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第六章 戦乱の京
第27話 須佐之男
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「ぐあああっ!!」
もう何度目になるか分からない大蛇の体当たりを受け雀長が注を舞い瓦礫に突っ込む。
「おい!! まだ生きてるか!?」
「たりめーだ! お前こそまだやれんのかよ!」
突っ込んだ瓦礫を跳ね除け雀長が吠える。
既に三人共満身創痍。気力で立っているような状態だ。
しかしそんな状態でも化け物と互角にやりあえているのは一重に彼らが超一流の魔法使いだからだろう。
「拙者はそこまでヤワな鍛え方はしとらん。あの程度の攻撃あの脳筋野郎に比べたら大したことはない!」
虎鉄も張り合うように声をあげ剣を構える。
まだ魔力こそ残してあるがそれはトドメを刺す用に残しておかなければならない。
体力も残り少し。ここからは雀長と龍々家で大蛇を抑えなければならない。
「ふふ、私も負けてられないな! 木行・龍鱗木叢返《りゅうりんこむらがえ》し!!」
龍々家の魔法が発動し地面より巨大な木で出来た反り立つ壁が現れる。
その壁に突っ込んだ大蛇は、その反りに合わせて突進の向きをずらされ攻撃を不発に終わらせる。
「まだまだ、木行・蛇腹鎖縛《じゃばらさばく》!!」
攻撃を防いだ龍々家は即座に次の魔法を構築する。
今度は蛇の形を模した木を何本も生やし大蛇の頭部を縛り上げる。
「シャアアアッ!!」
無力化された己の頭を助けるため他の頭部が龍々家を直接襲う。
「はああぁっ! 木行・龍頭門《りゅうとうもん》!」
龍々家はそれに対し龍の紋様が彫られた門を地面より呼び出し対応する。
木で出来ているため一見脆そうにも見えるが魔力が深く練り込まれているその魔法は大蛇の突進を見事止めて見せる。
「はっは! 流石だぜ!」
「うむ、これなら……」
防ぎ切れる。
そう言おうとした瞬間、待ちわびた存在が現れる。
「待たせたなお前ら!! なんだ意外と大丈夫そうじゃねえか!!」
「まったく、心配して損したわ」
「お主ら! 無事だったか!」
現れたのはもちろん興亀と虎虎。
そして興亀の手には三人が待ち望んでいた物があった。
「持ってきたぜ……酒を!」
興亀の振り上げた右手の先には巨大な水の球がぷかぷかと浮いていた。
透き通っているその水はその全てが酒で出来ており、アルコールの豊潤な匂いを辺りに漂わせている。
「でかした! それだけの量があれば行けるだろう!」
「へへ、後で酒屋のおっちゃん達に謝んねえとな!」
興亀と虎虎が離れたのはこの酒を調達するためだったのだ。
二人はまず崩れた家屋の山から酒屋を探し出し無事なお酒を集め、それを興亀が水の魔法でひとまとめにしていたのだ。
ちなみにお酒と一言に言っても手当たり次第ではなく特に度数の強い物を集めている。
「それでは計画の最終段階に入る! この水球に魔力を集めるのだ!」
龍々家の言葉に従い虎鉄以外の全員が水球に魔力を込め始める。
大量の魔力をその身に受けた水球は次第に色を飴色に変え、なんとも言えない存在感を放ち始める。
「シュルルル……!!」
その水球を見ている大蛇の様子が変わり始める。
今まで別々の獲物を狙っていた8つの頭が全て水球に意識を取られたのだ。
しかもそれだけでなく全ての口から大量のよだれをボタボタと垂れ流し、喉を大きく鳴らし始めたのだ。
「あいつこっちめっちゃ見てるぞ!? 本当にこの作戦で大丈夫なんだろうな!?」
「大丈夫! 私の『スサノオ作戦』を信じろ!」
「この作戦そんな名前だったのね……」
「まあいいじゃねえか倒せれば何でもよ」
スサノオ作戦。
龍々家の立てたその作戦はスサノオという神が怪物ヤマタノオロチを退治する伝承からひらめいた作戦である。
伝承上ではスサノオはヤマタノオロチに強い酒を飲ませ、眠った所を倒したとされている。
なので今回もその作戦をならい、酒を飲ませてその隙に虎鉄の刀で倒すという作戦を立てたのだ。
ただの酒では大蛇が反応してくれるか分からなかったので魔力も混ぜてみたのだがどうやら効果はテキメンだったようだ。今までにない食いつきを大蛇は見せている。
「よし! 魔力は十分に溜まった! やれ興亀!!」
「任せな!」
興亀は慣れた手つきで水の塊を操り8つに分割する。
更にその水の形を変え拳の形にしていく。
「いくぜ化け物、俺の拳を食いきってみやがれ! 八連酒呑酔拳《はちれんしゅてんすいけん》!!」
8つの拳が大蛇目がけて飛んでいく。
8つに分かれたとはいえひとつひとつの水球は大蛇の頭部より大きい。
酔わせるには十分な量だろう。
「では、拙者も行ってくる」
水球が飛んでったのを見計らい虎鉄はジークから貰った刀を腰に差し出発を告げる。
「あとはお主に託した。思い切り行ってくるがいい」
龍々家はそう言って虎鉄の胸を拳でこつんと優しく叩く。
その様子はまるで長年の親友の様だった。
「ああ、お主とも長い間すれ違っていたな。これが終わったらちゃんと語り合おう」
「……ああ。楽しみに待っている」
「おいおい! なにしんみりしてんだよ! 死に行くわけじゃあるめえし縁起でもねえ! こんなもんパッと行ってサクッと倒しちまえばいいんだよ!」
「ハ! 興亀の言う通りだ。どうせお前は死んでも死なないしぶとい奴なんだから! さっさと行って来いよ!」
「お主たち……」
友人たちのぶっきらぼうながらも温かい言葉に虎鉄の胸は熱くなっていく。
あの事件で全てを失ったと思っていた。
しかし彼にはまだ残っていたのだ。失いたくない、大切なモノが。
「そうよ。とっとと行って終わらせてきなさい。こちとら言いたいことが何年分も溜まってるんだから!」
「ああ、必ず戻る。約束だ」
そう言って虎鉄は虎虎の頭を優しく撫でる。
まだ何も知らず仲良く遊んでいた、子供時代のように。
「……うん。待ってる」
昔の口調でそう答えた虎虎に背を向け虎鉄は走り出す。
今度こそ大切なモノを守るために。
「ジーク様、どうか力をお貸しください……!」
遠くで水球が大蛇に命中するのが目に入る。
どうやら作戦は成功したようで大蛇の全ての頭部が目を回しふらふらしている。
しかし油断はできない。
大蛇は驚異的な回復力ですぐに回復してしまうだろう。その前に息の根を止めなければならない。
虎鉄は緊張を押し殺し刀を強く握りしめ、大蛇に向かい飛翔したのだった。
もう何度目になるか分からない大蛇の体当たりを受け雀長が注を舞い瓦礫に突っ込む。
「おい!! まだ生きてるか!?」
「たりめーだ! お前こそまだやれんのかよ!」
突っ込んだ瓦礫を跳ね除け雀長が吠える。
既に三人共満身創痍。気力で立っているような状態だ。
しかしそんな状態でも化け物と互角にやりあえているのは一重に彼らが超一流の魔法使いだからだろう。
「拙者はそこまでヤワな鍛え方はしとらん。あの程度の攻撃あの脳筋野郎に比べたら大したことはない!」
虎鉄も張り合うように声をあげ剣を構える。
まだ魔力こそ残してあるがそれはトドメを刺す用に残しておかなければならない。
体力も残り少し。ここからは雀長と龍々家で大蛇を抑えなければならない。
「ふふ、私も負けてられないな! 木行・龍鱗木叢返《りゅうりんこむらがえ》し!!」
龍々家の魔法が発動し地面より巨大な木で出来た反り立つ壁が現れる。
その壁に突っ込んだ大蛇は、その反りに合わせて突進の向きをずらされ攻撃を不発に終わらせる。
「まだまだ、木行・蛇腹鎖縛《じゃばらさばく》!!」
攻撃を防いだ龍々家は即座に次の魔法を構築する。
今度は蛇の形を模した木を何本も生やし大蛇の頭部を縛り上げる。
「シャアアアッ!!」
無力化された己の頭を助けるため他の頭部が龍々家を直接襲う。
「はああぁっ! 木行・龍頭門《りゅうとうもん》!」
龍々家はそれに対し龍の紋様が彫られた門を地面より呼び出し対応する。
木で出来ているため一見脆そうにも見えるが魔力が深く練り込まれているその魔法は大蛇の突進を見事止めて見せる。
「はっは! 流石だぜ!」
「うむ、これなら……」
防ぎ切れる。
そう言おうとした瞬間、待ちわびた存在が現れる。
「待たせたなお前ら!! なんだ意外と大丈夫そうじゃねえか!!」
「まったく、心配して損したわ」
「お主ら! 無事だったか!」
現れたのはもちろん興亀と虎虎。
そして興亀の手には三人が待ち望んでいた物があった。
「持ってきたぜ……酒を!」
興亀の振り上げた右手の先には巨大な水の球がぷかぷかと浮いていた。
透き通っているその水はその全てが酒で出来ており、アルコールの豊潤な匂いを辺りに漂わせている。
「でかした! それだけの量があれば行けるだろう!」
「へへ、後で酒屋のおっちゃん達に謝んねえとな!」
興亀と虎虎が離れたのはこの酒を調達するためだったのだ。
二人はまず崩れた家屋の山から酒屋を探し出し無事なお酒を集め、それを興亀が水の魔法でひとまとめにしていたのだ。
ちなみにお酒と一言に言っても手当たり次第ではなく特に度数の強い物を集めている。
「それでは計画の最終段階に入る! この水球に魔力を集めるのだ!」
龍々家の言葉に従い虎鉄以外の全員が水球に魔力を込め始める。
大量の魔力をその身に受けた水球は次第に色を飴色に変え、なんとも言えない存在感を放ち始める。
「シュルルル……!!」
その水球を見ている大蛇の様子が変わり始める。
今まで別々の獲物を狙っていた8つの頭が全て水球に意識を取られたのだ。
しかもそれだけでなく全ての口から大量のよだれをボタボタと垂れ流し、喉を大きく鳴らし始めたのだ。
「あいつこっちめっちゃ見てるぞ!? 本当にこの作戦で大丈夫なんだろうな!?」
「大丈夫! 私の『スサノオ作戦』を信じろ!」
「この作戦そんな名前だったのね……」
「まあいいじゃねえか倒せれば何でもよ」
スサノオ作戦。
龍々家の立てたその作戦はスサノオという神が怪物ヤマタノオロチを退治する伝承からひらめいた作戦である。
伝承上ではスサノオはヤマタノオロチに強い酒を飲ませ、眠った所を倒したとされている。
なので今回もその作戦をならい、酒を飲ませてその隙に虎鉄の刀で倒すという作戦を立てたのだ。
ただの酒では大蛇が反応してくれるか分からなかったので魔力も混ぜてみたのだがどうやら効果はテキメンだったようだ。今までにない食いつきを大蛇は見せている。
「よし! 魔力は十分に溜まった! やれ興亀!!」
「任せな!」
興亀は慣れた手つきで水の塊を操り8つに分割する。
更にその水の形を変え拳の形にしていく。
「いくぜ化け物、俺の拳を食いきってみやがれ! 八連酒呑酔拳《はちれんしゅてんすいけん》!!」
8つの拳が大蛇目がけて飛んでいく。
8つに分かれたとはいえひとつひとつの水球は大蛇の頭部より大きい。
酔わせるには十分な量だろう。
「では、拙者も行ってくる」
水球が飛んでったのを見計らい虎鉄はジークから貰った刀を腰に差し出発を告げる。
「あとはお主に託した。思い切り行ってくるがいい」
龍々家はそう言って虎鉄の胸を拳でこつんと優しく叩く。
その様子はまるで長年の親友の様だった。
「ああ、お主とも長い間すれ違っていたな。これが終わったらちゃんと語り合おう」
「……ああ。楽しみに待っている」
「おいおい! なにしんみりしてんだよ! 死に行くわけじゃあるめえし縁起でもねえ! こんなもんパッと行ってサクッと倒しちまえばいいんだよ!」
「ハ! 興亀の言う通りだ。どうせお前は死んでも死なないしぶとい奴なんだから! さっさと行って来いよ!」
「お主たち……」
友人たちのぶっきらぼうながらも温かい言葉に虎鉄の胸は熱くなっていく。
あの事件で全てを失ったと思っていた。
しかし彼にはまだ残っていたのだ。失いたくない、大切なモノが。
「そうよ。とっとと行って終わらせてきなさい。こちとら言いたいことが何年分も溜まってるんだから!」
「ああ、必ず戻る。約束だ」
そう言って虎鉄は虎虎の頭を優しく撫でる。
まだ何も知らず仲良く遊んでいた、子供時代のように。
「……うん。待ってる」
昔の口調でそう答えた虎虎に背を向け虎鉄は走り出す。
今度こそ大切なモノを守るために。
「ジーク様、どうか力をお貸しください……!」
遠くで水球が大蛇に命中するのが目に入る。
どうやら作戦は成功したようで大蛇の全ての頭部が目を回しふらふらしている。
しかし油断はできない。
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