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第11章:落星の森と紫煙の魔術師編
第3話:新生『紫煙の白猫』
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「あらぁ、レオさんたち~、何か御用ですかぁ?」
ふんわり女子チェリーが対応してくれる。
今日の担当は彼女のようだ。
「ああ。これから、なにか手ごろなダンジョンを攻略したいんだが、ただ踏破だけするのも士気が上がらなくてな。クエストを受けながら踏破できるダンジョンはあるかな?」
「かしこまりましたぁ。ちょっとお待ちくださいねぇ」
俺の言葉を受けて、チェリーがペラペラとクエスト台帳らしきものを捲る。
「えっとぉ、一番手ごろなのはぁ、魔道具屋『紫煙の白猫』様からの、魔道具の素材集めですねぇ。ここから南東にある『落星の森』で採れる素材をご所望のようですぅ。レオさんのレベル的にも適した難易度のダンジョンかとぉ」
チェリーがおすすめのクエストを紹介してくれる。
ん……? 待てよ……? 『紫煙の白猫』?
「ねえ、レオ。『紫煙の白猫』って……」
「ん……シャロンの店……」
リズとシレイドも気づいたようだ。
俺は二人に首肯してやる。
ルクシアでよくお世話になっていた魔道具屋シャロンの店だ。
「店を失って、こちらに来たと聞いていたが……ふむ、ギルドに依頼を出していたのか」
「なるほど、お知り合いの魔道具屋さんなのですね」
「ご主人様の知り合いなら、助けてやろうぜ!」
キアラ、セーラ、ロウナも顔を見合わせている。
「チェリー。その依頼、受けることにするよ。」
「分かりましたぁ。『詳しい話は直接したい』ということらしいのでぇ、お店に向かってくださいねぇ」
「分かった」
俺は正式にそのクエストを受領し、詳しい話を聞くためにシャロンの店『紫煙の白猫』へと向かった。
——エルゼリアの第二層・魔道具屋通り。
依頼表にある地図を頼りに店に向かう。
魔道具屋通りという名の通り、なんとも怪しげな店が軒を連ねていた。
各々の店の外の商品棚には、素材としても使わないような魔物の部位や、何に使うか分からない奇妙な道具が並べてある。
「……なんか、すごい所だな」
「ああ。私たちエルフでも扱わないような素材ばかりだ……ふむ、なんとも興味深い」
俺の言葉にキアラが同調する。
「うひゃあ、この目玉……今、動いた気がしたぜ!」
「ちょ、ちょっとロウナ! 怖いこと言わないでよ!」
「……む! ……ホントに動いた……!? おおー、シレイド……これ欲しい……!」
「シレイドちゃん、止めときなさい? そんなのお部屋に飾ってもしょうがないでしょう?」
他の女子たちは、棚に並べてある何かの目玉のホルマリン漬けのようなもので、キャーキャー騒いでいる。
そうこうしている内に魔道具屋・新生『紫煙の白猫』に到着。
新築らしく、ピカピカの外壁である。
他の店のように商品棚らしきものは店外に出ておらず、それがかえって凄腕の魔道具屋感を出している。
さっそく、扉を開けて中に入る。
そこには、受付に座り本を読む、店主シャロンがいた。
「あら、珍しいお客さんね」
俺たちを見て、少しだけ目を見開き、事もなげに呟くシャロン。
「やあ、久しぶり。リズのバスボムを作ってもらった時以来か。先日のルクシアのスタンピード騒動、色々と大変だったな」
俺の言葉に「そうねぇ、まあまあ大変だったわ」と短く答え、甘ったるい煙草をふかせて微笑むシャロン。
「ありがとね、シャロン! バスボムのお陰で、お風呂がリッチになったよ!」
「うふふ、それは良かったわ」
リズの言葉にも、にこやかに応える。
「ん……久しぶり、シャロン……」
「元気だったか?」
「初めまして、セーラと申します」
「ロウナだ。よろしくな」
「あら。久しぶりね、シレイドちゃんにキアラさん。それと、よろしくね、新顔のお仲間さんたち」
メンバーとも挨拶を済ませる。
「それで、何か御用かしら?」
「ああ。ギルドに依頼を出していただろう? 俺たちがそれを受けることになったんだ」
「あら、そうだったの。ふふふ、レオくんが受けてくれるのなら、依頼者としても安心だわ」
俺の言葉を聞いて、柔らかい笑みを浮かべるシャロン。
「そうか。そう言ってもらえて光栄だよ。それで……確か南東にある『落星の森』の素材だったよな?」
「そう。正確には、そこのボスモンスター『混合獅子キマイラ』の血が欲しいの」
「キマイラの『血』?」
「ええ。鑑定では表示されない隠し素材よ。魔道具屋の中でも、使用できることを知らない者が多い素材なの」
ふーむ、なかなかに怪しい素材である。
「一応、用途を聞いてもいいか?」
「……えっと、ごめんなさい。その……言いたくないわ」
普段、ハキハキと物事を斬る彼女が言い淀む。
「……言えない事情なのか?」
「この顔で察してくれると助かるんだけどね」
俺の言葉に、少し息を吐いて今度はスッパリと言うシャロン。
その眼差しからは、少しの罪悪感と、譲らないという決意が感じられる。
どうやら、本当に話す気はないらしい。
なるほどな。ギルドに依頼を出していたが『詳しい話は直接する』としていたということは、それなりに大っぴらにできない理由があるということだ。
おそらく、信用に足る冒険者なのか直接見定める事もしたかったのだろう。
見知った俺たちだからこそ、正直に依頼内容を話してくれたような気もする。
「どうするの? レオ?」
リズが心配そうに訊いてくる。
メンバー五人に目配せすると、皆、俺の結論を待っているようだった。
「……よし、分かった。受けよう」
シャロンの普段の顔は分からないが、これまでの付き合いで『悪い奴』ではないというのは確かである。
俺も転生して間もない頃から、何度もお世話になった。
そうしたこともあり、依頼を受けることに決めた。
俺の決断に、五人も大きく頷く。
「……ありがとう、レオくんたち」
そんな俺たちに、らしくない御礼を言うシャロンなのだった。
ふんわり女子チェリーが対応してくれる。
今日の担当は彼女のようだ。
「ああ。これから、なにか手ごろなダンジョンを攻略したいんだが、ただ踏破だけするのも士気が上がらなくてな。クエストを受けながら踏破できるダンジョンはあるかな?」
「かしこまりましたぁ。ちょっとお待ちくださいねぇ」
俺の言葉を受けて、チェリーがペラペラとクエスト台帳らしきものを捲る。
「えっとぉ、一番手ごろなのはぁ、魔道具屋『紫煙の白猫』様からの、魔道具の素材集めですねぇ。ここから南東にある『落星の森』で採れる素材をご所望のようですぅ。レオさんのレベル的にも適した難易度のダンジョンかとぉ」
チェリーがおすすめのクエストを紹介してくれる。
ん……? 待てよ……? 『紫煙の白猫』?
「ねえ、レオ。『紫煙の白猫』って……」
「ん……シャロンの店……」
リズとシレイドも気づいたようだ。
俺は二人に首肯してやる。
ルクシアでよくお世話になっていた魔道具屋シャロンの店だ。
「店を失って、こちらに来たと聞いていたが……ふむ、ギルドに依頼を出していたのか」
「なるほど、お知り合いの魔道具屋さんなのですね」
「ご主人様の知り合いなら、助けてやろうぜ!」
キアラ、セーラ、ロウナも顔を見合わせている。
「チェリー。その依頼、受けることにするよ。」
「分かりましたぁ。『詳しい話は直接したい』ということらしいのでぇ、お店に向かってくださいねぇ」
「分かった」
俺は正式にそのクエストを受領し、詳しい話を聞くためにシャロンの店『紫煙の白猫』へと向かった。
——エルゼリアの第二層・魔道具屋通り。
依頼表にある地図を頼りに店に向かう。
魔道具屋通りという名の通り、なんとも怪しげな店が軒を連ねていた。
各々の店の外の商品棚には、素材としても使わないような魔物の部位や、何に使うか分からない奇妙な道具が並べてある。
「……なんか、すごい所だな」
「ああ。私たちエルフでも扱わないような素材ばかりだ……ふむ、なんとも興味深い」
俺の言葉にキアラが同調する。
「うひゃあ、この目玉……今、動いた気がしたぜ!」
「ちょ、ちょっとロウナ! 怖いこと言わないでよ!」
「……む! ……ホントに動いた……!? おおー、シレイド……これ欲しい……!」
「シレイドちゃん、止めときなさい? そんなのお部屋に飾ってもしょうがないでしょう?」
他の女子たちは、棚に並べてある何かの目玉のホルマリン漬けのようなもので、キャーキャー騒いでいる。
そうこうしている内に魔道具屋・新生『紫煙の白猫』に到着。
新築らしく、ピカピカの外壁である。
他の店のように商品棚らしきものは店外に出ておらず、それがかえって凄腕の魔道具屋感を出している。
さっそく、扉を開けて中に入る。
そこには、受付に座り本を読む、店主シャロンがいた。
「あら、珍しいお客さんね」
俺たちを見て、少しだけ目を見開き、事もなげに呟くシャロン。
「やあ、久しぶり。リズのバスボムを作ってもらった時以来か。先日のルクシアのスタンピード騒動、色々と大変だったな」
俺の言葉に「そうねぇ、まあまあ大変だったわ」と短く答え、甘ったるい煙草をふかせて微笑むシャロン。
「ありがとね、シャロン! バスボムのお陰で、お風呂がリッチになったよ!」
「うふふ、それは良かったわ」
リズの言葉にも、にこやかに応える。
「ん……久しぶり、シャロン……」
「元気だったか?」
「初めまして、セーラと申します」
「ロウナだ。よろしくな」
「あら。久しぶりね、シレイドちゃんにキアラさん。それと、よろしくね、新顔のお仲間さんたち」
メンバーとも挨拶を済ませる。
「それで、何か御用かしら?」
「ああ。ギルドに依頼を出していただろう? 俺たちがそれを受けることになったんだ」
「あら、そうだったの。ふふふ、レオくんが受けてくれるのなら、依頼者としても安心だわ」
俺の言葉を聞いて、柔らかい笑みを浮かべるシャロン。
「そうか。そう言ってもらえて光栄だよ。それで……確か南東にある『落星の森』の素材だったよな?」
「そう。正確には、そこのボスモンスター『混合獅子キマイラ』の血が欲しいの」
「キマイラの『血』?」
「ええ。鑑定では表示されない隠し素材よ。魔道具屋の中でも、使用できることを知らない者が多い素材なの」
ふーむ、なかなかに怪しい素材である。
「一応、用途を聞いてもいいか?」
「……えっと、ごめんなさい。その……言いたくないわ」
普段、ハキハキと物事を斬る彼女が言い淀む。
「……言えない事情なのか?」
「この顔で察してくれると助かるんだけどね」
俺の言葉に、少し息を吐いて今度はスッパリと言うシャロン。
その眼差しからは、少しの罪悪感と、譲らないという決意が感じられる。
どうやら、本当に話す気はないらしい。
なるほどな。ギルドに依頼を出していたが『詳しい話は直接する』としていたということは、それなりに大っぴらにできない理由があるということだ。
おそらく、信用に足る冒険者なのか直接見定める事もしたかったのだろう。
見知った俺たちだからこそ、正直に依頼内容を話してくれたような気もする。
「どうするの? レオ?」
リズが心配そうに訊いてくる。
メンバー五人に目配せすると、皆、俺の結論を待っているようだった。
「……よし、分かった。受けよう」
シャロンの普段の顔は分からないが、これまでの付き合いで『悪い奴』ではないというのは確かである。
俺も転生して間もない頃から、何度もお世話になった。
そうしたこともあり、依頼を受けることに決めた。
俺の決断に、五人も大きく頷く。
「……ありがとう、レオくんたち」
そんな俺たちに、らしくない御礼を言うシャロンなのだった。
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