106 / 147
第六章【獣人の国】
第百五話 呪いの言葉
しおりを挟む
船はたまに停泊するけど、安全のために俺は降りられなかった。でも、エリオネルがいるから退屈はしなかった。
エリオネルとだったら、延々とイチャイチャできるわ俺。
手錠されて、連れ回された1か月に比べたら天国でしかない。
運動する場所もあるし、図書館もあるので、本当に退屈はしない。さながら、豪華客船のようだ。
エリオネルに退屈じゃないか聞いたら、蜜月を過ごせて今までで一番幸せだと言っていた。
ユリアーノさんに魔法陣を作ってもらってから、グリードの夢を見なくなったので油断していた。
起きたら真っ暗だった。船の自室でエリオネルと寝てたはずなのに、ベッドもない。
「エリオネル?」
何もない真っ暗な空間だ。
そこにゆっくりグリードが降りてきた。
「やだ!近づかないで!」
「マリヤ……」
「グリード、俺に催眠掛けたんでしょ!?」
「催眠?」
意味がわからないというように、グリードが首を傾げる。顔良っ。俺の周りはイケメンばっかりなんか。
「俺は掛けてない」
「じゃあ、誰が」
「多分、神じゃないかな?」
「へ?何で?」
神ってあの神様?何で神様が催眠掛けるの?
グリードが手を出してくる。それを、俺は拒めない。
ユリアーノさんが魔法陣作ってくれたのになんで。
「マリヤが嫌がることはしない」
「い……やだ」
「本当に?」
彼の手が頬に触れて、胸がきゅうって苦しくなった。嫌じゃない、嫌じゃないんだよな。
そのまま唇が重なって、吐息が一つになる。
ダメだってわかっているのに、突き飛ばせなかった。
「ん、……ふ、ぁ……」
「マリヤ」
「あ、やっ」
夢で慣らされた体が反応する。
「だ、ダメだって」
あっぶない。また、何も考えられなくなるところだった。
グリードが拗ねたように口を尖らせる。可愛いな、オイ。
「ダメ」
「わかった。いいって言われるまで待つ」
「言いませんけど!?」
「言うよ」
何だかその言葉が、呪いのように感じた。
いきなり目の前が真っ暗になる。
気がついたらベッドの上で、隣にはエリオネルが寝ていた。
エリオネルが起きてから、夢の詳細を話すとユリアーノさんを連れてきて、話し合いが始まった。
「神まで出てきたら、こちらで打てる手はありませんね」
「………」
「でも、最後は拒否できたし、一応効果あったかなと思ってるんですが」
「そうですね。寝る前には魔法陣使っていただいて、様子見ですね」
エリオネルは不機嫌になっている。当たり前か。
「エリオネル、ごめんね」
「いや、マリヤは悪くないから。夢にまで嫉妬する私が狭量なのはわかってる」
「でも、夢って言っても、これは何か違う気がするし、嫉妬してくれるのは嬉しい」
「マリヤ……」
「あの、見つめ合うの辞めてもらえますか?」
「は!ごめんなさい」
ユリアーノさん居たんだった。
「ジルコンさん、次の目的地はアテナースですか?」
「アテナースではなく、黒曜国に行こうと思っています」
「黒曜国?何か聞いたことある」
どこでだったかな?んー、思い出せない。
「黒曜国は、ほとんどの国民が黒髪で、華族はほとんど鬼という種族なんだ」
「かぞくって何?」
「こちらで言う貴族に当たる階級の人たちだよ」
「へえ。じゃあ、偉い人は皆鬼なの?」
「ほとんどね。鬼か、鬼の混血かどちらかだよ」
「行くのにどのくらいかかるの?」
エリオネルがバサっと世界地図を出してくる。話を聞く限り、どうやらこの世界は丸い球体ではないらしかった。
「ここからここへ行くんだけど、後6日くらいかな」
「早くない?え?めっちゃ早くない?」
「寝てる間も進んでるからね」
「そーかー」
「ふふ、マリヤさん可愛い」
間抜けな顔をしていたに違いない。キリッとした顔をすると、それもツボに入ったのか、ユリアーノさんが声を上げて笑い始めた。
エリオネルとだったら、延々とイチャイチャできるわ俺。
手錠されて、連れ回された1か月に比べたら天国でしかない。
運動する場所もあるし、図書館もあるので、本当に退屈はしない。さながら、豪華客船のようだ。
エリオネルに退屈じゃないか聞いたら、蜜月を過ごせて今までで一番幸せだと言っていた。
ユリアーノさんに魔法陣を作ってもらってから、グリードの夢を見なくなったので油断していた。
起きたら真っ暗だった。船の自室でエリオネルと寝てたはずなのに、ベッドもない。
「エリオネル?」
何もない真っ暗な空間だ。
そこにゆっくりグリードが降りてきた。
「やだ!近づかないで!」
「マリヤ……」
「グリード、俺に催眠掛けたんでしょ!?」
「催眠?」
意味がわからないというように、グリードが首を傾げる。顔良っ。俺の周りはイケメンばっかりなんか。
「俺は掛けてない」
「じゃあ、誰が」
「多分、神じゃないかな?」
「へ?何で?」
神ってあの神様?何で神様が催眠掛けるの?
グリードが手を出してくる。それを、俺は拒めない。
ユリアーノさんが魔法陣作ってくれたのになんで。
「マリヤが嫌がることはしない」
「い……やだ」
「本当に?」
彼の手が頬に触れて、胸がきゅうって苦しくなった。嫌じゃない、嫌じゃないんだよな。
そのまま唇が重なって、吐息が一つになる。
ダメだってわかっているのに、突き飛ばせなかった。
「ん、……ふ、ぁ……」
「マリヤ」
「あ、やっ」
夢で慣らされた体が反応する。
「だ、ダメだって」
あっぶない。また、何も考えられなくなるところだった。
グリードが拗ねたように口を尖らせる。可愛いな、オイ。
「ダメ」
「わかった。いいって言われるまで待つ」
「言いませんけど!?」
「言うよ」
何だかその言葉が、呪いのように感じた。
いきなり目の前が真っ暗になる。
気がついたらベッドの上で、隣にはエリオネルが寝ていた。
エリオネルが起きてから、夢の詳細を話すとユリアーノさんを連れてきて、話し合いが始まった。
「神まで出てきたら、こちらで打てる手はありませんね」
「………」
「でも、最後は拒否できたし、一応効果あったかなと思ってるんですが」
「そうですね。寝る前には魔法陣使っていただいて、様子見ですね」
エリオネルは不機嫌になっている。当たり前か。
「エリオネル、ごめんね」
「いや、マリヤは悪くないから。夢にまで嫉妬する私が狭量なのはわかってる」
「でも、夢って言っても、これは何か違う気がするし、嫉妬してくれるのは嬉しい」
「マリヤ……」
「あの、見つめ合うの辞めてもらえますか?」
「は!ごめんなさい」
ユリアーノさん居たんだった。
「ジルコンさん、次の目的地はアテナースですか?」
「アテナースではなく、黒曜国に行こうと思っています」
「黒曜国?何か聞いたことある」
どこでだったかな?んー、思い出せない。
「黒曜国は、ほとんどの国民が黒髪で、華族はほとんど鬼という種族なんだ」
「かぞくって何?」
「こちらで言う貴族に当たる階級の人たちだよ」
「へえ。じゃあ、偉い人は皆鬼なの?」
「ほとんどね。鬼か、鬼の混血かどちらかだよ」
「行くのにどのくらいかかるの?」
エリオネルがバサっと世界地図を出してくる。話を聞く限り、どうやらこの世界は丸い球体ではないらしかった。
「ここからここへ行くんだけど、後6日くらいかな」
「早くない?え?めっちゃ早くない?」
「寝てる間も進んでるからね」
「そーかー」
「ふふ、マリヤさん可愛い」
間抜けな顔をしていたに違いない。キリッとした顔をすると、それもツボに入ったのか、ユリアーノさんが声を上げて笑い始めた。
2
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました
芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」
魔王討伐の祝宴の夜。
英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる