青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音

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第一章【出会い】

第一話 目覚めたらそこは

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 目覚めてみると……
 なんていうか、ファンタジーだったよね。
 白い塔に囲まれているのは、まあよしとしよう。
 しかし、あの塔はなんでまた宙に浮いているんでしょうか。誰か説明プリーズ。

 あー、寝起きで機敏きびんな動きができない。
 ぼーっとしながら、無意識にケツポケからスマホを取り出す。

【06:03】


 ………?


 朝にしちゃあ、真っ暗なんですけど。
 まあ、予想通りというかなんというか、圏外だしね。
 電池無くなると嫌だから電源切っておこう。

 シュン

 スマホの光で、少しだけ目が覚めた。
 ゆっくり立ち上がると、塔に近づいてみる。
 俺が無意識に移動したのは、ダイヤモンドみたいな大きい宝石の埋め込まれた塔と、水色の宝石の埋め込まれた塔の間だった。

 何だか嫌な予感がする。

 ネタで付けていたモゲーのストラップを外し、そっと投げてみる。


 ピ―――――ン


 琴線に触れたような音がして、ストラップが爆発した。

 ………

 生身だったら、と考えてゾッとする。
 マジ怖いんですけど。
 これ、どうやって出るんだろうか。そもそも出れるのか……
 一生このままってこともないだろうけど、ここに居ても状況がよくなるとは思えない。


 てか、何故ここに居るんだろうか。
 死んだ覚えもないし、神様に会った記憶もない。
 って事は、異世界転生ルートではない……と。

 こんな所に閉じ込められてる(?)って事は、喚ばれた可能性もあるな。
 喚ばれたなら、良い扱いは受けなさそう。

 よし、ここを出よう!

 ま、ストラップ投げただけで爆発ですから、何か良い策があるわけでもないんですがね。

 当たり前だろォォォ!
 普通の高校生なんだよ、こっちは!

 あ、紹介が遅れました。

 俺は神崎かんざき 毬也まりや、16歳。
 えー、彼女とは別れました。
 別れたその日にこれとか、マジ死ねます。


 ………


 さっきからバコーンとかドカーンとか兵器みたいな音が聞こえてるんですが。
 そして、俺の耳が正しければ段々こっち来てるっていう。

 ふざけんなし!




《ドゴ――――ン》


 俺の右側……
 つまり、水色の宝石が埋まった塔が消し飛んだ。
 もう一つ右側の塔が一緒に消し飛んだから、身体に影響はない。

 精神的なダメージくらいで。

 ちょ……

 マジ怖ぇぇぇぇ!

 何何何何!?

 何が起こったのか、全然見えなかったんだけど……
 吹っ飛んだ塔の延長線上を見てみると、砂埃すなぼこりにうっすらと大きな影が映っていた。

 最強生物ですね、わかります。

 それを視認した瞬間、俺は走り出した。あれは、人生最高の判断力だったと言えよう。
 走っていると、前方に白い建物が見えた。ヨーロッパ辺りにある洋館みたいで、マジ半端ないくらいデカい。

《―――ドンッ》

 重たい音が後方で響いた。
 振り向くとか、自殺行為してる場合じゃねぇから。
 学生服最悪。指定のローファーが一番最悪だな。全速だから、足が痛ぇぇ。

 なんて頭の中で愚痴っていると、後ろから抱き抱えられた。

「⊿φχσθ☆!!!?」

「………《飛翔》」

 パニックになった瞬間に、女の人の声が聞こえて。
 そこで俺の意識は無くなった。




 ーーーーーー




「ウ………、アァ………―――!」

 苦悶の声と、何かが焦げているような匂いがして目が覚める。
 誰かが苦しんでいる……?

「クソ……、膿んできてる……」

 目を開けると、赤髪のお姉さんが肘を、赤くなった剣の刃で焼いていた。

「………!!」

 お姉さんの………、左ひじから下がない。元からなかった感じではない。
 つい最近、それも遠くない過去に無くなった感じだ。

 あの、デカい生物のせいだと何故か直感した。

「お、お姉さん……病院に……」

 言いながら吐きそうになる。血生臭い、けど焦げたような匂いに気分が悪くなるのを必死でこらえた。

「ビョウ…イン?何だ……それは?」

 病院が………ない、だと!?

「その傷を見てくれる所って…、どこかに無いんですか?」

「小さな……教会なら、あるいは……」

 凄い痛そうだ。意識が飛びかけてるのか、汗が大量に出ている。

「教会、教会か…。行きましょう」

「馬鹿か………」

「え……?」

 初対面で馬鹿呼ばわり。
 痛いのを我慢してまで言わなきゃならないこと。そんな気がして、二の句が継げない。
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