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指南後半戦 天の剣を示し、伝えよ
第21話 真冬稽古レポート 過去を省みる勇者の静養 [クレアside]
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ボクはクレア。
14代目勇者だ。
今年も後5日。
ボクたちは最後の稽古として、静養を行っている。
「体調管理も稽古の内だ。来たるべき時に備えて各自休養をとるように」
先生はそう言い、今日も朝からどこかに行ってしまった。
ボクは着いていこうとしたが、マリンたちに止められた。
だからボクはこうして、温泉に入っている。
「……どうなってしまうのかな。これから」
この年が終わると同時に、ルルーリエ先輩は攻め込んでくる。
ボクは、自身の過去を思い出した。
◇ ◇ ◇
ボクの生まれた家は分からない。
分かるのは、育った所が孤児院であることだけ。
一番古い記憶は、3歳のボクをあの人が養女にしたことだ。
「そうか。お嬢さんはクレアというのか。太陽のようにまぶしくて、明るい名前だ。将来は国を照らしてくれるかもしれないね」
あの人はキュロス・ペルシーアという名前だった。
あの人はペルシーアの国王だったが、ボクはあの人を40に近い壮年なお父さんのイメージで見ていた。
「父上。その人は誰?」
城に連れられたボクを、10歳の少年が見つめていた。
彼はロペス・ペルシーア。
当時の彼はキュロスに似て、聡明な一面を持っていた。
国のため、そして父の助力となるために、ロペスは他国のことを学んでいた。
――私は将来、この王国をアシリアなんて霞むほどの平和な王国に育てたい。
――アシリアとは別の覇道で、アシリアすら成し得なかった偉業を成し遂げたい。
――そのためには、異国の文化を学んで取り入れなければならないからね。
そう語るロペスの眼は、輝しいものだった。
世界は平和そのものだった。
キュロス義父さんが統治していたペルシーアはティツールやライオスだけでなく、魔族領とも友好的な関係を築いていた。
キュロス義父さんは国民を常に思いやり、ファウスト教授に頭を下げて協力を頼み込んで、軍事以外にも力を注いでいた。
――平和な時代に、旧時代の軍事力は不要。我らペルシーアは今こそ他国から学び、変わるべきなのだ。
王国民の前で『軍事大国からの脱却』を演説するほどに、キュロス義父さんは未来を見据えていた。
あの人ほど、国王に相応しい者はいなかった。
2年が経過し、ボクは5歳になった。ボクはキュロス義父さんに星霊峰へと連れられた。
どうやらボクは14代目勇者で、聖剣を扱うための剣術を学ばせたいようだった。
「いいかい、クレア。これから会うのは偉大な御方だ。決して無礼のないように」
キュロス義父さんでさえ、この畏まりよう。
ボクの先生は、一体どんな御方なのだろうか。
連れられたのは、見たことのない異色の建物だ。ロペスが見れば、この建物につて根掘り葉掘り質問攻めしていただろう。
キュロス義父さんは門戸を叩いた。
「シン殿。私だ。キュロスだ」
「……もう来たのか。まあいい。取りあえず入れ」
ボクは少し苛立った。借りにも一国の王なのに、口調を改めない。
王国なら、不敬罪すれすれの言動だ。
一言物申そう。そんな思考はシンという人物を見て、吹っ飛んでしまった。
少年だ。ロペスと同じくらいの少年が、竹刀を腰に差して迎えてきた。
「……似ている。姿形はリンネよりもはるかに」
シンという少年は眼を細めて、こちらを見た。
この時はじめて、ボクの中でナニカが覚醒し、懐かしさが心を支配した。
――ボクとシンはどこかで会ったことがあるように。
そんな不思議な出会いを経て、ボクは剣術を学んだ。
自分でも信じられないスピードで、ボクは剣術の技能を吸収していった。
習得というより、技能を取り戻しているかのような感覚だった。
それに、先生に褒められると嬉しく感じた。
先生はボクの欲しいものをすぐ看破して、分け与えてくれた。
この時点で、ボクは先生に好意を抱いていた。
さらに年月が過ぎ、先生の道場がすっかりボクの家になった。というより、ペルシーア王家の養女であることを記憶の彼方に吹っ飛ばしそうになっていた。
先生は少年の見た目とは裏腹に、その内面は老成して頼りがいがあって……安心する。
それに……先生といるとなんだかムラムラして、離れたくない気分になる。
先生がマリンたちと話していると、無性に拘束して押し倒したくなる。
このままでは確実に先生を……捕食しちゃいそうだった。
なんとか自分を抑え、リーゼロッテが免許皆伝を受けた日、ボクは本来の城へと戻った。
「キュロス義父さんが……病死」
「ああ……。父上は病気を隠して、死ぬ直前まで……」
城の玉座には、悲痛な顔をしたロペスが座っていた。隣にはロペスの婚約者、アリアさんもいる。
アリアさんはロペスに寄り添い、ともにキュロス義父さんの遺した政策を進めている。
2人は見事に、キュロス義父さんの意志を継いでいた。
2人なら互いを支え合い、今後のペルシーアは託せられる。
そう信じて、ボクはキュロス義父さんの墓参りをし、再び聖剣をこの王国に捧げることを決意した。
決意した……はずだった。
――アリアさんが魔族に殺され、ロペスが愚王へと豹変してしまうことさえなければ。
14代目勇者だ。
今年も後5日。
ボクたちは最後の稽古として、静養を行っている。
「体調管理も稽古の内だ。来たるべき時に備えて各自休養をとるように」
先生はそう言い、今日も朝からどこかに行ってしまった。
ボクは着いていこうとしたが、マリンたちに止められた。
だからボクはこうして、温泉に入っている。
「……どうなってしまうのかな。これから」
この年が終わると同時に、ルルーリエ先輩は攻め込んでくる。
ボクは、自身の過去を思い出した。
◇ ◇ ◇
ボクの生まれた家は分からない。
分かるのは、育った所が孤児院であることだけ。
一番古い記憶は、3歳のボクをあの人が養女にしたことだ。
「そうか。お嬢さんはクレアというのか。太陽のようにまぶしくて、明るい名前だ。将来は国を照らしてくれるかもしれないね」
あの人はキュロス・ペルシーアという名前だった。
あの人はペルシーアの国王だったが、ボクはあの人を40に近い壮年なお父さんのイメージで見ていた。
「父上。その人は誰?」
城に連れられたボクを、10歳の少年が見つめていた。
彼はロペス・ペルシーア。
当時の彼はキュロスに似て、聡明な一面を持っていた。
国のため、そして父の助力となるために、ロペスは他国のことを学んでいた。
――私は将来、この王国をアシリアなんて霞むほどの平和な王国に育てたい。
――アシリアとは別の覇道で、アシリアすら成し得なかった偉業を成し遂げたい。
――そのためには、異国の文化を学んで取り入れなければならないからね。
そう語るロペスの眼は、輝しいものだった。
世界は平和そのものだった。
キュロス義父さんが統治していたペルシーアはティツールやライオスだけでなく、魔族領とも友好的な関係を築いていた。
キュロス義父さんは国民を常に思いやり、ファウスト教授に頭を下げて協力を頼み込んで、軍事以外にも力を注いでいた。
――平和な時代に、旧時代の軍事力は不要。我らペルシーアは今こそ他国から学び、変わるべきなのだ。
王国民の前で『軍事大国からの脱却』を演説するほどに、キュロス義父さんは未来を見据えていた。
あの人ほど、国王に相応しい者はいなかった。
2年が経過し、ボクは5歳になった。ボクはキュロス義父さんに星霊峰へと連れられた。
どうやらボクは14代目勇者で、聖剣を扱うための剣術を学ばせたいようだった。
「いいかい、クレア。これから会うのは偉大な御方だ。決して無礼のないように」
キュロス義父さんでさえ、この畏まりよう。
ボクの先生は、一体どんな御方なのだろうか。
連れられたのは、見たことのない異色の建物だ。ロペスが見れば、この建物につて根掘り葉掘り質問攻めしていただろう。
キュロス義父さんは門戸を叩いた。
「シン殿。私だ。キュロスだ」
「……もう来たのか。まあいい。取りあえず入れ」
ボクは少し苛立った。借りにも一国の王なのに、口調を改めない。
王国なら、不敬罪すれすれの言動だ。
一言物申そう。そんな思考はシンという人物を見て、吹っ飛んでしまった。
少年だ。ロペスと同じくらいの少年が、竹刀を腰に差して迎えてきた。
「……似ている。姿形はリンネよりもはるかに」
シンという少年は眼を細めて、こちらを見た。
この時はじめて、ボクの中でナニカが覚醒し、懐かしさが心を支配した。
――ボクとシンはどこかで会ったことがあるように。
そんな不思議な出会いを経て、ボクは剣術を学んだ。
自分でも信じられないスピードで、ボクは剣術の技能を吸収していった。
習得というより、技能を取り戻しているかのような感覚だった。
それに、先生に褒められると嬉しく感じた。
先生はボクの欲しいものをすぐ看破して、分け与えてくれた。
この時点で、ボクは先生に好意を抱いていた。
さらに年月が過ぎ、先生の道場がすっかりボクの家になった。というより、ペルシーア王家の養女であることを記憶の彼方に吹っ飛ばしそうになっていた。
先生は少年の見た目とは裏腹に、その内面は老成して頼りがいがあって……安心する。
それに……先生といるとなんだかムラムラして、離れたくない気分になる。
先生がマリンたちと話していると、無性に拘束して押し倒したくなる。
このままでは確実に先生を……捕食しちゃいそうだった。
なんとか自分を抑え、リーゼロッテが免許皆伝を受けた日、ボクは本来の城へと戻った。
「キュロス義父さんが……病死」
「ああ……。父上は病気を隠して、死ぬ直前まで……」
城の玉座には、悲痛な顔をしたロペスが座っていた。隣にはロペスの婚約者、アリアさんもいる。
アリアさんはロペスに寄り添い、ともにキュロス義父さんの遺した政策を進めている。
2人は見事に、キュロス義父さんの意志を継いでいた。
2人なら互いを支え合い、今後のペルシーアは託せられる。
そう信じて、ボクはキュロス義父さんの墓参りをし、再び聖剣をこの王国に捧げることを決意した。
決意した……はずだった。
――アリアさんが魔族に殺され、ロペスが愚王へと豹変してしまうことさえなければ。
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