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決着
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大混乱を極めたため、ひとます落ち着こうと関係者全員で私が滞在している離宮までやってきた。
ひとまず話を整理すると、極上イケメンの彼はエドヴァルド様という名前で、この方が王太子なのだそうだ。
10年前に私と会って話をし、その時に妃に迎えることを心に決めたのだという。
その後名前を勘違いしたまま10年を過ごし、マーシャに結婚を申し込むも、どんなミラクルが起きたのか正しく私が嫁ぐことになった。
が、エドヴァルド様は名前を勘違いしたままだったために、急遽婚約の取りやめが決まった……というのがことの端末らしい。
ここに至って1つ分からないのは、10年前にエドヴァルド様に会って話したということ。
全く覚えていないのだが。
カイルとリナがお茶を給仕してくれているのだけど、何故かエドヴァルド様の前にはお茶がない。
さすがに失礼なので嗜めると、珍しくカイルが言い返してきた。
「姫様!失礼を承知で申し上げます。
エドヴァルド様は10年ほど前に俺たち兄妹を薄汚い子供と卑下し、王族だから敬えと権力を振りかざした方です!
挙句に姫様を妃に迎えたのは間違いだと失礼なこと言ったのです!
姫様が気にしなくても、俺たちが許せません!」
ふとこの兄妹が城に来た日を思い出す。
戦地から命からがら逃げてきて、今にも死にそうだったのだ。
なんか偉そうな子供がいたような気もするが、一刻も早く2人を助けたくて御託を並べて言い負かしたような気がする。
「そうか、お前たちはあの時の……。
言い訳にしかならないが、俺はあのとき王族という肩書きに胡座をかいた、ただのクソガキだったんだ。
すまなかった。」
カイルは頭を下げられたことに驚き、気まずさに目を逸らした。
「俺の方こそ……姫様との面会を邪魔してすみませんでした……。」
どうやらエドヴァルド様は何回も謝罪に離宮に訪れてくれていたらしい。
だが10年前の出来事から反抗心のあるカイルが阻止していたらしい。
本当なら不敬罪で処罰を受ける行為だが、エドヴァルド様は寛容に許してくださった。
本来王族は下の者に頭を簡単に下げてはいけない。
威厳を示すために必要なことだからだ。
でも私は身分がいかに下の者であろうとも、自分が悪いと思ったら素直に頭を下げる彼を好ましく思う。
「ええと、エドヴァルド様。
よく覚えてはいないのですが、私は生意気なことを言ったように思います。
なのでやはりマーシャを見初められたのではないですか?」
「嫌だわお姉様、あの後すぐカイル達の元に向かったから知らないだけですわ。
私見てましたのよ?
エドヴァルド様はお姉様の後ろ姿を、まるで少女のように頬を染めて見つめておいででしたわ。」
「少女のよう………だったのか……。」
「なのにオスカリウスからの使者が私を指名してきたので、ちゃんと間違いだとただし、お姉様をお嫁に送り出しましたのに。」
「そうなの?
名前を間違えられるのはいつもの事だから気にもしてなかったのだけど……。」
「ハッ!そうだ父上!
指差しまでして姫の名前を確認したのに、何故私に嘘を教えたのですか!?」
「え?エドヴァルド様、スーさんの視力が悪いこと知らないのですか?」
「え?」
「テヘッ☆」
お茶目なオッチャンぶるのはやめてほしい。
ナルホド、全てはスーさんことステファン国王様が原因だったらしい。
一気にエドヴァルド様が殺気だってる……。
「で?サラちゃんはどうしたいんだい?」
「え?」
「君を好いている男は沢山いる。
僕としては君にお嫁さんに来てもらうのが一番嬉しいが、王女としての務めなど気にしなくていい。
君が未来を一緒に歩みたい男を選ぶといい。
国王としてそれを許可するよ?」
「父上!?」
それは許されることなのだろうか?
私は王女だ。
国のために生き、嫁いだ先でもまたお家に貢献するために存在する。
貴族社会とはそんなものなのだ。
そんな乙女ゲームのような選択肢が許されるわけないと思っていた。
「サーシャ様。
許されるなら俺は貴女を妻に迎えたい。
貴女がいつも笑顔でいられるよう、剣となり盾となり貴女を守ろう。
どうか俺と共に生きてください。」
キュンときた!
美貌のアレクシス様にそんな風に真摯に口説かれて、ときめかない乙女がこの世に存在するだろうか?
まるでイベントスチルを見てるようだ!
や、本物の乙女ゲームなんだけど。
するとエドヴァルド様はどこか悲壮感漂う表情で、でもしっかり私の目を見て言葉を綴る。
「サーシャ姫、貴女を随分振り回してしまったようだ、すまなかった。
アレクはいい男だ。
正直勝てる気がしない。
だが、貴女を諦めることも出来ない。
10年間ずっと貴女だけを想ってきた。
貴女となら民が餓えることのない、素晴らしい国を作れると思う。
どうか、どうか妃になってほしい。」
なんと色気のないプロポーズなのかと思った。
私のために何かをしてくれるのではなく、国のために私に働けという。
「ふふ、決着がつきましたわね。」
マーシャには私が誰を選ぶか分かってしまったようだ。
生まれたときからずっと一緒の双子だものね。
乙女がトキメクような台詞が出てこなかった自覚があるのか、エドヴァルド様が今にも泣きそうな顔をしている。
ちょっと涙目だ。
笑っちゃワルイヨ。
ひとまず話を整理すると、極上イケメンの彼はエドヴァルド様という名前で、この方が王太子なのだそうだ。
10年前に私と会って話をし、その時に妃に迎えることを心に決めたのだという。
その後名前を勘違いしたまま10年を過ごし、マーシャに結婚を申し込むも、どんなミラクルが起きたのか正しく私が嫁ぐことになった。
が、エドヴァルド様は名前を勘違いしたままだったために、急遽婚約の取りやめが決まった……というのがことの端末らしい。
ここに至って1つ分からないのは、10年前にエドヴァルド様に会って話したということ。
全く覚えていないのだが。
カイルとリナがお茶を給仕してくれているのだけど、何故かエドヴァルド様の前にはお茶がない。
さすがに失礼なので嗜めると、珍しくカイルが言い返してきた。
「姫様!失礼を承知で申し上げます。
エドヴァルド様は10年ほど前に俺たち兄妹を薄汚い子供と卑下し、王族だから敬えと権力を振りかざした方です!
挙句に姫様を妃に迎えたのは間違いだと失礼なこと言ったのです!
姫様が気にしなくても、俺たちが許せません!」
ふとこの兄妹が城に来た日を思い出す。
戦地から命からがら逃げてきて、今にも死にそうだったのだ。
なんか偉そうな子供がいたような気もするが、一刻も早く2人を助けたくて御託を並べて言い負かしたような気がする。
「そうか、お前たちはあの時の……。
言い訳にしかならないが、俺はあのとき王族という肩書きに胡座をかいた、ただのクソガキだったんだ。
すまなかった。」
カイルは頭を下げられたことに驚き、気まずさに目を逸らした。
「俺の方こそ……姫様との面会を邪魔してすみませんでした……。」
どうやらエドヴァルド様は何回も謝罪に離宮に訪れてくれていたらしい。
だが10年前の出来事から反抗心のあるカイルが阻止していたらしい。
本当なら不敬罪で処罰を受ける行為だが、エドヴァルド様は寛容に許してくださった。
本来王族は下の者に頭を簡単に下げてはいけない。
威厳を示すために必要なことだからだ。
でも私は身分がいかに下の者であろうとも、自分が悪いと思ったら素直に頭を下げる彼を好ましく思う。
「ええと、エドヴァルド様。
よく覚えてはいないのですが、私は生意気なことを言ったように思います。
なのでやはりマーシャを見初められたのではないですか?」
「嫌だわお姉様、あの後すぐカイル達の元に向かったから知らないだけですわ。
私見てましたのよ?
エドヴァルド様はお姉様の後ろ姿を、まるで少女のように頬を染めて見つめておいででしたわ。」
「少女のよう………だったのか……。」
「なのにオスカリウスからの使者が私を指名してきたので、ちゃんと間違いだとただし、お姉様をお嫁に送り出しましたのに。」
「そうなの?
名前を間違えられるのはいつもの事だから気にもしてなかったのだけど……。」
「ハッ!そうだ父上!
指差しまでして姫の名前を確認したのに、何故私に嘘を教えたのですか!?」
「え?エドヴァルド様、スーさんの視力が悪いこと知らないのですか?」
「え?」
「テヘッ☆」
お茶目なオッチャンぶるのはやめてほしい。
ナルホド、全てはスーさんことステファン国王様が原因だったらしい。
一気にエドヴァルド様が殺気だってる……。
「で?サラちゃんはどうしたいんだい?」
「え?」
「君を好いている男は沢山いる。
僕としては君にお嫁さんに来てもらうのが一番嬉しいが、王女としての務めなど気にしなくていい。
君が未来を一緒に歩みたい男を選ぶといい。
国王としてそれを許可するよ?」
「父上!?」
それは許されることなのだろうか?
私は王女だ。
国のために生き、嫁いだ先でもまたお家に貢献するために存在する。
貴族社会とはそんなものなのだ。
そんな乙女ゲームのような選択肢が許されるわけないと思っていた。
「サーシャ様。
許されるなら俺は貴女を妻に迎えたい。
貴女がいつも笑顔でいられるよう、剣となり盾となり貴女を守ろう。
どうか俺と共に生きてください。」
キュンときた!
美貌のアレクシス様にそんな風に真摯に口説かれて、ときめかない乙女がこの世に存在するだろうか?
まるでイベントスチルを見てるようだ!
や、本物の乙女ゲームなんだけど。
するとエドヴァルド様はどこか悲壮感漂う表情で、でもしっかり私の目を見て言葉を綴る。
「サーシャ姫、貴女を随分振り回してしまったようだ、すまなかった。
アレクはいい男だ。
正直勝てる気がしない。
だが、貴女を諦めることも出来ない。
10年間ずっと貴女だけを想ってきた。
貴女となら民が餓えることのない、素晴らしい国を作れると思う。
どうか、どうか妃になってほしい。」
なんと色気のないプロポーズなのかと思った。
私のために何かをしてくれるのではなく、国のために私に働けという。
「ふふ、決着がつきましたわね。」
マーシャには私が誰を選ぶか分かってしまったようだ。
生まれたときからずっと一緒の双子だものね。
乙女がトキメクような台詞が出てこなかった自覚があるのか、エドヴァルド様が今にも泣きそうな顔をしている。
ちょっと涙目だ。
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