追われる身にもなってくれ!

文月つらら

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ずっしり重く

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 胸元に光るグリーンのそれをチラチラと見ながら俺たちは再び歩き始めていた。正直アドラーと同じものというだけで心境はかなり複雑だ。
 だが外そうとしても意志に反して手が動かない。それどころか外してはダメだという警告さえ聞こえてくるような錯覚に陥る。
 アドラーの話によるとこのネックレスを作ったのは俺だし、特に変な装置や特別な物を入れたとは思えない。きっとどこにでもある普通のネックレスのはずなのに、今の俺にはわからない何かが確実にそれにはあった。
 このネックレスを作ったときはこんな風に悩むなんて思わなかっただろうな、とそれを手に取って眺める。坑道内でも輝いて見えるそれは外ならかなり綺麗に違いない。
 我ながら良い物作ったと自画自賛しつつ、俺はネックレスを見つめながら歩いていた。

「オレさぁ、気になってることあるんだけど。そのネックレス。」

「気になってること?」

 一番このネックレスに興味なさそうにしていたルキが突然こちらを振り向いて話しかけてきた。実はルキもアクセサリーが好きとかそういうあれなのだろうか。

「そのムカつくアドラーみたいな色のヤツ、ソレってホントに鉱石? あとフィンぶつかるぜ。」

「えっ、痛っ!」

 ルキの遅すぎる忠告通り気づいたら俺は壁にぶつかっていた。頭から血が出ていないか不安になる痛みに思わず手で触れて確認するが、特に血は出ていないようで手は綺麗なままだ。
 それに安心しつつも情けないことをしたな、と軽く凹んでぶつかった壁を見ると、微かに他と違う青い光が見えた。このキラッと光る感じ、ブルーダイヤではなくても鉱石ではあるに違いない。
 俺はツルハシを取り出しつつ、またアドラーが一瞬で取ってくれないかなとチラッと見た。別にカンカンと掘って取り出すのが嫌なわけではないが、一回あれを見せられてしまったら頼りたいと思うものだろう。
 そんな俺の怠けた思いが通じたのか、アドラーはあからさまに嫌そうな顔をして隣に立った。

「……。言いたいことがあるならはっきり言えや。男にチラチラ見られても嬉しくねぇわ。」

「ここに鉱石があるっぽいからまたあの一瞬で取り出すやつやってほしいんだが。ツルハシだと時間かかるし、どうせアドラーがいるならこき使うのもありだろうと思って。」

「それが人に物を頼む態度かテメェ。」

 アドラーは俺を軽く睨みながらも前と同じように鉱石があるであろう部分に手をかざす。すると少ししてから壁だった部分が綺麗に砕け散り、ドゴッと想像以上に大きな青い鉱石が地面に落ちた。
 岩だけ砕いて鉱石だけ無傷で残すのは本当にどういう仕組みなのだろうか。
 物とアドラーは使いようだな、と思っていると仲間たちが次々に感想を言いながら鉱石の周りに集まってきた。

「うっわでっか! しかもめっちゃキレイじゃん!」

「照らされてるわけじゃないのにキラキラしてるわね。」

「これだけ綺麗なら相当高く売れそうだけれど、ちょっともったいない気もしちゃうわね~。」

 確かに磨いてもいないのにここまで光って見えるそれは売るのを躊躇う綺麗さだ。鉱石、というより完成された宝石であるかのようで、透明だが青く輝いている。
 そんな完璧とも言える鉱石にただ一つだけ困ったことがあるとすれば、そのデカさだろう。今までのようにポケットに入る大きさならともかく、目の前に落ちているソレは小さい段ボールほどの大きさだ。
 そしてソレを持ち運ぶには、両手で持つ以外の選択肢が今の俺たちにはないという辛い現実が迫っていた。

「じゃ、あとは頼むわ! オレほら弓だから。」

「頼むぜ、フィン・クラウザー。俺は大剣だからなぁ。」

 明らかに重いであろうそれを持ち運びたくないのか、そう言いながらさっきまで背負っていた相棒をこれみよがしに抱え出す2人。鉱石を取り出そうと言ったのは俺なのでもちろん俺が持ち運ぶつもりではあったが、そこまであからさまに嫌がられると少しイラッとする。
 それに何より以前の巨大蜂との戦いでのことが脳裏を掠めていた。

「いや俺が持つつもりだが、おまえら絶対俺を守ってくれないだろ。蜂のときのことを俺は忘れてないぞ。」

「すまん、フィン。オレ過去は振り返らねぇ主義なんだ。」

「蜂は何があったか知らねぇが、振り返らなくてもいい過去ってのもあるもんだぜ。」

「いちいち腹が立つなおまえら。まぁこれを持って進みたくないし一旦来た道を戻ろう。それならモンスターもいないだろうし、鍛冶屋にこれを売って再びここに戻ってこられるだろ。よいしょっと重っ!」

 持ち上げたそれはなんとか持っていられる重さで、気を抜いたら落としてしまいそうだった。本当にこれを持ちながら来た道を引き返すのか、と一瞬でめげそうになっている。
 それと同時に俺は一つだけ後悔していた。

「なんで入り口をワープ登録しなかったんだ……!」

 そんな嘆きを全員にスルーされながら俺たちは来た道を引き返して行った。
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