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第8章:マッサ鉱山と謎のダークエルフ編
第21話:招待の理由
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「じ、女王様!?」
俺はすぐさま、跪き敬服のポーズを取る。
リズたちも俺と同じように片膝をつく。
シレイドは相変わらず格式張ったものが苦手らしく、足がプルプル震えていた。
「ハハハ、よいと言っておろうに。今日は、そなたらに礼をしたくて妾が客人として招いたのじゃ。そう膝をつくでない。楽にしろ」
「で、では、失礼します……」
俺は女王の言葉を受け、静かに立ち上がる。
リズたちとロザリアも同じように敬服を解いた。
「れ、レオ、自己紹介を……!」
ロザリアが囁いてくる。
「レオと申します」
「り、リズです」
「し、シレイド……ます!」
「キアラ・ガラテアと申します」
「セーラと申します」
「ろ、ロウナと言います」
俺たちが挨拶すると、ソフィア女王はうんうんと頷き、微笑む。
そして、興味深そうに俺の顔をマジマジと観察してきた。
「ほうほう……そなたがレオか……♪ ロザリアから色々と聞いておるぞー……色々とな♪」
「ちょ、ちょっと! 女王様!?」
ロザリアの反応に「ハッハッハ」と大きく笑うソフィア女王。
見た目に反して、案外、ユーモラスな人なのかもしれない。
「さて、それでは早速、王宮に招待しよう。美味しい料理をたくさん用意させておるのじゃ。ついて参れ」
そう言って、ソフィア女王が先立って歩き出す。
精悍な顔つきの騎士たちに囲まれながら、その後についていく。
敬服ポーズを崩さない市民たちの中には、俺たちに対して苦々しい表情を浮かべる者もいた。
まあ、それはそうだろうな。
アイスウッドのエルフたちにとって、人間は自分たちに犯罪行為を働いていた種族だ。
「すまぬの。一応、そなたらのことは恩人だと説明したのじゃが……。悪くは思わないでやってくれ」
そんな俺たちへの視線に気づいたのか、ソフィア女王が少し困ったように俺たちに呼びかける。
「気にしないでください。今回のことに関して、悪いのは人間側ですから。それに、エルフは元々他種族とあまり関わりを持たない種族だと理解していますので」
俺の言葉にクスッと笑い「助かる」と短く答えるソフィア女王。
敬服する市民たちの間を歩くこと十分ほど。
遂に王宮へと辿り着いた。
高い天井、ステンドグラスのような窓からキラキラと光が降り注ぐ神聖な雰囲気に押され、俺たちは息を飲んだ。
「ここが我が城じゃ。遥々、ご苦労じゃったな。とりあえず、客間に案内させる。少し休んだら晩餐としよう」
ソフィア女王が俺たちに優しく微笑む。
晩餐という言葉に、シレイドとロウナは既に浮足立っている様子だ。
「ロザリア、そなたが饗して差し上げろ。見知っておるそなたの方が、客人たちも気安いじゃろう」
「はっ!」
ソフィアの命令に、ロザリアが敬礼して答える。
入口でソフィア女王と一旦別れ、ロザリアに案内されて客間に通される。
「はー、きんちょーしたー!」
「私もだ。こう言ってはなんだが、ルーティア女王との謁見よりも気を使ったぞ」
リズとキアラがグデーッと客間のソファーに突っ伏す。
「セーラは平気だったか?」
「聖職者はこういった雰囲気には慣れておりますので」
俺の言葉にニッコリと答えるセーラ。
「早く飯にならねーかなー♪」
「ねーかなー……♪」
ロウナとシレイドはそわそわしている。
「で、とりあえず招待を受けたけど、結局、俺たちが呼ばれたのは女王と晩餐をするためだけか?」
俺はロザリアに疑問をぶつける。
ギルドに届いたソフィア女王の招待状には、とりあえず「国に招待する」としか書かれていなかった。
攫われたエルフたちを助けた礼というのは分かっていたが、俺たちが呼ばれた明確な理由がなかったのだ。
「ああ、その事か。レオたちをアイスウッドに招待した主な理由は『褒美を授ける式典に出席してもらうため』だ。我がアイスウッドは格式と礼を重んじる風潮があってな。助けてもらって何もしないというのは国のメンツに関わると女王が仰られてな」
なるほど、式典に出席させたかったのか。
「最初は『例の報酬』で事足りると思っていたのだが、流石にアロイの失脚……ひいては、私が国に戻れるようにしてもらったとなっては、それだけでは足りないとなったんだ」
ロザリアが言葉を続ける。
『例の報酬』というのを少し強調しながら……。
ロザリアが俺を見る目が、その部分だけ艶やかになったと感じたのは気のせいだろうか。
彼女との熱い夜を思い出す。
いかんいかん。今はリズたちもいる。
それに来賓として来たのだ。
そんな邪な気持ちになってはいけない。
頭を振って雑念を追い払う俺の様子を見たリズとキアラが、キョトンとしていた。
「式典は明日だ。今日は王宮に部屋を用意するから、泊まっていってくれ」
「恩人とはいえ、初めて来た俺たちが王宮に泊まっていいのか? なんか、街の人もいい気持ちがしないんじゃ? なんなら、ワープでエルゼリアに戻って、また明日来ることはできるが」
「『構わない』と女王が仰られている。何度も言うが、アイスウッドは礼儀を尽くす国。我々のためにも、甘えていってほしい」
ロザリアは俺の言葉に、ニッコリと微笑んで答える。
しばらく、客間で談笑を続けていると、入り口の扉がノックされる。
入ってきたのは、メイド服姿のエルフだ。
城の女中さんだろう。
「晩餐の準備ができました。ご案内いたします。女王からの言伝で、ロザリア様も同席せよとのことです」
「わ、私もか!?」
女中の言葉に、ロザリアが声を上げる。
「はい。『その方が面白い』とのことです」
「むむむ……相変わらず、困った御方だ……」
ロザリアが頭を抱えている。
やはり、ソフィア女王はなかなかユーモラスな人だと感じたのだった。
俺はすぐさま、跪き敬服のポーズを取る。
リズたちも俺と同じように片膝をつく。
シレイドは相変わらず格式張ったものが苦手らしく、足がプルプル震えていた。
「ハハハ、よいと言っておろうに。今日は、そなたらに礼をしたくて妾が客人として招いたのじゃ。そう膝をつくでない。楽にしろ」
「で、では、失礼します……」
俺は女王の言葉を受け、静かに立ち上がる。
リズたちとロザリアも同じように敬服を解いた。
「れ、レオ、自己紹介を……!」
ロザリアが囁いてくる。
「レオと申します」
「り、リズです」
「し、シレイド……ます!」
「キアラ・ガラテアと申します」
「セーラと申します」
「ろ、ロウナと言います」
俺たちが挨拶すると、ソフィア女王はうんうんと頷き、微笑む。
そして、興味深そうに俺の顔をマジマジと観察してきた。
「ほうほう……そなたがレオか……♪ ロザリアから色々と聞いておるぞー……色々とな♪」
「ちょ、ちょっと! 女王様!?」
ロザリアの反応に「ハッハッハ」と大きく笑うソフィア女王。
見た目に反して、案外、ユーモラスな人なのかもしれない。
「さて、それでは早速、王宮に招待しよう。美味しい料理をたくさん用意させておるのじゃ。ついて参れ」
そう言って、ソフィア女王が先立って歩き出す。
精悍な顔つきの騎士たちに囲まれながら、その後についていく。
敬服ポーズを崩さない市民たちの中には、俺たちに対して苦々しい表情を浮かべる者もいた。
まあ、それはそうだろうな。
アイスウッドのエルフたちにとって、人間は自分たちに犯罪行為を働いていた種族だ。
「すまぬの。一応、そなたらのことは恩人だと説明したのじゃが……。悪くは思わないでやってくれ」
そんな俺たちへの視線に気づいたのか、ソフィア女王が少し困ったように俺たちに呼びかける。
「気にしないでください。今回のことに関して、悪いのは人間側ですから。それに、エルフは元々他種族とあまり関わりを持たない種族だと理解していますので」
俺の言葉にクスッと笑い「助かる」と短く答えるソフィア女王。
敬服する市民たちの間を歩くこと十分ほど。
遂に王宮へと辿り着いた。
高い天井、ステンドグラスのような窓からキラキラと光が降り注ぐ神聖な雰囲気に押され、俺たちは息を飲んだ。
「ここが我が城じゃ。遥々、ご苦労じゃったな。とりあえず、客間に案内させる。少し休んだら晩餐としよう」
ソフィア女王が俺たちに優しく微笑む。
晩餐という言葉に、シレイドとロウナは既に浮足立っている様子だ。
「ロザリア、そなたが饗して差し上げろ。見知っておるそなたの方が、客人たちも気安いじゃろう」
「はっ!」
ソフィアの命令に、ロザリアが敬礼して答える。
入口でソフィア女王と一旦別れ、ロザリアに案内されて客間に通される。
「はー、きんちょーしたー!」
「私もだ。こう言ってはなんだが、ルーティア女王との謁見よりも気を使ったぞ」
リズとキアラがグデーッと客間のソファーに突っ伏す。
「セーラは平気だったか?」
「聖職者はこういった雰囲気には慣れておりますので」
俺の言葉にニッコリと答えるセーラ。
「早く飯にならねーかなー♪」
「ねーかなー……♪」
ロウナとシレイドはそわそわしている。
「で、とりあえず招待を受けたけど、結局、俺たちが呼ばれたのは女王と晩餐をするためだけか?」
俺はロザリアに疑問をぶつける。
ギルドに届いたソフィア女王の招待状には、とりあえず「国に招待する」としか書かれていなかった。
攫われたエルフたちを助けた礼というのは分かっていたが、俺たちが呼ばれた明確な理由がなかったのだ。
「ああ、その事か。レオたちをアイスウッドに招待した主な理由は『褒美を授ける式典に出席してもらうため』だ。我がアイスウッドは格式と礼を重んじる風潮があってな。助けてもらって何もしないというのは国のメンツに関わると女王が仰られてな」
なるほど、式典に出席させたかったのか。
「最初は『例の報酬』で事足りると思っていたのだが、流石にアロイの失脚……ひいては、私が国に戻れるようにしてもらったとなっては、それだけでは足りないとなったんだ」
ロザリアが言葉を続ける。
『例の報酬』というのを少し強調しながら……。
ロザリアが俺を見る目が、その部分だけ艶やかになったと感じたのは気のせいだろうか。
彼女との熱い夜を思い出す。
いかんいかん。今はリズたちもいる。
それに来賓として来たのだ。
そんな邪な気持ちになってはいけない。
頭を振って雑念を追い払う俺の様子を見たリズとキアラが、キョトンとしていた。
「式典は明日だ。今日は王宮に部屋を用意するから、泊まっていってくれ」
「恩人とはいえ、初めて来た俺たちが王宮に泊まっていいのか? なんか、街の人もいい気持ちがしないんじゃ? なんなら、ワープでエルゼリアに戻って、また明日来ることはできるが」
「『構わない』と女王が仰られている。何度も言うが、アイスウッドは礼儀を尽くす国。我々のためにも、甘えていってほしい」
ロザリアは俺の言葉に、ニッコリと微笑んで答える。
しばらく、客間で談笑を続けていると、入り口の扉がノックされる。
入ってきたのは、メイド服姿のエルフだ。
城の女中さんだろう。
「晩餐の準備ができました。ご案内いたします。女王からの言伝で、ロザリア様も同席せよとのことです」
「わ、私もか!?」
女中の言葉に、ロザリアが声を上げる。
「はい。『その方が面白い』とのことです」
「むむむ……相変わらず、困った御方だ……」
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やはり、ソフィア女王はなかなかユーモラスな人だと感じたのだった。
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