46 / 354
第3章:エルフの国と優しい女王編
第2話:適性武器
しおりを挟む
「じゃあ、次はあたしね! お願いします!」
リズが緊張した面持ちで、ラズベリーにジョブチェンジを頼む。
ラズベリーは同じ要領で、下級職のジョブ候補を表示させる。
『スナイパー』『暗殺者』『研究者』『採集名人』など様々なジョブがある。
どうやら聞いていた通り、冒険者と採集者では派生する上位ジョブがまるっきり違うようだ。
冒険者の派生は近接戦闘ジョブが多かったが、採集者の派生は遠距離戦闘ジョブと素材採集系のジョブみたいだ。
「あたしは……これにしようかなぁ」
リズが選んだのは下級ジョブ『探検家』だった。
「そのジョブは、ダンジョンなどを探索する時に便利なスキルを覚えるジョブですね。採集だけじゃなく場合によっては戦いに転じることも可能です」
「うん、これにするわ。あはは……やっぱり、レオやシレイドと戦いたいからさ……」
頭を掻きながら、苦笑いするリズ。
やっぱり、現状の自分の立場に気まずさを感じているようだ。
そんなリズを見て、俺は密かに決心する。
「分かりました」
ラズベリーがリズのジョブをチェンジさせた。
名前:リズ・オレイア
年齢:19歳
ジョブ:探検家Lv1
能力:剣適性D、短剣適性E、突剣適性E、双剣適性E、大剣適性E、槍適性E、斧適性E、大斧適性E、弓適性D、魔法適性E
スキル:『鑑定』『探査』『マッピング』『エネミーカウント』
「スキルが三つも増えた! これであたし、もっと役に立てる……!」
隠れて何度もガッツポーズをするリズ。
そんな彼女にもっと自信を与えたいと思った。
ラズベリーにお礼を言い、ギルドを後にした俺はある場所に向かう。
「どこ行くの? レオ?」
「ん? ちょっとな、まあついてきてくれ」
リズの問いかけをはぐらかし、ついた先は……。
「鍛冶屋……?」
リズが首をひねる。
「ご主人様……何か武器を作るの?」
「鋭いな、シレイド」
シレイドの問いに、やんわり答える。
「らっしゃい! おや、この間、コボルトの素材を売りに来たあんちゃんじゃないか。今日はどうしたんだい?」
「ああ、武器を作ってもらいたくてな。適性が無い者でも扱える武器は何かないだろうか。多少高くついてもいい」
「れ、レオ!?」
俺の言葉に驚くリズ。
俺が考えたのはオーダーメイドの武器だ。
その人に合った世界で一つの武器を作るなら、一般的な武器適性などある程度無視して高い適性を得られると考えたからだ。
「……オーダーメイドの武器かい……? あんた、金と素材はあるんだろうな……」
奥からのっそり、顔中毛むくじゃらのおじさんが出てくる。
ドワーフ族だろうか、背がすごく低い。
「ああ、この子に……オーダーメイドの武器を作ってもらいたい」
俺は、リズの肩を持って、前につきだした。
眉毛で目が隠れている鍛冶屋が、ジロジロとリズを見る。
「あんた……適性が絶望的にねえな……」
「う……は、はい。情けないことに……どの武器もしっくりこなくて……」
「たーっはっは! 大抵はそこまで武器を試してダメだったら、諦めるもんなんだがな」
多分『鑑定』でリズの適性を見たのだろう。
鍛冶屋のおじさんの大笑いに、しゅんと肩を落とすリズ。
「それでも諦めずに冒険者をしてるなんて、大した玉じゃねえか。気に入ったぜ……何が問題なのかズバリと言い当ててやろう」
「ええっ!?」
おじさんの言葉にリズの目が輝く。
「それはな……『力』がねぇのよ。あんたには」
「『力』?」
「ああ、敵をぶった切り、仕留めるだけの威力を生み出す『力』だ。ほとんどの奴は『適性』とは動きや立ち回りなどの感覚的能力のことだと思いがちだが、それだけじゃねえ。敵の首ねっこをぶった切るだけの『力』が大前提に必要なのよ」
「なるほど……」
リズはおじさんの話を真剣に聴いている。
「それでだ……見たところ剣と弓が適性Dと一番高い。特に弓が高いのは僥倖だ。対処のしようがある」
「と言いますと?」
「クロスボウだよ」
俺たちに向かっておじさんがキラリと歯を光らせて笑った。
「クロス……ボウ……」
「引き金を引けば自動的に矢が発射されるクロスボウなら、姉ちゃんでも扱える。幸い同じ系統の弓適性はD。弦を引く『力』が要らないクロスボウなら、さらに良い適性を叩きだせると思うぜ。まあ、どれだけ適性が高くなるかは女神のみぞ知る……だがな」
「ホントに……? ホントに、あたし、戦えるの……? レオやシレイドみたいに……」
リズはまだ信じられないといった表情で、放心している。
「おじさん、代金と必要素材は?」
「言っておくが、クロスボウは特殊な武器だ。この町のなまくら武器屋では絶対に置いてねえ。特に今回は嬢ちゃんに合わせて武器を作る。安くねえぞ。15万Gだ」
「ああ。今後への投資としたら安い物だ」
俺が即決すると、隣でシレイドが「シレイドより高い……」と渋い顔をして呟いた。
「太っ腹だな、気に入ったぜ。素材は……そうさなぁ、この辺りで採れる素材だと岩芋虫の素材が最適だな『ロックバグクロスボウ』ってのが作れる」
おじさんの言葉に、俺たちは顔を見合わせて微笑む。
「ちょうど手持ちが大量にある。いくらいる?」
「『岩芋虫の甲殻』が二十個ほど……『岩芋虫の糸』が五本ほどだな。後は『鉄鉱石』が三つほど欲しいところだが」
「あ! 鉄鉱石ならあたし持ってるよ!」
フィールドで採取した鉄鉱石を差し出すリズ。
俺も言われたロッククロウラーの素材を取り出す。
『岩芋虫の糸』はレア素材だったが『ロッククロウラーの雨』で手に入れた分でギリギリ足りた。
「ほう……。必要材料をこうも簡単にポンポン出すのはこの片田舎の冒険者では珍しいな、将来有望って事か、たーはっはっは!」
おじさんは上機嫌に笑っている。
その後、鍛冶屋のおばさんが、リズの腕の長さや握力、手の大きさなんかを測っていく。
全ての測定が終わると、鍛冶屋のおじさんがパンと手を打つ。
「よし! 必要な物は揃ったな。十日で完成させてやる。代金はその時に貰うぜ。用意しときな」
「あの……よろしくお願いします!」
リズが深々とお辞儀をする。
俺とシレイドも、続けて頭を下げる。
「頭を上げな、嬢ちゃん。鍛冶屋ダグラスの名に懸けて、あんたをしっかり戦えるようにしてやるよ」
ぶっきらぼうにそう言ったダグラスさんは、素材を担いで奥の工場に入っていった。
「それじゃあ、十日後にね! 忘れずに取りに来るんだよ!」
おばさんがニッコリと見送ってくれた。
リズが緊張した面持ちで、ラズベリーにジョブチェンジを頼む。
ラズベリーは同じ要領で、下級職のジョブ候補を表示させる。
『スナイパー』『暗殺者』『研究者』『採集名人』など様々なジョブがある。
どうやら聞いていた通り、冒険者と採集者では派生する上位ジョブがまるっきり違うようだ。
冒険者の派生は近接戦闘ジョブが多かったが、採集者の派生は遠距離戦闘ジョブと素材採集系のジョブみたいだ。
「あたしは……これにしようかなぁ」
リズが選んだのは下級ジョブ『探検家』だった。
「そのジョブは、ダンジョンなどを探索する時に便利なスキルを覚えるジョブですね。採集だけじゃなく場合によっては戦いに転じることも可能です」
「うん、これにするわ。あはは……やっぱり、レオやシレイドと戦いたいからさ……」
頭を掻きながら、苦笑いするリズ。
やっぱり、現状の自分の立場に気まずさを感じているようだ。
そんなリズを見て、俺は密かに決心する。
「分かりました」
ラズベリーがリズのジョブをチェンジさせた。
名前:リズ・オレイア
年齢:19歳
ジョブ:探検家Lv1
能力:剣適性D、短剣適性E、突剣適性E、双剣適性E、大剣適性E、槍適性E、斧適性E、大斧適性E、弓適性D、魔法適性E
スキル:『鑑定』『探査』『マッピング』『エネミーカウント』
「スキルが三つも増えた! これであたし、もっと役に立てる……!」
隠れて何度もガッツポーズをするリズ。
そんな彼女にもっと自信を与えたいと思った。
ラズベリーにお礼を言い、ギルドを後にした俺はある場所に向かう。
「どこ行くの? レオ?」
「ん? ちょっとな、まあついてきてくれ」
リズの問いかけをはぐらかし、ついた先は……。
「鍛冶屋……?」
リズが首をひねる。
「ご主人様……何か武器を作るの?」
「鋭いな、シレイド」
シレイドの問いに、やんわり答える。
「らっしゃい! おや、この間、コボルトの素材を売りに来たあんちゃんじゃないか。今日はどうしたんだい?」
「ああ、武器を作ってもらいたくてな。適性が無い者でも扱える武器は何かないだろうか。多少高くついてもいい」
「れ、レオ!?」
俺の言葉に驚くリズ。
俺が考えたのはオーダーメイドの武器だ。
その人に合った世界で一つの武器を作るなら、一般的な武器適性などある程度無視して高い適性を得られると考えたからだ。
「……オーダーメイドの武器かい……? あんた、金と素材はあるんだろうな……」
奥からのっそり、顔中毛むくじゃらのおじさんが出てくる。
ドワーフ族だろうか、背がすごく低い。
「ああ、この子に……オーダーメイドの武器を作ってもらいたい」
俺は、リズの肩を持って、前につきだした。
眉毛で目が隠れている鍛冶屋が、ジロジロとリズを見る。
「あんた……適性が絶望的にねえな……」
「う……は、はい。情けないことに……どの武器もしっくりこなくて……」
「たーっはっは! 大抵はそこまで武器を試してダメだったら、諦めるもんなんだがな」
多分『鑑定』でリズの適性を見たのだろう。
鍛冶屋のおじさんの大笑いに、しゅんと肩を落とすリズ。
「それでも諦めずに冒険者をしてるなんて、大した玉じゃねえか。気に入ったぜ……何が問題なのかズバリと言い当ててやろう」
「ええっ!?」
おじさんの言葉にリズの目が輝く。
「それはな……『力』がねぇのよ。あんたには」
「『力』?」
「ああ、敵をぶった切り、仕留めるだけの威力を生み出す『力』だ。ほとんどの奴は『適性』とは動きや立ち回りなどの感覚的能力のことだと思いがちだが、それだけじゃねえ。敵の首ねっこをぶった切るだけの『力』が大前提に必要なのよ」
「なるほど……」
リズはおじさんの話を真剣に聴いている。
「それでだ……見たところ剣と弓が適性Dと一番高い。特に弓が高いのは僥倖だ。対処のしようがある」
「と言いますと?」
「クロスボウだよ」
俺たちに向かっておじさんがキラリと歯を光らせて笑った。
「クロス……ボウ……」
「引き金を引けば自動的に矢が発射されるクロスボウなら、姉ちゃんでも扱える。幸い同じ系統の弓適性はD。弦を引く『力』が要らないクロスボウなら、さらに良い適性を叩きだせると思うぜ。まあ、どれだけ適性が高くなるかは女神のみぞ知る……だがな」
「ホントに……? ホントに、あたし、戦えるの……? レオやシレイドみたいに……」
リズはまだ信じられないといった表情で、放心している。
「おじさん、代金と必要素材は?」
「言っておくが、クロスボウは特殊な武器だ。この町のなまくら武器屋では絶対に置いてねえ。特に今回は嬢ちゃんに合わせて武器を作る。安くねえぞ。15万Gだ」
「ああ。今後への投資としたら安い物だ」
俺が即決すると、隣でシレイドが「シレイドより高い……」と渋い顔をして呟いた。
「太っ腹だな、気に入ったぜ。素材は……そうさなぁ、この辺りで採れる素材だと岩芋虫の素材が最適だな『ロックバグクロスボウ』ってのが作れる」
おじさんの言葉に、俺たちは顔を見合わせて微笑む。
「ちょうど手持ちが大量にある。いくらいる?」
「『岩芋虫の甲殻』が二十個ほど……『岩芋虫の糸』が五本ほどだな。後は『鉄鉱石』が三つほど欲しいところだが」
「あ! 鉄鉱石ならあたし持ってるよ!」
フィールドで採取した鉄鉱石を差し出すリズ。
俺も言われたロッククロウラーの素材を取り出す。
『岩芋虫の糸』はレア素材だったが『ロッククロウラーの雨』で手に入れた分でギリギリ足りた。
「ほう……。必要材料をこうも簡単にポンポン出すのはこの片田舎の冒険者では珍しいな、将来有望って事か、たーはっはっは!」
おじさんは上機嫌に笑っている。
その後、鍛冶屋のおばさんが、リズの腕の長さや握力、手の大きさなんかを測っていく。
全ての測定が終わると、鍛冶屋のおじさんがパンと手を打つ。
「よし! 必要な物は揃ったな。十日で完成させてやる。代金はその時に貰うぜ。用意しときな」
「あの……よろしくお願いします!」
リズが深々とお辞儀をする。
俺とシレイドも、続けて頭を下げる。
「頭を上げな、嬢ちゃん。鍛冶屋ダグラスの名に懸けて、あんたをしっかり戦えるようにしてやるよ」
ぶっきらぼうにそう言ったダグラスさんは、素材を担いで奥の工場に入っていった。
「それじゃあ、十日後にね! 忘れずに取りに来るんだよ!」
おばさんがニッコリと見送ってくれた。
448
あなたにおすすめの小説
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる