177 / 354
第6章:灼炎の祠と銀狼獣人編
第24話:突入!灼炎の祠
しおりを挟む
魔獣の森で力量を図ってから三日後、俺たちはエルゼリアの町の東に位置する『灼炎の祠』の前に立っていた。
「……いよいよだな」
俺の言葉にみんなも顔が引き締まる。
ここ三日はギルドで四属性ダンジョンの情報収集をしていた。
『水竜の洞窟』『マッサ鉱山』は聞いた感じ、いまの力量と同等。
『風神の谷』は少し上位に位置しており、『灼炎の祠』はイレギュラーな事態がない限り安心だろうという結果に落ち着いた。
油断や慢心は無い。過信もしないようにする。
これで、かなり踏破確率を上げられるだろう。
もう一つ、ヴィヴィの依頼である『小火竜涎香』についてだ。
いつもの受付嬢さんに聞いた結果、かなり希少なアイテムであると分かった。
それを目当てに数々の商人が冒険者たちに依頼を出しているものの、実際に達成されるケースはほとんど無いらしい。
それは、希少性はさることながら、通常の個体鑑定では表示されない隠しレア素材という特殊なアイテムであることが大きいらしい。
冒険者は敵に遭遇したら、まず『鑑定』を使い、剥ぎ取れる素材を確認、倒して素材を採集、その他の部位は破棄するというのが流れだ。
ところが『小火竜涎香』の場合は解体しながらそれっぽい部位に鑑定をかけまくって確認しなければいけない。
それも、ボスモンスターである『サラマンダー』にだ。
『ワープ』の無い一般冒険者は、素材が無ければ一度ダンジョンを出て、もう一度踏破する必要がある。
それだけで冒険者たちからは敬遠されるのだ。
冒険者稼業において、自分がいかに有利な立場にいるのか思い知らされるな。
「ご主人様、そろそろ行こうぜ」
血が騒ぐのだろう。ロウナが我慢できないとばかりに俺を急かしてくる。
「よし、行こう!」
俺は全員に目配せして、首肯をもらう。
一流冒険者への登竜門・四属性ダンジョン『灼炎の祠』に今、足を踏み入れた。
「な、何これ……!? あっつい……!?」
「壁中がぼんやり赤く光っているな……うむ、予想通り、熱を持っている」
リズがダンジョン内の温度に驚き、キアラが赤く点滅する壁に手を当てる。
『灼炎の祠』の中は、人工的な祠というよりは自然にできた洞窟のような作りだった。
壁が絶えず赤く点滅しており、灯が無くても十分に進める明るさだった。
「それはおそらく『灼炎石』ですね。熱を持った鉱石です。火属性の武具に用いられるようですわ」
「ホント!? いくらか、採取しとかなきゃ!!」
セーラの言葉にリズが自前のピッケルで壁からいくらか鉱石を取り出す。
こういうフィールドアイテムもリズは絶えず採取を続けている。
それらは換金が目的ではなく、あくまで鍛冶やアイテム錬成に使うためだ。
特に山菜や果物、ハーブなどはジュリアたちに頼んでよく食材として料理に入れてもらっている。
「シレイド……暑いの苦手……」
「あたしも北国出身だから、得意ではないな。耳や尻尾にも熱がこもるし、普段通りの力が出せるかどうか」
へばるように舌を出すシレイド。
ケロッとしているものの、不安を口にするロウナ。
これは、冒険すること自体キツイ。
なるべく早く、踏破する必要があるな。
進むこと五分ほど。『灼炎の祠』初遭遇の魔物が出現する。
真っ赤な皮膚を持った大きな蜥蜴の魔物の群れだ。
この世界、少々蜥蜴の魔物が多くないだろうか……。
先日、痛い目を見たポイズンリザードが頭を過ぎり、悪寒がした。
うーむ、こうやって冒険者はトラウマを抱えていくのだろうか。
雑念を振り払い、鑑定を行う。
名前:フレイムリザード
危険度:C+
説明:灼熱地帯に棲む蜥蜴の魔物。暑さに負けない分厚い皮膚を持つ。鋭い爪は独特の熱が籠っており、切り裂かれるとひどい火傷を負う。
素材:『炎蜥蜴の厚皮』
レア素材:『炎蜥蜴の熱爪』
「なるほど、あいつが第一階層のモンスターか」
「面白そうな相手じゃねえか……やってやるぜ」
前衛のキアラとロウナが意気込んでいる。
「リズ、シレイド、セーラ。後ろは頼んだぞ」
「任せてよ」
「ん……」
「はい、サポート致します」
後衛三人の準備もバッチリのようだ。
「よし、行くぞ!!」
皆と示し合わせ、戦闘を開始する。
こちらに気づいた炎蜥蜴がかさかさと素早く近づいてくる。
「接近戦に持ち込む前に、できるだけ数を減らすぞ! エリアルエッジ!!」
俺が放った風の斬撃が炎蜥蜴を一匹仕留める。
「ブレットパンチ!!」
ロウナの遠当ての拳が一匹、フレイムリザードを仕留める。
残り三匹。
その時、後ろから援護が来た。
リズの『ヘビーショット』、セーラの『エルシャイン』が一匹に命中して息絶える。
残り二匹だ。
「『精霊強化(スピリットエンチャント)』!! はあああああ!!」
キアラが精霊術で強化した肉体で薙ぎ払うと、フレイムリザード二匹が吹っ飛んで動かなくなる。
戦闘終了だ。
「呆気なかったねぇ……」
「ん……弱い」
リズがぽかんとした顔で言う。
シレイドも同じ気持ちらしい。
「ご主人様、こりゃあ楽勝なんじゃ? もっと、高難度のダンジョンを狙ってもよかったんじゃねえか?」
「いや、これくらいでいい。過信せず余裕があるくらいで攻略する方が怪我しなくていいだろう。俺は名声よりもパーティ一人一人の命の方が大事だ」
ロウナの問いかけに確固たる意志で応える。
「…………それって、奴隷のあたしやシレイドの命も含めてなのか?」
「当たり前だ。仲間の命に優劣はない。立場も身分も付き合いの長さも関係ないさ」
俺がそう言うと、ロウナは口角を少しだけ上げて言う。
「ホント、あんたは変なご主人様だよ」
その言葉に、わずかな親愛を感じられたのだった。
「……いよいよだな」
俺の言葉にみんなも顔が引き締まる。
ここ三日はギルドで四属性ダンジョンの情報収集をしていた。
『水竜の洞窟』『マッサ鉱山』は聞いた感じ、いまの力量と同等。
『風神の谷』は少し上位に位置しており、『灼炎の祠』はイレギュラーな事態がない限り安心だろうという結果に落ち着いた。
油断や慢心は無い。過信もしないようにする。
これで、かなり踏破確率を上げられるだろう。
もう一つ、ヴィヴィの依頼である『小火竜涎香』についてだ。
いつもの受付嬢さんに聞いた結果、かなり希少なアイテムであると分かった。
それを目当てに数々の商人が冒険者たちに依頼を出しているものの、実際に達成されるケースはほとんど無いらしい。
それは、希少性はさることながら、通常の個体鑑定では表示されない隠しレア素材という特殊なアイテムであることが大きいらしい。
冒険者は敵に遭遇したら、まず『鑑定』を使い、剥ぎ取れる素材を確認、倒して素材を採集、その他の部位は破棄するというのが流れだ。
ところが『小火竜涎香』の場合は解体しながらそれっぽい部位に鑑定をかけまくって確認しなければいけない。
それも、ボスモンスターである『サラマンダー』にだ。
『ワープ』の無い一般冒険者は、素材が無ければ一度ダンジョンを出て、もう一度踏破する必要がある。
それだけで冒険者たちからは敬遠されるのだ。
冒険者稼業において、自分がいかに有利な立場にいるのか思い知らされるな。
「ご主人様、そろそろ行こうぜ」
血が騒ぐのだろう。ロウナが我慢できないとばかりに俺を急かしてくる。
「よし、行こう!」
俺は全員に目配せして、首肯をもらう。
一流冒険者への登竜門・四属性ダンジョン『灼炎の祠』に今、足を踏み入れた。
「な、何これ……!? あっつい……!?」
「壁中がぼんやり赤く光っているな……うむ、予想通り、熱を持っている」
リズがダンジョン内の温度に驚き、キアラが赤く点滅する壁に手を当てる。
『灼炎の祠』の中は、人工的な祠というよりは自然にできた洞窟のような作りだった。
壁が絶えず赤く点滅しており、灯が無くても十分に進める明るさだった。
「それはおそらく『灼炎石』ですね。熱を持った鉱石です。火属性の武具に用いられるようですわ」
「ホント!? いくらか、採取しとかなきゃ!!」
セーラの言葉にリズが自前のピッケルで壁からいくらか鉱石を取り出す。
こういうフィールドアイテムもリズは絶えず採取を続けている。
それらは換金が目的ではなく、あくまで鍛冶やアイテム錬成に使うためだ。
特に山菜や果物、ハーブなどはジュリアたちに頼んでよく食材として料理に入れてもらっている。
「シレイド……暑いの苦手……」
「あたしも北国出身だから、得意ではないな。耳や尻尾にも熱がこもるし、普段通りの力が出せるかどうか」
へばるように舌を出すシレイド。
ケロッとしているものの、不安を口にするロウナ。
これは、冒険すること自体キツイ。
なるべく早く、踏破する必要があるな。
進むこと五分ほど。『灼炎の祠』初遭遇の魔物が出現する。
真っ赤な皮膚を持った大きな蜥蜴の魔物の群れだ。
この世界、少々蜥蜴の魔物が多くないだろうか……。
先日、痛い目を見たポイズンリザードが頭を過ぎり、悪寒がした。
うーむ、こうやって冒険者はトラウマを抱えていくのだろうか。
雑念を振り払い、鑑定を行う。
名前:フレイムリザード
危険度:C+
説明:灼熱地帯に棲む蜥蜴の魔物。暑さに負けない分厚い皮膚を持つ。鋭い爪は独特の熱が籠っており、切り裂かれるとひどい火傷を負う。
素材:『炎蜥蜴の厚皮』
レア素材:『炎蜥蜴の熱爪』
「なるほど、あいつが第一階層のモンスターか」
「面白そうな相手じゃねえか……やってやるぜ」
前衛のキアラとロウナが意気込んでいる。
「リズ、シレイド、セーラ。後ろは頼んだぞ」
「任せてよ」
「ん……」
「はい、サポート致します」
後衛三人の準備もバッチリのようだ。
「よし、行くぞ!!」
皆と示し合わせ、戦闘を開始する。
こちらに気づいた炎蜥蜴がかさかさと素早く近づいてくる。
「接近戦に持ち込む前に、できるだけ数を減らすぞ! エリアルエッジ!!」
俺が放った風の斬撃が炎蜥蜴を一匹仕留める。
「ブレットパンチ!!」
ロウナの遠当ての拳が一匹、フレイムリザードを仕留める。
残り三匹。
その時、後ろから援護が来た。
リズの『ヘビーショット』、セーラの『エルシャイン』が一匹に命中して息絶える。
残り二匹だ。
「『精霊強化(スピリットエンチャント)』!! はあああああ!!」
キアラが精霊術で強化した肉体で薙ぎ払うと、フレイムリザード二匹が吹っ飛んで動かなくなる。
戦闘終了だ。
「呆気なかったねぇ……」
「ん……弱い」
リズがぽかんとした顔で言う。
シレイドも同じ気持ちらしい。
「ご主人様、こりゃあ楽勝なんじゃ? もっと、高難度のダンジョンを狙ってもよかったんじゃねえか?」
「いや、これくらいでいい。過信せず余裕があるくらいで攻略する方が怪我しなくていいだろう。俺は名声よりもパーティ一人一人の命の方が大事だ」
ロウナの問いかけに確固たる意志で応える。
「…………それって、奴隷のあたしやシレイドの命も含めてなのか?」
「当たり前だ。仲間の命に優劣はない。立場も身分も付き合いの長さも関係ないさ」
俺がそう言うと、ロウナは口角を少しだけ上げて言う。
「ホント、あんたは変なご主人様だよ」
その言葉に、わずかな親愛を感じられたのだった。
222
あなたにおすすめの小説
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる