スキル「共感覚」のおかげで最強の魔法使いになったので魔人を集めて魔王になることにしました 〜最恐魔王の手さぐり建国ライフ!〜

熊乃げん骨

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第四章 聖痕を継ぐ者 ーother JUSTICEー

第5話 凶刃

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「クリーク・O《オーネ》・ジーク……!!」

 その名前を知らないわけがない。
 こいつは何万人もの邪教徒を束ねる存在、いわば悪の親玉だ。

 それが白昼堂々単身でこんな凶行に及ぶとは……。

「僕たちを舐めすぎなんじゃないか?」

 僕はそう言うと聖痕《スティグマ》に力を込め白銀に煌めく剣を召喚する。
 周りにいる大人たちも事態を把握すると聖痕《スティグマ》を発動し、殺気のこもった魔力を魔王に向ける。

「舐めてなどいないさ。むしろ脅威に感じているからこそこんな強行手段をとっているのさ」

 魔王がそう言うと町のあちこちから火が上がる。
 見れば家の高さほどの大きさがある鎧が何体も暴れまわっている。
 住民も応戦しているが分が悪そうだ。

「聖痕《スティグマ》……素晴らしい力だがその教えは長い時の中で捻じ曲がっえしまったようだな。本来仲間であるはずの魔法使いを敵視するなど愚かな」

「黙れ! 邪教徒が知った風な口を!!」

 この町には邪教徒がかつて行った凶行や蛮行がいくつも伝承として残っている。
 僕たちが邪教徒と分かりあう事など決してない!

「思い込みとは怖いものだ……おかげで無駄な仕事が増えてしまったよ」

 魔王はため息をつくとだるそうにそう呟く。

 無駄な仕事だと……。
 僕たちの命を何だと思っているんだ!?

 こいつだけは許せない!!


「うおおおおおぉっ!!」


 僕はありったけの魔力を刀身に込め魔王に突撃する。
 それに呼応して周りの大人たちもそれぞれの聖痕《スティグマ》を発動して攻撃する!
 これなら……いける!!

「はあ……しょうがない。」

 この期に及んで魔王はだるそうにしている。
 そんな奴の首元目がけ僕の刃は綺麗な弧を描き迫っていく。

 そして……。

「刻め。残虐なる惨刃ジェノサイドエッジ

 奴の手から放たれたのは黒い鞭のような邪法だった。
 その邪法が躍るたび、僕の周りにいた大人たちは血をまき散らしながら吹き飛ばされてしまう。
 邪法をよく観察すると鞭の表面に小さく歪な刃が生えており、軽く撫でられただけで肉がそげ落とされてしまう作りになっている。

「呆けている暇はないぞ」
「しまっ……!!」

 観察している隙を突かれ邪法が僕に迫りくる。
 目にも止まらぬ速さで迫りくるそれに反応できず、僕は足を動かすことすらできない。

「ウーゴ!!」

 その瞬間耳に入ってきたのは聞き慣れたあの声。

 そして、次の瞬間。

 僕の目の間に飛び込んできたローナが、血しぶきを上げながら近くの建物に激突する。

「ローナ!!」

 僕は魔王に背を向けローナの元へ走り出す。
 幸い魔王は他の人と戦っているみたいで追撃は来ない。

「ローナ!! 無事かい!!」

 瓦礫をどかしながら僕は必死に呼びかける。

「ウー……ゴ……」
「!!」

 かすかに瓦礫の隙間からローナの声が聞こえる。
 よかった。無事みたいだ。

「これをどかせば……っと! 無事かいローナ!」

 ひときわ大きい瓦礫をどかすとローナの顔が現れる。
 細かい瓦礫もどかして安静にさせなくちゃ。

 僕はそう思い体に乗った小さな瓦礫を払った。

 しかしそこで目に入ったのは信じられないローナの姿だった。

「うそだろ……!?」

 ローナの胴体は斜めに切り裂かれており、半分に分離する寸前のような状態だった。

 傷口は歪に裂けており、まるで切れ味の悪いノコギリで無理やり切ったかのようだ。
 傷口からは止めどない鮮血、骨や綺麗なピンク色の臓器も露出し一目で死に至る傷だと理解できる。

「ウー……ゴ……」
「喋っちゃだめだ!!」

 声を出す度傷口から噴き出す血の量が増える。
 もはや手遅れだとしても阻止せずにはいられない。

「助けてやろうか?」

 いつの間にか魔王が僕の背後まで来ていた。
 大人たちはみなやられてしまったのだろうか。

「どういう……ことだ?」

「簡単な話さ。死んでさえいなければ私の魔法でそれくらいの傷は治せる」

「そんなことしてあんたに得があるとは思えない」

「君の聖痕《スティグマ》は特別なんだろう? 進んで協力してくれるなら一人くらい助けてやろうではないか」

 僕一人の犠牲でローナが助かる。

 普通であれば迷わず飛びつくが相手はあの魔王だ。
 裏があるに違いない。
 どうする……

「……わかった。言う通りにする」

「ほう」

 魔王は興味深そうに笑う。

「だからもう戦いをやめてくれ。ここまでやればもう十分だろ?」

 悔しいが町の状況を見るに勝つのは不可能だろう。
 だったら一旦降伏し反撃の機会を伺った方がいい。
 その為の犠牲になれるなら悔いはない。

「……残念ながらそれは出来ない」

 魔王は少し考えるそぶりを見せたが、僕の案を却下する。

「なぜだ!! 勝敗はもう明らかだろう、これ以上戦う理由などない筈だ!!」

「勘違いしているようだな……私達は勝敗をつけにわざわざこんなところに来たわけではない」


「私たちは君たちを皆殺し・・・に来たんだよ」
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