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第4章:エルゼリアと無骨なエルフ騎士編
第25話:作戦会議・いざないの洞窟編
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「うぅぅぅっ~~~~~~、私はなんて恥ずかしいことを……いっそ殺せぇ……」
激しいカーニバルの後、夕方まで寄り添い合って眠った俺たち。
起きた後、見合わせた顔を真っ赤にして、無言のまま、順番にお風呂に入る。
キアラの後、俺が風呂から上がると、部屋の隅でしゃがみ込みながらキアラが呻き続けている。
鎧姿の彼女に興奮して男の憧れの一つである『くっころプレイ』までしてしまったのだが……。
「うっうっうっ……殺してくれ~」
『くっころプレイ』は終わったのにキアラが「殺してくれ」と嘆いている。
「キアラ。そんなに恥ずかしがるなよ。俺はすっごく楽しかったぞ? キアラも可愛かったし」
俺がそう言うと、涙を溜めながらジト目で見つめてくる。
相変わらず顔は真っ赤だ。
「キアラは、楽しくなかったか? それなら、今度は普通にするから、機嫌を直し――」
「……かった……」
「え?」
「楽しかったんだ!! 楽しすぎたんだ!! で、でも、あんな死ぬほど恥ずかしいセリフをたくさん言う私など、私ではない!!」
キアラは顔を手で覆い隠し、再び「うぅっ~~~~」と唸りだした。
なるほど。これは俺に対して怒っているわけじゃない。
『くっころプレイ』自体は死ぬほど恥ずかしかったけど、同時に、楽しみすぎてしまった自分に憤っているのだ。
誇り高きエルフの騎士として育ってきた、それも恋愛経験の少ない初心な彼女には刺激が強すぎたのだろう。
さしずめ、この複雑な感情をどうしたらいいのか分からずに戸惑っているようだ。
俺は、そんな彼女を後ろからぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫だよ。どんなキアラも俺は大好きだ。恋人同士だろう? むしろ、キアラの色んな姿をもっと見せて欲しい」
そう言うと、キアラの唸り声が止む。
「キアラは『ちゃんとしなきゃ』と思いすぎて、俺に遠慮しているところがあるからな。もっと気持ちに素直になってくれ。今日は俺のわがままに付き合わせちゃったけど、次はキアラのしたいようにしよう」
俺の言葉を聞いて、キアラはゆっくり俺の方を向き、胸に頭を預けて抱きついてくる。
「……次は……優しくしてほしい……お姫様みたいに扱ってほしい……」
「ああ。分かったよ」
乙女な彼女の要望を受け止めた後、しばらく抱き合っていた。
——三週間後。
今日も今日とて、平原で魔物を狩り続ける俺たち。
レッドスライム三匹とヘルハウンド二匹の群れを難なく倒すと、昼前の鐘が鳴る。
「よし! 今日はここまで! 帰るか!」
「はーい!」
「ん……」
「ああ!」
ギルドに戻り、今日の報酬を分け合う。
平原の魔物の討伐クエストと、素材の納品クエストをいくつか受けていたので、それを完了させて報酬を受け取り、昼飯がてら併設されている酒場で分け合う。
最初、平原でのクエストは数が少ないのかと思っていたが、そんなことはなく、お手軽に済ませられる分、人気が高くて午前中に無くなってしまっているのだった。
このギルドに初めて来たのは昼頃だったから、それで無かったらしい。
「ほい! 今日の報酬。これがリズの分。これがキアラの分」
「わーい! ありがと♪」
「うむ。私も所持金が潤ってきたな……!」
稼ぎとしては日々の消費額よりちょっと上回っているという感じだ。
いちばんの出費が一日2万Gの宿代だが、それを含めても、儲けの方が多い。
リーダーとして宿代を全額支払っている俺でさえそうだから、リズやキアラは順調に資金を増やしているようだ。
それでいて、全ての素材をお金に替えているわけではないので、素材自体も溜ってきている。
素材に関しても、なるべく平等に分けることにした。
今までの『素材はトドメを刺した人の物』というのだと、ダメージを与えた人が損になるからな。
一撃で倒せる魔物が減ってきている分、こうした決まりを作っておいた方がいいだろう。
「平原での冒険も、かなり順調になってきたなぁ」
「ああ。最初は手こずっていた危険度D+の魔物にも上手く順応できているしな」
俺の言葉に、キアラが葡萄酒を傾けながら言う。
「もうそろそろ、いざないの洞窟に挑戦してもいいんじゃない?」
「ん……シレイドもそう思う」
二人も手応えを感じているようで、ダンジョン踏破を提案してくる。
やはり、ガッツリ儲けるためにはダンジョンに潜る必要があるからな。
「だな。よし、じゃあ、明日から『いざないの洞窟』踏破に向けて動き出すか!」
俺の目標は『より良い生活、より幸せな人生』だ。
それを目指すのに、新たなステージに挑むのは必要なことだろう。
「きちんと荷造りしないとな。階層のあるダンジョンともなれば、野宿になるだろうから」
キアラが考えるように呟く。
「ああ。明日は冒険を休んで全員で買い出しに行こう。食料やテントなんかを買うために」
俺の言葉に、三人が首肯する。
「さて、リズたちは、今日の午後はどうするんだ?」
「あたしはブティックに買い物ー! 欲しい服があったんだけど、今日の報酬で買えそうだから買ってくる!」
「私は劇場に剣技を見に行く。この前、行ったらすっかりハマってしまってな。男装の踊り子がカッコイイんだ!!」
「シレイドは屋台の買い食い……第一層の東側を調査中……『コカトリスの甘辛炒め』がマイブーム……お小遣いは、今日はいらない……前に貰ったのが残ってるから」
三人とも、目を輝かせて答える。
それぞれこの町を楽しんでいるようで良かった。
俺はと言うと、ルクシアに残した彼女と度々逢瀬をしていることもあり、まだ、あまりエルゼリアを探索したことが無かった。
ルクシアの彼女たちからは、忙しいなら無理しなくてもいいと言われているが、いつダンジョンに潜ったりして予定が詰まるか分からないからな。
会いたい人とは、会える内に会っておいた方がいい。
もちろん、リズたちともデートをしたり睦み合ったり、ちゃんと可愛がっている。
多人数彼女の弊害でもあるが、不満は無い。
贅沢な悩みというやつだ。
そして、俺は今日も彼女に会うため、ルクシアにワープするのだった。
激しいカーニバルの後、夕方まで寄り添い合って眠った俺たち。
起きた後、見合わせた顔を真っ赤にして、無言のまま、順番にお風呂に入る。
キアラの後、俺が風呂から上がると、部屋の隅でしゃがみ込みながらキアラが呻き続けている。
鎧姿の彼女に興奮して男の憧れの一つである『くっころプレイ』までしてしまったのだが……。
「うっうっうっ……殺してくれ~」
『くっころプレイ』は終わったのにキアラが「殺してくれ」と嘆いている。
「キアラ。そんなに恥ずかしがるなよ。俺はすっごく楽しかったぞ? キアラも可愛かったし」
俺がそう言うと、涙を溜めながらジト目で見つめてくる。
相変わらず顔は真っ赤だ。
「キアラは、楽しくなかったか? それなら、今度は普通にするから、機嫌を直し――」
「……かった……」
「え?」
「楽しかったんだ!! 楽しすぎたんだ!! で、でも、あんな死ぬほど恥ずかしいセリフをたくさん言う私など、私ではない!!」
キアラは顔を手で覆い隠し、再び「うぅっ~~~~」と唸りだした。
なるほど。これは俺に対して怒っているわけじゃない。
『くっころプレイ』自体は死ぬほど恥ずかしかったけど、同時に、楽しみすぎてしまった自分に憤っているのだ。
誇り高きエルフの騎士として育ってきた、それも恋愛経験の少ない初心な彼女には刺激が強すぎたのだろう。
さしずめ、この複雑な感情をどうしたらいいのか分からずに戸惑っているようだ。
俺は、そんな彼女を後ろからぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫だよ。どんなキアラも俺は大好きだ。恋人同士だろう? むしろ、キアラの色んな姿をもっと見せて欲しい」
そう言うと、キアラの唸り声が止む。
「キアラは『ちゃんとしなきゃ』と思いすぎて、俺に遠慮しているところがあるからな。もっと気持ちに素直になってくれ。今日は俺のわがままに付き合わせちゃったけど、次はキアラのしたいようにしよう」
俺の言葉を聞いて、キアラはゆっくり俺の方を向き、胸に頭を預けて抱きついてくる。
「……次は……優しくしてほしい……お姫様みたいに扱ってほしい……」
「ああ。分かったよ」
乙女な彼女の要望を受け止めた後、しばらく抱き合っていた。
——三週間後。
今日も今日とて、平原で魔物を狩り続ける俺たち。
レッドスライム三匹とヘルハウンド二匹の群れを難なく倒すと、昼前の鐘が鳴る。
「よし! 今日はここまで! 帰るか!」
「はーい!」
「ん……」
「ああ!」
ギルドに戻り、今日の報酬を分け合う。
平原の魔物の討伐クエストと、素材の納品クエストをいくつか受けていたので、それを完了させて報酬を受け取り、昼飯がてら併設されている酒場で分け合う。
最初、平原でのクエストは数が少ないのかと思っていたが、そんなことはなく、お手軽に済ませられる分、人気が高くて午前中に無くなってしまっているのだった。
このギルドに初めて来たのは昼頃だったから、それで無かったらしい。
「ほい! 今日の報酬。これがリズの分。これがキアラの分」
「わーい! ありがと♪」
「うむ。私も所持金が潤ってきたな……!」
稼ぎとしては日々の消費額よりちょっと上回っているという感じだ。
いちばんの出費が一日2万Gの宿代だが、それを含めても、儲けの方が多い。
リーダーとして宿代を全額支払っている俺でさえそうだから、リズやキアラは順調に資金を増やしているようだ。
それでいて、全ての素材をお金に替えているわけではないので、素材自体も溜ってきている。
素材に関しても、なるべく平等に分けることにした。
今までの『素材はトドメを刺した人の物』というのだと、ダメージを与えた人が損になるからな。
一撃で倒せる魔物が減ってきている分、こうした決まりを作っておいた方がいいだろう。
「平原での冒険も、かなり順調になってきたなぁ」
「ああ。最初は手こずっていた危険度D+の魔物にも上手く順応できているしな」
俺の言葉に、キアラが葡萄酒を傾けながら言う。
「もうそろそろ、いざないの洞窟に挑戦してもいいんじゃない?」
「ん……シレイドもそう思う」
二人も手応えを感じているようで、ダンジョン踏破を提案してくる。
やはり、ガッツリ儲けるためにはダンジョンに潜る必要があるからな。
「だな。よし、じゃあ、明日から『いざないの洞窟』踏破に向けて動き出すか!」
俺の目標は『より良い生活、より幸せな人生』だ。
それを目指すのに、新たなステージに挑むのは必要なことだろう。
「きちんと荷造りしないとな。階層のあるダンジョンともなれば、野宿になるだろうから」
キアラが考えるように呟く。
「ああ。明日は冒険を休んで全員で買い出しに行こう。食料やテントなんかを買うために」
俺の言葉に、三人が首肯する。
「さて、リズたちは、今日の午後はどうするんだ?」
「あたしはブティックに買い物ー! 欲しい服があったんだけど、今日の報酬で買えそうだから買ってくる!」
「私は劇場に剣技を見に行く。この前、行ったらすっかりハマってしまってな。男装の踊り子がカッコイイんだ!!」
「シレイドは屋台の買い食い……第一層の東側を調査中……『コカトリスの甘辛炒め』がマイブーム……お小遣いは、今日はいらない……前に貰ったのが残ってるから」
三人とも、目を輝かせて答える。
それぞれこの町を楽しんでいるようで良かった。
俺はと言うと、ルクシアに残した彼女と度々逢瀬をしていることもあり、まだ、あまりエルゼリアを探索したことが無かった。
ルクシアの彼女たちからは、忙しいなら無理しなくてもいいと言われているが、いつダンジョンに潜ったりして予定が詰まるか分からないからな。
会いたい人とは、会える内に会っておいた方がいい。
もちろん、リズたちともデートをしたり睦み合ったり、ちゃんと可愛がっている。
多人数彼女の弊害でもあるが、不満は無い。
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