも楽しみですけどねぇ」
重要な仕事か。
それぞれ生活があるし、レースが全てではないからな。
ん? 利男が私に向かって一瞬ウインクしたような……気のせいか?
「そろそろ始まるよ」
「レース開始です」
東尾師匠と南原さんがレース開始時間になった事を告げると同時に、スタートの合図が鳴り響き、周囲の選手が走り始める。
最初は約16kmの平地区間。
序盤の平地区間なので、集団から抜け出そうとする選手はいない。
選手集団は淡々と時速40kmを維持して走り続ける。
他の選手はやることがないが、私にはここでやっておく事がある。
今日のレースで勝負する予定の田中海斗君を探す事だ。
仲間と一緒に徐々に集団内での順位を上げていくと、赤いロードバイクに緑のジャージの選手が目に入った。
海斗君だ!
先頭から50人くらいの位置で海斗君を見つけた。
「見つかって良かったよ海斗君」
「こちらこそ、見つかって良かったですよ猛士さん」
「そうだな。お互い居場所が分からなかったら勝負にならないからな」
「シッカリ走れる様になりましたか? 遅れても待ちませんよ」
「大丈夫だ。出来るだけの準備はしてきた。今日は私が勝つよ」
「それなら全力で置き去りにしても構いませんね。レースのライバルは猛士さんの他にもいるので。目標は上位入賞ですから」
「上位入賞を狙うのは良い事だね。でも、その順位の一つ前に必ず私がいるさ!」
「それは楽しみですね。早速終わらないで下さいよ。猛士さんが苦手な最初のヒルクライム区間の始まりですよ」
海斗君と話しているうちに、最初の上り区間に突入した。
最初の上り区間は約5km。
この短い上りで遅れはしない……と思っていたのだが。
急に加速を始めた集団先頭に追い付けない!
慌てて腰を上げてスプリントで先頭集団を追いかけようとするが……師匠!?
東尾師匠に手で制止される。
「追うな! あれは無理だ!」
「同感だ。今回のレースの先頭集団はプロ並みに速いからな。無理して追ったら序盤でリタイアする事になるぞ」
師匠だけでなく、北見さんも私を止めようとする。
「師匠。それなら、どうすればよいのだ?」
「今いる第2集団で走ろう。この面子なら、いつものレースの先頭集団と同じくらいの実力者だ」
「あっ、海斗殿が先頭を追ったですよぉ」
木野さんが海斗君が先頭集団を追った事を教えてくれた。
「心配ない。直ぐに諦めるさ。俺が後ろについて確認してくる」
師匠が海斗君を追って加速する。
既に視界から消えている先頭集団を追いかける二人を見送った。
海斗君との距離が開くと、追いつけるか心配になるが、今は師匠を信じよう。
北見さん、木野さん、利男、南原さん、私の順番で淡々と上り続ける。
今までは8%以上の斜度でスプリントの力を使わないと遅れていたが、今日は普通にみんなと走れている。
綾乃のダイエット食とトレーニングのお陰だな。
3年前の始めた頃は78kgあった体重を、61kgまで減らす事が出来たからな。
4km程上り続けた所で、先行した海斗君と師匠が見えて来た。
どうやら先頭集団には追いつけなかったようだ。
普通に上って追いつけているという事は、彼は先頭集団を追って消耗した足を休めているのだろう。
「どうやら先頭集団には追いつけなかったようだね」
「一緒に走った彼が協力してくれたら行けたけどね。一人じゃ厳しいですね」
確かに、師匠が協力したら先頭集団を追えていたかもしれないな。
先頭集団は30人位いたから、次の平地で追いつく事もないだろう。
私達がレースで勝つ見込みは無くなった。
でも関係ない。
今日は海斗君より前でゴールするのが目的なのだから。
「これでお互い上位入賞は無くなったね。私との勝負に専念出来るのではないかな?」
「残念ながら、猛士さんとの勝負に専念するしかないですね。本当は先頭集団についていって、一気に勝負を終わらせる予定だったのですけど」
「そんなに簡単に終わらせないでくれよ。これでも1年近く頑張って準備してきたのだからさ」
「猛士さんのレースのリザルトは確認してますからね。直近の結果では私には敵いませんよ」
「わざわざ敵情視察してくれていたのは光栄だな。だが、最後に参加したレースの後が、私の成長のピークなんでね。今の私は更に速いよ」
「確かに成長は感じますね。短い上り区間でしたが、余裕で上り切りましたからね」
私は海斗君と話ながら最初の上り区間を乗り切っていた。
今までより明らかに余裕がある。
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