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二章 グナー
第十二話 蓼食う虫は結構いる
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その日の放課後は、ちょっとした騒動があった。
本来の予定では、屋上で告白してもらうつもりでいたが、待ちきれなくなった篠崎が放課後の屋上に向かう途中の佐崎を待ち伏せ、三年生の教室が並ぶ廊下という衆人環視の状況で、盛大に告白&自らの性癖暴露&お仕置き懇願のコンボを叩き込み、望み通りのお仕置きを佐崎から頂くというちょっとした騒動があった。
「ま、結果オーライ、か」
放課後最後の相談を終え、椅子に座ったまま伸びをする。
先程駆け込んできた才人から廊下で起きた珍事を聞いた時は、篠崎の顔面を蹴りに行こうかと思ったが、一悶着あったものの佐崎の方も満更ではなかったそうなので、これ以上のアフターサービスは不要と判断した。てか、関わりたくない。
「あんな変態ですら蓼食う虫がいるのに、俺にはいないんだな。……美少女限定で」
『虫と言っても蝶限定ですか』
「あ、俺、蝶苦手。おなかの辺りが気持ち悪いじゃん?」
『ああ、そうでしたね。では……玉虫?』
「玉虫色の? あれを、お金出して買う人もいるんだよね。理解できないな」
『それも蓼食う虫ですね』
ふと気づいたら、香が女神とのそんなやり取りを不思議そうに見ていた。
「ん? 雪平さん? どした?」
「いえ。本当に、神様と会話しているんだなって」
「ああ。雪平さんは、俺とグナーが話してるとこ、初めて見たの?」
「いえ。何度か見ましたけど……その……神様に対して、その……気安いな、と」
この会話も、神が聞いているのだろう、と考えて、必要以上に言葉を選んでいるのが窺える。
「んー。他の神は知らんけど、グナーはあれだ……えーっと、そう、友達感覚?」
『敬いなさい』
「敬ってたよ。最初だけ」
『一時間も敬っていませんでしたね』
それからしばらく、雪平にグナーとの思い出話を聞かせていたら、下校時間になっていた。その間、才人は微妙な顔で二人の様子を見ていたのが、愛知の心に引っ掛かっていた。
「で? 二人共、なにを落ち込んでんだ?」
愛知達とは反対方向の電車に乗る香を見送り、地元駅の駅前にある喫茶店で冷え切った体にコーヒーを流し込んでの、愛知の言葉だ。
「「……」」
向かいに座った兄妹が、同じように目を逸らす。
愛知自身も答えがわかっていて聞いたので、返事がなくても気にしない。そのかわり、悪戯心から、ピンポイントで急所を抉ってみる。
「まず、才人は……ほぼ二人でやってきた恋愛相談に、妹のサイちゃんはともかく、赤の他人の雪平さんが入り込むまれたのが面白くないってとこか? んで、サイちゃんは、あれかな? 自分がやるより、雪平さんがスケジュール管理した方が効率良く相談を捌けたのが……えー。泣くほど?」
才人は悔しさを噛みしめていたが、彩歌は、歯を食いしばりながら目に涙を浮かべていた。
「泣いて、ないもん」
誰が見ても、涙が零れる寸前だ。
店内には他に客がいないが、店主からは”元彼の愛知に別れ話をしている彩歌と、恋人を慰める今彼の才人”に、見えているかもしれない。
「で、実際、どうなの?」
彩歌が零れそうな涙を、愛知が差し出したハンカチで拭き取る。
「私だって、やればできるもん」
危うく「なら、やれよ」と言いそうになったが、グッと堪える。
「……こんなことを今更言うのも、ちょっと恥かしいんだけどさ。……俺はさ、役に立つからお前らとつるんでるわけじゃないんだよ」
正面の兄妹が、視線で話の続きを促す。
「なんと言えばいいか……ああ、居心地かな? 居心地がいいから、一緒にいるんだろうな。多分」
今まで深く考えたことがなかったから自信はないが、そう間違ってはいないはずだ。
「お前らだって、俺が役に立つから、つるんでるわけじゃないだろ?」
毎朝起こしてもらって、朝食も、お弁当も、夕飯も用意してもらって、お風呂の用意もしてもらって、ゴミ出しもしてもらって、休日に纏めて洗濯してもらって、自分の部屋どころか家中の掃除もしてもらう。おはようからお休みまで竜崎兄妹の世話になっている。そんな愛知が「役に立つ」云々を口にしているので女神は鼻で嗤っていた。
「まあ、そうなんだけど」
才人もグナーと同じく「お前が言うな」と思っているのか、少し納得がいかないようだ。
「毎年、十二月は忙しかったけど、今年はゆとりがある。雪平さんのお陰、だろ?」
渋々ながら頷く二人。
「お陰で、久しぶりに三人でゆっくりできる」
愛知の家でノンビリ過ごすことはあっても、外でこんな時間を過ごすのは久しぶりだ。
「よくよく考えたら、俺……お前ら以外と、こんな風に過ごしたことないな」
その言葉に、才人と彩歌の機嫌は良くなるが、反対に愛知の気分は落ち込む。
「あれ? 俺……友達いない?」
ボッチではない。クラスメートと挨拶するし、普通に昨日見たドラマの話とかもする。
しかし。
「誰かの家に招かれたこともないし、招いたこともない」
「ん……そういえば、俺も誰か招いたこと、ない」
愛知の呟きに才人も答える。実際には、招いたことはないが、招かれたことはある。が、愛知への気遣いから口には出さない。
「私は何回か……あれ? あの子達って、兄さんを見に来てたような……」
「才人目当ての友達か」
つい”友達”を強調してしまい、彩歌が再び涙目になる。
才人の「なんとかしろ」的な視線に、頭をボリボリ掻く。
「サイちゃん。今は雪平さんが友達でしょ? 今度、家に誘ってみたら?」
「んー。女子の間で協定ができてて、抜け駆け防止のために、私の家に泊まりに行っちゃダメってことになってる」
「ああ。なんかあったな」
才人のファンクラブ的な非公認組織が学内にあって、男にはわからないルールが色々と作られていると聞いたことがある。
「あれ? でも、あの組織って、潰れたって言ってなかった?」
「潰れてませんよ。分裂しただけです。分裂しても、組織同士の横の繋がりはあるから、泊まりのルールは生きています」
「へー。なんで分裂したの?」
「それは……どうしても聞きたいですか?」
言いにくそうな彩歌の表情から、碌な理由ではないんだろうとは予想できるが、気になる。
「どうしても、ってわけじゃないけど、気になる」
「逆カプ問題です」
「ん? ぎゃ、く……ああ。あの逆カプ? え? 才人の? ん? 待て。才人のファンクラブの話だよな?」
「ええ。組織内に腐女子が増殖して、才×愛か愛×才で揉めて、この二派閥が分裂したんです」
現在では、純粋に才人に恋する女の子のグループと、才×愛派の腐女子グループと、愛×才派の腐女子グループに分かれている。
「聞きたくない真実だ」
愛知が頭を抱える。
「さらに言うと、腐女子グループは、兄さんの気持ちに気づいています」
「なんで兄にそんな真実を聞かせる」
才人がテーブルに突っ伏す。
「もう一つ言うと、兄さんが愛×才派だってこともバレてます」
「「もう勘弁して」」
愛知もテーブルに突っ伏す。
泣かされた仕返しができて、笑顔でコーヒーを飲む彩歌。
「ちなみに、薄い本の売り上げは、才×愛の方が上です」
『私は愛×才派です』
「神が少数派につくなよ」
「それを聞いたら、聖戦が始まるかも」
彩歌の呟きにゾッとする。
神が味方についた陣営が、どのような反応をするか。歴史が証明している。
多くは増長し、他者への思いやりをなくし、自分達の地位を脅かされるのを恐れ、疑心暗鬼になり味方同士で争い、内部崩壊する。あくまで国家レベルの組織での話だが、腐女子サークルでも同じだ。むしろ、国家レベルの組織であれば人死にを美化するが、オタサーの内部崩壊の方が、人が死なない分、悲惨で惨めな結果になる。
「頼むから、他言無用で」
「どうしよっかなぁ」
すっかりご機嫌になった彩歌だが、この情報を放置するのはあまりに危険だ。
「そう。なら”強制神降し”で、ちょっとおバカさんになってもらおうか」
最近知ったことだが、愛知の使う”神降し”は強制力がある。なぜかはわからない。ユグドラシステムのバグとしか言えないし、システムの修正を要請したら「面倒な仕事を増やすな」という回答しか返ってこなかったので原因はわからない。わからないが、愛知が”神降し”を要請した後、断ったり返事をしなかったら、グナーが強制的に地上へ顕現させられてしまう。これを愛知は”強制神降し”と呼んでいる。
顕現した神の威光で、周囲の人間の視覚に膨大な量の情報が流れ込んでしまうから、普段は人がいない場所でしか”神降し”を使わないし、グナーも愛知も周りの迷惑になるので人がいない場所でしか使わない。が、周囲の人間の脳に、そこそこのダメージを与える必要がある場合は、有効な神託魔法だ。試したことはないが、ショックで少しだけ記憶を失う程度のダメージは、期待できるはずだ。
『ちょっと待ってください。今、自室なんで服着ます』
女神は裸族だった。
「ごめんなさい。調子に乗りました。後光がうざいんで、やめてください」
「愛知。念のため殺っとくべきだよ。うざい後光で」
『うぅ。私をそんな風に使わないでよ。あと、うざいって言わないでよ。好きで後光垂れ流してるわけじゃないんだから』
今度は、女神が泣きそうだ。
「サイちゃんを立てたら、グナーが立たんか」
「拗ねたの?」
「ああ。まあ、啜り泣きがうざいだけだから、問題はない」
ガン泣きされると、周りの音が聞こえなくなるので、害があるからすぐに宥めなければいけない。
「帰りに、コンビニでプリン買ってあげれば大丈夫だよ」
『神様なのに安っぽい! 食べるけどね!』
愛知は、100円のプリンで機嫌を直してくれる安い神様で良かったと、心の底から思う。
『あ、こないだテレビでやってた、あの店のシュークリームも付けて』
「ちょっと黙れ」
調子に乗ると高くなるので、黙らせておく。
本来の予定では、屋上で告白してもらうつもりでいたが、待ちきれなくなった篠崎が放課後の屋上に向かう途中の佐崎を待ち伏せ、三年生の教室が並ぶ廊下という衆人環視の状況で、盛大に告白&自らの性癖暴露&お仕置き懇願のコンボを叩き込み、望み通りのお仕置きを佐崎から頂くというちょっとした騒動があった。
「ま、結果オーライ、か」
放課後最後の相談を終え、椅子に座ったまま伸びをする。
先程駆け込んできた才人から廊下で起きた珍事を聞いた時は、篠崎の顔面を蹴りに行こうかと思ったが、一悶着あったものの佐崎の方も満更ではなかったそうなので、これ以上のアフターサービスは不要と判断した。てか、関わりたくない。
「あんな変態ですら蓼食う虫がいるのに、俺にはいないんだな。……美少女限定で」
『虫と言っても蝶限定ですか』
「あ、俺、蝶苦手。おなかの辺りが気持ち悪いじゃん?」
『ああ、そうでしたね。では……玉虫?』
「玉虫色の? あれを、お金出して買う人もいるんだよね。理解できないな」
『それも蓼食う虫ですね』
ふと気づいたら、香が女神とのそんなやり取りを不思議そうに見ていた。
「ん? 雪平さん? どした?」
「いえ。本当に、神様と会話しているんだなって」
「ああ。雪平さんは、俺とグナーが話してるとこ、初めて見たの?」
「いえ。何度か見ましたけど……その……神様に対して、その……気安いな、と」
この会話も、神が聞いているのだろう、と考えて、必要以上に言葉を選んでいるのが窺える。
「んー。他の神は知らんけど、グナーはあれだ……えーっと、そう、友達感覚?」
『敬いなさい』
「敬ってたよ。最初だけ」
『一時間も敬っていませんでしたね』
それからしばらく、雪平にグナーとの思い出話を聞かせていたら、下校時間になっていた。その間、才人は微妙な顔で二人の様子を見ていたのが、愛知の心に引っ掛かっていた。
「で? 二人共、なにを落ち込んでんだ?」
愛知達とは反対方向の電車に乗る香を見送り、地元駅の駅前にある喫茶店で冷え切った体にコーヒーを流し込んでの、愛知の言葉だ。
「「……」」
向かいに座った兄妹が、同じように目を逸らす。
愛知自身も答えがわかっていて聞いたので、返事がなくても気にしない。そのかわり、悪戯心から、ピンポイントで急所を抉ってみる。
「まず、才人は……ほぼ二人でやってきた恋愛相談に、妹のサイちゃんはともかく、赤の他人の雪平さんが入り込むまれたのが面白くないってとこか? んで、サイちゃんは、あれかな? 自分がやるより、雪平さんがスケジュール管理した方が効率良く相談を捌けたのが……えー。泣くほど?」
才人は悔しさを噛みしめていたが、彩歌は、歯を食いしばりながら目に涙を浮かべていた。
「泣いて、ないもん」
誰が見ても、涙が零れる寸前だ。
店内には他に客がいないが、店主からは”元彼の愛知に別れ話をしている彩歌と、恋人を慰める今彼の才人”に、見えているかもしれない。
「で、実際、どうなの?」
彩歌が零れそうな涙を、愛知が差し出したハンカチで拭き取る。
「私だって、やればできるもん」
危うく「なら、やれよ」と言いそうになったが、グッと堪える。
「……こんなことを今更言うのも、ちょっと恥かしいんだけどさ。……俺はさ、役に立つからお前らとつるんでるわけじゃないんだよ」
正面の兄妹が、視線で話の続きを促す。
「なんと言えばいいか……ああ、居心地かな? 居心地がいいから、一緒にいるんだろうな。多分」
今まで深く考えたことがなかったから自信はないが、そう間違ってはいないはずだ。
「お前らだって、俺が役に立つから、つるんでるわけじゃないだろ?」
毎朝起こしてもらって、朝食も、お弁当も、夕飯も用意してもらって、お風呂の用意もしてもらって、ゴミ出しもしてもらって、休日に纏めて洗濯してもらって、自分の部屋どころか家中の掃除もしてもらう。おはようからお休みまで竜崎兄妹の世話になっている。そんな愛知が「役に立つ」云々を口にしているので女神は鼻で嗤っていた。
「まあ、そうなんだけど」
才人もグナーと同じく「お前が言うな」と思っているのか、少し納得がいかないようだ。
「毎年、十二月は忙しかったけど、今年はゆとりがある。雪平さんのお陰、だろ?」
渋々ながら頷く二人。
「お陰で、久しぶりに三人でゆっくりできる」
愛知の家でノンビリ過ごすことはあっても、外でこんな時間を過ごすのは久しぶりだ。
「よくよく考えたら、俺……お前ら以外と、こんな風に過ごしたことないな」
その言葉に、才人と彩歌の機嫌は良くなるが、反対に愛知の気分は落ち込む。
「あれ? 俺……友達いない?」
ボッチではない。クラスメートと挨拶するし、普通に昨日見たドラマの話とかもする。
しかし。
「誰かの家に招かれたこともないし、招いたこともない」
「ん……そういえば、俺も誰か招いたこと、ない」
愛知の呟きに才人も答える。実際には、招いたことはないが、招かれたことはある。が、愛知への気遣いから口には出さない。
「私は何回か……あれ? あの子達って、兄さんを見に来てたような……」
「才人目当ての友達か」
つい”友達”を強調してしまい、彩歌が再び涙目になる。
才人の「なんとかしろ」的な視線に、頭をボリボリ掻く。
「サイちゃん。今は雪平さんが友達でしょ? 今度、家に誘ってみたら?」
「んー。女子の間で協定ができてて、抜け駆け防止のために、私の家に泊まりに行っちゃダメってことになってる」
「ああ。なんかあったな」
才人のファンクラブ的な非公認組織が学内にあって、男にはわからないルールが色々と作られていると聞いたことがある。
「あれ? でも、あの組織って、潰れたって言ってなかった?」
「潰れてませんよ。分裂しただけです。分裂しても、組織同士の横の繋がりはあるから、泊まりのルールは生きています」
「へー。なんで分裂したの?」
「それは……どうしても聞きたいですか?」
言いにくそうな彩歌の表情から、碌な理由ではないんだろうとは予想できるが、気になる。
「どうしても、ってわけじゃないけど、気になる」
「逆カプ問題です」
「ん? ぎゃ、く……ああ。あの逆カプ? え? 才人の? ん? 待て。才人のファンクラブの話だよな?」
「ええ。組織内に腐女子が増殖して、才×愛か愛×才で揉めて、この二派閥が分裂したんです」
現在では、純粋に才人に恋する女の子のグループと、才×愛派の腐女子グループと、愛×才派の腐女子グループに分かれている。
「聞きたくない真実だ」
愛知が頭を抱える。
「さらに言うと、腐女子グループは、兄さんの気持ちに気づいています」
「なんで兄にそんな真実を聞かせる」
才人がテーブルに突っ伏す。
「もう一つ言うと、兄さんが愛×才派だってこともバレてます」
「「もう勘弁して」」
愛知もテーブルに突っ伏す。
泣かされた仕返しができて、笑顔でコーヒーを飲む彩歌。
「ちなみに、薄い本の売り上げは、才×愛の方が上です」
『私は愛×才派です』
「神が少数派につくなよ」
「それを聞いたら、聖戦が始まるかも」
彩歌の呟きにゾッとする。
神が味方についた陣営が、どのような反応をするか。歴史が証明している。
多くは増長し、他者への思いやりをなくし、自分達の地位を脅かされるのを恐れ、疑心暗鬼になり味方同士で争い、内部崩壊する。あくまで国家レベルの組織での話だが、腐女子サークルでも同じだ。むしろ、国家レベルの組織であれば人死にを美化するが、オタサーの内部崩壊の方が、人が死なない分、悲惨で惨めな結果になる。
「頼むから、他言無用で」
「どうしよっかなぁ」
すっかりご機嫌になった彩歌だが、この情報を放置するのはあまりに危険だ。
「そう。なら”強制神降し”で、ちょっとおバカさんになってもらおうか」
最近知ったことだが、愛知の使う”神降し”は強制力がある。なぜかはわからない。ユグドラシステムのバグとしか言えないし、システムの修正を要請したら「面倒な仕事を増やすな」という回答しか返ってこなかったので原因はわからない。わからないが、愛知が”神降し”を要請した後、断ったり返事をしなかったら、グナーが強制的に地上へ顕現させられてしまう。これを愛知は”強制神降し”と呼んでいる。
顕現した神の威光で、周囲の人間の視覚に膨大な量の情報が流れ込んでしまうから、普段は人がいない場所でしか”神降し”を使わないし、グナーも愛知も周りの迷惑になるので人がいない場所でしか使わない。が、周囲の人間の脳に、そこそこのダメージを与える必要がある場合は、有効な神託魔法だ。試したことはないが、ショックで少しだけ記憶を失う程度のダメージは、期待できるはずだ。
『ちょっと待ってください。今、自室なんで服着ます』
女神は裸族だった。
「ごめんなさい。調子に乗りました。後光がうざいんで、やめてください」
「愛知。念のため殺っとくべきだよ。うざい後光で」
『うぅ。私をそんな風に使わないでよ。あと、うざいって言わないでよ。好きで後光垂れ流してるわけじゃないんだから』
今度は、女神が泣きそうだ。
「サイちゃんを立てたら、グナーが立たんか」
「拗ねたの?」
「ああ。まあ、啜り泣きがうざいだけだから、問題はない」
ガン泣きされると、周りの音が聞こえなくなるので、害があるからすぐに宥めなければいけない。
「帰りに、コンビニでプリン買ってあげれば大丈夫だよ」
『神様なのに安っぽい! 食べるけどね!』
愛知は、100円のプリンで機嫌を直してくれる安い神様で良かったと、心の底から思う。
『あ、こないだテレビでやってた、あの店のシュークリームも付けて』
「ちょっと黙れ」
調子に乗ると高くなるので、黙らせておく。
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