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第9章:風神の谷と宿の看板娘編
第12話:涙の合流
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「うおおおおおっ……!!」
リズたちの下に帰るため、風神様の力で空高く浮き上がった俺はその景色にビビっていた。
ロースシュタイン家に行く際、グリフォンに乗った時と同じだ。
視界はがら空き、風をもろに感じて、スピードこそ無いものの落ちそうで怖い。
「お……!? いたいた……!」
やはり、思った通り、俺が落ちた場所よりかなり進んでいる。
おそらく、落ちた俺を案じて、急いで谷底に向かっているのだろう。
辺りはかなり暗くなっているのに、野営する気配もない。
あのまま、ワープで元の場所に戻っても、入れ違いになってしまうだろうと思っていたが、予想は当たっていたようだ。
俺は、谷底へと進んでいく彼女たちの下にふわりと降りていく。
……すとん。
うむ。問題なく着地できた。
リズたちの方を見ると、まるで、お化けでも見るかのような目で見つめてくる。
「う……うそ……」
「……ご主人……様……」
リズとシレイドが、目を真ん丸にして驚いている。
「……れ、レオだ……!」
「レオ……さまぁ……!」
「ご主人様……!!」
キアラ、セーラ、ロウナも俺の姿を把握したようで、ぽろぽろ涙を流しだす。
——そして。
「レオーーーー!」
「うわぁぁぁん……ご主人様ぁ……!!」
「心配したんだぞぉ! バカ者めぇ!!」
「レオ様ぁーーーー!!」
「ご主人様ぁ!! 良かった!! 本当に良かったぁ!!」
五人は、そのまま俺に突っ込んで、押し倒してきたのだった。
彼女たちを何とか宥めながら、泣き止むのを待ち、頃合いを見て谷底であった出来事を話した。
「そっか……風神様が助けてくれたんだね」
「ん……恩人……ん? 恩神……?」
尚も、俺の腕にしがみついているリズとシレイド。
「みんなは、俺が落ちてからどうしてたんだ?」
「とりあえず、レオを追って谷底に向かうことにしたのだ」
「ええ……正直、望みは薄いと思いましたが、生きていると信じていました」
「ご主人様を追うことは満場一致だったからな」
キアラたちも俺の手を握ったり、背中に頬ずりしていたり、膝に座ったりしている。
五人に密着され、幸せな息苦しさだ。
「あ! ってことは、あのレアードって商人が町に戻る前に査問騎士団に証拠を渡していたほうがいいよね!」
「ああ。そのつもりだ。ワープで戻ったら、余裕で間に合うだろう」
リズの言葉に、微笑んで応えてやる。
「だから……その、もう……離れてもらっても……」
「ダメ!」
「イヤッ!」
「まだだ!」
「もう少し!」
「あとちょっと!」
俺の言葉は速攻で却下されてしまう。
まあ、心配させた罰だ。甘んじて受け入れよう。
俺は、彼女たちが落ち着くまで、細道でされるがままになるのだった。
皆がようやく落ち着いたので、エルゼリアにワープで戻る。
宿に戻る前に、査問騎士団の詰め所に行きミノタウロスの素材を渡す。
その場で、鑑定魔法をかけてもらい、ミノタウロスの召喚者が商人レアードだと確定する。
奴が町に戻り次第、逮捕するとのことだ。
一応、黒い結晶からミノタウロスが召喚されたことを話すと、騎士団の人たちはなんとも難しい顔をする。
なんでも、その結晶は『召喚石』と呼ばれるもので、普通は法律で定められた使い魔しか入れてはいけないのだとか。
そして、何より、空の召喚石に使い魔や魔物を封じるのは、魔力が大きい者しかできないと言われた。
一介の商人如きが、ミノタウロスなどという強力な魔物を封じ込めるのは、まず不可能らしい。
査問騎士団は、レアードに召喚石を与えた者がいると睨んでいるらしい。
なんにせよ、これでレアードが『風神の墓』を壊そうとするのは阻止できただろう。
俺たちは、ラックステラに戻った。
その日の夜は、とにかく大変だった。
夕食をとった後、有無を言わさずリズたちに引きずられて、女子部屋に軟禁。
彼女たち曰く「今日は、一秒たりとも離してあげない」だそう。
食堂から、かっ攫われる時、カウンターにいたジュリアが、めちゃくちゃ苦笑していた。
そうして、五人に夜通し、こってりしっぽり精も根も搾り取られるのだった。
またもや『オークエクスタシー』に助けられてしまった。
——翌日。
風神の谷の谷底、『風神の墓』があった場所にワープする。
リズたちと合流した地点よりここの方が、ボス部屋は近いと思ったからだ。
「よ、よし……『風神の谷』……今日こそは踏破するぞ……」
「「「「「おー!!」」」」」
げっそりした俺とは対照的に、元気満々の五人。
昨日、あれだけ心配しまくっていた姿はどこにもない。
まあ、いいか。
愛されないより、愛されすぎる方が全然マシだ。
度合いによる、とは思うが。
辺りを見回すと、昨日あった『風神の墓』がどこにもない。
やはり、風神様は墓の場所を移動したらしい。
まあ、レアードが来ないとしても、俺に場所はバレてしまったからな。
風神様の決め事として、移動しないわけにはいかなかったのだろう。
「どしたの?」
「ん? いや、何でもない。じゃあ、進もうか」
リズに不思議がられたが、説明するほどでもないだろう。
俺たちはボス部屋を目指し、先に進むことにしたのだった。
リズたちの下に帰るため、風神様の力で空高く浮き上がった俺はその景色にビビっていた。
ロースシュタイン家に行く際、グリフォンに乗った時と同じだ。
視界はがら空き、風をもろに感じて、スピードこそ無いものの落ちそうで怖い。
「お……!? いたいた……!」
やはり、思った通り、俺が落ちた場所よりかなり進んでいる。
おそらく、落ちた俺を案じて、急いで谷底に向かっているのだろう。
辺りはかなり暗くなっているのに、野営する気配もない。
あのまま、ワープで元の場所に戻っても、入れ違いになってしまうだろうと思っていたが、予想は当たっていたようだ。
俺は、谷底へと進んでいく彼女たちの下にふわりと降りていく。
……すとん。
うむ。問題なく着地できた。
リズたちの方を見ると、まるで、お化けでも見るかのような目で見つめてくる。
「う……うそ……」
「……ご主人……様……」
リズとシレイドが、目を真ん丸にして驚いている。
「……れ、レオだ……!」
「レオ……さまぁ……!」
「ご主人様……!!」
キアラ、セーラ、ロウナも俺の姿を把握したようで、ぽろぽろ涙を流しだす。
——そして。
「レオーーーー!」
「うわぁぁぁん……ご主人様ぁ……!!」
「心配したんだぞぉ! バカ者めぇ!!」
「レオ様ぁーーーー!!」
「ご主人様ぁ!! 良かった!! 本当に良かったぁ!!」
五人は、そのまま俺に突っ込んで、押し倒してきたのだった。
彼女たちを何とか宥めながら、泣き止むのを待ち、頃合いを見て谷底であった出来事を話した。
「そっか……風神様が助けてくれたんだね」
「ん……恩人……ん? 恩神……?」
尚も、俺の腕にしがみついているリズとシレイド。
「みんなは、俺が落ちてからどうしてたんだ?」
「とりあえず、レオを追って谷底に向かうことにしたのだ」
「ええ……正直、望みは薄いと思いましたが、生きていると信じていました」
「ご主人様を追うことは満場一致だったからな」
キアラたちも俺の手を握ったり、背中に頬ずりしていたり、膝に座ったりしている。
五人に密着され、幸せな息苦しさだ。
「あ! ってことは、あのレアードって商人が町に戻る前に査問騎士団に証拠を渡していたほうがいいよね!」
「ああ。そのつもりだ。ワープで戻ったら、余裕で間に合うだろう」
リズの言葉に、微笑んで応えてやる。
「だから……その、もう……離れてもらっても……」
「ダメ!」
「イヤッ!」
「まだだ!」
「もう少し!」
「あとちょっと!」
俺の言葉は速攻で却下されてしまう。
まあ、心配させた罰だ。甘んじて受け入れよう。
俺は、彼女たちが落ち着くまで、細道でされるがままになるのだった。
皆がようやく落ち着いたので、エルゼリアにワープで戻る。
宿に戻る前に、査問騎士団の詰め所に行きミノタウロスの素材を渡す。
その場で、鑑定魔法をかけてもらい、ミノタウロスの召喚者が商人レアードだと確定する。
奴が町に戻り次第、逮捕するとのことだ。
一応、黒い結晶からミノタウロスが召喚されたことを話すと、騎士団の人たちはなんとも難しい顔をする。
なんでも、その結晶は『召喚石』と呼ばれるもので、普通は法律で定められた使い魔しか入れてはいけないのだとか。
そして、何より、空の召喚石に使い魔や魔物を封じるのは、魔力が大きい者しかできないと言われた。
一介の商人如きが、ミノタウロスなどという強力な魔物を封じ込めるのは、まず不可能らしい。
査問騎士団は、レアードに召喚石を与えた者がいると睨んでいるらしい。
なんにせよ、これでレアードが『風神の墓』を壊そうとするのは阻止できただろう。
俺たちは、ラックステラに戻った。
その日の夜は、とにかく大変だった。
夕食をとった後、有無を言わさずリズたちに引きずられて、女子部屋に軟禁。
彼女たち曰く「今日は、一秒たりとも離してあげない」だそう。
食堂から、かっ攫われる時、カウンターにいたジュリアが、めちゃくちゃ苦笑していた。
そうして、五人に夜通し、こってりしっぽり精も根も搾り取られるのだった。
またもや『オークエクスタシー』に助けられてしまった。
——翌日。
風神の谷の谷底、『風神の墓』があった場所にワープする。
リズたちと合流した地点よりここの方が、ボス部屋は近いと思ったからだ。
「よ、よし……『風神の谷』……今日こそは踏破するぞ……」
「「「「「おー!!」」」」」
げっそりした俺とは対照的に、元気満々の五人。
昨日、あれだけ心配しまくっていた姿はどこにもない。
まあ、いいか。
愛されないより、愛されすぎる方が全然マシだ。
度合いによる、とは思うが。
辺りを見回すと、昨日あった『風神の墓』がどこにもない。
やはり、風神様は墓の場所を移動したらしい。
まあ、レアードが来ないとしても、俺に場所はバレてしまったからな。
風神様の決め事として、移動しないわけにはいかなかったのだろう。
「どしたの?」
「ん? いや、何でもない。じゃあ、進もうか」
リズに不思議がられたが、説明するほどでもないだろう。
俺たちはボス部屋を目指し、先に進むことにしたのだった。
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