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第3章:エルフの国と優しい女王編
第3話:作戦会議その2
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宿に帰って、俺の部屋で早速作戦会議を行う。
現在の資金をすべて出し合い、分配するためだ。
個人のお金は個人で管理するが、クエストなどを受けてパーティで得た報酬分は分配する。
「シレイドを買ってからの報酬金も合わせれば、俺の所持金は約32万Gだな」
「あたしは8万Gほどだね……キングトリュフのグルメ貴族への取引でかなり稼いだけど、やっぱり魔物素材の効率には勝てないか」
まあ、命懸けで戦う魔物討伐より、フィールドワークの方が、稼ぎが多かったら、冒険者たちもやってられないだろうからな。
「よし、これらを合わせて約40万G。リズのクロスボウの代金を抜いて25万G、本当にシレイドは分け前、要らないのか?」
「ん……奴隷に分け前は要らない……シレイドはご主人様に、寝るとこ食べるもの着るものを用意してもらえればそれでいい……あと、美味しいものが欲しいだけ……」
奴隷としての譲れないものがあるのか、シレイドは頑なに受け取ろうとしない。
「あ、あたしも貰っていいのかな……? クロスボウの費用は言ってみればあたしに掛かる費用じゃない?」
リズも遠慮がちだ。
「リズは貰うといい……パーティメンバーなんだから遠慮しちゃダメ……こういうところをちゃんとしないパーティから解散していく」
ギルド冒険者知識豊富なシレイドが言う。
「そうそう、遠慮はしなくていいさ。武器が合うかまだ分からないが、これからはリズにもバンバン戦ってもらうことになるかもしれないんだから」
「そ、そっか。うん、あたし、頑張るわ!」
リズは何とか考え直してくれたようだ。
結果、俺とリズで平等に分けて、俺の所持金は13万Gほどになった。
これだけあれば、当分遊んで暮らせるが、俺は幸せになりたい。
成金みたいなゴロンと大きな幸せは要らないが、ささやかな幸せに山ほど包まれたい。
「もっともっと、頑張って働かなきゃな……」
「レオ、言ってたね。家が欲しいって」
「ああ、冒険者として活動するなら、パーティメンバー全員で住める家が欲しい。いつまでも宿屋生活というのもなんだか、心の底から気が休まらないというか……」
「そうなんだ……あたしは、宿屋生活でも別に平気だけどなぁ」
多分、根っからの冒険者と、平和な世界で暮らしていた住民の違いだろう。
自宅があって、帰ったら心底ほっとする感じ。
あの感じは、異世界に来てから一度も味わえていない。
「ご主人様の家……シレイドも住んでいい?」
「当たり前だろう? シレイドも、リズも、そこに住んで欲しい」
「むふー♪ やったー……♪」
シレイドが無邪気に万歳をする。
「でも、家となると、さらに稼ぎの良いことをしないといけないわね。この世界は借家でも毎月最低10万Gほどかかるから。持ち家だと3000万Gほどかしら……豪邸なら1億や2億はくだらないし。国に住む民は領主から家を格安で借りれるけど、冒険者みたいな根無し草はまともにお金を払わないといけないからね」
「でも、その分……民は色々な制約に縛られる……家もボロ屋が多い」
二人がこの世界の持ち家事情を語ってくれる。
なかなか家を持つのは一筋縄ではいかぬようだ。
「第一に、どこに住むか……だよな」
「ここはあまり冒険者が家を持つのには向かない……魔物が弱ければ稼ぎも弱い……もう少し大きな町に行くべき」
「かと言って、王都になると。今度は人が多すぎて疲れるのよね。土地代も馬鹿みたいに高くなるし」
なるほど、ルクシアは田舎、王都は大都会といった感じか。
「どこかいい町は無いかな……どの町にもアクセスが簡単で、ほどほどに市場や娯楽が充実している街」
「……エルゼリア」
俺の言葉を聴いて、シレイドが呟く。
「そうだよ! エルゼリア! そこで家を買ったらすっごく便利だよ!」
興奮気味でリズも声を上げる。
「どんな町なんだ? エルゼリアって」
「ちょうど、このアルバイン王国の中央にある大きな都市だよ。各町へのアクセスも良くて、商業都市としても娯楽都市としてもなかなか発展してるの。その上、近くには多くのダンジョンがあって、王都ほどじゃないけど冒険者たちもこぞって訪れる賑やかな場所なのよ」
「シレイドもおすすめ……あそこは美味しい食べ物がいっぱいある……」
なるほど、日本で言うと、ちょうど都内近郊ってところか。
そこそこ発展していて、そこそこ人もいると。
「ここからなら馬車で二週間くらいだね」
「なかなか遠いな」
「この町が田舎なのよ。ルクシアは王国の端っこにあるからね」
「なるほどな……じゃあ、当面の目標はエルゼリアへの移住だな。ただ、すぐじゃなくても良い。しっかり足元を固めてから動こう」
危険が多いこの世界では、リスク承知で飛び込むような無謀なことはしたくない。
ある程度、地盤を固めてから動かないと命の危機に直結するからな。
「シレイドもご主人様に賛成……エルゼリア付近の魔物の危険度は、だいたいDからAランク……中級者向け……今のこのパーティでは全滅必至」
「あはは……怖いこと言うね、シレイドちゃん」
シレイドの歯に衣着せぬ発言に、リズが苦笑いする。
「だが、そうなると、ますます俺たちのレベルや装備を整えなくてはならないな……初心者の町と言われるルクシアでどれくらい充実した準備ができるだろう」
「しばらくは、このままギルドの依頼や魔物討伐を進めて行こうよ。できれば、レオもシレイドも良い武具が揃えられるくらいに」
「ん……買う武器より、作る武器の方が高いけど強い……」
「そうか……鍛冶屋のおじさんに良い武器が無いか聞くか」
今持っている『鋼の剣』やシレイドの『鉄のダガー』も悪くないが、オーダーメイドの武器の方が強いと聞いたら、そっちの方が良い気がする。
「となれば、いい素材が必要だな」
「とりあえずは、森や夜の平原で狩るのが良いと思うけど、ルクシアの森の『深淵』にはもう一段階、良い素材が採れる魔物がいるみたいだよ」
「深淵……?」
「森の奥地よ。エルフの国があるって言われてるけど、エルフの特性上、隠れ里みたいな感じらしくて、ほとんどの人間は行ったことがないらしいわ」
「なるほどな、じゃあ今まで通り平原と森を中心にして装備を整える。それが出来次第、深淵で経験値上げと素材集め。しっかり準備ができたらエルゼリアに移る形を取ろう」
「了解したわ。レオもこの街に来てまだ一ヵ月ちょっとだし、焦らずに行きましょう」
「ん……シレイドも分かった……」
こうして、俺たちのこれからの方針が決まった。
現在の資金をすべて出し合い、分配するためだ。
個人のお金は個人で管理するが、クエストなどを受けてパーティで得た報酬分は分配する。
「シレイドを買ってからの報酬金も合わせれば、俺の所持金は約32万Gだな」
「あたしは8万Gほどだね……キングトリュフのグルメ貴族への取引でかなり稼いだけど、やっぱり魔物素材の効率には勝てないか」
まあ、命懸けで戦う魔物討伐より、フィールドワークの方が、稼ぎが多かったら、冒険者たちもやってられないだろうからな。
「よし、これらを合わせて約40万G。リズのクロスボウの代金を抜いて25万G、本当にシレイドは分け前、要らないのか?」
「ん……奴隷に分け前は要らない……シレイドはご主人様に、寝るとこ食べるもの着るものを用意してもらえればそれでいい……あと、美味しいものが欲しいだけ……」
奴隷としての譲れないものがあるのか、シレイドは頑なに受け取ろうとしない。
「あ、あたしも貰っていいのかな……? クロスボウの費用は言ってみればあたしに掛かる費用じゃない?」
リズも遠慮がちだ。
「リズは貰うといい……パーティメンバーなんだから遠慮しちゃダメ……こういうところをちゃんとしないパーティから解散していく」
ギルド冒険者知識豊富なシレイドが言う。
「そうそう、遠慮はしなくていいさ。武器が合うかまだ分からないが、これからはリズにもバンバン戦ってもらうことになるかもしれないんだから」
「そ、そっか。うん、あたし、頑張るわ!」
リズは何とか考え直してくれたようだ。
結果、俺とリズで平等に分けて、俺の所持金は13万Gほどになった。
これだけあれば、当分遊んで暮らせるが、俺は幸せになりたい。
成金みたいなゴロンと大きな幸せは要らないが、ささやかな幸せに山ほど包まれたい。
「もっともっと、頑張って働かなきゃな……」
「レオ、言ってたね。家が欲しいって」
「ああ、冒険者として活動するなら、パーティメンバー全員で住める家が欲しい。いつまでも宿屋生活というのもなんだか、心の底から気が休まらないというか……」
「そうなんだ……あたしは、宿屋生活でも別に平気だけどなぁ」
多分、根っからの冒険者と、平和な世界で暮らしていた住民の違いだろう。
自宅があって、帰ったら心底ほっとする感じ。
あの感じは、異世界に来てから一度も味わえていない。
「ご主人様の家……シレイドも住んでいい?」
「当たり前だろう? シレイドも、リズも、そこに住んで欲しい」
「むふー♪ やったー……♪」
シレイドが無邪気に万歳をする。
「でも、家となると、さらに稼ぎの良いことをしないといけないわね。この世界は借家でも毎月最低10万Gほどかかるから。持ち家だと3000万Gほどかしら……豪邸なら1億や2億はくだらないし。国に住む民は領主から家を格安で借りれるけど、冒険者みたいな根無し草はまともにお金を払わないといけないからね」
「でも、その分……民は色々な制約に縛られる……家もボロ屋が多い」
二人がこの世界の持ち家事情を語ってくれる。
なかなか家を持つのは一筋縄ではいかぬようだ。
「第一に、どこに住むか……だよな」
「ここはあまり冒険者が家を持つのには向かない……魔物が弱ければ稼ぎも弱い……もう少し大きな町に行くべき」
「かと言って、王都になると。今度は人が多すぎて疲れるのよね。土地代も馬鹿みたいに高くなるし」
なるほど、ルクシアは田舎、王都は大都会といった感じか。
「どこかいい町は無いかな……どの町にもアクセスが簡単で、ほどほどに市場や娯楽が充実している街」
「……エルゼリア」
俺の言葉を聴いて、シレイドが呟く。
「そうだよ! エルゼリア! そこで家を買ったらすっごく便利だよ!」
興奮気味でリズも声を上げる。
「どんな町なんだ? エルゼリアって」
「ちょうど、このアルバイン王国の中央にある大きな都市だよ。各町へのアクセスも良くて、商業都市としても娯楽都市としてもなかなか発展してるの。その上、近くには多くのダンジョンがあって、王都ほどじゃないけど冒険者たちもこぞって訪れる賑やかな場所なのよ」
「シレイドもおすすめ……あそこは美味しい食べ物がいっぱいある……」
なるほど、日本で言うと、ちょうど都内近郊ってところか。
そこそこ発展していて、そこそこ人もいると。
「ここからなら馬車で二週間くらいだね」
「なかなか遠いな」
「この町が田舎なのよ。ルクシアは王国の端っこにあるからね」
「なるほどな……じゃあ、当面の目標はエルゼリアへの移住だな。ただ、すぐじゃなくても良い。しっかり足元を固めてから動こう」
危険が多いこの世界では、リスク承知で飛び込むような無謀なことはしたくない。
ある程度、地盤を固めてから動かないと命の危機に直結するからな。
「シレイドもご主人様に賛成……エルゼリア付近の魔物の危険度は、だいたいDからAランク……中級者向け……今のこのパーティでは全滅必至」
「あはは……怖いこと言うね、シレイドちゃん」
シレイドの歯に衣着せぬ発言に、リズが苦笑いする。
「だが、そうなると、ますます俺たちのレベルや装備を整えなくてはならないな……初心者の町と言われるルクシアでどれくらい充実した準備ができるだろう」
「しばらくは、このままギルドの依頼や魔物討伐を進めて行こうよ。できれば、レオもシレイドも良い武具が揃えられるくらいに」
「ん……買う武器より、作る武器の方が高いけど強い……」
「そうか……鍛冶屋のおじさんに良い武器が無いか聞くか」
今持っている『鋼の剣』やシレイドの『鉄のダガー』も悪くないが、オーダーメイドの武器の方が強いと聞いたら、そっちの方が良い気がする。
「となれば、いい素材が必要だな」
「とりあえずは、森や夜の平原で狩るのが良いと思うけど、ルクシアの森の『深淵』にはもう一段階、良い素材が採れる魔物がいるみたいだよ」
「深淵……?」
「森の奥地よ。エルフの国があるって言われてるけど、エルフの特性上、隠れ里みたいな感じらしくて、ほとんどの人間は行ったことがないらしいわ」
「なるほどな、じゃあ今まで通り平原と森を中心にして装備を整える。それが出来次第、深淵で経験値上げと素材集め。しっかり準備ができたらエルゼリアに移る形を取ろう」
「了解したわ。レオもこの街に来てまだ一ヵ月ちょっとだし、焦らずに行きましょう」
「ん……シレイドも分かった……」
こうして、俺たちのこれからの方針が決まった。
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