紅の神子

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第二十三章 大人への過渡期

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 もう。

 なにも考えられない。

「兄さんがオレの愛撫で感じてる証拠オレにちょうだい。抱けない代わりに一度じゃ済まさないよ」

 恐ろしい宣言だったが、もう言い返す気力もなかった。

 脳師まで駆け登った快感が頂点に達する。

 吐き出した快感の残辛を暁は宣言通りすべて飲んだようだった。

 漏れる喘ぎだけが現実を証明している。

「ダメだよ、兄さん。まだダメだ。兄さんの全部、オレにみせて」

 残っていた衣服もすべてはぎ取られ、裸をさらけ出されたが羞恥は感じなかった。

 弟だからというのもある。

 でも、あんなことまでされて、今更裸くらいで照れると言われても無理だ。

 ただ感じる視線に身の置き所がなくなる。

「綺麗だよ、兄さん。小さいころに見ていたときより、ずっと綺麗になってる」

 兄弟なのだから普通に一緒に風呂にだって入った。

 今更綺麗もなにもないと思うのだが、暁は真則なようだった。視線が全身を追った。

 さすがに恥ずかしくなる。

 暁の見せる顔も感じる視線の執拗さも、弟ものではなかったからだ。

 暁が後ろから指を引き抜いて、ようやく呼吸が整いだす。

「暁。弟の悪戯にしても度が過ぎてないか?」

「まだそんなこと言ってるの? その『弟』にされて出したのだれだったかなあ?」

「男なんだから必然的にそうなるだろっ。あそこまでされたらっ」

「兄さん。忘れないでね?」

 真剣な顔の暁に言われ怪訝な気持ちになる。

 もう一度下肢へと顔を埋めるときに、暁ははっきりとこう言った。

「オレはもう13歳の子供じゃない。ひとりの男なんだよ」

「暁」

 確かにそう宣言する暁の肢体は、すでに少年のものではなくなっていた。

 鍛えていることもあって逞しい身体付きだ。

「子供扱いするから、こうなるんだよ?」

 屁理屈だと言おうとしたが、襲いかかってきた快感に声にならなかった。

 何度イカされたが覚えていない。

 暁は宣言どおり抱かなかったが、その言葉を証明するように、一度や二度では解放しなかったからだ。

「アキラもう、出ない。出ない、から、あ、きら」

 半分夢心地のまま何度もそう懇願した。

 ひとりの男に豹変した暁の腕の中で。

 気絶する瞬間、透は暁が思ってもいないことを考えていた。

(にーちゃ、にーちゃって後を追いかけてきていた暁が、いつの間にかこんなにカッコよくなって。神って損だよなあ。俺は変われないのに、暁はどんどん大人の男に変わっていくんだ。なんかやだなぁ、それ。俺を置いていくなよ、暁)

 そんなことを考えながら透は意識を失った。

 腕の中で気絶した透を眺めで、暁はやるせない息を吐く。

 ここまでしたのに透は気づかなかった。

 暁が何故そういうことをするのか、という根本的な理由に。

 そうしてここまで好き勝手に抱いていながら、本当の意味で透を抱かなかったのが何故なのか、ということにも。

 同意されてないのに抱けるわけがない。

 愛されてないのに驅だけもらっても嬉しいわけがない。

 だから、最後の一線は越えてはならないと自制した。

 諦めるつもりだった。

 後に誤解だと知ったが、ランドールと透の婚約の事実を知ったとき、自分が犯した罪を知ったとき、その証が生きている現実。

 すべてが暁に自制を求めた。

 だから、毎晩透がやってきて暁の隣で無防備に寝ていても、暁はじっと我慢して寝顔を見ていただけだった。

 透がいた夜は暁は一睡もしていなかった。

 伸ばせば触れられる距離に想い人がいるのに眠れるわけがない。

 隆からはよく我慢できるなと感心されていたし、いつか我慢しきれなくなるんじゃないかと危惧されてもいた。

 そうなる前に透を遠ざけた方がいいとも言われていたのだ。

 知らなかったのは透だけだ。

 眠れずにそっと頬に触れたり、唇の形を指先でなぞったり。

 そんな夜を何度過ごしただろう。

 それでも透はランドールのものだから。

 そう思って必死になって諦めようとしていたのに、このまま弟でいようとしていたのに。

 兄をランドール王の妃にしたがっているのは、本人やその側近たちで、兄にその気はないみたいだと悟るとその自制も吹っ飛んだ。
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