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第8章:マッサ鉱山と謎のダークエルフ編
第12話:帰還
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「はぁー……危なかった……! 何とか見つからずに済んだな」
「あたし、もうダメかと思ったよぉ」
マッサ鉱山から、エルゼリア外れの林までワープした俺たちは、プレッシャーからの解放でぐったりしていた。
俺の言葉に、リズも同調する。
辺りには、先ほど助けたエルフたちが、涙を流したり、飛び跳ねたりして喜んでいた。
「何とか全員助けることができたようだな」
「ん……めでたしめでたし……」
キアラとシレイドは満足げにその光景を眺めている。
——そこへ。
「レオ!」
ロザリアが林の木陰から現れる。
「ああ、ロザリアか。依頼通り、エルフたちを助けて来たぞ」
「ああ……! ああ! ありがとう。恩に着るよ」
ロザリアが俺の前で初めて満面の笑みを見せる。
非常に綺麗で見とれてしまった。
「ロザリアちゃんだ!」
「冒険者さんの言葉は本当だったんだな!」
喜んでいたエルフたちはロザリアの姿を見て、一層、嬉しさを高ぶらせる。
「皆の者、助けに来るのが遅くなってすまない。女王の命により皆を迎えに来た。一緒にアイスウッドの森に帰ろう」
エルフたちに対して、ロザリアが言う。
「へえ。彼女が依頼主か」
「まぁまぁ……なんとも不思議な魅力を持った方ですね」
ロウナとセーラがロザリアを見て、そんな感想を呟く。
「ロザリア。ワープで町の外まで送ろうか?」
「いや。助けてもらっただけで十分だ。レオたちも疲れているようだしな。幸い、この外れの林からはすぐに町の外に出られる。皆の手錠は森に帰ってから外す。道すがら、奴隷を運んでいると言い訳できた方が何かと便利だしな」
俺の言葉にそう答えるロザリア。
そして、すっと近づいてきて、俺の耳元で囁く。
「……例の報酬は、皆をアイスウッドに送り届けて来てからでいいか……?」
「え、え!?」
艶やかな声色でそう言われ、俺は顔が熱くなるのを感じる。
「れ、レオ!? 何!? 例の報酬って!?」
「ほう、ご主人様はやっぱりモテんだなー」
「ん……天然ジゴロ……」
リズ、ロウナ、シレイドがその様子を見て騒いでいる。
天然ジゴロはひどいぞ、シレイド。
ロザリアたちと別れ、とりあえず、俺たちは宿に戻ることにしたのだった。
——ラックステラ、談話室にて。
「して、マッサ鉱山攻略はどうする?」
「うーん、なかなかの騒ぎになってしまったようですからね……しばらく、中断したほうがいい気がしますが」
「ん……アロイは表立っては騒げないと思う……でも、少なからず、あそこを訪れる冒険者に疑いの目は向けるはず……」
キアラの問いかけに、セーラとシレイドが答える。
「となれば、ほとぼりが冷めるまで冒険は中断かー……ゴルゴッド鉱石、まだゲットできてないのにー」
「クエストの期限は確か……あと十日ほどだったな。それまでに騒ぎが収まってくれればいいんだが」
リズとロウナが心配そうに言う。
「よし、みんな。とりあえずしばらく様子見のために冒険は中断しよう。それと、そんなに心配しなくても大丈夫だ。ほとぼりはすぐに冷めるだろう」
皆に呼びかける。
俺の策が上手くいけば……おそらく、だが。
その言葉に、みんなは少しきょとんとしながら、首肯したのだった。
それから二日後の夜、そろそろ寝ようとベッドに入ると、部屋の窓がコンコンとノックされる。
不気味に思い、剣を持って近づくと、窓の外にいたのはロザリアだった。
俺は溜息をついて、ロザリアを部屋の中に招き入れる。
「すまないな、夜分遅くに。捕らわれたエルフたちは、しっかり森に帰すことができたよ」
「そうか。なら良かったよ」
「アロイの屋敷ではかなりの騒ぎになっているようだ。攫ったエルフたちがいなくなったとな……一応、情報を集めてみたがお前たちの仕業だとは気づいていないようだったよ」
「そうだろうな」
シレイドの話じゃ、あの眠り針は催眠の他に意識を惑わせる効果もあるそうだ。
眠らされた見張りたちも、直前直後の記憶はあやふやになって覚えていないだろうとのことだった。
ここ二日のアロイの噂を聞くに、逃げ出した奴隷たちは表立って捜索しているようだが攫った者たちに関しては、大っぴらに捜索できていないようだったしな。
「さて……エルフたちを送り届けた報告をする他に、私がここに来た理由が、もう一つあるんだが……♪」
ロザリアがずずいっと近づいてきて、俺の顎を指先で撫でる。
その艶やかな表情に、俺は思わず息を飲んでしまった。
「例の報酬を……渡しに来たぞ……♪」
「そのことなんだがな。俺は、不誠実な女性関係は持たないと決めている。ヤるからにはしっかり責任を取りたいからな。だから、報酬ということで君を受け取るということはできない」
俺の言葉に目を真ん丸にするロザリア。
「……驚いた。まさか、そんな真っ当なことを返されるなんて……今まで私が色仕掛けをした男は、みんな目の色変えて食いついて、猿みたいに腰を振っていたのに」
「俺をそんなアホな男たちと一緒にするな」
こちとら、転生前まで完全童貞聖人君子生活していたんだ。
そのくらいの自制は慣れ切っている。
まあ、この異世界アルティナじゃあ、聖人じゃなくて性人になっちまったけどな。
「ふーん……じゃあ、報酬は要らないのか?」
「ああ、要らん。どうせダンジョン攻略のついでだったしな」
俺がそういうと、今度は小悪魔のように妖しい笑みを浮かべるロザリア。
「な、なんだ?」
「ん? いーや。報酬としての私を受け取れないなら……私が、ただ単にお前を襲おうと思ってな」
「は……? むぐっ!?」
戸惑う俺の唇に自らの唇を押し付けてくるロザリア。
そして、有無を言わさずそのまま彼女にベッドに押し倒されてしまったのだった。
「あたし、もうダメかと思ったよぉ」
マッサ鉱山から、エルゼリア外れの林までワープした俺たちは、プレッシャーからの解放でぐったりしていた。
俺の言葉に、リズも同調する。
辺りには、先ほど助けたエルフたちが、涙を流したり、飛び跳ねたりして喜んでいた。
「何とか全員助けることができたようだな」
「ん……めでたしめでたし……」
キアラとシレイドは満足げにその光景を眺めている。
——そこへ。
「レオ!」
ロザリアが林の木陰から現れる。
「ああ、ロザリアか。依頼通り、エルフたちを助けて来たぞ」
「ああ……! ああ! ありがとう。恩に着るよ」
ロザリアが俺の前で初めて満面の笑みを見せる。
非常に綺麗で見とれてしまった。
「ロザリアちゃんだ!」
「冒険者さんの言葉は本当だったんだな!」
喜んでいたエルフたちはロザリアの姿を見て、一層、嬉しさを高ぶらせる。
「皆の者、助けに来るのが遅くなってすまない。女王の命により皆を迎えに来た。一緒にアイスウッドの森に帰ろう」
エルフたちに対して、ロザリアが言う。
「へえ。彼女が依頼主か」
「まぁまぁ……なんとも不思議な魅力を持った方ですね」
ロウナとセーラがロザリアを見て、そんな感想を呟く。
「ロザリア。ワープで町の外まで送ろうか?」
「いや。助けてもらっただけで十分だ。レオたちも疲れているようだしな。幸い、この外れの林からはすぐに町の外に出られる。皆の手錠は森に帰ってから外す。道すがら、奴隷を運んでいると言い訳できた方が何かと便利だしな」
俺の言葉にそう答えるロザリア。
そして、すっと近づいてきて、俺の耳元で囁く。
「……例の報酬は、皆をアイスウッドに送り届けて来てからでいいか……?」
「え、え!?」
艶やかな声色でそう言われ、俺は顔が熱くなるのを感じる。
「れ、レオ!? 何!? 例の報酬って!?」
「ほう、ご主人様はやっぱりモテんだなー」
「ん……天然ジゴロ……」
リズ、ロウナ、シレイドがその様子を見て騒いでいる。
天然ジゴロはひどいぞ、シレイド。
ロザリアたちと別れ、とりあえず、俺たちは宿に戻ることにしたのだった。
——ラックステラ、談話室にて。
「して、マッサ鉱山攻略はどうする?」
「うーん、なかなかの騒ぎになってしまったようですからね……しばらく、中断したほうがいい気がしますが」
「ん……アロイは表立っては騒げないと思う……でも、少なからず、あそこを訪れる冒険者に疑いの目は向けるはず……」
キアラの問いかけに、セーラとシレイドが答える。
「となれば、ほとぼりが冷めるまで冒険は中断かー……ゴルゴッド鉱石、まだゲットできてないのにー」
「クエストの期限は確か……あと十日ほどだったな。それまでに騒ぎが収まってくれればいいんだが」
リズとロウナが心配そうに言う。
「よし、みんな。とりあえずしばらく様子見のために冒険は中断しよう。それと、そんなに心配しなくても大丈夫だ。ほとぼりはすぐに冷めるだろう」
皆に呼びかける。
俺の策が上手くいけば……おそらく、だが。
その言葉に、みんなは少しきょとんとしながら、首肯したのだった。
それから二日後の夜、そろそろ寝ようとベッドに入ると、部屋の窓がコンコンとノックされる。
不気味に思い、剣を持って近づくと、窓の外にいたのはロザリアだった。
俺は溜息をついて、ロザリアを部屋の中に招き入れる。
「すまないな、夜分遅くに。捕らわれたエルフたちは、しっかり森に帰すことができたよ」
「そうか。なら良かったよ」
「アロイの屋敷ではかなりの騒ぎになっているようだ。攫ったエルフたちがいなくなったとな……一応、情報を集めてみたがお前たちの仕業だとは気づいていないようだったよ」
「そうだろうな」
シレイドの話じゃ、あの眠り針は催眠の他に意識を惑わせる効果もあるそうだ。
眠らされた見張りたちも、直前直後の記憶はあやふやになって覚えていないだろうとのことだった。
ここ二日のアロイの噂を聞くに、逃げ出した奴隷たちは表立って捜索しているようだが攫った者たちに関しては、大っぴらに捜索できていないようだったしな。
「さて……エルフたちを送り届けた報告をする他に、私がここに来た理由が、もう一つあるんだが……♪」
ロザリアがずずいっと近づいてきて、俺の顎を指先で撫でる。
その艶やかな表情に、俺は思わず息を飲んでしまった。
「例の報酬を……渡しに来たぞ……♪」
「そのことなんだがな。俺は、不誠実な女性関係は持たないと決めている。ヤるからにはしっかり責任を取りたいからな。だから、報酬ということで君を受け取るということはできない」
俺の言葉に目を真ん丸にするロザリア。
「……驚いた。まさか、そんな真っ当なことを返されるなんて……今まで私が色仕掛けをした男は、みんな目の色変えて食いついて、猿みたいに腰を振っていたのに」
「俺をそんなアホな男たちと一緒にするな」
こちとら、転生前まで完全童貞聖人君子生活していたんだ。
そのくらいの自制は慣れ切っている。
まあ、この異世界アルティナじゃあ、聖人じゃなくて性人になっちまったけどな。
「ふーん……じゃあ、報酬は要らないのか?」
「ああ、要らん。どうせダンジョン攻略のついでだったしな」
俺がそういうと、今度は小悪魔のように妖しい笑みを浮かべるロザリア。
「な、なんだ?」
「ん? いーや。報酬としての私を受け取れないなら……私が、ただ単にお前を襲おうと思ってな」
「は……? むぐっ!?」
戸惑う俺の唇に自らの唇を押し付けてくるロザリア。
そして、有無を言わさずそのまま彼女にベッドに押し倒されてしまったのだった。
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