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第4章:エルゼリアと無骨なエルフ騎士編
第17話:エルゼリアで冒険者登録
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身支度をして昼頃、食堂に降りると赤くなってうつむいたリズといつも通りのシレイドとキアラが座っている。
リズは、朝、ヘロヘロになりながら女子部屋に戻ったから色々と質問攻めにあったに違いない。
「おっ、やっと来たな。まったく……困るぞ? こんな時間までイチャイチャされるのは。睦み合うのは構わないが予定に支障が出ない程度にだな——」
「そーだ、そーだー……! シレイドにもやらせろー……!!」
キアラが理路整然とした顔で発言する中、シレイドがぶっこんでくる。
「し、シレイド!? くっ、わ、私もだ!! 私も可愛がってもらうことを要求する!」
慌ててキアラが方向転換して、カーニバルを要求してくる。
リズは真っ赤になってうつむいたままだ。
何を聞かれたんだ? 一体。
「分かった。シレイドとキアラも順番な」
「ん……了解」
「わ、分かった……そ、その、わ、私には……優しく頼むぞ……」
俺が微笑んでやると、シレイドとキアラも納得したようだ。
というか、キアラの発言……何をリズから聴いたんだ。
「さて、今日はギルドに行くぞ」
俺は仕切り直すように言う。
「ああ。エルゼリアの冒険者ギルドはここから歩いて五分ほど行ったところにあるらしい。冒険者登録せねばな」
「早速、行こうよ。もうお昼だし」
「ん……」
三人もやる気のようだ。
俺たちは、冒険者ギルドに向かった。
「で、でかい……」
宿を出てすぐに冒険者ギルドに着いたが、外観は運動競技場並みに大きかった。
中に入ると、様々な冒険者たちでごった返している。
「こんなに広かったら、迷っちゃいそうだね」
「ああ。でも、受付はルクシアのギルドと同じ配置で分かりやすいな」
キアラが指さす先、入口からまっすぐ行ったところに広いカウンターがあり、十人以上の受付嬢がカウンターでそれぞれ対応に当たっている。
「よし、冒険者登録を済ませよう」
空いている受付に向かうと、桃色髪のロングヘアーの綺麗なお姉さんが対応してくれた。
「こんにちわぁ。あらぁ……見ない顔ですねぇ、新人さんですか? 今日は冒険者登録をしに来たのでしょうかぁ?」
騒々しいギルドの中で、このお姉さんの周りだけ、やけにのほほんとした空気が流れている。
「ああ。ルクシアのギルドから来たんだ。四人全員、この町の冒険者登録を頼む」
「あらあらぁ、そうでしたかぁ! 遠路はるばる、ご苦労様ですぅ!」
「ど、どうも……?」
両手をポンと叩いて喜ぶ受付嬢。
衝撃でたゆんと揺れる、その大きな胸に戸惑ってしまう。
「それではぁ、さっそく登録しちゃいますねぇ。……『スキャン』」
受付嬢が手をかざして唱えると、俺とリズ、シレイド、キアラ、全員のプロフィールが一気に胸から飛び出る。
PCの画面のようなものが胸から浮かび上がる光景は、なかなか慣れない。
「あらあらぁ……すごいですねぇ。皆さんなかなか高い適性をおもちでぇ……。まぁ……こんな低いレベルでシルバーウルフを~、ふむふむ、エルフの国ガラテアをお救いになったんですかぁ、英雄さんですねぇ! ……こちらのエルフの方は冒険者登録、初めてのようですねぇ、登録しておきますねぇ」
無邪気に色々と言いながら、テキパキ事務作業をするお姉さん。
間延びしたのんびりな言葉遣いと、作業の速さが合っていない。
何というか……変わった人だな。
「はい~。皆さん、エルゼリアでの冒険者登録終わりましたよぉ~。あ、そうそう、ルクシア周辺の魔物素材はこの町では貴重ですからぁ、納品クエストを覗いてみることをお勧めしますぅ」
「ああ、ありがとう」
ほんわかとした笑顔で対応してくれる受付嬢さん。
雰囲気に反して、この人、かなり仕事ができそうだ。
「そうだ。まだこの町に来て勝手が分からないんだが、最初に冒険するならどのあたりがいいか教えてもらえるかな」
「はい~、この町に来たばかりなら、まずは町の東にある『いざないの洞窟』を探索するといいと思いますぅ。出てくる魔物もDランクばかりなのでぇ~。あ、でもぉ、最奥のボスモンスター『トロール』は危険度Cなので気を付けてくださいねぇ」
「ボスモンスター?」
「はい~、ダンジョンごとに一匹だけ、最奥に現れる魔物ですぅ。倒してもすぐにどこかから新しい個体が湧いてくるので、倒して手に入れた素材はダンジョン踏破の証ということになりますねぇ」
「なるほど」
「レオさんたちも頑張って倒してみてくださいねぇ~。依頼をたくさん受けて頑張ってくれたらぁ、ギルド貢献度が上がって地位もお金も名声も得られてウハウハですよぉ」
ニコニコした可愛い顔で俗なことを言う受付嬢さん。
「分かった。とりあえず、その『いざないの洞窟』を目標にしてみるよ」
「はい~」
俺たちは受付を離れて、酒場のテーブルにつく。
「な、なんか、変わった受付嬢さんだったけど、いい人に当たって良かったね」
「ああ。とりあえず、当面の方針もできたしな」
リズの言葉に首肯して返す。
「レオ。色々と依頼の紙、取ってきたぞ。いざないの洞窟関連のものと……あとは、ルクシアで得たアイテムの納品クエスト」
「ん……ルクシアの素材割高……お得」
キアラとシレイドに、とりあえず適当な依頼を見繕って来てもらい、みんなで目を通す。
なるほど、クエストの難易度は確かに高めだ。
危険度D以上の魔物討伐や入手の難しい素材の納入などが多い。
町の周りでちょこちょこっと活動するだけでは大きな収入にはならないようだ。
ちゃんと稼ぐには、ダンジョンに潜る必要がある。
いよいよ、冒険者本番といった感じだ。
「ルクシアの時みたいに素材を高く買い取ってくれる店を紹介してくれたら楽なのにね」
リズが息をつく。
まあ、あれは、ラズベリーと深い関係になった結果だからなぁ。
あとは田舎特有というのもあるだろう。
エルゼリアの規模で特定の冒険者だけ贔屓するようなことをしたら、さすがに反発が抑えられないと思うし。
いや、ギルド貢献度を上げることで地位が上がると言っていた。
とすると、高ランクの冒険者なら、ある程度のわがままは聞いてもらえたりするのだろうか。
もしくは、特定の貴族とかなら裏金やらコネやらで贔屓してもらえたり……?
「とりあえず、目標であるいざないの洞窟での討伐クエストを受けてみるか。あとは……納品クエストを何か受けてエルゼリアギルドの雰囲気や使い勝手を掴んでおこう」
俺は、クエストの紙を持って、再びカウンターに向かった。
リズは、朝、ヘロヘロになりながら女子部屋に戻ったから色々と質問攻めにあったに違いない。
「おっ、やっと来たな。まったく……困るぞ? こんな時間までイチャイチャされるのは。睦み合うのは構わないが予定に支障が出ない程度にだな——」
「そーだ、そーだー……! シレイドにもやらせろー……!!」
キアラが理路整然とした顔で発言する中、シレイドがぶっこんでくる。
「し、シレイド!? くっ、わ、私もだ!! 私も可愛がってもらうことを要求する!」
慌ててキアラが方向転換して、カーニバルを要求してくる。
リズは真っ赤になってうつむいたままだ。
何を聞かれたんだ? 一体。
「分かった。シレイドとキアラも順番な」
「ん……了解」
「わ、分かった……そ、その、わ、私には……優しく頼むぞ……」
俺が微笑んでやると、シレイドとキアラも納得したようだ。
というか、キアラの発言……何をリズから聴いたんだ。
「さて、今日はギルドに行くぞ」
俺は仕切り直すように言う。
「ああ。エルゼリアの冒険者ギルドはここから歩いて五分ほど行ったところにあるらしい。冒険者登録せねばな」
「早速、行こうよ。もうお昼だし」
「ん……」
三人もやる気のようだ。
俺たちは、冒険者ギルドに向かった。
「で、でかい……」
宿を出てすぐに冒険者ギルドに着いたが、外観は運動競技場並みに大きかった。
中に入ると、様々な冒険者たちでごった返している。
「こんなに広かったら、迷っちゃいそうだね」
「ああ。でも、受付はルクシアのギルドと同じ配置で分かりやすいな」
キアラが指さす先、入口からまっすぐ行ったところに広いカウンターがあり、十人以上の受付嬢がカウンターでそれぞれ対応に当たっている。
「よし、冒険者登録を済ませよう」
空いている受付に向かうと、桃色髪のロングヘアーの綺麗なお姉さんが対応してくれた。
「こんにちわぁ。あらぁ……見ない顔ですねぇ、新人さんですか? 今日は冒険者登録をしに来たのでしょうかぁ?」
騒々しいギルドの中で、このお姉さんの周りだけ、やけにのほほんとした空気が流れている。
「ああ。ルクシアのギルドから来たんだ。四人全員、この町の冒険者登録を頼む」
「あらあらぁ、そうでしたかぁ! 遠路はるばる、ご苦労様ですぅ!」
「ど、どうも……?」
両手をポンと叩いて喜ぶ受付嬢。
衝撃でたゆんと揺れる、その大きな胸に戸惑ってしまう。
「それではぁ、さっそく登録しちゃいますねぇ。……『スキャン』」
受付嬢が手をかざして唱えると、俺とリズ、シレイド、キアラ、全員のプロフィールが一気に胸から飛び出る。
PCの画面のようなものが胸から浮かび上がる光景は、なかなか慣れない。
「あらあらぁ……すごいですねぇ。皆さんなかなか高い適性をおもちでぇ……。まぁ……こんな低いレベルでシルバーウルフを~、ふむふむ、エルフの国ガラテアをお救いになったんですかぁ、英雄さんですねぇ! ……こちらのエルフの方は冒険者登録、初めてのようですねぇ、登録しておきますねぇ」
無邪気に色々と言いながら、テキパキ事務作業をするお姉さん。
間延びしたのんびりな言葉遣いと、作業の速さが合っていない。
何というか……変わった人だな。
「はい~。皆さん、エルゼリアでの冒険者登録終わりましたよぉ~。あ、そうそう、ルクシア周辺の魔物素材はこの町では貴重ですからぁ、納品クエストを覗いてみることをお勧めしますぅ」
「ああ、ありがとう」
ほんわかとした笑顔で対応してくれる受付嬢さん。
雰囲気に反して、この人、かなり仕事ができそうだ。
「そうだ。まだこの町に来て勝手が分からないんだが、最初に冒険するならどのあたりがいいか教えてもらえるかな」
「はい~、この町に来たばかりなら、まずは町の東にある『いざないの洞窟』を探索するといいと思いますぅ。出てくる魔物もDランクばかりなのでぇ~。あ、でもぉ、最奥のボスモンスター『トロール』は危険度Cなので気を付けてくださいねぇ」
「ボスモンスター?」
「はい~、ダンジョンごとに一匹だけ、最奥に現れる魔物ですぅ。倒してもすぐにどこかから新しい個体が湧いてくるので、倒して手に入れた素材はダンジョン踏破の証ということになりますねぇ」
「なるほど」
「レオさんたちも頑張って倒してみてくださいねぇ~。依頼をたくさん受けて頑張ってくれたらぁ、ギルド貢献度が上がって地位もお金も名声も得られてウハウハですよぉ」
ニコニコした可愛い顔で俗なことを言う受付嬢さん。
「分かった。とりあえず、その『いざないの洞窟』を目標にしてみるよ」
「はい~」
俺たちは受付を離れて、酒場のテーブルにつく。
「な、なんか、変わった受付嬢さんだったけど、いい人に当たって良かったね」
「ああ。とりあえず、当面の方針もできたしな」
リズの言葉に首肯して返す。
「レオ。色々と依頼の紙、取ってきたぞ。いざないの洞窟関連のものと……あとは、ルクシアで得たアイテムの納品クエスト」
「ん……ルクシアの素材割高……お得」
キアラとシレイドに、とりあえず適当な依頼を見繕って来てもらい、みんなで目を通す。
なるほど、クエストの難易度は確かに高めだ。
危険度D以上の魔物討伐や入手の難しい素材の納入などが多い。
町の周りでちょこちょこっと活動するだけでは大きな収入にはならないようだ。
ちゃんと稼ぐには、ダンジョンに潜る必要がある。
いよいよ、冒険者本番といった感じだ。
「ルクシアの時みたいに素材を高く買い取ってくれる店を紹介してくれたら楽なのにね」
リズが息をつく。
まあ、あれは、ラズベリーと深い関係になった結果だからなぁ。
あとは田舎特有というのもあるだろう。
エルゼリアの規模で特定の冒険者だけ贔屓するようなことをしたら、さすがに反発が抑えられないと思うし。
いや、ギルド貢献度を上げることで地位が上がると言っていた。
とすると、高ランクの冒険者なら、ある程度のわがままは聞いてもらえたりするのだろうか。
もしくは、特定の貴族とかなら裏金やらコネやらで贔屓してもらえたり……?
「とりあえず、目標であるいざないの洞窟での討伐クエストを受けてみるか。あとは……納品クエストを何か受けてエルゼリアギルドの雰囲気や使い勝手を掴んでおこう」
俺は、クエストの紙を持って、再びカウンターに向かった。
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