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第9章:風神の谷と宿の看板娘編
第17話:素材換金
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「この度は、うちの商会の馬鹿が迷惑をかけてしまったようで、申し訳ない」
店に着いて、俺たちの顔を見るや否や、ヴィヴィとロズベルが深く頭を下げてきた。
「あ、頭を上げてくれ。ヴィヴィたちのせいではないだろう」
「そ、そうよ! そんなに畏まらなくていいわよ」
二人の行動に戸惑う俺とリズ。
「査問騎士団から、ことの顛末は上がってきてるんだ。レアードの奴がミノタウロスをレオくんにけしかけたとか……。おまけに罪を償わずに獄中で自爆とは、いやはや、本当に馬鹿としか言いようがないよ」
ヴィヴィはそう言った後「はぁ……」と深いため息をついた。
相当堪えているようだ。
「ヴィヴィ。今日は、謝られるために来たんじゃない。素材の換金に来たんだ」
「ああ……そうかい。よし。ボクでよかったら、いくらでも取引させてもらうよ。さっそく奥の部屋に来てくれないかい?」
俺の言葉に、幾分か普段の彼女に戻ったようだ。
いつもの跳ねるような元気な声色ではないが。
彼女に案内されるまま、奥の大きな応接室に入った。
「じゃあ、以前と同じ感じで素材をその辺に広げちゃってよ」
「分かった。今日は、俺とリズ、キアラ、セーラの素材を頼む」
「おっけー! ロズベル、女子三人の面倒を見てあげて。ボクはレオくんの方を対応するから」
「畏まりました」
俺の言葉にヴィヴィは元気よく返事をして、店員のロズベルに指示を飛ばす。
奴隷である、シレイドとロウナの分は俺がもらっているので、言わずもがな俺の素材が一番多い。
今まで踏破したダンジョンで手に入れた素材を片っ端から応接室に広げていく。
当然、各素材十個ほどはストックとして持っておく。
鍛冶屋や魔道具錬成の際、素材が足りなくなるということは避けたいからな。
以前ここに来てから『魔獣の森』『灼炎の祠』『海竜の洞窟』『マッサ鉱山』『風神の谷』と思えば、色んなダンジョンを踏破してきた。
素材を取り出すたびに、その時の苦労やら思い出が蘇ってくるようだ。
「ほうほう。相変わらず、すごい量だねー。クランでもないのにここまで多いのはなかなかないねぇ」
ヴィヴィが感心するように呟く。
二〇分ほどかけて、素材を広げ終わる。
学校の体育館並みに広い応接室が、俺たちの持ち込んだ素材でパンパンになっている。
「ふむ。じゃあ、さっそく査定に移るから、そこのソファーでくつろいでてよ」
応接室に備え付けられているソファーに座り、鑑定が終わるまで待つ。
「ふむふむ……まずは『魔獣の森』関連だね……」
ヴィヴィたちが素材の査定に移る。
果たして、いくらくらいになるだろうか。
現時点での俺の所持金は600万Gほど。
冒険者ギルドで受けたクエストの報奨金等々で、かなり増えた。
とりあえず、自宅の購入を見据えて資金を貯めこむ生活をしているが、この分だといつになるか、まだ不透明だ。
とすれば、借家なども本格的に検討した方が良い気がしてくる。
日本にいた時もそうだったが、家を購入するというのは、なかなかに大変だ。
過去の自分は『購入』しか考えてなかったが、それがいかに視野の狭い考え方だったかと、まざまざと思わされる。
人間誰しも、色々な経験を得てからじゃないと気づかない事も多い。
見通しが甘く、働いてこなかった者が、社会の厳しさを痛感している感じである。
だが、俺はまだ冒険者という仕事ができているだけ幸せなのだろう。
このアルティナでは、田舎の農民や一介の露店商人なんかは、冒険者よりも生活水準が低めに落ち着く傾向にあるそうだからな。
色々と思案を巡らせ、リズたちと話し込んでいる内に三〇分が経過した。
「ふぃ~、お待たせお待たせ! 査定のほうが終わったよー!」
ヴィヴィとロズベルが、俺たちの下へやってくる。
さて、注目の査定金額だ。いくらになるのだろうか。
「今回の査定額はこちらだよ」
スッと明細を差し出してくる。
そこに書かれていた金額は……。
「……1000万。……1000万!?」
驚きすぎて、思わず叫んでしまった。
「こ……これ、嘘じゃないよね……?」
「わ、私が……こんなにお金を……稼いだなんて……」
「ど、どうしましょう……ああ、どうしましょう……」
リズ、キアラ、セーラも自分の査定明細を見て、口をあんぐり開けて驚いている。
彼女たちも、俺ほどではないものの、かなり高額のようだ。
「こ、これ……ま、間違いじゃないのか?」
「ううん、合ってるよ。レオくんの持ち込んだ素材査定額は1000万G」
ケロッとした顔で俺に返すヴィヴィ。
「いつも通り、最高値の店に卸す感じで計算したからねぇ。査定額が高いものをいくつか挙げるとすると……クラーケンの素材が高かったかなぁ、近頃、海竜の洞窟に全然現れてなかったみたいで供給が完全に滞ってたから、その分、取引価格も高騰しているんだ。あとは、サラマンダーの素材が、予想以上に良質だったから、これは巨大個体なのもあって素材が大きかったと推測されるね。それに『コカトリスの肉』、人気食材だからいくらあっても供給が追い付かない感じなんだよ、レオくんたちが大量に持ってきてくれて、こちらとしても助かったというか。もちろん、ボクの方でも、ちゃんと色は付けさせてもらったし——」
つらつらと高額査定になった理由を話すヴィヴィ。
俺たちは、その話を半ば放心状態で聞いていた。
「——まあ、そんなわけで、しめて1000万G。ささ、受け取っちゃってよ♪」
目の前に、それぞれ大きな札束が置かれる。
俺たちは、戸惑うように目を合わせた後、頷きあって震える手でそれを各々の魔法の袋へと入れた。
お、お金持ちに……なってしまった。
高揚感でふわふわと浮いた心をなんとか落ち着かせて、俺たちは店を後にするのだった。
店に着いて、俺たちの顔を見るや否や、ヴィヴィとロズベルが深く頭を下げてきた。
「あ、頭を上げてくれ。ヴィヴィたちのせいではないだろう」
「そ、そうよ! そんなに畏まらなくていいわよ」
二人の行動に戸惑う俺とリズ。
「査問騎士団から、ことの顛末は上がってきてるんだ。レアードの奴がミノタウロスをレオくんにけしかけたとか……。おまけに罪を償わずに獄中で自爆とは、いやはや、本当に馬鹿としか言いようがないよ」
ヴィヴィはそう言った後「はぁ……」と深いため息をついた。
相当堪えているようだ。
「ヴィヴィ。今日は、謝られるために来たんじゃない。素材の換金に来たんだ」
「ああ……そうかい。よし。ボクでよかったら、いくらでも取引させてもらうよ。さっそく奥の部屋に来てくれないかい?」
俺の言葉に、幾分か普段の彼女に戻ったようだ。
いつもの跳ねるような元気な声色ではないが。
彼女に案内されるまま、奥の大きな応接室に入った。
「じゃあ、以前と同じ感じで素材をその辺に広げちゃってよ」
「分かった。今日は、俺とリズ、キアラ、セーラの素材を頼む」
「おっけー! ロズベル、女子三人の面倒を見てあげて。ボクはレオくんの方を対応するから」
「畏まりました」
俺の言葉にヴィヴィは元気よく返事をして、店員のロズベルに指示を飛ばす。
奴隷である、シレイドとロウナの分は俺がもらっているので、言わずもがな俺の素材が一番多い。
今まで踏破したダンジョンで手に入れた素材を片っ端から応接室に広げていく。
当然、各素材十個ほどはストックとして持っておく。
鍛冶屋や魔道具錬成の際、素材が足りなくなるということは避けたいからな。
以前ここに来てから『魔獣の森』『灼炎の祠』『海竜の洞窟』『マッサ鉱山』『風神の谷』と思えば、色んなダンジョンを踏破してきた。
素材を取り出すたびに、その時の苦労やら思い出が蘇ってくるようだ。
「ほうほう。相変わらず、すごい量だねー。クランでもないのにここまで多いのはなかなかないねぇ」
ヴィヴィが感心するように呟く。
二〇分ほどかけて、素材を広げ終わる。
学校の体育館並みに広い応接室が、俺たちの持ち込んだ素材でパンパンになっている。
「ふむ。じゃあ、さっそく査定に移るから、そこのソファーでくつろいでてよ」
応接室に備え付けられているソファーに座り、鑑定が終わるまで待つ。
「ふむふむ……まずは『魔獣の森』関連だね……」
ヴィヴィたちが素材の査定に移る。
果たして、いくらくらいになるだろうか。
現時点での俺の所持金は600万Gほど。
冒険者ギルドで受けたクエストの報奨金等々で、かなり増えた。
とりあえず、自宅の購入を見据えて資金を貯めこむ生活をしているが、この分だといつになるか、まだ不透明だ。
とすれば、借家なども本格的に検討した方が良い気がしてくる。
日本にいた時もそうだったが、家を購入するというのは、なかなかに大変だ。
過去の自分は『購入』しか考えてなかったが、それがいかに視野の狭い考え方だったかと、まざまざと思わされる。
人間誰しも、色々な経験を得てからじゃないと気づかない事も多い。
見通しが甘く、働いてこなかった者が、社会の厳しさを痛感している感じである。
だが、俺はまだ冒険者という仕事ができているだけ幸せなのだろう。
このアルティナでは、田舎の農民や一介の露店商人なんかは、冒険者よりも生活水準が低めに落ち着く傾向にあるそうだからな。
色々と思案を巡らせ、リズたちと話し込んでいる内に三〇分が経過した。
「ふぃ~、お待たせお待たせ! 査定のほうが終わったよー!」
ヴィヴィとロズベルが、俺たちの下へやってくる。
さて、注目の査定金額だ。いくらになるのだろうか。
「今回の査定額はこちらだよ」
スッと明細を差し出してくる。
そこに書かれていた金額は……。
「……1000万。……1000万!?」
驚きすぎて、思わず叫んでしまった。
「こ……これ、嘘じゃないよね……?」
「わ、私が……こんなにお金を……稼いだなんて……」
「ど、どうしましょう……ああ、どうしましょう……」
リズ、キアラ、セーラも自分の査定明細を見て、口をあんぐり開けて驚いている。
彼女たちも、俺ほどではないものの、かなり高額のようだ。
「こ、これ……ま、間違いじゃないのか?」
「ううん、合ってるよ。レオくんの持ち込んだ素材査定額は1000万G」
ケロッとした顔で俺に返すヴィヴィ。
「いつも通り、最高値の店に卸す感じで計算したからねぇ。査定額が高いものをいくつか挙げるとすると……クラーケンの素材が高かったかなぁ、近頃、海竜の洞窟に全然現れてなかったみたいで供給が完全に滞ってたから、その分、取引価格も高騰しているんだ。あとは、サラマンダーの素材が、予想以上に良質だったから、これは巨大個体なのもあって素材が大きかったと推測されるね。それに『コカトリスの肉』、人気食材だからいくらあっても供給が追い付かない感じなんだよ、レオくんたちが大量に持ってきてくれて、こちらとしても助かったというか。もちろん、ボクの方でも、ちゃんと色は付けさせてもらったし——」
つらつらと高額査定になった理由を話すヴィヴィ。
俺たちは、その話を半ば放心状態で聞いていた。
「——まあ、そんなわけで、しめて1000万G。ささ、受け取っちゃってよ♪」
目の前に、それぞれ大きな札束が置かれる。
俺たちは、戸惑うように目を合わせた後、頷きあって震える手でそれを各々の魔法の袋へと入れた。
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高揚感でふわふわと浮いた心をなんとか落ち着かせて、俺たちは店を後にするのだった。
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