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三章 ユニ
第三話 同期の想い
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少し前に同期で集まった時、彼女の姿がそこにはなかった。
研修中に口説いた中では一番の好みだったのに、ついつい上から目線で口説いてしまったのであっさり玉砕した。
(正確に言うと、口説かれた自覚がなかったようだけど)
先日の同期との飲み会で知ったことだ。
(まさか、女神と話してる所を口説いてしまうとはな)
神託の巫は、女神が話している間は周りの音が聞こえない、というのは割と有名な話として聞いていた。稀に神が話していても周りの音を聞ける巫がいるらしいが、彼女は前者のようだ。
彼女が地上に降りてくると聞いて、居ても経ってもいられなくなり、仕事先からだいぶ離れた空港で待ち伏せする。
(なんかストーカーみたいだな)
最近、近くでテロがあったらしく物々しい警備状態だ。悪い事をしているわけではないけど、少しソワソワする。
それほど待たずに彼女を見つけて話しかける。
また上から目線になってしまった。
同期から聞いていたが、彼女にとって担当神は母親代わりらしく、担当神を馬鹿にするような発言に怒っていたのかもしれない。
(これは自業自得だな。猛省しよう)
その後の彼女の対応には、少し納得できないけれど。
けど、社内で会っても無視されるかテキトウに合槌を打つだけの彼女と久しぶりに会話できたのは、純粋に嬉しい。
彼女はフライトの時間らしく、会話は打ち切りとなった。
少し残念だが仕方ない。彼女の後姿を見送る。
相変わらず、背筋がピンと伸びた美しい歩き方だ。
まあ、前回会ってから一月も経っていないから、そうそう変わらないけれど。
(おっと、いけない)
彼女の後姿を凝視してしまった。
先日の飲み会で、同期の一人に言われた言葉を思い出す。
「押してダメなら引いてみろ」
見送る時、いつまでも見ていたら「必死過ぎ」と思われるらしい。そう言った同期の彼に、恋人はいないはずだから話半分に聞いていたが、実践する良い機会だ。
後ろ髪を引かれる思いを振り切って、彼女と反対方向へ歩き出す。
途中で振り返りたい衝動に襲われたので、用もない曲がり角を曲がって、こっそり彼女の様子を覗き見る。
彼女も振り返っていたのか、丁度歩き出すタイミングだった。
(これは、あいつの説が正しかったということか?)
情報の価値は情報元で決まる。恋人がいない情報元の顔を思い浮かべる。にやけた顔を信頼するべきか悩ましい。
(まあいい。彼女と話せただけでも良しとしよう)
そう思うことにした。
そう思ったら少しだけ気分が良くなり、仕事をサボってここまで来た負い目も、これから戻って怒られることも忘れて、軽い足取りで彼、ユーシス・ナカハラは仕事場へと向かった。
研修中に口説いた中では一番の好みだったのに、ついつい上から目線で口説いてしまったのであっさり玉砕した。
(正確に言うと、口説かれた自覚がなかったようだけど)
先日の同期との飲み会で知ったことだ。
(まさか、女神と話してる所を口説いてしまうとはな)
神託の巫は、女神が話している間は周りの音が聞こえない、というのは割と有名な話として聞いていた。稀に神が話していても周りの音を聞ける巫がいるらしいが、彼女は前者のようだ。
彼女が地上に降りてくると聞いて、居ても経ってもいられなくなり、仕事先からだいぶ離れた空港で待ち伏せする。
(なんかストーカーみたいだな)
最近、近くでテロがあったらしく物々しい警備状態だ。悪い事をしているわけではないけど、少しソワソワする。
それほど待たずに彼女を見つけて話しかける。
また上から目線になってしまった。
同期から聞いていたが、彼女にとって担当神は母親代わりらしく、担当神を馬鹿にするような発言に怒っていたのかもしれない。
(これは自業自得だな。猛省しよう)
その後の彼女の対応には、少し納得できないけれど。
けど、社内で会っても無視されるかテキトウに合槌を打つだけの彼女と久しぶりに会話できたのは、純粋に嬉しい。
彼女はフライトの時間らしく、会話は打ち切りとなった。
少し残念だが仕方ない。彼女の後姿を見送る。
相変わらず、背筋がピンと伸びた美しい歩き方だ。
まあ、前回会ってから一月も経っていないから、そうそう変わらないけれど。
(おっと、いけない)
彼女の後姿を凝視してしまった。
先日の飲み会で、同期の一人に言われた言葉を思い出す。
「押してダメなら引いてみろ」
見送る時、いつまでも見ていたら「必死過ぎ」と思われるらしい。そう言った同期の彼に、恋人はいないはずだから話半分に聞いていたが、実践する良い機会だ。
後ろ髪を引かれる思いを振り切って、彼女と反対方向へ歩き出す。
途中で振り返りたい衝動に襲われたので、用もない曲がり角を曲がって、こっそり彼女の様子を覗き見る。
彼女も振り返っていたのか、丁度歩き出すタイミングだった。
(これは、あいつの説が正しかったということか?)
情報の価値は情報元で決まる。恋人がいない情報元の顔を思い浮かべる。にやけた顔を信頼するべきか悩ましい。
(まあいい。彼女と話せただけでも良しとしよう)
そう思うことにした。
そう思ったら少しだけ気分が良くなり、仕事をサボってここまで来た負い目も、これから戻って怒られることも忘れて、軽い足取りで彼、ユーシス・ナカハラは仕事場へと向かった。
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