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第六章 戦乱の京
第1話 キング
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ロシアでの一件を片付けた俺は、新たに仲間となった最果ての村の人たちと一緒に意気揚々と魔王国へと帰還した。
今まで村の外へほとんど出たことのない彼らは最初戸惑っていたが、一週間もしない内に国民たちと仲良くなっていた。同じ境遇で苦労した者同士だ、当然の結果と言えよう。
今回の功労者であるヴォルクと火凛には休暇を与えた。
火凜はそれに強く反対したが魔王命令で無理やり休ませた。ヴォルクほどではないが火凜もだいぶ消耗しているはず、倒れられては魔王の名折れと言うやつだ。
それに部下の体調管理も上に立つ者の責務だからな。
ヴォルクはというとあっさりと承諾し自室で傷ついた体を休めている……のは表向きで、どうやら人目を盗んで特訓をしているらしい。
今回の件で己の力不足を痛感したらしい、俺からしたら十分活躍してくれたのだが。
まあそれに関しては俺が慰めても逆効果だろう、自分が納得するまで見守る事にする。
そして肝心の俺だが国政を半身に任せているため暇……という事は無く意外と忙しい日々を送っていた。
魔王国内のトラブル解決。
議題に上がるほどでは無いが、国民を困らせているトラブルが多々存在していた。これは城にいては分かる事ではなく、この体になって国民に混ざって暮らしてみて初めて分かることだった。
住民間のケンカ。器物破損。行方不明者。
俺は空いた時間を存分に使い様々なトラブルを解決していった。
おかげでいまや国民の間で便利屋扱いされ「何でもマオさん」という愛称までつけられる始末だ。
まあ悪い気はしないが。
そんな感じで普段は慈善活動に勤しんでいる俺だが本業はこの世界の解明活動だ。
今日は賀ヶ山の定期報告の日なので数日ぶりに魔王城に来ていた。いつものように見慣れた廊下を歩いていると見慣れない人物が前方からこちらに向かい歩いてくる。
「……一体誰だ?」
2mを超す長身に筋骨隆々の肉体と浅黒い肌のその男は力強い足取りで城内を闊歩していた。
特に怪しい素振りは見えない。しかし俺はその人物に面識が全くなかった。
魔王城で働いている者の顔は全て憶えている俺が、だ。
「……!」
俺が注意深くその男を観察していると向こうも俺の視線に気づいたのか、視線がぶつかる。
「なるほどこの魔力……あなたが王の言っていた半身《・・》か」
何と驚いた事にこの不審者は俺の秘密を知っているようだ。
この体のことを知ってる人はごく少数。幹部と専属使用人、他には賀ヶ山などの重要なポストの人間も把握している。
そして……もちろん俺の半身、本物の肉体の方も知っている。
「紹介が遅れました。私はK《キング》・アレックス。あなたの半身、そして我が王であるジーク様の忠実なる僕《しもべ》です」
「なるほどね……」
どうやら俺が好き勝手やってる間にもう一人の俺も好き勝手やってるようだ。
目の前のキングと言う人物は相当な使い手だろう、それは隙の無い所作や静かながらも底の見えない魔力から推測できる。
そんな危険な人物を勝手に仲間に入れるとは……
まあ俺も勝手に何十人もの村人を招いているワケだが。
「では私は任された仕事がありますのでこれで」
キングはそう言い軽く会釈をすると去っていく。
口調こそ穏やかだが俺に向けるその視線は冷え切っており忠誠心の様なものは一切感じられなかった。
本当にあんな奴を城に招き入れて大丈夫なのだろうか? 今度半身を問い詰めなければ。
「……っとやべえやべえ。早く向かわねえと」
そんなことをしている内に待ち合わせの時間が迫ってることに気づく。
急いで研究室に向かった俺は恥ずかしい事にこの些細な一件をすっかり頭から消失させてしまう。
この出会いが、未来の魔王国を揺るがす大事件に発展するとも知らずに……
今まで村の外へほとんど出たことのない彼らは最初戸惑っていたが、一週間もしない内に国民たちと仲良くなっていた。同じ境遇で苦労した者同士だ、当然の結果と言えよう。
今回の功労者であるヴォルクと火凛には休暇を与えた。
火凜はそれに強く反対したが魔王命令で無理やり休ませた。ヴォルクほどではないが火凜もだいぶ消耗しているはず、倒れられては魔王の名折れと言うやつだ。
それに部下の体調管理も上に立つ者の責務だからな。
ヴォルクはというとあっさりと承諾し自室で傷ついた体を休めている……のは表向きで、どうやら人目を盗んで特訓をしているらしい。
今回の件で己の力不足を痛感したらしい、俺からしたら十分活躍してくれたのだが。
まあそれに関しては俺が慰めても逆効果だろう、自分が納得するまで見守る事にする。
そして肝心の俺だが国政を半身に任せているため暇……という事は無く意外と忙しい日々を送っていた。
魔王国内のトラブル解決。
議題に上がるほどでは無いが、国民を困らせているトラブルが多々存在していた。これは城にいては分かる事ではなく、この体になって国民に混ざって暮らしてみて初めて分かることだった。
住民間のケンカ。器物破損。行方不明者。
俺は空いた時間を存分に使い様々なトラブルを解決していった。
おかげでいまや国民の間で便利屋扱いされ「何でもマオさん」という愛称までつけられる始末だ。
まあ悪い気はしないが。
そんな感じで普段は慈善活動に勤しんでいる俺だが本業はこの世界の解明活動だ。
今日は賀ヶ山の定期報告の日なので数日ぶりに魔王城に来ていた。いつものように見慣れた廊下を歩いていると見慣れない人物が前方からこちらに向かい歩いてくる。
「……一体誰だ?」
2mを超す長身に筋骨隆々の肉体と浅黒い肌のその男は力強い足取りで城内を闊歩していた。
特に怪しい素振りは見えない。しかし俺はその人物に面識が全くなかった。
魔王城で働いている者の顔は全て憶えている俺が、だ。
「……!」
俺が注意深くその男を観察していると向こうも俺の視線に気づいたのか、視線がぶつかる。
「なるほどこの魔力……あなたが王の言っていた半身《・・》か」
何と驚いた事にこの不審者は俺の秘密を知っているようだ。
この体のことを知ってる人はごく少数。幹部と専属使用人、他には賀ヶ山などの重要なポストの人間も把握している。
そして……もちろん俺の半身、本物の肉体の方も知っている。
「紹介が遅れました。私はK《キング》・アレックス。あなたの半身、そして我が王であるジーク様の忠実なる僕《しもべ》です」
「なるほどね……」
どうやら俺が好き勝手やってる間にもう一人の俺も好き勝手やってるようだ。
目の前のキングと言う人物は相当な使い手だろう、それは隙の無い所作や静かながらも底の見えない魔力から推測できる。
そんな危険な人物を勝手に仲間に入れるとは……
まあ俺も勝手に何十人もの村人を招いているワケだが。
「では私は任された仕事がありますのでこれで」
キングはそう言い軽く会釈をすると去っていく。
口調こそ穏やかだが俺に向けるその視線は冷え切っており忠誠心の様なものは一切感じられなかった。
本当にあんな奴を城に招き入れて大丈夫なのだろうか? 今度半身を問い詰めなければ。
「……っとやべえやべえ。早く向かわねえと」
そんなことをしている内に待ち合わせの時間が迫ってることに気づく。
急いで研究室に向かった俺は恥ずかしい事にこの些細な一件をすっかり頭から消失させてしまう。
この出会いが、未来の魔王国を揺るがす大事件に発展するとも知らずに……
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