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第10章:ルクシアの町と女を忘れたギルド団長編
第21話:御礼のデート
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さて、ここで一つ問題が残った。
邪神アブランに折られた、俺の『風霊の剣』だ。
武器が無ければ、冒険者として戦えない。
早急に、この問題を解決する必要がある。
俺は早速、オルガ工房に向かった。
「やあ、レオ。この間からルクシアの件で、まだ町が騒がしいねー。それで、今日はどうしたの?」
いつも通り、明るい笑顔で出迎えてくれるオルガ。
「ああ。これ、なんだが」
俺はポッキリと折れた『風霊の剣』を見せる。
「えぇっ!? そ、それ、折れちゃったの!?」
「ああ。この通りだ」
剣を見たオルガが驚愕の表情を浮かべる。
「ど、どんな魔物と戦ったのさ……この剣はそんなに簡単に折れるもんじゃないよ」
「『魔物』というより『邪神』だな」
「え? なにそれ?」
きょとん顔をするオルガ。
まあ、いいか。
「とにかく、この通り、綺麗に折れてしまった。オルガに修理を依頼したい」
「い、依頼って……宝剣とも言われるこの剣を……うーむ」
考え込むオルガ。
「レオ。材料になる鉱石みたいなものは何か持ってるの?」
真面目な眼差しで俺を見る。
「鉱石……鉱石……か」
リズに言えば、その辺で採れる鉱石はいくらでも貰えると思うが、この剣にそんなものをあてがうわけにはいかんだろうな。
しばらく考え込んだ後、あることを思い出す。
俺は魔法の袋に手を突っ込み、あるアイテムを出す。
「そうだな……『これ』とかどうだ?」
「そ、それ……!!」
俺の出したアイテムにオルガが声を上げる。
そう、それは風神シーヴァに貰った謎の鉱石『風神結晶』だ。
「こ、これ……!! す、すごい!! とんでもない魔力と精気を感じる……!! 結晶が生きているように脈打つのが分かる!!」
大興奮のオルガ。
「こ、これ!! これなら、風霊の剣より遥かに凄い武器を作れそうだよ!!」
「本当か!? じゃあ、頼めるか?」
「ああ!! やるだけのことはやったげるさ!! お代は……100万G!! と言いたいところだけど、こんなに珍しくて良い鉱石を扱わらせてもらえるんだし……え、えっと、あ、あたしを……可愛がってくれるなら、タダでしてあげる……」
尻すぼみになりながら、言葉を紡ぐオルガ。
相変わらず可愛い彼女だ。
俺は「もちろんだよ」と彼女の頭を撫でる。
彼女の顔がポッと赤くなるのと同時に、彼女の頑張っている証であるフェロモンじみた汗の匂いが仄かに香ってくるのだった。
そうして、スタンピード騒動から約一か月。
エルゼリアの街もようやく、元の落ち着きを取り戻していた。
キアラもガラテアから戻ってきたのだが、俺の武器である剣の製作が難航しているらしく、オルガからもうしばらく時間が欲しいと連絡があった。
武器がなければ冒険はできない。
ギルドの鍛錬場で体を動かし、腕がなまらないようにしているが、やはり暇だ。
そうして、今日も今日とて鍛錬を終え、日がな一日エルゼリアをブラブラと散歩をしているのだった。
——その時。
ぽんぽんと肩を叩かれる。
そこにいたのは……。
「ゼルフィアさん」
「やあ、レオ」
ゼルフィアはニッコリと微笑んだ。
普段のゴツイ鎧姿とは違い、なんとも綺麗なドレス姿。
普段の姿とは違う女性は、どうしてこうも魅力的に映るのだろうか。
「身体の方は?」
「ああ。ようやくドラゴンゾンビの毒が完全に消えたようだ。流石に今回は堪えたよ」
そう。ゼルフィアはドラゴンゾンビの毒を受けた後、その毒の影響を受けて療養していたのだった。
直後にポイズンポーションを飲んでいたので最悪の事態は免れたものの、なかなか全快とはいかず、大事を取ってしばらくギルドでの仕事も休んでいたのだった。
「今日は何を?」
「なに、休暇期間はもう少しあるからな。散歩でもと思って、町を見て回っていたんだよ」
「ははは、俺も同じですよ」
俺の問いかけに、柔らかく答えるゼルフィアさん。
すっかり休暇モードのようで、普段の険しい表情の彼女とは違い、なんとも優しい笑顔である。
そんな彼女に思わず胸が高鳴った。
「そうだ。君には二度も命を助けられたからな。何か御礼をしたかったんだ」
毒を受けた彼女をドラゴンゾンビから遠ざけた時と、アブランに殺されそうになった時に割って入った時のことだろう。
「は、ははは。そんなこと、気にしないでくださいよ。仲間として当然のことをしただけです」
胸の動悸を悟られぬように返答する。
「いーや、気にするさ。私の方が立場は上なのだ。なのに、あんなにも助けてもらってしまった。ギルドの団長としても何か御礼をせねば気が済まない」
我儘な女の子のようにキッパリと言うゼルフィア。
ムキになる可愛らしい表情に、またもや胸がドキッと高鳴ってしまう。
この気持ちの名は、もうすでに痛いほど知っている。
だが、相手は所属ギルドの団長。謂わば上司である。
アプローチを行うのも、失礼かもしれない。
「じゃ、じゃあ……これから飯でも行きませんか? それでチャラってことで……なんて、ハハハ」
「飯……? そんなことでいいのか? いいぞ、行こう!」
さり気なくご飯に誘ってみた。
断られるかと思ったが、すんなりと了承を得られる。
「にしても、いいのか? せっかくの休日の食事が私とで」
「ははは、何言ってるんですか。ゼルフィアさんみたいに可愛い女性とご飯を共にできるなら、それだけで幸せですよ……あ」
マズかったか。思わず本音が出てしまった。
「な、何をバカなことを言ってるんだ……!! え、えっと、その、私が、か、可愛いなどと……うつつを抜かして……!!」
分かりやすく照れるゼルフィア。
ふーむ。どうやら、褒められ慣れていないと見た。
普段は可愛いというよりは、強そうとか怖いとかのイメージが勝っているしな。
ええい、ままよ。
普段見られない上司である彼女の姿につられ、勢いと悪戯心も相まって言ってしまうことにする。
「……バカなことじゃないですよ。それに、ゼルフィアさんは可愛いです。えっと、それでご飯、行ってもらえますか?」
温かみを込めた真面目な眼差しでゼルフィアを見る。
そうすると、彼女は顔を真っ赤にしていた。
そして……。
「……わ、分かった……」
消え入りそうな声でコクリと首を縦に振るのだった。
邪神アブランに折られた、俺の『風霊の剣』だ。
武器が無ければ、冒険者として戦えない。
早急に、この問題を解決する必要がある。
俺は早速、オルガ工房に向かった。
「やあ、レオ。この間からルクシアの件で、まだ町が騒がしいねー。それで、今日はどうしたの?」
いつも通り、明るい笑顔で出迎えてくれるオルガ。
「ああ。これ、なんだが」
俺はポッキリと折れた『風霊の剣』を見せる。
「えぇっ!? そ、それ、折れちゃったの!?」
「ああ。この通りだ」
剣を見たオルガが驚愕の表情を浮かべる。
「ど、どんな魔物と戦ったのさ……この剣はそんなに簡単に折れるもんじゃないよ」
「『魔物』というより『邪神』だな」
「え? なにそれ?」
きょとん顔をするオルガ。
まあ、いいか。
「とにかく、この通り、綺麗に折れてしまった。オルガに修理を依頼したい」
「い、依頼って……宝剣とも言われるこの剣を……うーむ」
考え込むオルガ。
「レオ。材料になる鉱石みたいなものは何か持ってるの?」
真面目な眼差しで俺を見る。
「鉱石……鉱石……か」
リズに言えば、その辺で採れる鉱石はいくらでも貰えると思うが、この剣にそんなものをあてがうわけにはいかんだろうな。
しばらく考え込んだ後、あることを思い出す。
俺は魔法の袋に手を突っ込み、あるアイテムを出す。
「そうだな……『これ』とかどうだ?」
「そ、それ……!!」
俺の出したアイテムにオルガが声を上げる。
そう、それは風神シーヴァに貰った謎の鉱石『風神結晶』だ。
「こ、これ……!! す、すごい!! とんでもない魔力と精気を感じる……!! 結晶が生きているように脈打つのが分かる!!」
大興奮のオルガ。
「こ、これ!! これなら、風霊の剣より遥かに凄い武器を作れそうだよ!!」
「本当か!? じゃあ、頼めるか?」
「ああ!! やるだけのことはやったげるさ!! お代は……100万G!! と言いたいところだけど、こんなに珍しくて良い鉱石を扱わらせてもらえるんだし……え、えっと、あ、あたしを……可愛がってくれるなら、タダでしてあげる……」
尻すぼみになりながら、言葉を紡ぐオルガ。
相変わらず可愛い彼女だ。
俺は「もちろんだよ」と彼女の頭を撫でる。
彼女の顔がポッと赤くなるのと同時に、彼女の頑張っている証であるフェロモンじみた汗の匂いが仄かに香ってくるのだった。
そうして、スタンピード騒動から約一か月。
エルゼリアの街もようやく、元の落ち着きを取り戻していた。
キアラもガラテアから戻ってきたのだが、俺の武器である剣の製作が難航しているらしく、オルガからもうしばらく時間が欲しいと連絡があった。
武器がなければ冒険はできない。
ギルドの鍛錬場で体を動かし、腕がなまらないようにしているが、やはり暇だ。
そうして、今日も今日とて鍛錬を終え、日がな一日エルゼリアをブラブラと散歩をしているのだった。
——その時。
ぽんぽんと肩を叩かれる。
そこにいたのは……。
「ゼルフィアさん」
「やあ、レオ」
ゼルフィアはニッコリと微笑んだ。
普段のゴツイ鎧姿とは違い、なんとも綺麗なドレス姿。
普段の姿とは違う女性は、どうしてこうも魅力的に映るのだろうか。
「身体の方は?」
「ああ。ようやくドラゴンゾンビの毒が完全に消えたようだ。流石に今回は堪えたよ」
そう。ゼルフィアはドラゴンゾンビの毒を受けた後、その毒の影響を受けて療養していたのだった。
直後にポイズンポーションを飲んでいたので最悪の事態は免れたものの、なかなか全快とはいかず、大事を取ってしばらくギルドでの仕事も休んでいたのだった。
「今日は何を?」
「なに、休暇期間はもう少しあるからな。散歩でもと思って、町を見て回っていたんだよ」
「ははは、俺も同じですよ」
俺の問いかけに、柔らかく答えるゼルフィアさん。
すっかり休暇モードのようで、普段の険しい表情の彼女とは違い、なんとも優しい笑顔である。
そんな彼女に思わず胸が高鳴った。
「そうだ。君には二度も命を助けられたからな。何か御礼をしたかったんだ」
毒を受けた彼女をドラゴンゾンビから遠ざけた時と、アブランに殺されそうになった時に割って入った時のことだろう。
「は、ははは。そんなこと、気にしないでくださいよ。仲間として当然のことをしただけです」
胸の動悸を悟られぬように返答する。
「いーや、気にするさ。私の方が立場は上なのだ。なのに、あんなにも助けてもらってしまった。ギルドの団長としても何か御礼をせねば気が済まない」
我儘な女の子のようにキッパリと言うゼルフィア。
ムキになる可愛らしい表情に、またもや胸がドキッと高鳴ってしまう。
この気持ちの名は、もうすでに痛いほど知っている。
だが、相手は所属ギルドの団長。謂わば上司である。
アプローチを行うのも、失礼かもしれない。
「じゃ、じゃあ……これから飯でも行きませんか? それでチャラってことで……なんて、ハハハ」
「飯……? そんなことでいいのか? いいぞ、行こう!」
さり気なくご飯に誘ってみた。
断られるかと思ったが、すんなりと了承を得られる。
「にしても、いいのか? せっかくの休日の食事が私とで」
「ははは、何言ってるんですか。ゼルフィアさんみたいに可愛い女性とご飯を共にできるなら、それだけで幸せですよ……あ」
マズかったか。思わず本音が出てしまった。
「な、何をバカなことを言ってるんだ……!! え、えっと、その、私が、か、可愛いなどと……うつつを抜かして……!!」
分かりやすく照れるゼルフィア。
ふーむ。どうやら、褒められ慣れていないと見た。
普段は可愛いというよりは、強そうとか怖いとかのイメージが勝っているしな。
ええい、ままよ。
普段見られない上司である彼女の姿につられ、勢いと悪戯心も相まって言ってしまうことにする。
「……バカなことじゃないですよ。それに、ゼルフィアさんは可愛いです。えっと、それでご飯、行ってもらえますか?」
温かみを込めた真面目な眼差しでゼルフィアを見る。
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