ヤバい剣術師範、少女たちを指南しながらのんびりと生活する

Ryu

文字の大きさ
19 / 23
指南後半戦 天の剣を示し、伝えよ

閑話 ある者をめぐる連合会議

しおりを挟む
 時は少し遡る。

 シンがクピトとともに墓参りをしている頃、世界は大きな動きを見せていた。

 王国『ペルシーア』。

 勇者クレア、ならびに剣聖リーゼロッテを戦力に抱えるこの国にて、3国のトップが魔王軍への対応について会議をしていた。

「今こそこちら側に抱き込むべきだ!」

 1人の若き青年が声を響かせる。

 彼の名はロペス・ペルシーア。

 先王である父キュロス・ペルシーアの病死により、3年前に即位した若き王である。

「ペルシーアの王よ。貴殿はまだ若い。その行為が如何に周辺国へ影響を与えるか分かっておらぬ……」

 そう話す初老の男は魔法国『ティツール』の長、ファウスト・ティツール。

 世界でもっとも名高い魔術師にして、『教授』という称号を有するすべての魔法使いの憧れである。

 そしてファウストの孫娘マリン・ティツールは今代の大賢者であり、勇者クレアとともに前線で魔族と戦っている。

 そのためか、表面には決して出していないが、ファウストの内には怒りがあった。

 この戦いを引き起こした愚か者に対し……。

「よもや貴様も、反意を示すつもりではなかろうな、ハンナ教皇!」

 ファウストから同意を得られないことに業を煮やし、ロペスはこの場にいる最後の1人に意見を求めた。

 聖国『ライオス』の女教皇、ハンナは祈りを捧げていた。

 その相手は紛うことなき信仰の対象、創造神である。

「……すべては創造神様のままに」

 彼女は吐き捨てるように、ただ一言だけ言った。

 そもそも彼女にとって、この会議は不毛なものであると切り捨てている。

 優先すべきは創造神への信仰。そして、創造神の神使への助力。ただそれだけである。

「あの者を一国が抱き込めば、他国を恐慌させかねない。それを防ぐために、300年前の王たちはあの者をSSS級冒険者にして、互いに干渉しないという中立盟約を結んだのだ」

「人類が危機である今の状態でも、そのSSS級冒険者に協力を仰ぐなとでも言いたいのか」

「貴殿はまず、自国の歴史を学ぶことだ。500年前に何が起こったのか。貴殿の国がどのように誕生したのか。学びを、教えを放棄すれば滅びの道のみぞ」

 協力が得られないのか、ロペスはこぶしを強く握り、歯軋はぎしりした。

 脳裏にあるのはただ一つ。

 『どうして自分の思い通りにならない』という、自分勝手かつ短絡的な思考だった。

「ファウスト教授、ハンナ教皇。お前たちは今、世界がどういう状態なのか理解していない。人類存続の危機なんだぞ!」

「荒立つでない。王たるもの、常に民の見本とあれ。己が民にどう映るか、常日頃考えよ。これは単なる話し合いではないのだ」

 感情的な発言をするロペスをたしなめるように、ファウストは言葉を投げた。

 要約すれば、『考えてから物を言え。それは民でも出来る。そして、王がそれを出来なければ、民からの信頼なんて得られない』ということである。

 そしてファウストは、ロペスに反撃を仕掛けた。

「では聞くが……その事態を引き起こしたのはどちらであろうな、ペルシーアの王よ。今代の魔王は、魔族すべてから信頼を得ている名君と聞く」

「そ、それは……」

「私もファウスト教授と概ね同じで、魔王が無策に宣戦布告をしているとは思えません……。ですが、この戦争。ただの戦争でないことは確かでしょう」

「ハンナ教皇よ。何をもって、貴殿はそう発言したのだ。『この戦争には裏がある』と……」

「創造神様からのお告げ、としか。私の国すべては、創造神様とともに在るゆえに」

「真意は未だ不明か……。ならば今のところ、魔王軍の動向を注視するほかあるまい」

「それが賢明でしょう、ファウスト教授。私は創造神様からの神託を待ち、分かり次第、伝えることにしましょう」

 その後、会議は1人の王を残して進められていった。

 ファウスト教授とハンナ女教皇は話し合いを重ね、最終的には互いに協力を取りつけることに成功した。

 それに対し、ロペスは2国に見限られることはなかったものの、最後まで話し合いに参加させられることはなかった。

 ――勇者と剣聖を自国に持っていること以外に価値のない国という扱いで。

 ◇ ◇ ◇

「くそっ、くそっ、くそっ」

 会議が終わり、城に戻ったロペスは誰もいない寝室で荒れていた。

「クレアが勝てないと豪語する男を手に入れれば、私の夢に王手をかけられるというのに!」

 ロペスはある野心を持っていた。

 その始まりは、ファウストが言及していた500年前の歴史だった。

 大帝国『アシリア』。

 魔族領を除き、大陸のほとんどを手中に収めた500年前の国。

 先王である父からその国の存在を耳にし、ロペスはその覇道に魅入られた。

 そして、欲が生まれた。

 この国を、大帝国すら霞む大きな国にしたい。

 そのために、大帝国すら成し得なかった偉業を成し遂げたい。

 ロペスは計画を練り、息を潜め、秘密裏に動いた。

「父上が死んで、ようやく私に王位が転がり込んだんだ。この機会、絶対に逃してなるものか!」

 3国と魔族領との戦い。

 その裏には、愚かな王のドス黒い野望が満ちていた。

ーーー

[補足説明]

1.王国『ペルシーア』

大陸一の軍事大国。その背景には、勇者および剣聖の2人の存在がある。

ただ今代の国王、ロペス・ペルシーアはとてもでないが、王にふさわしい素質はなく、人格者でもない……。そして心に秘めている野望も、王国の未来を良い方向に導けるものではない……。

2.魔法国『ティツール』

大陸一の技術大国。また、大陸一の学術都市も存在する。だからか、王になった者は魔法に最も長けた『長《おさ》』と呼ばれている。

今代の長、ファウスト・ティツールは人類最強の大魔道師。魔力で差別する風習を取り除き、誰でも学びの機会を得られる理想郷へと変えた改革者でもある。

3.聖国『ライオス』

大陸一の宗教国。創造神やその関係者を信仰している。階級は高い順に教皇>枢機卿>大司教>司教>司祭>助祭となっている。

今代の教皇はハンナだが、実質的に国を取り纏めているのは枢機卿である。なぜなら、ハンナはある者をサポートするよう神託を授かり、それきり聖国にはいないからである。

4.大帝国『アシリア』

500年前に存在したとされる国。とある出来事により滅びた。

ルル―リエ曰く、500年前に愚行をしたとされているが……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

処理中です...