追われる身にもなってくれ!

文月つらら

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まるでそこが定位置だと

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「これよく見ると鉱石でもないし知ってる素材でもないから無理だね!」

 洞窟内で一夜明けた俺たちは再びブルーダイヤを求めて歩いていた。まだまだそれらしいものも見当たらず、というかどの辺りにあるかもわからないので行き当たりばったりで進んでいる。
 そんな中暇つぶしにと昨夜のアドラーとの会話をシンティアにしたところ、バッサリと加工はできないことを伝えられた。俺には他の武器と同じに見えるこの刀身は、鍛冶をする人間の目からすると謎の物質らしい。

「俺が言った通りだろ? ソイツに使われてんのは俺か、記憶が無くなる前のテメェしか知らねえよ。」

「2人だけの秘密みたいに言うな気持ち悪い。」

 思わずそう言うとアドラーは少し悲しそうな顔をした。それも申し訳ないが俺にとっては気持ち悪いどころか不快でさえある。
 そんな凹んでいるアドラーを気にせず、俺はどんどん前へ進んで行った。そんなに長い坑道とは思えないが、そろそろブルーダイヤに出会いたい。あわよくば依頼分とは別に自分の分も手に入れたい。
 そしてすっかり忘れかけていたが目的は鉱山街クライノートへ行くことだ。ここであまり時間をかけるわけにはいかない。

(まぁこの選択をしたのは俺だけど)

 帰ってマクシムに言ったら暇なんですかと嫌味でも言われそうだが、一応人助けではあるし大目に見ていただきたい。これでリベラシオンの評判もあの歩く鍛冶屋が広めてくれて、人が集まってくる可能性だってあるのだから。
 そう正当化してみるものの、流石に今回は独断すぎたとも思う。これからはいくら珍しい鉱石があると言われても、一応、そう一応はみんなの意見も聞いてから判断した方がいいかもしれない。
 そう、こいつらは完全にアドラーと仲良くなっていたり、簡単に餌付けされたりと本当に仲間か疑問に思うことの方が多いが一応仲間だ。そうなんとかギリギリのところで俺は信じている。
 さすがに今更この双剣との一人旅もキツイしな、と歩きながら俺は双剣を手にとって見つめた。どこを見ても傷ひとつない綺麗な双剣。海水やら血やらで汚れていたのにどこにも錆一つありはしない。
 これが本当にアドラーと俺しか何を使っているかわからないというのは少し気味が悪い。鍛冶屋でさえわからない特別な物を使って、鍛冶屋でもないアドラーが作って、そして俺が使っている。
 考えれば考えるほど全てが意味がわからなかった。

(というか、アドラーが作ってくれるくらいには俺昔は仲が良かったってことだよな……。うわちょっとゾッとした)

 あまり考えたくなかったが、俺のことをやけに知ってたりするしきっとそうだったのだろう。ということは俺の出身もヒンメルで、仕事は前に否定されたから軍人ではないにしろ何か軍と関わっていたものなのだろうか。
 そう出てきてしまった好奇心を抑えることはできず、またはぐらかされるだろうと思いながらも俺は再びアドラーに話しかけた。

「なぁアドラー、俺はヒンメルの生まれなのか?」

 仕事のことには触れず、とりあえず一番教えてくれそうなことを尋ねる。するとアドラーはまた手をヒラヒラとさせて、こちらを見向きもせず答えた。

「あぁ? そんなことまで知るかよ。」

「でもさー、フィンに双剣作ってあげるくらいには仲良かったんだし、フィンもずっとヒンメルにいたってことだろ? だったらやっぱそうなんじゃね?」

「んなこと俺に言われてもホントに知らねえよ。出会いは別の場所だったが、道端でアクセサリーを売ってるのはちょくちょく見てた。」

 野郎の出身地なんざどうでもいいしなぁ、と言いながらアドラーはため息をついた。めちゃくちゃ気にされても気持ち悪いが、ここまで興味を持たれないのもそれはそれで少し悲しい。

「というかその図体でアクセサリーとか気になるんだな。」

「喧嘩売ってんのかフィン・クラウザーよぉ……。はーあ、御守りだっつってコレをくれたあの可愛い可愛いフィン・クラウザーはどこにいっちまったのかなぁ?」

 そう気色悪いことを言ってアドラーは胸元から綺麗なグリーンの鉱石がついたネックレスを取り出した。イナズマのような形をしたその大き目の鉱石はどの角度からもキラキラと光っていてとても綺麗だ。
 我ながら良い作品を作っていたんだな、と過去の自分に感心する。この出来は店で売ってても結構な値段だろう。
 思わずそれに見入っていると、アドラーはなぜか自慢げな顔をして再び胸元にしまった。普段は見えないように服の下につけているらしい。

「数回アクセサリー屋で会って、話をするようになった後別の場所でまた会ってなぁ。んでまぁ意気投合した俺たちはいろいろあってなんやかんやあって今に至るってわけだな。」

「よくわからないけど、フィンとアドラーが仲良かったってこととネックレス貰ってたってことに激しく嫉妬心が芽生えたわ……。」

「よくわからんが落ち着けリーナ。」

 嫉妬するところなんてあったか疑問だが、リーナは見たことないくらい目をつり上げてアドラーを睨んでいた。アドラーはアドラーでそれに面白がって勝ち誇った表情をするものだから2人の間には見えない火花が散っているような気がする。

「言っとくけど私だってフィンにこのバレッタ作ってもらったし、よく撫でてくれるし、抱きしめて誰よりも可愛いって言ってもらったこともあるんだから!」

「やめろ急に何を言い出したんだおまえホントやめろ。」

「あぁ? 俺なんか昔は同じ屋根の下で寝てたことあるし風呂とかも一緒だったからコイツの身体の隅々まで知ってるぜ?」

「やめろそれは俺にもダメージ入ってるからやめろ! なんか誤解をまねく言い方になってるから!」

 誰か止めてくれ頼む、とソフィアたちを見るが、みんなして完全に誤解したような顔をしてこちらを見ていた。ルキはマジかよとドン引きしたような表情で少し顔色がおかしいし、ソフィアとシンティアにいたっては何故か少し顔が赤い。
 そうそれぞれがあることないことを想像している中、何を思ったのかリーナが突然抱きついてきた。お腹に当たる柔らかいそれに少し幸せを感じるがそんなことを気にしている場合ではない。

「リ、リーナ……?」

「ね、フィンは私の方が好きでしょ? アドラーより私よね?」

 俺を見上げながらそう必死に聞いてくるリーナ。それにだらしなく緩んだ顔で当然だろ、と抱きしめ返すとリーナは嬉しそうに顔を胸元に押し付けてきた。

「俺にそっちの趣味はないし、考えるまでもなくリーナだな。」

「んだよフィン・クラウザー、いつの間にそんなどこぞのルキみたいに女たらしになっちまったんだぁ? どっかの某ルキみたいに付き合ってもねぇ女の子を誑かすなんて最低だぜ?」

「ちょっとなんで急にオレを貶し始めたの? オレはこの美貌を最大限に活用してるだけですう! それにオレの場合はカッコ良すぎて女の子の方から寄ってくるから仕方ないっつーか?」

 自分が標的になると思っていなかったのか、ルキは怒りながらもナルシスト全開でアドラーに反論していた。そこまで自己肯定感強くいられるのは少し羨ましい。
 その様子を見ながらも俺は未だに抱きついているリーナの頭を撫でていた。今回は特に嫌がる素振りもないし、ここぞとばかりに堪能しようと思う。
 そんなことを考えていると不意にアドラーがゴソゴソとポケットに手を突っ込んで何かを探し出した。これか、いやこっちか、と言いながら何かを漁っているが、ただのポケットにそんなにいろいろ入れているのだろうか。
 そのまま何を出すつもりなのかと見ていると、あった、という言葉とともにアドラーは俺に向かって一つのネックレスを差し出した。

「危ねぇ危ねぇ、返し忘れるとこだったわ。ほらよ。」

「これは……。」

 受け取ったそれは先ほどアドラーが身につけていた御守りと同じに見えた。イナズマを型取った大き目のグリーンの鉱石がついたネックレス。細かく削られた鉱石はどの角度からも光を反射している。

「ったくよぉ、預かっといてくれって言われたから預かっといたものの、こんなことになっちまって返すタイミングもなかったわ。覚えてねぇだろうがテメェのだ。」

「俺の……? え、アドラーとお揃い……?」

 何が悲しくて男と、敵とお揃いのネックレスをつけなければならないのか。そう思いながらも俺の手は何故か意志に反して自分の首にそれをつけていた。
 まるでそうなるのが当然だったかのような動きに自分でも理解が追いつかない。だが首からぶら下げたそれは不気味なほどしっくりときて、これが本当に俺の物だったんだと感じ取っていた。

「コレは俺の御守り、ソレはテメェの御守り。俺は神なんざ信じてねぇが、コレだけは信じている。コレがあれば俺は死なねぇし、ソレがあればテメェも死なねぇ。ま、処刑台には行ってもらうが。」

 絶対に外すなよ、と言いながらアドラーは再びルキをからかいに行った。俺は俺で何故かアドラーの言葉に反発する気も起きず、胸元で光るソレをジッと見つめる。ない記憶が少し呼び覚まされているのか、どこか懐かしさを感じながら。

(そうだ、俺のこれとアドラーのそれがあれば俺たちは死なない。そう、確かに、2人で、言って……)
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