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第三章 開戦
第7話 偽り
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「仲間が全員死んだ……!? 本当なのか!?」
俺の言葉を聞き、目を見開き怒りと驚愕の混ざった表情をする李。
この様子だと知らなかったみたいだな、好都合だ。
「そうさ、こいつは我らに接触する為我らの要求を飲みお前の仲間が潜む村を焼き払った! 報告によればそれはそれは凄惨だったようだぜ?」
「なんと……!!」
怒りに体を震わせる李。
それでも魔王を襲わないのは助けられた恩義のせいだろう。
しかし、そんな状況にあっても当の魔王はどこ吹く風でアゴに手を当て何やら思案していた。なぜそんなに余裕なんだ?
「そうか……あの者たちはお前の仲間だったのだな」
魔王は考えたそぶりをやめるとそう言い放つ。
馬鹿め。これでもう言い逃れは出来んぞ。
「くくっ、ならちょうどよかったの」
「誰だっ!?」
背後より突如投げかけられる声に振り返るとそこには真紅の魔女装束に身を包んだ少女がいた。
「来たかテレサ」
「お待たせしたの主人殿《あるじどの》、こちらは万事解決した。ほれ、出てきて良いぞ」
テレサと呼ばれた少女が手招きすると岩かげより無数の人影が現れる。
「まさか……何故だ!?」
そう。
岩かげより現れたのは死んだはずの反抗勢力の面々だった。
「お前たち!! 生きていたのか!!」
「ああ、ピンピンしてるぜ!!」
抱き合い喜びを分かち合う面々。
いったいどういう事だ!?
考えられる理由は……
「……そうか分かったぞ、幻覚だな!」
死んだ者は魔法でも生き返らない。
だとしたらここにいる奴らは幻覚魔法によるものに違いない。
「ふふっ、幻覚か。あながち間違いではない、良い線を突いてくれる」
「なに?」
「幻覚なのは村を焼いた魔法だ。廃村も反抗勢力のメンバーも傷一つ負っていない」
「そんなバカな!?」
幻覚魔法はかける対象が多かったり見せる幻覚が大きくなればなるほど行使する難易度がハネ上がる。
村1つ幻覚で作り出すだけでも至難の技なのにそれを黒蓮教数十人全員にかけるなんて人間技ではない。
「大を救うのに小を捨てる。私はそれをするのに一切の躊躇はしない。しかし両方救えるのであれば喜んで演技の1つでも2つでもしよう」
「そんな……」
結局俺もバカだったわけだ。
こんな化物を出し抜けるなどと思ったなんて……
「疑ってしまい申し訳ありませんジーク殿。あなたこそ我らの救世主です」
既に李を含めた反抗勢力の面々は魔王を羨望と畏怖の目で見つめている。
ここまで計算づくだったというのか……
「さて、そろそろ眠っていただこうか。辞世の句ぐらいは聞いてやるぞ」
魔王は俺の頭に手をかざし冷えきった声で問う。
「……黒蓮教の本部に今回の件は全部報告してある。必ずや貴様らの喉元まで食らいつく、覚悟しておけ」
「くくく、楽しみが増えたよ」
こうして俺のクソみたいな人生は幕を下ろしたーーーー。
◇
「くくっ、面白いくらいに上手く事が運んだの。さすが主人殿じゃ」
「……ふふ、まあな」
思った以上の大収穫だ。
いやー今回は本当に……
マジで危なかった。
ホントは反抗勢力もどうせロクな奴らじゃないと思って殺してしまうつもりだった。
しかし何かしらの役に立つかもと、すんでのとこで催眠魔法に変更し、テレサと虎鉄に村の調査を命じた。
「最初は村を調査して来いと言われ何事かと思いましたが……まさかここまで読んでいたとは。拙者感服致した」
いつの間にか隣に来ていた虎鉄が感心したように頷く。
ゴメンよ、たまたまなんだ。
「李とその仲間たちは喜んで魔王国の一員になるそうじゃ。なかなかの忠誠心じゃから役に立つじゃろうて」
「…………そうだな、大切にしよう」
「?」
その後、俺たちは新たにできた仲間たちを連れ神殺しの巨船を走らせ魔王国へ無事帰還した。
こうして初めての国外の活動は幕を閉じたのだった。
俺の言葉を聞き、目を見開き怒りと驚愕の混ざった表情をする李。
この様子だと知らなかったみたいだな、好都合だ。
「そうさ、こいつは我らに接触する為我らの要求を飲みお前の仲間が潜む村を焼き払った! 報告によればそれはそれは凄惨だったようだぜ?」
「なんと……!!」
怒りに体を震わせる李。
それでも魔王を襲わないのは助けられた恩義のせいだろう。
しかし、そんな状況にあっても当の魔王はどこ吹く風でアゴに手を当て何やら思案していた。なぜそんなに余裕なんだ?
「そうか……あの者たちはお前の仲間だったのだな」
魔王は考えたそぶりをやめるとそう言い放つ。
馬鹿め。これでもう言い逃れは出来んぞ。
「くくっ、ならちょうどよかったの」
「誰だっ!?」
背後より突如投げかけられる声に振り返るとそこには真紅の魔女装束に身を包んだ少女がいた。
「来たかテレサ」
「お待たせしたの主人殿《あるじどの》、こちらは万事解決した。ほれ、出てきて良いぞ」
テレサと呼ばれた少女が手招きすると岩かげより無数の人影が現れる。
「まさか……何故だ!?」
そう。
岩かげより現れたのは死んだはずの反抗勢力の面々だった。
「お前たち!! 生きていたのか!!」
「ああ、ピンピンしてるぜ!!」
抱き合い喜びを分かち合う面々。
いったいどういう事だ!?
考えられる理由は……
「……そうか分かったぞ、幻覚だな!」
死んだ者は魔法でも生き返らない。
だとしたらここにいる奴らは幻覚魔法によるものに違いない。
「ふふっ、幻覚か。あながち間違いではない、良い線を突いてくれる」
「なに?」
「幻覚なのは村を焼いた魔法だ。廃村も反抗勢力のメンバーも傷一つ負っていない」
「そんなバカな!?」
幻覚魔法はかける対象が多かったり見せる幻覚が大きくなればなるほど行使する難易度がハネ上がる。
村1つ幻覚で作り出すだけでも至難の技なのにそれを黒蓮教数十人全員にかけるなんて人間技ではない。
「大を救うのに小を捨てる。私はそれをするのに一切の躊躇はしない。しかし両方救えるのであれば喜んで演技の1つでも2つでもしよう」
「そんな……」
結局俺もバカだったわけだ。
こんな化物を出し抜けるなどと思ったなんて……
「疑ってしまい申し訳ありませんジーク殿。あなたこそ我らの救世主です」
既に李を含めた反抗勢力の面々は魔王を羨望と畏怖の目で見つめている。
ここまで計算づくだったというのか……
「さて、そろそろ眠っていただこうか。辞世の句ぐらいは聞いてやるぞ」
魔王は俺の頭に手をかざし冷えきった声で問う。
「……黒蓮教の本部に今回の件は全部報告してある。必ずや貴様らの喉元まで食らいつく、覚悟しておけ」
「くくく、楽しみが増えたよ」
こうして俺のクソみたいな人生は幕を下ろしたーーーー。
◇
「くくっ、面白いくらいに上手く事が運んだの。さすが主人殿じゃ」
「……ふふ、まあな」
思った以上の大収穫だ。
いやー今回は本当に……
マジで危なかった。
ホントは反抗勢力もどうせロクな奴らじゃないと思って殺してしまうつもりだった。
しかし何かしらの役に立つかもと、すんでのとこで催眠魔法に変更し、テレサと虎鉄に村の調査を命じた。
「最初は村を調査して来いと言われ何事かと思いましたが……まさかここまで読んでいたとは。拙者感服致した」
いつの間にか隣に来ていた虎鉄が感心したように頷く。
ゴメンよ、たまたまなんだ。
「李とその仲間たちは喜んで魔王国の一員になるそうじゃ。なかなかの忠誠心じゃから役に立つじゃろうて」
「…………そうだな、大切にしよう」
「?」
その後、俺たちは新たにできた仲間たちを連れ神殺しの巨船を走らせ魔王国へ無事帰還した。
こうして初めての国外の活動は幕を閉じたのだった。
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