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指南後半戦 天の剣を示し、伝えよ
閑話 ある者をめぐる連合会議
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時は少し遡る。
シンがクピトとともに墓参りをしている頃、世界は大きな動きを見せていた。
王国『ペルシーア』。
勇者クレア、ならびに剣聖リーゼロッテを戦力に抱えるこの国にて、3国のトップが魔王軍への対応について会議をしていた。
「今こそこちら側に抱き込むべきだ!」
1人の若き青年が声を響かせる。
彼の名はロペス・ペルシーア。
先王である父キュロス・ペルシーアの病死により、3年前に即位した若き王である。
「ペルシーアの王よ。貴殿はまだ若い。その行為が如何に周辺国へ影響を与えるか分かっておらぬ……」
そう話す初老の男は魔法国『ティツール』の長、ファウスト・ティツール。
世界でもっとも名高い魔術師にして、『教授』という称号を有するすべての魔法使いの憧れである。
そしてファウストの孫娘マリン・ティツールは今代の大賢者であり、勇者クレアとともに前線で魔族と戦っている。
そのためか、表面には決して出していないが、ファウストの内には怒りがあった。
この戦いを引き起こした愚か者に対し……。
「よもや貴様も、反意を示すつもりではなかろうな、ハンナ教皇!」
ファウストから同意を得られないことに業を煮やし、ロペスはこの場にいる最後の1人に意見を求めた。
聖国『ライオス』の女教皇、ハンナは祈りを捧げていた。
その相手は紛うことなき信仰の対象、創造神である。
「……すべては創造神様のままに」
彼女は吐き捨てるように、ただ一言だけ言った。
そもそも彼女にとって、この会議は不毛なものであると切り捨てている。
優先すべきは創造神への信仰。そして、創造神の神使への助力。ただそれだけである。
「あの者を一国が抱き込めば、他国を恐慌させかねない。それを防ぐために、300年前の王たちはあの者をSSS級冒険者にして、互いに干渉しないという中立盟約を結んだのだ」
「人類が危機である今の状態でも、そのSSS級冒険者に協力を仰ぐなとでも言いたいのか」
「貴殿はまず、自国の歴史を学ぶことだ。500年前に何が起こったのか。貴殿の国がどのように誕生したのか。学びを、教えを放棄すれば滅びの道のみぞ」
協力が得られないのか、ロペスはこぶしを強く握り、歯軋りした。
脳裏にあるのはただ一つ。
『どうして自分の思い通りにならない』という、自分勝手かつ短絡的な思考だった。
「ファウスト教授、ハンナ教皇。お前たちは今、世界がどういう状態なのか理解していない。人類存続の危機なんだぞ!」
「荒立つでない。王たるもの、常に民の見本とあれ。己が民にどう映るか、常日頃考えよ。これは単なる話し合いではないのだ」
感情的な発言をするロペスを窘めるように、ファウストは言葉を投げた。
要約すれば、『考えてから物を言え。それは民でも出来る。そして、王がそれを出来なければ、民からの信頼なんて得られない』ということである。
そしてファウストは、ロペスに反撃を仕掛けた。
「では聞くが……その事態を引き起こしたのはどちらであろうな、ペルシーアの王よ。今代の魔王は、魔族すべてから信頼を得ている名君と聞く」
「そ、それは……」
「私もファウスト教授と概ね同じで、魔王が無策に宣戦布告をしているとは思えません……。ですが、この戦争。ただの戦争でないことは確かでしょう」
「ハンナ教皇よ。何をもって、貴殿はそう発言したのだ。『この戦争には裏がある』と……」
「創造神様からのお告げ、としか。私の国すべては、創造神様とともに在るゆえに」
「真意は未だ不明か……。ならば今のところ、魔王軍の動向を注視するほかあるまい」
「それが賢明でしょう、ファウスト教授。私は創造神様からの神託を待ち、分かり次第、伝えることにしましょう」
その後、会議は1人の王を残して進められていった。
ファウスト教授とハンナ女教皇は話し合いを重ね、最終的には互いに協力を取りつけることに成功した。
それに対し、ロペスは2国に見限られることはなかったものの、最後まで話し合いに参加させられることはなかった。
――勇者と剣聖を自国に持っていること以外に価値のない国という扱いで。
◇ ◇ ◇
「くそっ、くそっ、くそっ」
会議が終わり、城に戻ったロペスは誰もいない寝室で荒れていた。
「クレアが勝てないと豪語する男を手に入れれば、私の夢に王手をかけられるというのに!」
ロペスはある野心を持っていた。
その始まりは、ファウストが言及していた500年前の歴史だった。
大帝国『アシリア』。
魔族領を除き、大陸のほとんどを手中に収めた500年前の国。
先王である父からその国の存在を耳にし、ロペスはその覇道に魅入られた。
そして、欲が生まれた。
この国を、大帝国すら霞む大きな国にしたい。
そのために、大帝国すら成し得なかった偉業を成し遂げたい。
ロペスは計画を練り、息を潜め、秘密裏に動いた。
「父上が死んで、ようやく私に王位が転がり込んだんだ。この機会、絶対に逃してなるものか!」
3国と魔族領との戦い。
その裏には、愚かな王のドス黒い野望が満ちていた。
ーーー
[補足説明]
1.王国『ペルシーア』
大陸一の軍事大国。その背景には、勇者および剣聖の2人の存在がある。
ただ今代の国王、ロペス・ペルシーアはとてもでないが、王にふさわしい素質はなく、人格者でもない……。そして心に秘めている野望も、王国の未来を良い方向に導けるものではない……。
2.魔法国『ティツール』
大陸一の技術大国。また、大陸一の学術都市も存在する。だからか、王になった者は魔法に最も長けた『長《おさ》』と呼ばれている。
今代の長、ファウスト・ティツールは人類最強の大魔道師。魔力で差別する風習を取り除き、誰でも学びの機会を得られる理想郷へと変えた改革者でもある。
3.聖国『ライオス』
大陸一の宗教国。創造神やその関係者を信仰している。階級は高い順に教皇>枢機卿>大司教>司教>司祭>助祭となっている。
今代の教皇はハンナだが、実質的に国を取り纏めているのは枢機卿である。なぜなら、ハンナはある者をサポートするよう神託を授かり、それきり聖国にはいないからである。
4.大帝国『アシリア』
500年前に存在したとされる国。とある出来事により滅びた。
ルル―リエ曰く、500年前に愚行をしたとされているが……。
シンがクピトとともに墓参りをしている頃、世界は大きな動きを見せていた。
王国『ペルシーア』。
勇者クレア、ならびに剣聖リーゼロッテを戦力に抱えるこの国にて、3国のトップが魔王軍への対応について会議をしていた。
「今こそこちら側に抱き込むべきだ!」
1人の若き青年が声を響かせる。
彼の名はロペス・ペルシーア。
先王である父キュロス・ペルシーアの病死により、3年前に即位した若き王である。
「ペルシーアの王よ。貴殿はまだ若い。その行為が如何に周辺国へ影響を与えるか分かっておらぬ……」
そう話す初老の男は魔法国『ティツール』の長、ファウスト・ティツール。
世界でもっとも名高い魔術師にして、『教授』という称号を有するすべての魔法使いの憧れである。
そしてファウストの孫娘マリン・ティツールは今代の大賢者であり、勇者クレアとともに前線で魔族と戦っている。
そのためか、表面には決して出していないが、ファウストの内には怒りがあった。
この戦いを引き起こした愚か者に対し……。
「よもや貴様も、反意を示すつもりではなかろうな、ハンナ教皇!」
ファウストから同意を得られないことに業を煮やし、ロペスはこの場にいる最後の1人に意見を求めた。
聖国『ライオス』の女教皇、ハンナは祈りを捧げていた。
その相手は紛うことなき信仰の対象、創造神である。
「……すべては創造神様のままに」
彼女は吐き捨てるように、ただ一言だけ言った。
そもそも彼女にとって、この会議は不毛なものであると切り捨てている。
優先すべきは創造神への信仰。そして、創造神の神使への助力。ただそれだけである。
「あの者を一国が抱き込めば、他国を恐慌させかねない。それを防ぐために、300年前の王たちはあの者をSSS級冒険者にして、互いに干渉しないという中立盟約を結んだのだ」
「人類が危機である今の状態でも、そのSSS級冒険者に協力を仰ぐなとでも言いたいのか」
「貴殿はまず、自国の歴史を学ぶことだ。500年前に何が起こったのか。貴殿の国がどのように誕生したのか。学びを、教えを放棄すれば滅びの道のみぞ」
協力が得られないのか、ロペスはこぶしを強く握り、歯軋りした。
脳裏にあるのはただ一つ。
『どうして自分の思い通りにならない』という、自分勝手かつ短絡的な思考だった。
「ファウスト教授、ハンナ教皇。お前たちは今、世界がどういう状態なのか理解していない。人類存続の危機なんだぞ!」
「荒立つでない。王たるもの、常に民の見本とあれ。己が民にどう映るか、常日頃考えよ。これは単なる話し合いではないのだ」
感情的な発言をするロペスを窘めるように、ファウストは言葉を投げた。
要約すれば、『考えてから物を言え。それは民でも出来る。そして、王がそれを出来なければ、民からの信頼なんて得られない』ということである。
そしてファウストは、ロペスに反撃を仕掛けた。
「では聞くが……その事態を引き起こしたのはどちらであろうな、ペルシーアの王よ。今代の魔王は、魔族すべてから信頼を得ている名君と聞く」
「そ、それは……」
「私もファウスト教授と概ね同じで、魔王が無策に宣戦布告をしているとは思えません……。ですが、この戦争。ただの戦争でないことは確かでしょう」
「ハンナ教皇よ。何をもって、貴殿はそう発言したのだ。『この戦争には裏がある』と……」
「創造神様からのお告げ、としか。私の国すべては、創造神様とともに在るゆえに」
「真意は未だ不明か……。ならば今のところ、魔王軍の動向を注視するほかあるまい」
「それが賢明でしょう、ファウスト教授。私は創造神様からの神託を待ち、分かり次第、伝えることにしましょう」
その後、会議は1人の王を残して進められていった。
ファウスト教授とハンナ女教皇は話し合いを重ね、最終的には互いに協力を取りつけることに成功した。
それに対し、ロペスは2国に見限られることはなかったものの、最後まで話し合いに参加させられることはなかった。
――勇者と剣聖を自国に持っていること以外に価値のない国という扱いで。
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「くそっ、くそっ、くそっ」
会議が終わり、城に戻ったロペスは誰もいない寝室で荒れていた。
「クレアが勝てないと豪語する男を手に入れれば、私の夢に王手をかけられるというのに!」
ロペスはある野心を持っていた。
その始まりは、ファウストが言及していた500年前の歴史だった。
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先王である父からその国の存在を耳にし、ロペスはその覇道に魅入られた。
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そのために、大帝国すら成し得なかった偉業を成し遂げたい。
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「父上が死んで、ようやく私に王位が転がり込んだんだ。この機会、絶対に逃してなるものか!」
3国と魔族領との戦い。
その裏には、愚かな王のドス黒い野望が満ちていた。
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[補足説明]
1.王国『ペルシーア』
大陸一の軍事大国。その背景には、勇者および剣聖の2人の存在がある。
ただ今代の国王、ロペス・ペルシーアはとてもでないが、王にふさわしい素質はなく、人格者でもない……。そして心に秘めている野望も、王国の未来を良い方向に導けるものではない……。
2.魔法国『ティツール』
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今代の長、ファウスト・ティツールは人類最強の大魔道師。魔力で差別する風習を取り除き、誰でも学びの機会を得られる理想郷へと変えた改革者でもある。
3.聖国『ライオス』
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今代の教皇はハンナだが、実質的に国を取り纏めているのは枢機卿である。なぜなら、ハンナはある者をサポートするよう神託を授かり、それきり聖国にはいないからである。
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