転生王女は美味しいものがお好き

紫月

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美味しいは幸福

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唐揚げには掟などない。
作り方や好みなど、それこそ個人の好みが大きく別れる料理だからだ。
それこそ使う調味料も人によって違う。
なのでここでは私流の唐揚げを紹介しようと思う。
鶏もも肉……1~2枚
※料理酒……大匙1
※醤油……大匙1
※砂糖……小匙1
※塩……小匙1/2
※胡椒……少々
※すりおろし生姜、ニンニク……各少々
卵……一個
片栗粉……大匙5
鶏もも肉を一口大に切り、※を混ぜ合わせたつけダレに10~15分漬け込む。
肉を切る前にフォークで刺したり、水に浸したり、塩麹に漬けるなどすると肉が柔らかくなるが、私はそのままでもいい派だ。
漬け込んだ後卵を加えよく混ぜ、更に片栗粉を入れる。
ここで竜田揚げを好む人は味の染みた鶏肉を、一度キッチンペーパーで軽く拭き片栗粉をまぶす。
小麦粉でも勿論美味しいが、衣をサクサクいわせたいなら断然片栗粉がお勧めだ。
あるいは半々にしてもいいだろう。
180℃に熱した油に入れ3分半揚げる。
温度が低すぎると、油を吸ってベチャベチャした仕上がりになるので要注意だ。
一度取り上げ、少し油の温度を上げ200℃くらいにしたら、約20秒ほど油に潜らせて完成だ。
高温の油に潜らせることで油が切れ、油っこくなく大変ジューシーな唐揚げが出来上がる!


「で?なんでまだサーシャ様は食堂で料理作ってるんですか?」
フェリシア様が唐揚げを頬張りながら、質問を投げかけてくる。
美味しいと褒められたのでついつい講釈をたれてしまったのだが、いけなかっただろうか?
「お姉様の料理好きはズルズル……病気ですからズルズル……治りませんわズルズル……。」
マーシャが美味しそうにラーメンを啜りながら相槌をうっている。
手間がかかるので食堂向けのメニューではないが、愛する妹のため、短期間ではあるが食堂でラーメンを出すことにしたのだ。
ラーメンは少量では作れないから勿体ないじゃないか。
「あぁ、サラちゃん!
新メニューのラーメン、最高に美味いよ!
やはり俺と結婚してくれ!」
「あらエーミル様、いらっしゃい!
今日は何にします?」
「サラちゃんをお持ち帰りで頼む!」
「馬鹿言うな!
サラは俺の家に来るんだ!
サラ、今すぐ式を挙げよう。」
「フラン様、勇者と戦う覚悟がおありで?」
「勇者?
誰であろうと戦ってやる!
サラ、婚約者とは誰だ!?」
「俺だが。」
「ヒッ!!」
エドヴァルド様が食事をしに食堂にやってきた。
「それでフラン騎士団隊長、俺と戦うか?」
「イ………イエ……滅相モナイデス……。」
大男のフラン様が面白いくらい震えている。
結局私はエドヴァルド様の婚約者におさまった。
スーさんの言った通りである。
エドヴァルド様のプロポーズを聞いて、あぁ、この人だと思った。
正直まだ好きかどうかも分からないが、長く続く人生では同じ未来を目指せる夫がいいと思ったのだ。
所詮私は私でしかないので、飯テロ世界征服活動は一生続けていくことだろう。
美味しい食事は人を笑顔にしてくれる。
だが全ての民が飢えない世界など、簡単に実現出来るほどそんなに甘くはない。
それでも、諦めるよりは何倍も良いと思うのだ。
10年も努力をし我慢強く待ってくれた彼なら、そんな甘くない夢の実現も一緒に乗り越えてゆけると思う。
それにほら、時間の問題じゃないかな?
「サーシャ、今日のハンバーグは一段と美味しいな!
チーズ入りとか、天才か!」
そう言って美味しそうにハンバーグを頬張る彼の笑顔を見てると、なんだかニヤニヤしてしまってこそばゆい感じがするのだ。
彼を好きになるのに、そんなに努力はいらないと思う。


「ステファン国王様、実は誰を選んでも良いと言いながら、勝算があったのでは?」
「ふふ、何のことかな?
でも、エドは彼女の料理を食べてないときから彼女の事が好きだったんだ。
エドがサーシャ姫に惹かれたのは、その美しい内面だ。
自分の内面が好かれてると分かるのは、とても安心できるんじゃないかな?」
「あぁナルホド。
お姉様、女の子の美的感覚がちょっとオカシイから、自分に自信がないのかも。」
「ん?そうなのかい?」
「ふふ、巨漢の私を可愛いなんて本気で思ってるのは、お姉様くらいですわ。」
「そんなことないよ、君も充分可愛い。」
「お世辞でも嬉しいですわ。」
食堂の片隅でそんな会話がされていたことなど、エドヴァルドとサーシャは知らない。

「サラさんがサーシャ王女様だったなんて……。
子爵家の僕には所詮高嶺の花じゃないか……。」
「ミカル様はいつものオムライスですか?」
「グスン……、はい。
いつものおまじないもお願いします……。」
「「「おまじない???」」」
「はーい、ではハートを描いて……。
美味しくなーれ!萌え萌えキュン!」
「「「!!!!!」」」

最初は冗談で始めたミカル様限定のサービスだったのだが、どういうわけか皆がやってくれと懇願するようになり爆発的な人気になった……。

「男って単純ですね……。」
面倒なので、ヒロインを萌えキュン係として雇用するのはどうだろう……?
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