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第3章:エルフの国と優しい女王編
第32話:ワープ習得
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「わ、『ワープ』……ですか?」
「はい、ワープです。その魔導書を読めば、一度行った場所に転移することができます」
すごい物が目の前にある。
元いた世界でも度々、あらゆる空想物に登場していたワープ。
それが、使えるように……なるのか?
「本来、ワープは魔法の適性が凄まじく高い者が使える魔法です。逆を言えば、魔力の才能がない者は使えないのです。ガラテアでは魔法適性SSの私だけが使える魔法なのですが、レオ様の魔法適性はSSS。習得できると踏んで、魔導書を書かせて頂きました」
ルーティアが女神のような微笑みを浮かべて言う。
というか、女王様……魔法適性SSだったのか。
キアラが、森の中にあった白い空間は転移魔法だと言っていた。
おそらく、ルーティアが張ったものなのだろう。
書かせていただいた……ということは、女王の魔力が込められた自作の魔導書というわけだ。
「こんな貴重なものを頂いても良いのですか?」
「ええ、もちろんです。この国を救って頂いたのですから、このくらいはしなければ。この魔法は、使いこなせる者はそうはいませんし、魔導書がどこかに流れてしまっても困りません。それに……」
「それに……?」
「わ、ワープが無ければ……レオ様がガラテアに来る手段が限られてしまうではありませんか……」
ルーティアが頬を赤く染め、消え入りそうな声で言う。
なるほど、いつでもここに来られるようにということか。
逆に言うと、定期的にこちらに来いということだ。
先ほどの女中が、大きなため息をついていた。
女王の普段見せない乙女チックな表情に、従者や兵士も少しばかりどよめき、動揺している。
キアラも、何か感づいたようで俺と女王を交互に見ている。
先ほど、ルクシアギルドへの報告は後でできると言っていたのは、これを使えばルクシアの町にも自由に行けるからか。
「コホン……とにかく、その魔導書を褒美として授けます」
「ありがとうございます!」
俺は、貴重な魔導書を、ありがたく頂戴した。
褒美進呈の儀式は滞りなく終了した。
部屋に戻り、魔導書を読む。
「おや、早速読むの? レオ?」
「ああ。ここにあと一週間半滞在するとはいえ、ギルドへの報告とかは、ちゃんとしておきたいからな」
リズの問いかけに答える。
シレイドは我関せずという感じで、貰った白銀のダガーを手際よく研いでいる。
半ば、命令を無視したような形で依頼を完遂したのだ。
ちゃんと、事情を説明した方がいいだろう。
俺はページを開き、目を通す。
書かれている魔法文字が光りだした。
良かった。どうやら問題なく習得できそうだ。
そのまま、耽るように読み進めていった。
頭の中に魔法の仕組みが取り込まれていく。
魔力で目的地を思い浮かべながら、森にあったような白い空間を作り出し、その中をくぐる。
詠唱はなくてもいい上、必要な魔力は鑑定一回と同じくらい少ない。
これは使い勝手がよさそうだ。
これさえあれば、町と森との往復も苦にはならないだろう。
そして、何より……。
各地の彼女にも容易に会いに行ける!
ハーレムを形成するうえで、これほど理想的な魔法はないだろう。
元いた世界では不埒な考えかもしれないが……異世界では常識だ。
常識なのだ。
俺は、ルーティアに深く感謝した。
気が付いたら夕方になっていた。
窓からはカラスの声が聞こえる。
シレイドはスースーと寝息を立てながら白銀のダガーを抱きしめてベッドで寝ている。
相当気に入ったのだろう。
リズが扉から部屋に入ってくる。
「あ、読み終わったみたいね! 相変わらず、魔導書を読む時って周りが見えてないみたいに没頭しちゃうみたいね」
「ああ。流石に、魔物などの敵がいる場所とかでは読めそうにないな」
リズの言葉に、俺は苦笑して答える。
「それで、どうするの? ギルドに報告に行くの?」
「ああ、リズも行くか?」
「ううん。報告だけなら、リーダーのレオが行けば十分でしょう。あたしは昨日の宴の疲れがまだ残ってるからシレイドと一緒に休ませてもらってるよ……ふぁあぁ……」
あくびを手で押さえて答えるリズ。
俺は、了承して早速、ワープを使ってみることにする。
ルクシアのギルドを思い浮かべて手を前に差し出して詠唱する。
「ワープ!」
白い空間がボワッと広がる。
森にあったものと同じだ。
「じゃあ、行ってくる」
「うん! いってらっしゃい。気を付けてね!」
リズに見送られながら俺は、白い空間をくぐった。
白い空間を抜けると、そこはルクシアのギルドだった。
突然現れた俺に戸惑っているのか、冒険者が目を点にして見つめてくる。
酒場のおっさんたちもフォークに刺さった肉を食おうとした状態で俺を見つめて止まっている。
「お、おう……レオ、ひ、久しぶりだな……しばらく見ねえ間に、なんだ、人間やめたのか?」
グレゴがタジタジになりながら声をかけてくる。
「やめてねえよ! ワープだよ、ワープ! 覚えたんだよ! 新しく!」
「わ、ワープだって!? そ、そんな超高度な魔法――げふぇえ!?」
グレゴが横に吹っ飛ばされる。
突然、黒い影が俺に抱きついてくる。
「レオさん……!!」
しがみついてきたのはラズベリーだ。
「よかった……! 無事でよかったです……!! ホントに、ホントに心配したんですからね!?」
「わ、悪かったよ、ラズベリー。この通り、無事だから安心してくれ」
俺のワープよりも、周りの奴らがその光景に驚いていた。
いつも冷静沈着で表情を崩さないラズベリーが、大きな声を上げて涙ぐみ、男に抱き着いている。
「レオのやろう……いつもいつもおいしい思いばかりしやがって……!!」
「爆発しろ……爆発しろ……爆発しろぉおおお……!!」
あ、感じるー。まわりの嫉妬に満ちた怨念のようなものをー。
「ら、ラズベリー。俺も会えて嬉しいから、気持ちはわかるがエルフの国の依頼の報告をしたい。話を通してもらえるか?」
「は、はい! こちらにどうぞ」
俺はギルドの奥の応接室に通される。
もう離さないと言わんばかりのラズベリーに強く腕を絡まされたままで。
「はい、ワープです。その魔導書を読めば、一度行った場所に転移することができます」
すごい物が目の前にある。
元いた世界でも度々、あらゆる空想物に登場していたワープ。
それが、使えるように……なるのか?
「本来、ワープは魔法の適性が凄まじく高い者が使える魔法です。逆を言えば、魔力の才能がない者は使えないのです。ガラテアでは魔法適性SSの私だけが使える魔法なのですが、レオ様の魔法適性はSSS。習得できると踏んで、魔導書を書かせて頂きました」
ルーティアが女神のような微笑みを浮かべて言う。
というか、女王様……魔法適性SSだったのか。
キアラが、森の中にあった白い空間は転移魔法だと言っていた。
おそらく、ルーティアが張ったものなのだろう。
書かせていただいた……ということは、女王の魔力が込められた自作の魔導書というわけだ。
「こんな貴重なものを頂いても良いのですか?」
「ええ、もちろんです。この国を救って頂いたのですから、このくらいはしなければ。この魔法は、使いこなせる者はそうはいませんし、魔導書がどこかに流れてしまっても困りません。それに……」
「それに……?」
「わ、ワープが無ければ……レオ様がガラテアに来る手段が限られてしまうではありませんか……」
ルーティアが頬を赤く染め、消え入りそうな声で言う。
なるほど、いつでもここに来られるようにということか。
逆に言うと、定期的にこちらに来いということだ。
先ほどの女中が、大きなため息をついていた。
女王の普段見せない乙女チックな表情に、従者や兵士も少しばかりどよめき、動揺している。
キアラも、何か感づいたようで俺と女王を交互に見ている。
先ほど、ルクシアギルドへの報告は後でできると言っていたのは、これを使えばルクシアの町にも自由に行けるからか。
「コホン……とにかく、その魔導書を褒美として授けます」
「ありがとうございます!」
俺は、貴重な魔導書を、ありがたく頂戴した。
褒美進呈の儀式は滞りなく終了した。
部屋に戻り、魔導書を読む。
「おや、早速読むの? レオ?」
「ああ。ここにあと一週間半滞在するとはいえ、ギルドへの報告とかは、ちゃんとしておきたいからな」
リズの問いかけに答える。
シレイドは我関せずという感じで、貰った白銀のダガーを手際よく研いでいる。
半ば、命令を無視したような形で依頼を完遂したのだ。
ちゃんと、事情を説明した方がいいだろう。
俺はページを開き、目を通す。
書かれている魔法文字が光りだした。
良かった。どうやら問題なく習得できそうだ。
そのまま、耽るように読み進めていった。
頭の中に魔法の仕組みが取り込まれていく。
魔力で目的地を思い浮かべながら、森にあったような白い空間を作り出し、その中をくぐる。
詠唱はなくてもいい上、必要な魔力は鑑定一回と同じくらい少ない。
これは使い勝手がよさそうだ。
これさえあれば、町と森との往復も苦にはならないだろう。
そして、何より……。
各地の彼女にも容易に会いに行ける!
ハーレムを形成するうえで、これほど理想的な魔法はないだろう。
元いた世界では不埒な考えかもしれないが……異世界では常識だ。
常識なのだ。
俺は、ルーティアに深く感謝した。
気が付いたら夕方になっていた。
窓からはカラスの声が聞こえる。
シレイドはスースーと寝息を立てながら白銀のダガーを抱きしめてベッドで寝ている。
相当気に入ったのだろう。
リズが扉から部屋に入ってくる。
「あ、読み終わったみたいね! 相変わらず、魔導書を読む時って周りが見えてないみたいに没頭しちゃうみたいね」
「ああ。流石に、魔物などの敵がいる場所とかでは読めそうにないな」
リズの言葉に、俺は苦笑して答える。
「それで、どうするの? ギルドに報告に行くの?」
「ああ、リズも行くか?」
「ううん。報告だけなら、リーダーのレオが行けば十分でしょう。あたしは昨日の宴の疲れがまだ残ってるからシレイドと一緒に休ませてもらってるよ……ふぁあぁ……」
あくびを手で押さえて答えるリズ。
俺は、了承して早速、ワープを使ってみることにする。
ルクシアのギルドを思い浮かべて手を前に差し出して詠唱する。
「ワープ!」
白い空間がボワッと広がる。
森にあったものと同じだ。
「じゃあ、行ってくる」
「うん! いってらっしゃい。気を付けてね!」
リズに見送られながら俺は、白い空間をくぐった。
白い空間を抜けると、そこはルクシアのギルドだった。
突然現れた俺に戸惑っているのか、冒険者が目を点にして見つめてくる。
酒場のおっさんたちもフォークに刺さった肉を食おうとした状態で俺を見つめて止まっている。
「お、おう……レオ、ひ、久しぶりだな……しばらく見ねえ間に、なんだ、人間やめたのか?」
グレゴがタジタジになりながら声をかけてくる。
「やめてねえよ! ワープだよ、ワープ! 覚えたんだよ! 新しく!」
「わ、ワープだって!? そ、そんな超高度な魔法――げふぇえ!?」
グレゴが横に吹っ飛ばされる。
突然、黒い影が俺に抱きついてくる。
「レオさん……!!」
しがみついてきたのはラズベリーだ。
「よかった……! 無事でよかったです……!! ホントに、ホントに心配したんですからね!?」
「わ、悪かったよ、ラズベリー。この通り、無事だから安心してくれ」
俺のワープよりも、周りの奴らがその光景に驚いていた。
いつも冷静沈着で表情を崩さないラズベリーが、大きな声を上げて涙ぐみ、男に抱き着いている。
「レオのやろう……いつもいつもおいしい思いばかりしやがって……!!」
「爆発しろ……爆発しろ……爆発しろぉおおお……!!」
あ、感じるー。まわりの嫉妬に満ちた怨念のようなものをー。
「ら、ラズベリー。俺も会えて嬉しいから、気持ちはわかるがエルフの国の依頼の報告をしたい。話を通してもらえるか?」
「は、はい! こちらにどうぞ」
俺はギルドの奥の応接室に通される。
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