青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音

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第七章【鬼の国】

第百八話 魔力酔い

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 エリオネルの声がする。すごく怒ってるみたいだ。

「信じられない!」

 大丈夫だよって言ってあげたいけど、まだクラクラしてて声が出ない。

「魔力酔い起こした人間に乱暴するなんて!」

 これって魔力酔いなんだ。通りで体が動かなかったわけだ。

「………途中で辞めたのに」

 ガンッと強い力で殴られる音がする。嘉伯くんが殴られてるのはわかったけど、何故だか感情が湧かない。

「ジルコン様、お詫びは後日致しますので、今日はこれで失礼いたします」

 知らない人の声がする。

「オイ、俺殴られただけかよ」

「マリヤ様を襲っておいて、これで済むわけないでしょう」

「どっちの味方だよ!?」

「正しい方の味方です。あと、マリヤ様がお目覚めです」

「マリヤ!大丈夫?」

「マリヤ!」

「アンタはこっちだ。このボンクラが!」

 目をそっと開けると、エリオネルの心配そうな顔と、嘉伯くんを引きずっていく髪の長い男の人が見えた。

「マリヤ?」

「エリオネル」

「大丈夫?痛くない?」

「うん、ちょっと頭クラクラする」

「油断も隙もない」

「ごめんね」

「これから、お風呂は一緒に入って」

「へ?!いや、うん……わかった」

 恥ずかしいし、めっちゃ嫌だけど、こんなことがあって、エリオネルに心配かけちゃったから仕方ないかな。

「マリヤ、嘉伯に何されたの?」

 エリオネルが他の人呼び捨てって、めっちゃ怒ってない?

「いや、あの……」

 挿れられてないだけで、めちゃくちゃされたな。言いたくないって言ってもダメなんだろうな。

 何をされたか、かいつまんで説明すると、エリオネルがボコボコにしてくると席を立とうとした。

「エリオネル!」

 彼の腕に縋りつくと、何?と笑ってない顔で言われた。怖くて喉がヒュッとする。

「上書きして?」

「………」

「いやだ?」

 怖さでじわりと睫毛が濡れた。

「狡い。そんなに可愛いの、ほんと狡い」

 嬉しい。エリオネルに可愛いって言ってもらうの、好き。
 こっちに来る前は、何とも思ってなかった言葉が大事なものになった。

 エリオネルに貰ったものが沢山ある。それは言葉だったり、感触だったり、感情だったりした。

 触られると、どこも気持ち良くて、何も考えられなくなる。こんなになるの、本当にエリオネルだけなんだなあ。

「エリオネルに触られると、気持ちいい」

「マリヤ、嘉伯に触られた時もいいって言ったの?」

「言うわけないでしょ」

 むっと唇を突き出すと、そこに口づけされた。

「ずっと嫌々言ってた」

 エリオネルがニヤッといやらしく笑う。何?心臓死ぬんだけど。

「嫌だったんだ?」

「当たり前でしょ」

 拗ねたように顔を背けると、パクッと耳を食べられた。

「あっ、ちょっと、んんっ」

 ぬるっとした感触に、あり得ないほど背中がゾクゾクする。

「耳弱いよね?」

「わかってたら、やめてよっ」

 気持ち悪さの中に、快感があって、性器が緩く勃ち上がってきた。

「んっ!ああん」

「反応よすぎない?」

「だからぁ、耳弱いってば」

「可愛い」

 耳を食まれたり、舐められたりして、ずっと背中がビリビリしている。

「ああっ、やめてっ」

「嫌なの?」

「う……、エリオネルだったら、いい」

「何なの?可愛すぎでしょう」

 ぐったりしてると、それ以上はやめてくれた。

 甚平みたいな上下のセットを着せられていたんだけど、エリオネルに全部剥ぎ取られる。パンツだけの格好になって、恥ずかしい。

「エリオネル……」

「私は、その艶っぽい視線にとことん弱い」

 目尻が下がって優しい目をしたエリオネルに見つめられて、胸がドキドキする。

「俺は、エリオネルの優しい目が好き」

「優しい目は、マリヤにだけだよ」

「うん、愛しいって思ってくれてる時の目なの、知ってる」

 すごく、幸せ。

 泣きたくなるくらい毎日幸せなの、エリオネルは知ってる?
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